二人は目を覚ました。
「生き、てたな……」
「そだね。なんとか……」
二人はそのままぼんやりした。が、すぐにキリトがアスカに言った。
「何やってんだよお前!一緒にこんなところまで落ちてきやがって!」
「キリトが心配だったんだから仕方ないじゃん!」
「お前に心配されるほど弱くないよ俺は!俺こそお前が飛び込んできた時に『何やってんのこいつ?』みたいにスゲェビビったぞ!」
「それビビってないじゃん!」
そのまま睨み合う二人。だが、お互いにため息をついた。
「………よそうか」
「そだね。今は脱出方法を考えよう」
で、二人は上を見上げた。穴がハナクソに見えるくらい小さく見える。
「随分深くまで落ちたんだな」
「そうだね。とりあえず、壁でも走ってみようか」
「そうだな」
この提案と、それを同意してしまう辺り、この二人はアホなのだ。で、二人で向かい合うように壁にぴったり張り付くと、反対側の壁に向かって走り出した。で、シュタタタタッと勢いよく壁を走った。二人ともほとんど同じくらいの速さで登る。
だが、当然登りきれるわけないわけで、落ちた。
「「ああああああっっ‼︎」」
ボスッボスッと落ちた。人型の穴が雪上に二つ。そこからキリトとアスカが出てきた。
「私の方が上までいけたね」
「いーや俺の方が上だった!」
「ラウンド2?」
「上等!」
そのまま二人で夜までバカやった。
○
「ハァ、ハァ……今日はこの辺りで、勘弁してやる……」
「こ、こっちの台詞だよ……」
喧嘩した後のヤンキー同士のように二人は大の字に寝そべっていた。
「そろそろ寝るか」
「そーだね」
「寝袋あるか?」
「もちろ……あっ、いやない」
「じゃあ貸すよ。ほら」
「あ、ありがと……」
自分で嘘吐いておきながら照れるアスカだった。で、寝袋の中に篭る。
「なんか、変な感じだね」
アスカが唐突に言った。
「何が?」
「男女二人で寝泊まりが雪の穴の中なんて」
「うーん……でも、アスカと一緒にいてもあんまり男女って感じしないんだよなぁ……」
「どういう意味?遠回しに殺してくださいって言ってる?」
「い、いやいやそういうんじゃなくて!なんていうのかな……あまり話してても緊張しないっていうか……まだ会って二年くらいなのに、幼馴染っつーか……遠慮がいらないっていうか……」
「……あー」
女扱いされてないのは分かったが、なんとなく悪い気はしなかった。なんとなくだけど。
「そういうのって、俺は貴重だと思うんだ」
キリトに言われて、少し嬉しくなるアスカ。
「まぁ、分かるけど……。あっ、じゃあお姉ちゃんのことはどう思ってる?」
「お姉ちゃん?アスナか。なんでアスナ?」
「何となく」
「アスナ、かぁ……。アスナは……アレだ。鬼嫁になりそう」
「そうじゃなくて。そんな大喜利みたいな答えじゃなくて」
「なんだよ」
「なんていうか……恋愛対象として」
「ぶふっ!な、なんだよ急に!」
「いいじゃん。なんか修学旅行の夜みたいで」
「それは同性どうして話すことだ!ましてやその話題の人物の妹に話せるか!」
「私は男友達なんでしょ?」
「うぐっ……!」
アスカにニッコリ微笑まれて、キリトは言葉が詰まる。そして、諦めたようにため息をつくと、言った。
「ぶっちゃけ、外見はドストライクだよ」
自分で聞いたくせに、ズキンと胸が痛くなるアスカ。
「そ、そうなの?」
「え?うん」
「そ、そっか……」
そして、なんとか作り笑顔を取り繕って、アスカは言った。
「お幸せにね」
「はぁ?なんだそりゃ」
「じゃ、おやすみ」
「? お、おう?」
アスカはそのまま一言も話さずに寝た。