翌日。デュエルの会場には人がバカみたいに集まっていた。
「……ど、どういうことだこれは……」
その様子を見ながらキリトは呟いた。
「さ、さあ……」
「ねぇお姉ちゃん。あそこでチケット販売してるのって血盟騎士団の人だよね。殺して来ていいかな」
「あの人はダイゼンさんだね。あの人、経理だから」
「キリト」
「ああ」
「逃げよう」
二人はダッシュしたが、それをエギルが首根っこを掴んで捕らえた。
「そうはいかんぞ二人とも」
「「エギル!」」
二人して恨みがましい視線を送る。すると、エギルの腕に役員の腕章がついてるのが見えた。
「お前!」
「裏切ったな!」
「人聞きの悪いこと言うな。バイトだ。お前らの事は有る事無い事言っておいた」
「十分裏切りだろうが!」
的確なツッコミだったが、逃げられなかった。
○
ルールはワンヒット勝負。当たれば負けだ。作戦会議として、キリトとアスカは控え室でお話ししていた。
「で、どうするキリト?」
「俺たちはソロらしく、好き勝手やろう。あまりノリ気はしないけどな。何故か、アスナもやる気満々だったし……」
それに関してはアスカは大体の見当はついていた。どうせキリトをギルドに入れられるのなら向こうとしても都合がいいのだろう。
「はぁ………」
思わずため息をついた。
「ま、やるだけやってみようぜ」
キリトはそう言うと、控え室から出た。
○
コロシアム。中央にはヒースクリフ、アスナとキリト、アスカの四人が立っている。
「すまなかったな二人とも。こんなことになっているとは知らなかった」
「ギャラはもらいますよ」
「いや、君たちは試合後からは我がギルドの団員だ。任務扱いにさせていただこう」
そして、四人とも武器を抜いた。それと共にカウントダウンが始まった。3、2、1……【DUEL】の文字が出た瞬間、四人とも動き出した。
キリトはヒースクリフを狙った。真っ直ぐとダブルサーキュラーで突っ込んだ。それを盾でガードするヒースクリフ。そのキリトの背中をアスカが踏み台にした。空中からワイヤーブレードを持って斬りかかった。が、そのアスカを横からアスナがリニアーで攻撃する。
アスナのレイピアが、ガギンッと音を立てて突き刺さる。が、刺さったのはワイヤーブレードの鞘にだ。鞘を変わり身にしてアスカはアスナの後ろを取ると、空中のアスナにワイヤーブレードを伸ばし、放つ。
それをヒースクリフは剣で弾く。そのヒースクリフにキリトはヴォーパルストライクを放つ。それをアスナがフラッシングペネトレイターで相殺した。
バギィンッ!と鋭い音を立てて、後ろに吹っ飛ぶアスナとキリト。が、その後ろに吹っ飛んだキリトの足をアスカが掴んだ。
「えっ」
「ほわちゃあっ!」
中華な気合いと共にキリトを空中にブン投げた。ちょうど、アスナの真上に来るように。
「ッ!」
アスナは反応が遅れ、レイピアでガードしようとする。キリトは空中から武器破壊をしようと、剣を振り被る。だが、その前にヒースクリフが立ち塞がり、キリトの落下に合わせてソードスキルを放とうとした。だが、目の前にアスカが迫っていた。
「ッ⁉︎」
慌ててソードスキルをキャンセルし、盾を自分の前に出す。キンッ……!と静かな金属音と共にアスカはヒースクリフとアスナの後ろに通り過ぎていた。
そして、アスナのレイピアは砕かれていた。
「っ!」
ヒースクリフへの攻撃は盾によって阻まれた。が、空中からキリトが迫る。
「ッッァアァアアア‼︎」
気合を入れて空中からキリトのシャープネイル。
「ムンッ……!」
それを剣でガードするヒースクリフ。ギギギギッ……と力の押し合いになった。そして、後ろからアスカがワイヤーブレードを飛ばした。完全に死角を突いたはずだった。が、新しい剣を出したアスナがそのワイヤーを断ち切った。
「ああああッ‼︎」
思わず絶望的な声を上げるアスカ。今更、アスナにトドメを刺し忘れた事に気が付いた。アスナは同じ愚は犯さない。レイピアを持って武器なしのアスカに襲い掛かる。
「はあぁぁぁ!」
アスナのものっそい速さの突きやら斬撃やらを何とか見切るアスカ。
「ッ」
「アスカ!」
攻撃を防がれ、空中から盾を蹴って後ろに下がったキリトがアスカの援護に向かおうとしたが、その前にヒースクリフが立ちはだかる。
「私を倒して行きたまえ」
「………今、忙しいんだけど」
アスカを倒されれば、アスナがこっちに来る。その為にも、抜かなければならない。
「………ハァッ!」
キリトがソードスキルを使わずに突っ込んだ。というのも、なんとかヒースクリフを抜いて、アスカの援護に行くためだ。ソードスキルを使って硬直するわけにはいかない。
ダークリパルサーで斬りかかり、それを盾でガードするヒースクリフ。が、盾に当たる瞬間、剣の軌道を変えて背中に戻し、反対側のエリュシデータで反対側から斬った。が、それも盾でガードするヒースクリフ。
キリトはガードされたエリュシデータで、もう一度斬りあげた。が、ヒースクリフは盾を動かすことなくガード。それを読んでたかのように、キリトは盾を踏み台にしてジャンプした。
「っ!」
ヒースクリフが若干、動揺したように見えた。キリトは大きく飛び上がり、ヒースクリフを飛び越して、着地してすぐにアスカの方に走ろうとした。が、背中に気配を感じた。振り返ると、ものすごい勢いでヴォーパルストライクが迫って来ていた。
慌てて両手の剣でガードした。ギチッ……と、剣と剣を押し付けあう。
「意外と速いのなあんた……!」
「言ったはずだ。私を倒して行けと」
○
アスカとアスナは相変わらず一方的だった。防戦一方。だが、アスカの顔に焦りはない。落ち着いてアスナの猛攻を全て回避していた。
そして、横目でキリトとヒースクリフの位置を確認。が、だいぶ遠い。これではキリトの援護は望めない。
(行けるか……⁉︎いや、やるしかない……!)
実質、この戦いはアスカとアスナにとってはキリトの所有権を握る戦いだ。負けるわけにはいかなかった。
「ハァッ!」
気合いとともにアスナが突きを放った。それをしゃがんで躱す。が、アスナは二連突きを放っていた。しゃがんだ先にもう一撃飛んでくる。
それをアスカは読み切っていた。後ろに後転して距離を取る。逃さずにまっすぐ追撃するアスナ。真っ直ぐとえーるスティンガーを放ったが、アスカは高跳びのように突きを躱し、空中でアイテムストレージを開くと、レイピアを取り出した。
「っ……⁉︎」
そして、アスナの後ろに着地し、リニアーを放った。
「クッ……‼︎」
アスナは避けようとした。が、アスカのリニアーの速さは尋常ではない。というか、見えない。音もなくアスナの肩を貫通した。
その瞬間、『ウオオオオオオッッ‼︎‼︎』歓声が上がった。
「流石俺たちの嫁!」
「鬼嫁とは大違いだ!」
「可愛い!」
「結婚したい!」
などと勝手な声が上がるたびに、エギルとクラインとシリカが割と本気でキレていた。
アスナが膝を着く。アスカは、アスナに声をかけるべきか迷ったが、まだ戦闘は続いている。アスカはキリトの援護に向かおうとした。が、
「らあああああ‼︎」
キリトのスターバースト・ストリームがヒースクリフを追い詰めていた。ヒースクリフはなんとか十字盾を掲げてガードするが、じわじわと遅れていく。キリトもアスカも抜けると確信していた。
「ぬおっ……‼︎」
「うぉあああああッッ‼︎‼︎」
そして、最後の一撃を決めようとした時、
「……っ⁉︎」
世界がブレた。何十分の一秒、世界が停止したように見えた。
「な……っ!」
当然、最後の一撃をヒースクリフは防ぎ、弾き返し、キリトに一撃入れた。思わずキリトは後ろに倒れた。ヒースクリフは、一瞬キリトを見下ろした後、アスカを見た。まだ戦いは終わっていない。
アスカはヒースクリフに向かって斬りかかった。