「「私がする!」」
お互いに手を挙げた。そして、にらみ合う二人。
「………アスカ?ここは姉に譲りなさい?」
「姉なら妹に譲る度量くらいもったら?」
「は?」
「あ?」
睨み合う二人。
「ち、ちょっと二人とも落ち着いて……」
キリトが落ち着かせようとしたが、二人は鞘からレイピアとレイピアを抜く。
「お、おい二人とも……!」
キリトの制止も虚しく、お互いのレイピアがお互いの胸に刺さった。圏内なのでダメージはないが、二人ともマジの目をしている。
グググッと剣を押し刺し込む二人。だが、アスカがアスナの剣を蹴り上げた。剣を離しはしなかったものの、体勢を崩されるアスナ。その隙にアスナの首元に突きを放つ。だが、反対側の手でアスナはガード。剣が手を貫通するも、アスナはしっかり握ると、上から剣を振り下ろした。その剣を拳で殴り上げてガードするアスカ。
そして、お互いに剣を抜いて突き合おうとした時、
「ち、ちょっとストップ!ストーップ!」
キリトが間に入り、二人の剣がキリトを貫いた。
「「あっ」」
声を漏らし、姉妹は止まった。
○
キリトは正座させられ、その前にアスナとアスカが仁王立ちしていた。
「つまり、あんなデリカシーのないプロポーズをしたのは結婚して離婚した後のアイテムを確認するためと?」
(なんで俺が怒られてるんだろう………)
キリトは釈然としないながらも、「はい」と答えた。
「下心はなくて、ほんの実験のつもりだったと?」
「はい………」
「女心なめてんの⁉︎」
クワッ!と怒られ、ビクッとするキリト。
「流石にアレは酷いよキリト。私もついうっかり殴り殺そうかと思っちゃった」
「アスカまで⁉︎アスナに比べて温厚だと思ったのに……!」
「はいそれ、その発言が超サイヤ人を1→3へと覚醒させる」
「マジで⁉︎」
見ての通り、アスナは完全にキレていた。
「だ、れ、が、鬼ババァよ!」
「そこまで言ってねぇー!」
「まぁまぁお姉ちゃん。キリトはあとでラフコフに売り飛ばすとして、それより何がわかったのか聞こうよ」
「売られるの俺⁉︎」
「そうね。何が分かったのか話してくれるかしら?」
「つまり、結婚したらアイテムストレージは共有化されるだろ?」
キリトの確認に二人は頷いた。
「それで離婚した場合、俺の考えが正しければアイテムストレージの中身は二人に分配されるはずだ。だけど、自分が全部もらって相手がゼロになる離婚が一つだけある」
「えっ……?」
「死別だ」
キリトは真面目な顔で言った。
「つまり、グリセルダさんが殺されて一番得をするのは誰でもない。グリムロックだよ」
その言葉の意味に姉妹は理解したのか、唾を飲んだ。
「だから、半年前の指輪事件の犯人はグリムロックなんだよ」
「なんて事………!」
アスナが奥歯を噛んだ。だが、アスカは別のことを思い浮かべた。
「………待って。てことはさ……」
その呟きに、キリトは頷いた。
「そうだ」
「えっ?何が?」
理解してないアスナにキリトは解説した。
「それより問題なのは、グリムロックの武器だよ」
「え?」
「あの二人はグリムロックに作ってもらった武器を使っていただろ?もしグリセルダさんを殺した犯人がグリムロックなら、本当なら協力なんてしたくなかったはずだ」
「どうして?」
「圏内PKなんて派手なことやらかしたら、いずれ誰かが気付いてしまうと思ったんだ。結婚によるストレージ共通化が離婚ではなくて死別で解消された時、その中のアイテムがどうなるか。そして気付かれたら自分の犯行がバレる可能性もある。だから、もしかしたら今、グリムロックは今度こそ半年前の指輪事件を葬るために、今頃集まってるかもしれない三人の殺害をレッドプレイヤーに依頼してるかもしれないな」
「呑気なこと言ってる場合じゃないわよ!」
「落ち着けよ。あくまで可能性だ。でも、レッドプレイヤーのレベルによってはちゃんと装備を整えないとまずい。五分で準備を整えよう」
「私はもう出来てるわよ」
「私も」
「ああそう……じゃあ、行こうか」
そんなわけで、三人は森に向かった。この後、解決した。
○
事件解決後。再びどっかの草原でキリトとアスカは寝転がっていた。
「………で、アレからどーよ」
「何が」
「アスナと仲直りできたの?」
「……………………」
「してないんだな」
「うん…………」
「早めにしとけよお前」
「分かってるけど………」
「最前線にいる以上、お前も向こうもいつ死ぬか分からないんだからな」
「余計なお世話よ」
声がした。後ろから。振り返ると、アスナが立っていた。
「またこんな所で昼寝して……」
「や、やぁアスナ」
キリトは挨拶したが、アスカは目を逸らした。
「アスカ、ちょっといい?」
それを逃がさないアスナ。
「は、はい……」
恐る恐る返事をして、アスカはアスナに従った。二人は少し離れた場所へ向かった。
「な、なんですか……」
「何、今更緊張してるの?事件の時に散々話したじゃない」
「そ、そうですね」
で、アスナが言った。
「ごめん」
「えっ?」
先に謝られてしまった。
「だから、悪かったわ。あなたと私がこのゲームに入った理由は、全然違うもんね」
「あ、いや、私こそごめん。私も、自分が努力しなかったことを棚に上げて、お姉ちゃんに、八つ当たりしてた」
「ううん。あなたはしっかり努力してたわ」
「へっ?」
「知ってるのよ。あなたはただ、あがり症なだけ。あなたは私より努力してたの、知ってるんだよ」
「お姉ちゃん……」
「あなたの事は、勉強で忙しくていつも構ってあげられなかった。だから、これからはキチンと姉妹をやりましょう」
ニッコリ微笑むアスナ。それに、アスカは泣きながら抱きついた。
「お、おねっお姉ちゃああああんッ!」
微笑みながらアスカの頭を撫でるアスナ。
「だから、血盟騎士団に入りましょう?」
「それは嫌だ」