「で、どうするキリト」
アスカに聞かれてキリトは返した。
「どうするって?」
「いや、これから」
「あーまずはシュミットを探すところからかな」
「なんかどっかで聞いたことあるんだけど、誰だっけ?」
「俺も記憶が曖昧なんだけどさ、多分あれだよ。青龍連合のでっかいランス使い」
「…………誰?」
「お前は強い奴じゃないと顔覚えないからなぁ……」
「そんなつもりないんだけどね……。あんまり印象ない人って覚えづらいじゃん」
「気持ちは分かるけどよ……」
なんて話してると、アスナが着替えて戻ってきた。いつもの血盟騎士団の服装だ。
「お、戻ってきた。この後はどうする?俺たちはシュミットと会わない?って話だったんだけど」
「うーん……それより、圏内PKのトリックについて調べてみない?」
「ああ……確かに。元々の目的はそこだったしな」
「それで、君は今回の事件はどう考えてるの?」
「とりあえず三つかな。一つはデュエルによって、二つ目は既知の手段の組み合わせによるシステムの抜け道、三つ目は未知のスキルか武器だけど……三つ目は除外していいな」
「? なんで?」
顎に手を当てて考えるキリトにアスナが尋ねた。
「フェアじゃないからさ。俺がGMなら絶対にそんなのは作らない」
「と、なると残り二つなんだけど……」
「私はシステムの抜け道に一票」
アスカが手を挙げた。
「なんでだ?」
「逆にデュエルの方はおかしいよ。仮にデュエルだったとして、あの状況で誰もウィナー表示を見つけられないとは思えないし、仮に見つけられなかったとしても、そんな見つかる可能性の高いリスキーな方法を犯人が使うとは思えない」
「と、なると二つ目になるわけだけど……」
「まぁこれだけハイスペックなゲームだし、抜け穴の一つや二つ、見つからない方が不思議だよ」
「………確かにね」
アスナも同意するように頷いた。
「でもだとすると、とんでもないシステムの抜け穴を探してくれたわね……ばら撒かれたら大変なことになるわよ」
「そうだな……。これはさっさと解決しないとな。せめて、圏内PKのトリックだけでも」
「そうだよね。だとすると、今の所で一番怪しいグリムロックさんにお話聞くのが一番かな……」
「でも。そのグリムロック氏が何処にいるか分かるか?」
「ヨルコさんは知らなさそうだったし……仕方ない。あの人に聞いてみよっか」
「あの人?」
「DDAのシュミットさんよ。多分、黄金林檎の元メンバーと同一人物よね?」
「ああ、そうだと思うけど……」
キリトは余り乗り気ではなかった。DDAとKoBは決して仲がいいとは言えなかったからだ。だが、当のアスナはまったく気にした様子なく、56層の聖竜連合のギルド本部へ向かった。その後ろをついていくキリトとアスカ。
で、無事にギルド本部の前に到着。近くの建物の陰から頭を出す三人。下からアスカ、キリト、アスナの順番だ。
「ここ、だよね?」
アスナが確認するように聞くと、うえっとなるアスカ。
「どうしたの?」
「ちょっと、嫌なこと思い出しちゃってね……」
「? 嫌なこと?」
「ね?キリト」
「…………ああ、あれか」
「ちょっと、何なのよ」
アスナに聞かれてキリトが答えた。
「いや、実は少し前に何のお情けかここの披露パーティに俺もアスカも呼ばれてさ。せめてものイヤガラセに俺、アスカ、クライン、エギルとご馳走を片っ端から平らげてやったんだよ。そしたら、その後三日間は何も口に入れる気しなくてな……」
「あなた達、そんな馬鹿なことやってたの……?」
アスナが心底蔑んだ目で二人を(特にアスカを)見た。
「いいだろ、なんとなく腹立ったんだから」
アスカがまったく悪びれる様子なく言った。
「アスカは女の子の割に頑張ってたよ。まぁ一番すごかったのはクラインとエギルだけど」
「別にバカがバカしてた時のバカな勇姿なんて聞いてないわよ」
キリトのフォローもさらっとあしらうと、アスナは言った。
「そんな事より、早くシュミットさんを呼び出しましょう」
「あー待った待った」
それを止めるアスカ。
「お姉ちゃんはダメだよ。血盟騎士団でしょ?」
「………………」
「な、何?」
「いや、今お姉ちゃんって言った?」
「え?ダメ?」
「いえ、久しぶりに言われた気がしたから……。まぁいいわ。なんで、ダメなの?」
「あんまり聖竜連合と血盟騎士団は仲良くないんだから、副団長様が乗り込んで行ったら宣戦布告かと思われるよ」
「うーん……じゃあ、一個下の君、お願い」
「え、ええ⁉︎俺?やだよ。俺もあんま聖竜連合に知り合いいないし……アスカ行けよ」
「嫌だよ。見てよあの門番。完全にRPGの中ボスじゃん」
「それは分かるけど……じゃあ注意だけ引けよ。俺たちがその隙に侵入するから」
「ルパンかお前は」
「いいから行けっての!」
キリトに背中を蹴られ、アスカは突入した。
「ったく………」
「人の妹に何してくれてるのあなた」
「えっ?いや……」
「後でお話があります」
「ごめんなさい……」
で、アスカ。門番の前に躍り出た。
「……………」
「ん?あんたはソロの『忍』ッスね?」
ビックリするほど軽いノリで言われた。
「は?忍って何?」
「俺たちの間ではもう忍って呼ばれてるッスよ!いろんな武器とアイテムを巧みに使って忍のように舞う漢……」
「おい待て今なんつった?」
「へ?」
「私は女だァーッ‼︎」
言いながら剣を抜くアスカ。
「ひ、ひえぇ〜っ!」
逃げ出す門番。追いかけようとしたら、後ろから肩を叩かれた。
「アスカ、落ち着いて」
「お姉ちゃん……」
「あなたは女の子よ」
「お姉ちゃーん……」
(こいつらもう仲直りしてんじゃねぇの?)
ひっそり思うキリトだった。