アスカは立ち上がった。死銃を次こそ仕留める為に。そして、残りの人数を確認。
「さて、残りは死銃に闇風に……私とシノンさんだけか。というか、随分減ったな今の時間だけで」
「待って」
行こうとしたアスカにシノンが言った。
「私も行く」
「いや、いいです」
「即答⁉︎」
「うん。何にせよ、死銃は私が仕留めないとダメなんですよ」
そう言うアスカの目は鋭かった。本当に殺意でも放っているかのような。
「それに、闇風も守らなきゃいけないのに、シノンさんのことも一緒に守り切れる自信はないからさ」
闇風も死銃に撃たせるわけにはいかなかった。この試合に出ている以上、プレイヤーは全員、常に金○マを鷲掴みにされてる状態に等しいからだ。拳銃で狙われて引き金を引けば、確実にお陀仏である。
「……なら、闇風は私が相手をする」
「へっ?」
「だから、あなたは絶対に死銃を仕留めなさいよね。全部終わったら、私と勝負だから」
「………わかった」
「次のサテライトスキャンまで待ちましょう。動くのはそこからよ」
「………サテライトスキャンって何?」
「あんた今までどうやって生き残ってたのよ」
○
朝田詩乃の部屋の前。そこで、初期型の電子錠を弄くる少年の姿があった。新川恭二、という少年だ。そいつは慣れた手つきでそのドアのロックを解除しようとする。その時だ。
「何やってんだ。あんた」
声が掛かった。慌ててそっちを見ると、黒い服の少年と、趣味の悪いバンダナのオッさんがいた。声をかけてきたのは黒い服の少年のようだ。
「何って、家に入ろうとしてたんだよ」
「それ、ブラックマーケットとかで高額取引されてた解錠装置だよな。そんなもので家に入ろうとしてたのか」
「……家のキーを忘れちゃって……」
「そんなものを持ってる時点でアウトだ。お前のそのポケットには注射器が潜んでるはずだ」
「ッ」
「観念しろ。もう終わりだ、死銃」
「ッ! う、うああ!」
恭二は二人に注射器を出して襲い掛かったが、予め用意されていたのか、竹刀で叩かれてあっさり捕まった。
「フゥ……終わったな、キリトよう。これなら俺ぁ、いらなかったんじゃねェか?」
「いや、もしもってことがあるだろ。警察に突き出そう」
和人はそう言うと、ふと詩乃の部屋を見た。
「……あとは任せたぜ。アスカ」
○
サテライトスキャンによって、全員の位置が割れた。といっても残りは四人だけだが。闇風は森林、死銃は都市廃墟にいた。
「……じゃ、行ってくるね。シノンさん」
「ええ。気を付けてね」
アスカは笑顔で言うと、都市廃墟に向かって歩き出した。シノンはシノンで、闇風と戦うために準備を始める。闇風のランガンはかなり速い。だが、それでも仕留めなければならない。少しでもアスカの負担を減らすために。
今、アスカがいるのは田園で、闇風は森林、目と鼻の先だ。サテライトスキャンでこっちの位置はバレているだろうし、モタモタしている暇はない。今いる小屋を狙撃ポイントにするしかなさそうだ。
「…………」
スコープから覗き込み、闇風が来るのをジッと待った。数分経った頃だろうか、闇風の姿が見えた。が、自分の予想してたより遥かに速い。田園にある田んぼやら岩やらを木やらを利用しつつも、速度が一切落ちない。
それでも、シノンは仕留めるしかなかった。闇風が自分から一番遠い小屋の中を覗き込む。そこから出てきたところを狙撃するしかない。
へカートから覗き込み、闇風が出て来るのを待った。そして、警戒はしていたであろう闇風が小屋から顔を出した直後、いやもしかしたら出て来る前だったかもしれない。完璧なタイミングと共にへカートから銃弾が射出され、闇風を仕留めた。
○
都市廃墟。アスカは臆する様子もなく、堂々と街の真ん中を歩いた。そして、正面には死銃が金属剣を握って待っていた。
それを視認した直後、ニタッと口を歪ませるアスカ。死銃も、もしかしたら仮面の下で微笑んだのかもしれない。二人の間にもはや言葉は不要だった。
直後、アスカが正面から斬りかかった。それをガードする死銃。ギギギギッと光剣と金属剣が押し合いになる中、死銃が声を発した。
「随分と、遅かったな。アスカ、女神」
「女神とか言うなっての。それより何、待ってたの?律儀に?」
「お前ら、だけは、正面から、叩き潰さないと、気が済まない、からな」
「そいつは嬉しい。愛が重いね。ヤンデレかよ」
「そう、だな。非公式だが、俺たちは、お前のファンクラブでも、あったからな」
「へぇー、そう。そりゃ一生公式とは認められない、な!」
言いながら、光剣を振り抜くアスカ。死銃は大きく後ろに下がった。
追撃するアスカ。あとを追うように突きを放ち、死銃は横に首を捻って躱す。さらに光剣を横、縦、突き、もう一回縦と斬り込むが、死銃はガードなりいなすなりした後、横に緊急回避した。そこに上から斬りかかるが、今度は横に躱され、距離を取られる。
「ふ、ふふ、随分と、焦ってるように、見えるな。アスカ」
「はぁ?全然焦ってなんかないですけど?風林火山の山並みに落ち着いてますが?」
「ほう、そうか。さっきの、ヴォーパル・ストライクなど、欠伸が出そうに、なったがな」
「出せばいいじゃん。その隙に懐に飛び込んで叩き斬るけど」
「……お前は、まだ、気付かないのか?」
「………はぁ?」
「お前の、剣速は、あの頃に比べ、大分落ちてる。もう、俺はお前より、強い」
「さっきから避けてるだけのくせに何言ってんの?」
「そう思うなら、それでいい。今から、俺の本当の、実力を、見せてやる」
言うと、死銃は剣を構えた。