今回の会議は、攻略会議というより、攻略頑張りましょうの会だった。だが、そのお陰といってはなんだが、士気はかなり高まった。
そして、翌日。アスカは会議にまた顔を出した。会議では、アルゴの攻略本が出回っていた。
「あっ、またそれ貰い損ねた!」
急いでアスカは売店に買いに行った。で、貰って戻って来ると、ディアベルの声が響いた。
「それじゃ、早速だけど、これから実際の攻略作戦会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担もできないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティを組んでみてくれ!」
ゲゲッ!出遅れる!と、思ってアスカは急いで輪の中に戻るが、すでにほとんどのプレイヤーがパーティを組んでしまっている。あぶれてしまい、諦めて帰ろうとしたら、後ろから肩を叩かれた。
「よっ」
キリトだった。
「あぶれたのか?」
「攻略本買いに行ってたら遅れただけだ。キリトだってあぶれたんでしょ?」
「………あぶれた」
「あら素直」
「うるさい。とにかく、もう俺たちしか……」
と、言いかけたところでフードのプレイヤーがやって来た。
「………あんたもあぶれたのか」
キリトが同情したように言った。
「………あぶれてないわよ。周りがお仲間同士みたいだったから遠慮しただけ」
それをあぶれたって言うんだよーと言いたくなる衝動をキリトが抑えてると、アスカが言った。
「それを、あぶれたって言うんだろ」
「違うわよ。あぶれたっていうのは厳密に……」
と、一から十までフードの人が説明しようとしたが、途中で「ん、んー?」と、アスカの顔を見ようとする。顔を見られたくないアスカは帽子で顔を隠した。
「………どうかしたのか?」
そのやり取りを不思議に思ったのか、キリトが口を挟んだ。
「いや、なんでもないわ……」
「なら、パーティ申請するぞ」
「あ、私にもお願い」
てなわけで、パーティを組んだ。アスカは、自分の視界の左側にやや小さい二つ目のHPゲージができた。その下のアルファベットは【Asuna】と書かれていた。
まさか、ね……と、アスカは思いながら、キリトとアスナと一緒に会議を聞きに行った。
○
会議が終わった。キリト達の役割は、取り巻きのコボルト達の削除。「ボスに一回も攻撃できないじゃん」と、プンプン怒ってるアスカを宥めながら、キリトはアスナに言った。
「で、説明ってどこでする?」
説明というのは、スイッチやポットといった用語の説明だ。アスカも一緒に聞く予定だ。
「酒場でいいか?」
「それだと、キリトが最低最悪の二股野郎みたいだよ」
「それは困るな……まだ一層もクリアしてないのに社会的に死ぬのは勘弁だ……。なら、どっかのNPCハウスの部屋……でも、誰か入って来るよな。どむちかの宿屋の個室なら鍵かかるけど、それも無しだよな」
「当たり前だわ」
答えたのはアスナだった。
「……だいたい、この世界の宿屋の個室なんて部屋とも呼べないようなものばっかりじゃない。六畳もない一間にベッドとテーブルがあるだけで、それで一晩五十コルも取るなんて。食事とかはどうでもいいけど、睡眠だけは本物なんだから、もう少し良い部屋で寝たいわ」
「ま、まぁまぁ、その方がゲームの宿屋っぽくていいじゃん」
「嫌よ。そんなゲームオタクみたいな考え方と一緒にしないで」
ピシャリと言い放つアスナ。
「探せばもっといい条件のとこもあるだろ?そりゃ、多少値が張るかもだけど……」
キリトが口を挟んだ。
「探すって言ってもこの街に宿屋なんて三軒しかないじゃない。どこも部屋は似たようなものだったわ」
「………ああ。なるほど。二人とも【INN】の看板が出てる店しかチェックしてないのか」
「だって……INNのマークが宿屋って意味だろ?」
アスカが尋ねた。
「そうだけど、この世界の低層フロアじゃ、最安値でとりあえず寝泊まりできる店って意味なんだよ。コルを払って借りられる部屋は宿屋以外にも結構あるんだ」
カルチャーショックを受けた顔になるアスナとアスカを見て、キリトは意地悪そうにニヤリと笑った。
「俺がこの町で借りてるのは、農家の二階で一晩八十コルだけど、二部屋あってミルク飲み放題のおまけ付き、ベッドもでかいし眺めもいいし、そのうえ風呂までついて……」
と、言いかけた所でアスナとアスカはキリトの襟を掴んだ。
「「なんですって……?」」
○
結果、アスカの「初めて会った時に、私のオッパイ触ったことをアルゴにチクられたくなかったらお風呂貸して」と、脅迫にも似た交渉によって、風呂を借りることになった。
で、アスカとアスナはジャンケンの末、アスナが先に風呂に入ることになった。で、アスカはベッドの上でゴロゴロしている。
「あーあ、私も早くお風呂入りたーい」
「まぁ、その、なんだ。少し待てよ」
「分かってないなキリトは。女の子の風呂はすごい長いんだからな」
「………そういえばさ、アスカって……いや別に悪口言うつもりじゃないんだけど、どうして男っぽい外見……というか髪型してるんだ?」
キリトに聞かれて、パタパタさせてた足を止めた。
「言いにくいことなら言わなくてもいいんだけど……気になってさ。男っぽくなければ、その……初めて会った時、触ることもなかったなぁって思って」
初めてあったとき、まるで気の合う男友達のようだったが、ある時「お前大胸筋すごいよな」と、キリトがアスカの胸を触ったのをきっかけに、女だとわかった。
「………別に、言いにくいことじゃないんだけど……まぁいいか。私、お姉ちゃんいるんだよね……。そのお姉ちゃんが私とすっごくそっくりで、しかも優秀で、私は姉の出来損ないみたいに周りから言われててな。少しでも違いを出そうと思って、長かった髪をバッサリ切ったんだ。そうすれば、比べられることもなくなるかなーって」
「ふーん……」
「でも、そんなことはなかった。結局、比べられることに変わりなかった。心なしか、お姉ちゃんも私を軽蔑してるように見えてね。それから逃げるようにSAOを始めたんだけど……って、なんで愚痴ってるんだろ。なんでも無い、忘れて」
「え?お、おう……」
たははっと、苦笑いで頭を掻くアスカに、キリトは生返事で返してしまった。何か、声をかけてやるべきなのか、キリトが考えてるうちに、アスナが上がってきてしまった。
「交代、いいわよ」
「んっ」
アスナに言われて、アスカは風呂場に向かった。すれ違った時、アスナはアスカの顔を見ようと振り返った。だが、アスカはバスルームに入ってしまった。
「? どうかしたか?」
「い、いえ……なんでもないわ」
気のせいだろうと思いつつ、アスナはキリトの座ってるベッドの隣に腰をかけた。