世界樹へと全員は突入した。
「アスカ、私の背中に」
アスナに言われてアスカはおんぶしてもらった。
「………えへへっ」
「ちょっと、何ニヤニヤしてんの?」
「いや、お姉ちゃんにおんぶしてもらったのって初めてだから」
「っ! ば、バカなこと言ってないで行くわよ!」
全員、上を見た。円形状の出口が見える。
「全員、突撃!」
シリカが剣を天井に向け、全員突撃した。その瞬間、壁から出てくるガーディアン。だが、「えっ」という表情になる。多勢に無勢過ぎた。
『うおおおおおおおおおおおッッッ‼︎‼︎‼︎』
全員が全員、ガーディアンと相対する。
「おらぁッ!」
クラインが威勢良く刀を振るう。
「ふんっ!」
エギルが斧で敵をまとめて斬り裂く。
「ピナ!」
シリカがピナと一緒に攻撃する。
「はぁっ!」
リーファが敵を倒す。
「ぅぁああッ!」
キリトが大剣を振る。全員が全員、奮闘していた。そして、アスカを背負ったアスナが天井に到達した。
「よしっ……!」
だが、扉は開かない。
「っ⁉︎ な、なんで……!アスカ、どういうこと⁉︎」
「分かんないよ!」
「どうした、アスナ!」
キリトが近づいて来た。
「開かないのよこれ!」
「なんだと……!ユイ!」
呼ばれてユイはキリトのポケットから出て扉に触れた。
「この扉は、クエストフラグによってロックされているものではありません!単なるシステム管理者権限によるものです!」
「ど、どういうことだ⁉︎」
「つまり、この扉は、プレイヤーには絶対開けられないということです!」
「なっ……⁉︎」
キリトもアスカも絶句した。オベイロンの、絶対クリアできない、というのが、まさか言葉通りだとは思わなかった。
「ここまで来て……!」
アスナが悔しそうに唸った。その時だ。
『ならば私も、防衛隊総隊長としての義務を果たそう』
聞き覚えのある声がした。懐かしい声だ。そして、その声と共に扉が開いた。
「………開いた」
「あれ?オカシイですね……」
「いいから!行くわよ!」
そのまま568人とキリト、アスナ、アスカ、リーファが突入した。
「ここからは、全員手分けして探します。各部隊ごとに行動せよ」
シリカの命令で、全員はバラバラの方向に動いた。
「俺たちも行こう」
「私が案内する」
キリト、アスナ、リーファ、ユイはアスカの先導で動き出した。その途中、《実験台格納室》という部屋があった。アスカの読み通り、セキュリティが掛けられている。
「こんな部屋が……!」
「須郷……!」
アスナもキリトも歯を食い縛る。その時だ。
「やぁやぁ、君はほんとにじゃじゃ馬娘だね、リオレイア……いや、アスカ」
「ティガレッ……須郷!」
「チッチッ、この世界でその名前はやめてくれるかなあ。妖精王、オベイロン陛下と、そう呼べ」
須郷はニヤニヤと笑いを浮かべている。キリトとアスナ、リーファが剣を抜いた。
「おっと、やめておきたまえ。僕はこのゲームのゲームマスター、要は神だ。そんな僕に君達ただのプレイヤーが刃向かった所で、こうなるだけだよ」
言いながらオベイロンは指をパチンッと鳴らそうとした。だが、
「ほあちゃあっ!」
後ろからオベイロンにとび蹴りが炸裂した。シリカの蹴りだ。
「っ⁉︎」
そして、シリカの後ろには568人のプレイヤーがいる。
「き、貴様ら……何者だ⁉︎」
「アスカ公式ファンクラブ全38団体」
「ふ、ふぁんくらぶ……?」
目をパチパチさせる須郷の両腕を、何人かが押さえつけた。
「なっ……⁉︎離せ!僕はゲームマスター……この世界の神だぞ!」
「残念ながら我らの神は貴様などではない」
シリカは冷酷に言い放った。
「我らの神は、アスカ様ただ一人だ」
ぶっちゃけ、こっちもこっちで狂っていた。全員でオベイロンを袋叩きにする。
(とうとう神にまでされちゃったよ私………)
その様子を見ながらアスカはそんな事を思った。とりあえず、ペインアブソーバを切り、シリカがオベイロンにキャメルクラッチをキめている間に、他の奴らで剣を一本ずつオベイロンに刺した後、気絶したオベイロンを担いで《実験台格納室》に運び、ユイによってオベイロンのIDでロックを解除、囚われていたプレイヤー達を解放させた。
で、ファンクラブはとりあえず解散し、今残ってるのはキリト、アスナ、アスカ、リーファの四人だ。
「お姉ちゃん、リーファさん、キリト、助けてくれて、ほんとにありがと」
「何言ってんのよ。妹を助けるのは当たり前でしょ?」
アスナが言うも、アスカは首を横に振った。
「ううん、だって……辛かったから。もう少しで、廃人になるところだった……」
何をされたか、思い出すだけでアスカは叫びだしそうになる。
「大丈夫、これからは……こんなこと、ないようにするから。私が、守ってあげる」
「お姉ちゃん……」
二人はそのまま抱き締め合った。そのアスナにキリトが言った。
「さて、悪いんだけどアスナ、スグと一緒に先に帰っててくれるか?」
「へっ?な、なんで?」
「うん。お姉ちゃん、ごめんけど、先に帰ってて」
「え、い、いいけど……」
「じゃあ、またね」
そのままアスナとリーファはログアウトした。すると、アスカが言った。
「いるんだろ?ヒースクリフ」
『ああ、久しぶりだな。アスカくん、キリトくん』
声だけが聞こえた。
「生きてたのか?」
キリトが聞いた。
『そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。私は、茅場晶彦という意識のエコー、残像だ』
「相変わらず分かりにくいことを言う人だな」
『すまないな。今回のことは私の責任でもある』
「別にいいさ。その分、助けてくれたじゃないか。礼を言わせてもらうよ」
『礼は不要だよ。君たちと私は無償の善意などが通用する仲ではなかろう』
言うと、卵型の結晶が出てきた。
「これは?」
『それは、世界の種子だ』
「何?」
『芽吹けば、どういうものかわかる。その後の判断は君たちに託そう。消去し、忘れるもよし……しかし、君たちにあの世界に憎しみ以外の感情を残しているのなら……』
そこで声は途切れた。短い沈黙が続いたが、すぐに素っ気ない挨拶だけが聞こえた。
『……では、私は行くよ。いつかまた会おう』
すると、気配は消え去った。
「さて、じゃあ帰るか。会いに行くよ。すぐに」
「うん。待ってる。でも、気をつけてよ」
「何が?」
「私がオベイロンなら、まず間違いなくキリトを殺すから」
「………なるほど。分かった。じゃあ、またな」
「うん。またね」
アスカはログアウトし、キリトもログアウトした。