街の中。
「そういえば、何か連絡入ってたんじゃないの?」
キリトがリーファに聞いた。
「ああ、そうだった。ちょっと確認してくるね。アスナさん、お兄ちゃんがあたしの体に悪戯しないように見張っててね」
「はーい」
「しないよ何も!」
で、リーファはログアウトした。
「……ね、キリトくん」
「ん?」
「どう思ってる?アスカの事」
「はぁ?いきなり何」
「いいじゃん。恋バナ」
「異性とすんのかよ」
「それで、どうなの?」
「どうと言われても……アスカだよ」
「いやそうじゃなくて。じゃあ、ぶっちゃけ聞くけど、アスカの事好き?」
「ぶっふぉ!」
吹き出した。
「ほ、ほんとに何!いきなり!」
「真剣に聞いてるんだけど」
むしろ真剣で斬られるかと思うレベルでアスナの声は冷たかった。
「別に、アスカは友達だよ」
「その友達のために、わざわざ交通費だって馬鹿にならないのに三日に一回はお見舞いに来てたんだ?」
「あー……そう言われるとそうだな。なんていうか、あいつと一緒にバカやってないとつまらないし、あいつと一緒にいると楽しいし、てか、気が付けばあいつと一緒にいるし、俺の知り合いの女の子の中じゃ、一番遠慮なく何でも言い合えるし、友達だよ」
「うーわ……」
アスナは全力で呆れたようなを声を出した。
「えっ、何」
「こいつ自分の気持ちに気付いてねーよ」
「な、なんかキャラ違くね?」
「やってらんねーよチクショウ」
「アスナ?熱でもあんの?」
「まぁ冗談は置いといて。キリトくん、それってアスカのこと……」
と、そこまで言いかけた所でリーファが覚醒した。
「ごめん二人とも!案内はここまで!」
「「うひっ!」」
「………何変な声出してるの?」
「「な、なんでもない……」」
「それより、急用ができた。多分、ここにも帰ってこれないかもしれない」
「じゃ、移動しながら話聞くね?」
アスナが言った。
「え……?」
「どっちにしても、ここからは足を使って出ないといけないんだろ?」
キリトに言われて、二、三回瞬きした後、リーファは頷いた。
「………わかった。じゃあ、走りながら話すね」
で、だいたいのことを話した。要約すると、アスナに振られて自暴自棄になったシグルドがシルフをサラマンダーに売っちゃったゾ☆という話だった。
「……なるほどな」
「……きんもちわるい」
アスナはそうぼやいてからリーファに聞いた。
「いくつか聞いていい?」
「どうぞ」
「シルフとケットシーを襲うことのサラマンダーのメリットは?」
「まず、同盟を邪魔できるよね。シルフ側から漏れな情報で領主を討たれたら、ケットシー側は黙ってないでしょう。ヘタしたらシルフとケットシーで戦争になるかもしれないし。サラマンダーは今最大勢力だけど、シルフとケットシーが連合すれば、多分パワーバランスが逆転するだろうから、それはなんとしても阻止したいんだと思うよ」
「……そゆこと」
「だからね、これはシルフ族の問題だから、これ以上二人が付き合ってくれる理由はないよ。この洞窟を出れば、アルンまではもうすぐだし、多分会談場に行ったら生きて帰れないから、またスイルベーンから出直しで、何時間も無駄になるだろうしね。……ううん、もっと言えば、世界樹の上に行きたい、っていう目的のためにはサラマンダーに協力するのが最善かもしれない。サラマンダーが作戦に成功すれば、充分以上の資金を得て、万全の体制で世界樹攻略に挑むと思う。だから、今ここであたしを斬っても、文句は言わないわ」
言いながら、リーファはうつむいた。そのリーファのおデコをキリトはデコピンした。
「バカだなスグは」
「お兄ちゃん……?」
「そうだよ。リーファちゃん。私達は、そんな事で友達を斬ったりしないよ」
「さて、少し急がないとな」
「そうだね」
キリトが言うと、アスナも頷く。
「ユイ、走るからナビよろしく」
「りょーかいです!」
で、キリトはリーファの手を握った。
「行くぞ」
その瞬間、キリトは走り出した。猛烈な速度で。
「わあああ⁉︎」
当然、目の前をモンスターが出るが、キリトは御構い無しで躱す。
「お、お兄ちゃん……よりも……」
チラッとリーファは後ろを見た。そこには、笑顔で付いて来るアスナがいた。
(この人タチほんと怖い……)
リーファは軽く引いていた。で、あっという間に出口に到着した。そして、そのまま洞窟を抜けて崖を跳んでついでに飛んだ。
「寿命が縮んだわよ!」
「時間短縮になったじゃないか」
「急ぐよ二人とも」
そのまま三人は飛んだ。
○
会談場。そこでは、シルフとケットシーの真上にサラマンダーが浮いていた。
「なぜここにサラマンダーが……?」
シルフの領主、サクヤがつぶやきた。その時だ。ズガァァンッッ‼︎と何かが地面に突撃した。そこから出てきたのは一人のスプリガンだった。
「双方、剣を引け!」
そうスプリガンのキリトは言い放った。その後にリーファとアスナが来る。
「サクヤ」
「リーファ⁉︎どうしてここに……⁉︎い、いや、そもそもこれは一体……」
「簡単には説明できないのよ。ひとつ言えるのは、あたしたちの運命はあの人とこのアスナさん次第ってことだわ」
「何が何やら……」
アスナがキリトの横に飛んだ。
「指揮官に話があります」
静かに言うと、サラマンダーの奥から一人の男が姿を現した。ヤケにゴッツイ。
「スプリガンとウンディーネがこんなところで何をしている。どちらにせよ殺すには変わりないが、その度胸に免じて話だけは聞いてやろう」
「俺の名はキリト。スプリガン=ウンディーネ同盟の大使だ」
「うえっ?お、同じくウンディーネ大使のアスナよ?」
「この場を襲うからには、我々四種族との全面戦争を望むと解釈していいんだな?」
うわぁ、とリーファは絶句した。
「ウンディーネとスプリガンが同盟だと?護衛の一人もいない貴様らがその大使だと言うのか」
「ああ、そうだ。この場にはシルフ・ケットシーとの貿易交渉に来ただけだからな。だが会談が襲われたとなればそれだけじゃ済まないぞ。四種族で同盟を結んでサラマンダーに抵抗することになるだろう」
「………隣のウンディーネの汗が凄いが?」
「暑がりなんだよ」
「顔が青いが?」
「アバターなんだよ」
その瞬間、アスナがキリトをブン殴った。
「………ほんとに大使か?」
「え、ええ。大使よ。聖徳じゃない方の。あとアバターでもない」
「たった二人、大した装備も持たない貴様らの言葉を、にわかに信じるわけにはいかないな」
「なら、どうする気?」
「何、俺の事を貴様ら二人が俺を倒す事が出来れば認めてやろう」
「随分と気前がいいね」
キリトが殴られた頬を抑えながら上がってきた。そして、三人はシキンッと、音を立てて剣を抜いた。