ラブライブ~4人の男子(変態)~   作:稲近

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プロローグ~4匹目~

 

 私の姉の通う音ノ木坂学院には、四人の男子生徒が在学している。

 そんな男子生徒の一人が、姉の始めたスクールアイドルのマネージャーをやることになったとか。

 それもあの紫音さんが。

 

 柚木紫音さんは、この店の常連さんの一人で、友人と二人で、良くこの店で買い食いをしていく。それに、良く洋菓子を差し入れにきてくれたりもする。

 その時に限って姉は店番をしていなかったため、紫音さんのことを姉は今まで知らないでいた。

 紫音さんも、姉の存在は知っているはずだが、顔と名前までは知らないはずだ。

 それにしても、世間というのは狭いものだ。

 この話を思い出す度、そう思わずに入られない。

 

「こんにちは、雪穂ちゃん」

 

 今の時間帯、姉がスクールアイドルの練習をしているため、店番は私がするしかない。

 そして丁度と言うか、タイミング良くというか、噂の紫音さん、では無かったものの、紫音さんの友人であり幼馴染の三条悠衣さんが来店した。

 

「いらっしゃい、悠衣さん」

「あんみつ貰える?」

 

 何時も通りのオーダーを聞き、私は既に用意されていたあんみつを悠衣さんの元へと届ける。

 曜日感覚が少々曖昧になっていたが、そういえば、毎週この曜日は、この時間に来るのだった。

 

 三条悠衣さん。

 背が高く、あまり大きく感情表現をしない、どちらかと言えば物静かな人。

 けれど、紫音さん曰く「元気な変態」なんだとか。

 元気なのはともかく、変態かどうかは置いておくとしよう。

 ちなみに紫音さんに関しては、悠衣さん曰く「普通に変態」、「ただの変人」なんだとか。

 きっとこの年頃の男子という生き物は変態なのだろう、と自分の中で結論付ける。

 男はいくつになっても馬鹿だ、なんて聞いたことがあるくらいだし、あながち間違いでもないだろう。

 

「うん、上手い」

 

 あんみつを一口食べて、これまた何時も通りのセリフを口にする。

 この店の看板娘としては、この一言が嬉しかったりする。

 

「そういえば紫音さん、お姉ちゃんのやるスクールアイドルのマネージャーすることになったそうですよね?悠衣さんはどうするんですか?」

 

 いつも、とは言わないが、良く紫音さんと悠衣さんは一緒にいる印象があった私は、ふと思いついた疑問を口にした。

 紫音さんが姉の活動を手伝うのならば、悠衣さんも手伝うのだろうか。

 

「俺?今のとこそんな予定は無いかな」

「そうなんですか?」

 

 返って来た答えは、意外にも否定的なものだった。

 先述の通り、紫音さんと悠衣さんはよく一緒にいる印象を抱いていただけに、とても意外に思えた。

 確かに、悠衣さんがわざわざ姉の活動を手伝う義理もないし、悠衣さんにだってやりたいことがあるのだろう。

 

 それに、少々安心している自分がいる。

 実はこうして悠衣さんと話す事自体、割りと好きだったりするのだ。悠衣さんはどう思っているかわからないが。

 加えて言うなら、良く勉強を見てくれたりもしていたから、その時間が減るのは私としてはあまり面白くない。

 

「うん、俺としてはここのあんみつを食べる時間を削られるのは嫌だからね」

 

 ―――そこは私に会う時間が削られるのが嫌、と言って欲しかった。

 

 別に恋愛感情から来るものでは多分無い……と思うが、単純に女としての些細なプライド?が、私にそんなことを思わせた……のだと思う。

 確かに悠衣さんが恋人なら、なんて考えたこともある。

 年だって一つしか違わないし、結構私好みでもあるし。

 ちなみに紫音さんは、何故かそういうイメージが全くできない。

 

「そういうわけだから、あいつがなんか言ってこない限り、俺は手伝うことは無いと思うよ」

 

 まだわからないけども、と付け足す悠衣さん。

 そっか、と心のなかで呟く。

 それならこの時間が削られることも無いんだ、なんて。

 

「あ、そうだ、雪穂ちゃん」

 

 そんな風に気が緩んでいるところを、まるで付け狙ったかのようにその言葉は紡がれた。

 

「好きです。俺と付き合ってもらえませんか」

 

 今まで見たことのない真剣な眼差し。

 少しは彼のことを知っていると思っていたけれど、今私に見せている表情は知らない。

 

 ―――それより今、悠衣さんはなんて言った?

 

 隙です?鋤です?

 

 こんがらがる頭が落ち着いた頃、漸く悠衣さんの言葉を理解する。私は告白されたのだ、と。

 奥の方から何かが落ちる音が聞こえてきたが、今はそれどころではない。

 悠衣さんが私のことを好きだと言った。加えて言うなら付き合って欲しいとも言った。

 私は夢でも見ているのだろうか。

 確かに悠衣さんに対しては憧れに似た感情を抱いていたし、2回目になるが、そういうことを考えたことだってある。

 

 しかし、いざそれが現実になると、慌てふためく自分がいた。

 確かに悠衣さんは良い人だ。

 尊敬もしているし、姉より余程しっかりしているし、洋菓子を差し入れてくれたりもする。

 それに私好みでもあるし、何より一緒にいて楽しい。一緒にいて欲しい。

 

 ―――なんだ、そうだったんだ。

 

 改めて自分に問いかけてみると、自分の気持を理解できた。

 私は、悠衣さんが好きだったのだと。いつの間にか憧れから、恋愛感情になっていたのだと。

 さっき「別に恋愛感情から……」、なんて言ったのはどこのどいつだ。

 自分の気持を自覚すると、今度は恥ずかしさがこみ上げてくる。

 きっと、今の私は顔を真赤に染めていることだろう。

 ちらっと悠衣さんの方へ視線を向けると、私と違って緊張したような様子は見られない。

 ちょっと悔しいな、なんて思いながら、改めて悠衣さんの方をしっかりと見ると、別に緊張していないわけではなかった。

 小さく、本当に小さく唇を噛み、手を震わしていた。

 自分の気持ちを打ち明けたのだから、それも当然かも知れないが。

 

「あぁ、別に返事は今直ぐじゃなくていいよ。いつでもいいから、ちゃんと返事さえくれれば」

 

 そう言った悠衣さんは、いつの間にか食べ終えていたあんみつの器のそばにお勘定を置いて、そのまま帰ろうとした。

 このまま帰してしまったら、きっと自分の思いを伝えられなくなる。そんな気がして、慌てて悠衣さんを止めようとした私は、思わず笑ってしまった。

 

「悠衣さん、手と足が一緒に動いてますよ」

 

 所謂ナンバ歩きというやつだが、紫音さんではあるまいし、悠衣さんは普段ナンバ歩きをしているわけではない。

 それほど緊張しているというのに、少しでも私を気遣おうとしていたのだろう。

 そんな悠衣さんを見ていたら、自然と緊張は解れており、自分の思いを言葉にすることができた。

 

「私も、悠衣さんのことが好きです」

 

 その言葉で悠衣さんは足を止め、ゆっくりとこちらへ振り向いた。

 まるで私の言葉が理解できない、と言った様な表情を浮かべる悠衣さんを見て、さっきの私を見ている様な気持ちになった。

 

「だから、よろしくお願いします」

 

 そしてまた、裏から盛大に物が落ちる音が聞こえてきた気がするが、きっと空耳だろう。

 生まれて初めての彼氏。それがまさか悠衣さんになるなんて、人生何があるかわからないものだ。

 悠衣さんを改めて見てみると、小さくガッツポーズをしているではないか。

 私と付き合える事になったのがそれほど嬉しいと思ってくれているのならば、それはとても光栄な事だと思う。

 思わず顔をほころばせると、悠衣さんは照れた様子を見せ、何故か敬語になっていた。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 こうして、私こと高坂雪穂は、中学3年の春と同時に、人生初めての春というものが訪れた。

 そして後々、紫音さんが悠衣さんのことを「元気な変態」と称していた意味を知ることとなる。

 

 




続く……といいなぁorz
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