第60話
結城家。明日香は暇そうに自室で漫画を読んでいた。
「…………」
眠たげな目で1ページづつ捲る。が、その漫画をパサッと放り投げた。
「うがー、暇ー。なんもやる気しねー」
手足をジタバタさせながらベッドの上でゴロゴロしてると、携帯が震えた。
「あ、和人だ」
ピッと応対した。
「うがー、暇ー」
『お、おう。明日香か?』
「うぇーい、トゥモロースメールでーす」
『今日暇か?』
「うん。暇過ぎて吐きそう」
『そっか。なら今から聖剣エクスキャリバー取りに行こうぜ』
「うぇーい」
『一応聞くけど、それどっち?』
「うぇーい」
『じゃあアスナと……あとシノンも誘ってすぐ来てくれ』
「うぇーい」
そんなわけで、ALOに入った。
(間)
今更だが、アスカはスプリガンだ。別にキリトと同じが良かったとかでは無く、ただなんとなく選んだのがスプリガンだった。ちなみにそれによってスプリガンの人数が増え、ALO種族の中で今や、一番勢力がデカくなってるのは言うまでもない。
外見は若干、褐色系の肌で、髪は黒。SAOの時のアスカとは正反対の印象だった。
今はリズの武具店にいる。すでに全員集まり、リーファ、ユイ、アスナは買い物と情報収集に向かっていた。
「クラインはもう正月休みなん?」
シリカに膝枕してあげてるアスカが聞くと、クラインは男前にニヒッと笑った。
「おう、昨日っからな。働きたくてもこの時期は荷が入ってこねーからよ。社長のヤロー、年末年始に一週間も休みがあるんだからウチは超ホワイト企業だとか自慢しやがってさ!」
「でも、SAO後もすぐに仕事に復帰できたんだから、実際はホワイトでしょ?」
「ま、まぁな。一応感謝してるけどよ」
へへっ、と少年漫画の主人公のように鼻の下を人差し指で掻くと、キリトを見た。
「おうキリの字よ、もし今日上手いこと《エクスキャリバー》が取れたら、今度俺様のために《霊刀カグツチ》取りに行くの手伝えよ」
「えぇー……々あのダンジョンくそ暑いじゃん……」
「それを言うなら、今日行くヨツンヘイムはクソ寒ぃだろうが!」
頭の悪い言い争いをしていると、それに便乗してシノンが言った。
「あ、じゃあ私もアレ欲しい。《光弓シェキナー》」
「き、キャラ作って二週間でもう伝説武器をご所望ですか……」
「リズが作ってくれた武器も素敵だけど、出来ればもうちょい射程が……」
「あのねぇ!この世界の弓ってのは、せいぜい槍以上、魔法以下の距離で使う武器なんだよ!百メートル離れたとこから狙おうなんて、普通しないの!」
「欲を言えばその倍は欲しいとこね」
GGOで百メートルどころか二千メートルほどの遠くから狙撃していたのを知ってるアスカとしては、苦笑いするしかなかった。
「あ、でもシノンちゃんのためなら私手伝うよ?あと私の独断でキリトとクラインは手伝わせるから、最低でも三人で挑めるよ!」
「おーい、俺の人権は?」
「俺はいいぜ。美人の頼みは断らねぇぜ」
自分の人権を確認するキリトと、二つ返事でオーケーするクライン。すると、さっきまでアスカの膝の上で寝息を立てていたシリカがゆらりと起き上がった。
「………シノン、というのは貴様か」
総長モードオン。
「私だけど?」
「貴様ごときが女神アスカに頼み事など百年早い、恥を知れ」
「はぁ?何あんた。意味分からないんだけど」
「………私と戦争したいのか?その口を今すぐ塞げ」
「上等よ。あんたなんかに負ける気しないし」
「ちょっとあんたら店の中でどんぱちやらないでよ」
リズの注意を無視して、ケットシー同士で殴り合いが始まりそうになる(拳で)。その二人の頭にアスカが手を置いた。
「ち、ちょっと二人とも落ち着いて……」
だが、シノンもシリカも目を光らせながら指をゴキゴキと鳴らす。困ったアスカにリズが近付いた。
「ね、アスカ」
「な、何?こんな時に……」
「こう言えば止まるって」
「こうって?」
「………………」
「⁉︎ そ、そんなこと言えるわけねぇだろ!」
「いいからいいから♪」
促され、若干顔を赤らめながらも仕方なさそうに咳払いして言った。
「わ、私のためにあ、あら、争うのは、やめてー!」
空気が凍った。キリトにもクラインにも「うわあ……」みたいな顔で見られ、顔が真っ赤になるアスカ。と、思ったらシノンとシリカがアスカに抱き付いた。
「ごめんなさい、アスカ!」
「アスカさま〜!申し訳ありません!」
尚更死にたくなるアスカだった。すると、ちょうどそのタイミングでアスナとリーファとユイが帰って来た。