キリトが目を覚ますと、アスカが何かを掘っていた。
「おはよう。アスカ」
「おはよ」
「何やってるんだ?」
「ちょっと、ね……」
言いながらアスカが掘り出したのは金属だった。アイテム名、クリスタライト・インゴット。
「これ、ひょっとして……」
「ああ。私たちが取りに来た奴、だと思うよ」
「でも、なんでこんなとこに……あっ」
「? どうしたの?」
「いや、ドラゴンは水晶を齧り、腹の中で精製するんだったな?」
「リズの話だとそのはずだけど?」
「つまり、そのインゴットはドラゴンのウ○コだ」
「う……うっ⁉︎」
その瞬間、アスカはキリトの顔面にインゴットを投げ付けた。
「いだ!何すんだよ!」
キリトはインゴットを回収しながら怒鳴った。が、アスカも怒鳴り返す。
「女子中学生が排泄物を掘り出しちゃったじゃないか!」
「知らねーよ!……とにかく、これで目標達成というわけだ。後は……」
「脱出できれば、ねぇ……ん?」
「今度はなんだ?」
「いや、その……ここに排泄物があるってことは、ドラゴンの巣ってことだろ?つまりさ……」
「…………あっ」
その瞬間、二人に影が掛かる。上を見ると、ドラゴンが降りてきていた。
「「来たあああああああッッ‼︎‼︎‼︎」」
間抜けに声を揃える二人。だが、アスカの目つきはすぐに変わった。
「キリト!手、出して!」
「へっ?」
「早く!」
アスカはそう言うと無理矢理キリトの手を握る。そして、ドラゴンの尻尾にワイヤーを巻き付けた。
「いっくぞぉーっ!」
「………そういうことか!」
キリトはアスカに抱き付いた。それにアスカが心底幸せを感じてると、ドラゴンが飛び立った。そのまま思いっきりドラゴンは酢を出る。
「「うっほおおおおおおおおおッッ‼︎‼︎」」
そこらのジェットコースターより遥かに速い速度で上空に舞い上がり、二人は間抜けな悲鳴をあげた。巣から出たのを確認したアスカは、ワイヤーから手を離した。
そして、二人はボスっと地面に落下する。お互いに顔を見合わせ、なんとなく可笑しくなり、笑い合った。
○
リズベット武具店。二人は店に入った。
「ただいまー」
「! 無事だったのね⁉︎」
リズがアスカに飛び付いた。
「よかったー!アスカー……」
「心配し過ぎだよ。私を誰だと思ってるの?」
「間抜けでチキンでビビリでヘタレな妹」
「殺してぇ……」
なんで、やりながらキリトとアスカはインゴットをリズに渡した。
「えーっと、片手剣でいいのね?」
「おう。よろしく頼む」
キリトに言われ、リズは始めた。カーン、カーン、カーン……と、金属を叩くと、インゴットが光を放ち、変形した。
「おお……」
出てきたのはキリトの注文通りの片手剣。それをリズは持ち上げた。
「えーと、名前はダークリパルサー。どうぞ、試してみて」
キリトは頷くと、剣を振り始める。
「……重いな。いい剣だ」
「ほんと⁉︎」
キリトがニコリと微笑むと、嬉しそうにリズも微笑んだ。で、今度はアスカを見た。
「アスカも片手剣?確か、ワイヤーと一緒に打てばいいのね?」
「うん。お願い」
その言葉に「?」が浮かぶキリトだが、リズもアスカも説明しようとしない。で、またカーン、カーン、カーン……と音が響き、インゴットとワイヤーが変形した。そして、出てきたのは今までに見たことのない剣だった。先端はクワガタの大顎のように二つの刃が付いていて、グリップの部分はない。代わりに、腕に装着するようになっていた。
「………なんだこりゃ?」
キリトが声を上げた。
「名前は、ワイヤークロー。使い方は……アスカ、腕出して」
言われて、腕を差し出した。そして、リズはそれを装着させる。
「アスカ、腕を突き出してみて」
「こうっ?」
突き出すと、クローの部分が飛び出した。ワイヤーで繋がれている。それが武具店の壁を突き抜け、店の外まで飛び出すと、限界まで達したのか、それが縮み、アスカの手元に戻った。それにはキリトも驚いた。
「おお……」
「スゲェ、なこれ……なんなんだ?」
「エクストラスキルだよ。私の」
キリトにアスカが言った。
「ワイヤーブレードって言うんだけど……」
「なるほどな……SAOで唯一の遠距離、いや中距離攻撃、か……。アスカ」
真剣な顔でキリトはアスカを見た。
「いいか?この武器はあまり使うな」
「へっ?」
「ネットゲーマーは嫉妬深い。お前のことだから出現条件もわかってないんだろ?だから、本当に自分がピンチになったとき以外に使うな。分かったか?」
「………うん、分かったよ」
キリトに言われ、渋々頷いた時だ。バタン!と店の扉が開いた。
「アスカ!」
「お姉ちゃん?」
そのままアスカに飛びついた。
「馬鹿!何処行ってたのよ!」
「えっと、穴……」
「メッセージは繋がらないし、マップ追跡も出来ないし、親衛隊の人たちも知らないっていうし……心配したんだからね!」
「待って、親衛隊って何?」
「だからあなたは愚妹なのよ……!ほんっっっとに馬鹿なんだから……!」
「悪かったよ……ちょっと、ダンジョンでね……」
「何処の?」
「キリトとリズと一緒に55層に……」
すると、アスナがキリトを見た。
「き、キリトくん⁉︎」
「や、アスナ、久しぶり……でもないか。2日ぶり」
「う、うん。……ビックリした。そっか、早速きたんだ。言ってくれれば私も一緒に来たのに……」
アスナは急に顔を赤らめる。その様子を見て、アスカは一歩引き、さらにそのアスカの反応を見て、リズは目をほんの一瞬だけ鋭くさせた。
(………そゆこと、か)
リズはそう判断すると、アスカの手を引っ張った。
「ごめーん二人とも。ちょっとあたしアスカとお話あるからさー。二人はここにいてくれるかな?」
「えっ?」
「いい、けど……」
「じゃ、お願いね」
そのままリズはアスカを店の外に連れ出した。