鳥籠。そこでアスカはオベイロンと話していた。
「それで、ティターニアのMSで一番のお気に入りはなんだい?」
「ねぇ、前から思ってたんだけど、そのティターニアって何?」
「君のこの世界での名前だよ」
「センスの欠片もないね」
「ええっ⁉︎」
「もっと、こう……可愛い名前がいいんだけど」
「そんなこと言われても……」
「ほら、例えばリオレイアとか?」
「鬼嫁じゃないか。でも君がそれを望むならそうしよう。でもそうなると僕はリオレウスになるねぇ」
その言葉を聞いた瞬間、アスカの顔はほんの一瞬、複雑な表情になった。
(リオレウスは、キリトがいいな……)
そう思ったが、今ここでそれを言うわけにはいかない。
(助けに、来てよ……。キリト、お姉ちゃん……)
オベイロンの話に適当に相槌で返しながら、アスカはそんなことを願った。
「所で須郷さん」
「オベイロンと呼んでくれないかな?」
「じゃあ、中とってティガレックスで」
「なんの中を取ったの⁉︎」
「私以外にまだ、SAOから帰ってない人っているの?」
「………何故、そんな事を?」
「いや、気になったからさ。せっかく、いや自惚れるつもりはないけど、みんなを解放してあげたのに、私以外にも開放されてない人がいるのは可哀想だなーって。何が原因なんだろうね?」
余りにもオベイロンの機嫌が良さそうなので、聞けばバラすんじゃね?と思って聞いてみた。だが、
「なぁに、簡単さ。犯人は僕だよ!」
気持ちの良いくらい簡単に引っかかった。
「へ?そうなの?」
「ただし、勘違いしちゃいけないよ。僕は何も彼らを悪用したくてそんな事をしてるわけじゃない。みんなが幸せになれるように思考、感情、記憶などを制御してあげようと思っているんだよ。そうすれば、誰もが分かり合える世界になるだろう?」
何その似非人類補完計画!と思ったが言わなかった。
「へぇー!それは凄いね!じゃあ、須郷さんのこと応援するね!」
「そうだろう、そうだろう!ハーッハッハッハッ!」
調子に乗らせておきながらアスカは、絶対に止めないと、と決心した。すると、オベイロンは急に黙り、左手を振ってウインドウを出し、言った。
「今行く。指示を待て」
真面目な声で言うと、アスカに言った。
「ごめんね、部下がヘマをやらかしたみたいで。締め上げて来るから少し待っててね」
そう言うと、オベイロンは出て行った。その時の扉をパスワードを、アスカは鏡越しに暗記した。
○
翌日、リーファは待ち合わせ場所に向かった。すでに、キリトとアスナとユイは集合している。リーファが来る前に、アスナとキリトは買い物を済ませてあるようで、装備が変わっていた。キリトはどデカイ巨大な剣で、アスナはレイピアだった。
「お待たせ。じゃあ行こっか」
「おう」
「うん」
三人は塔に向かった。で、一番てっぺんに到着し、飛び立とうとした時、
「リーファ!」
声をかけられた。振り返ると、シグルドが立っていた。
「こんにちは、シグルド」
「パーティから抜ける気なのか、リーファ」
「うん……まあね。貯金もだいぶできたし、しばらくのんびりしようと思って」
「勝手だな。残りのメンバーが迷惑するとは思わないのか」
「ちょっ……勝手……⁉︎」
その言い草に、リーファはカチンと来た。
「お前は俺のパーティーの一員として既に名が通っている。そのお前が理由もなく抜けて他のパーティに入ったりすれば、こちらの顔に泥を塗られることになる」
リーファはそれを聞いて、思わず唖然とした。なんでこうなるのかなぁ……と悩んでると、キリトが言った。
「仲間はアイテムじゃないぜ」
「……なんだと?」
シグルドが聞き返す。
「他のプレイヤーを、あんたの大事な剣や鎧みたいにロックしておくことはできないと言ったのさ」
「き、貴様!スプリガン風情がつけあがるな!リーファ、お前もこんな奴の相手をしてるんじゃない!どうせ領地を追放されたレネゲイドだろうが!」
「失礼なこと言わないで!キリトくんはあたしの新しいパートナーよ!」
「なん……だと……。リーファ、領地を捨てる気なのか……?」
「え、ええ。そうよ。あたしはここを出るわ」
シグルドの額に青筋が立つ。すると、アスナがパンパンと手を叩いた。
「はいはい、落ち着いて。ねぇ、シグルドさん。リーファは一時的な脱退ってことじゃダメなの?」
「一時的?どういう意味だ」
「実は、私達の方から無理言ってそちらのリーファさんに協力してもらうことになったんです。私達の用事が終われば、絶対にお返ししますので、どうかここは目を瞑っていただけないでしょうか?」
「ぐっ………」
ここまで下手に出られてしまえば、「いいえ」とは言いづらい。何より、周りの目がある。
「わ、分かった……。そういうことなら、認めよう」
「ありがとうございます」
「それよりきみ」
「はい?」
「連絡先交換しない?」
「しません」
旅立った。
○
鳥籠の中。アスカはただ、ベッドの上で寝転んでいた。
「須郷……じゃない、ティガレックスさーん、暇ー」
「仕方ないねぇ、今度は何?」
「ガンプラー。PGのユニコーンガンダム。ちゃんとニッパーとやすりとカッターもねー。あと電気も。あれ光るんだから」
「はいはい、大人しくしてるんだよ」
そのままオベイロンは部屋を出た。アスカは最近、暇になったので漫画や雑誌、ガンプラなどをゲーム世界に作らせて持って来させている。勿論、狙いは別にあった。
「………よし、これで、行けるよね」
アスカは薄く笑った。