迫り来る植物が他のモンスター。そいつにアスカはゆっくりと近付いて、攻撃を弾いてから顎に一発入れて怯ませた。
「シリカちゃん」
「はいっ!」
返事をして突っ込み、アーマーピアスを発動して倒した。
「やったね」
「そんな……アスカさんのお陰です!」
「じゃあ、このままプネウマの花を取っちゃおっか」
「はい」
そして、良い感じに進み、ようやく丘に到着した。
「着いたね。あそこに、プネウマの花があるはずだから……」
アスカが、言いかけた時にはシリカはいなくなっていた。花をたったかたったかと取りに行っていた。後ろからアスカはのんびりとついていく。
「アスカさん!これですよね⁉︎」
「うん。それだよ。手に取ってごらん」
言われて、シリカはプネウマの花を指先で摘み、プツッと取った。
「クエストクリア、おめでとうシリカちゃん」
「はい!じゃあ、早速……」
「あっ、待った。ピナを生き返らせるのは街に戻ってからにしよう」
「? なんでですか?」
「ここじゃ、いつモンスターが来るか分からないからね。街に戻るまで頑張ろう?」
「分かりました」
そう言うと、二人は街へ引き返した。
○
もうあと少しで街まで着く。この橋を渡れば到着なのだが、前を歩くシリカをアスカは止めた。
「? アスカ、さん……?」
聞かれても黙って、シリカを自分の隣に戻すと、言った。
「そこで隠れてる奴ら、出て来なよ」
すると、何人か……十人ほど顔を出した。そして、最後に出て来たのはロザリア。
「! ろ、ロザリアさん⁉︎どうしてここに……!」
サッとシリカはアスカの後ろに隠れた。そのシリカにロザリアは言った。
「その様子だと、首尾よくプネウマの花を手に入れられたみたいね。おめでとう、シリカちゃん。じゃあ、早速花を渡してもらおうかしら」
「な、何を言ってるの……⁉︎」
機体を裏切らない台詞にシリカは怯んだ。
「そうはさせないよ。オレンジギルド、タイタンズハンド」
アスカはロザリアにだけじゃない。ほぼ全員に言った。
「へぇ、私達のこと知ってるんだ?」
「そりゃあ、あんたのこと探してたからね。あんた、少し前にシルバーフラグスってギルド襲ったよね」
「………ああ、あの貧乏な連中ね」
「唯一、生き残ったリーダーは朝から晩まで最前線のゲート広場で仇討ちしてくれる奴を探してたよ。………あんたに、あの人の気持ちがわかる?」
「知らないわよ」
面倒そうにロザリアはへらへらと答えた。
「何よ、マジんなっちゃって、馬鹿みたい。ここで人を殺したって、ホントにその人が死ぬ証拠無いし。そんなんで、現実に戻った時罪になるわけ無いわよ。で、あんたはその死に損ないの言うこと間に受けてわたしらを探してたわけだ。暇な人だねー。でもさ、たった二人でどうにかなると思ってるの?」
ロザリアは邪悪な笑みを浮かべた。その瞬間、ロザリアの部下と思われるオレンジカーソルのプレイヤー達が武器を構えた。
「アスカさん……人数が多過ぎます。脱出しないと……」
「大丈夫だよ。シリカちゃんは念のため、転移結晶を用意しといて。少しでも自分が危ないと思ったら逃げちゃっていいから」
そう言うと、アスカはタイタンズハンド十人の方へ歩く。
「オラァァァッッ‼︎」
「死ねやぁぁッッ‼︎」
ロザリア以外の斬りかかって来た。アスカは武器を出した。普通の片手剣だ。そして、一人目の男の剣がアスカに当たる直前、全員の武器がパキィィンッと砕け散った。
「なっ……⁉︎」
「やめといたほうがいいよ。次は殺すから」
アスカのその台詞に、全員がゾクッとした。ロザリアは転移結晶を取り出した。そこに、ダガーを投げて手首を切り落とした。
「キャアッ‼︎う、腕が……!」
緑カーソルのプレイヤーを攻撃したことによって、自分のカーソルがオレンジになっていくのも気にせずアスカはアイテムを取り出した。
「これは私に依頼した男が全財産をはたいて買った回廊結晶だ。黒鉄宮の監獄エリアに出口を設定してある。全員、そこまで飛んでもらう」
「い、一応聞くけど……嫌だと言ったら?」
「全員殺す」
一人の男に聞かれてアスカは即答した。
「一人でも抵抗してみろ。誰一人生きて返さない。私も人殺しはなるべくしたくないから、自主的にこの中に入ってくれる事を期待してるよ」
言いながら、回廊結晶を使った。青い光の渦が発生する。その中に、割とあっさり全員が入って行き、残りはロザリアだけとなった。
「……や、やりたきゃやってみなよ!グリーンの私を傷けたらあんたがオレンジになるよ!」
「もうオレンジだよ」
言うと、アスカはロザリアの足首を掴んで、回廊に放り込んだ。そして、回廊は消滅した。アスカが後ろを見ると、シリカが震えていた。
「………ごめんね、シリカちゃん。攻略組ってこと黙ってて。怖がらせちゃったね。私はもうしばらく街に戻れないから、ここでお別れかな」
そう言うと、アスカは去ろうとした。そのアスカにシリカは飛び付いた。
「し、シリカちゃん?」
「かっこよかったです!アスカさん!」
「へっ?」
「あー!アスカさんアスカさんアスカさん!強くてイケメンでカッコよくて優しくて!私の超ドストライクです!アスカさーん!」
「い、イケメンて……私、女なんだけど……」
「そんなの関係ありません!アスカさーん!」
いや、あるでしょ……と、ツッコむ術なくアスカはシリカになすがままにされている。
「し、シリカちゃん落ち着いて……ど、どうしたの?」
「私、アスカさんに一目惚れしました!」
「や、私だから女……」
「私も一緒に最前線に連れて行って下さい!」
「ダメ」
思ったより、冷たい反応にシリカは少しビクッとした。
「ど、どうしてですか?」
「圧倒的にレベルが足りないからさ。そんなレベルで上に来ても、すぐに殺される」
言われて、シュンッとするシリカ。そのシリカの頭をアスカは撫でた。
「大丈夫、君とはすぐにまた会えるさ」
「それっていつですか⁉︎明日ですか⁉︎」
「いや、明日は流石に……五日も戦線離れちゃってたから……でも、なるべく近いうちに会いに来るから、その時にまたお話ししよう?」
言うと、シリカはパァッと明るくなった。
「約束ですよ!」
「うん。約束。じゃ、早く街に戻りな。ピナが待ってるよ」
「はいっ!」
そのままお互いに手を振って別れた。
○
アスカは、最前線に戻る前に四十八層のフィールドに飛んだ。そして、メッセージを送る。
『久しぶり。元気にしてる?』
そう送ると、すぐに返事が来た。
『よぉーっす!アスカに逢えなくて寂しかったよー!』
『はいはい。それより、今暇?』
『………お店やってる人にその言葉はキツイなぁ……。暇だけど』
『暇なら、少し手伝って欲しいことがあるんだ』
『おっ、何々?』
『来てから話すよ。今、リンダースの街の門の前にいるんだけど来てもらっていいかな』
『了解!愛しのあすにゃんのためにすぐ行くよ!』
『あすにゃん言うな』
この後、グリーンカーソルに戻るためのクエストを手伝わせた。