飯屋。不機嫌そうなアスナと、不愉快そうなアスカと、泣きそうなキリトが飯を食っていた。
「……………」
「……………」
「……………」
(((気まずい………)))
キリトだけじゃなく、アスナとアスカも思っていた。
(なんなんだよこいつら、人に奢らせるだけ奢らせて気まずい思いさせやがって……)
(ううっ……恥ずかしさで殴っちゃった私が悪いのに、なんで逆ギレなんてしちゃったんだろう……。怒ってるよねアスカ……)
(実際、殴られたことはそんな怒ってたわけじゃないのに、なんであんなオーバーリアクションしちゃったんだろう……)
見事なまでのすれ違いである。
(しかし、俺のせいでこうなったのも事実だし……俺から話題を切り出すのは至難の技だぞ……)
(なおさら謝りずらくなっちゃったなぁ……。どうしよう、とりあえずこの空気だけでもなんとかしたいけど……)
(謝るのより先に空気をなんとかしたいな……。でも、原因になった私がどうこう言うのもどうだろう……)
そのまま沈黙が続いた。
「な、なぁ!」
キリトが口を開いた。沈黙に耐えられなくなったのだろう。キリトを見るアスナとアスカ。
「……………」
「……………」
「……………」
「す、好きな食べ物、何?」
「「……………は?」」
幼稚園の自己紹介みたいなこと言い出した。
「えっ、あっ、いや……お、俺は辛い物が好きだ!」
しかも自分の自己紹介から入った。
「好きな物、か……。一層で食べたパン、かな」
「えっ?あれ?」
アスナの台詞にキリトは聞き返した。
「うん……いや、なんていうか……この世界に来て、初めて美味しいって感じた気がしたから」
「あれ、気に入ってくれたのか。なら良かった」
と、微笑んでキリトは返した。
「べ、別にあんたに薦められたからってわけじゃないんだからね」
「はいはい……」
「ねぇ、なんの話?」
アスカがキリトに聞いた。
「いや、一層にいたときに、俺がこいつのパンにくりーむのせてやったんだよ。それが気に入ったみたいで」
「………へー」
なんて話してると、アスカがなんとなく不機嫌になった時だ。
「キャアァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」
悲鳴が聞こえた。
「っ⁉︎」
「外だ!」
バタバタと慌てて三人で外に出る。全員の視線の方、円形広場に飛び込むと、教会らしき建物に男が首に縄を縛ってぶら下がり、胸に槍が突き刺さっていた。
「早く抜け‼︎」
アスカが叫ぶ。男はちらりとアスカを見た。そして、両手がのろのろと動き、槍を抜こうとするが、抜けない。
「ああもうっ!」
そう叫ぶとアスカは目の前に人がいるにもかかわらずジャンプし、踏み台にしてものすごいスピードで男の元へ向かった。そして、思いっきり男に向かって飛び付いた。だが、男を掴もうとした瞬間、パキィィンと男は青いガラスのように四散した。
「むごっ!」
男に消えられたため、アスカは壁に直撃し、ひっくり返りそうになるが、教会の手摺を掴んで落下は阻止した。
「アスカ!デュエルのウィナー表示を探せ!みんなも頼む!」
キリトが叫んだ。アスカは言われるがまま、ぶら下がったままキョロキョロと首を動かす。だが、見えない。
「アスカ!あったか⁉︎」
「………ない。ないよ!どこにもない!システム窓も!」
「中も誰もいないわ!」
いつの間にか、教会の中に入っていたアスナが声を上げた。
「……だめだ。三十秒経った……」
ほっ、と息を吐いてアスカはキリトの隣に着地した。
「キリトは見えた?」
「いや、ダメだ」
「そっか……。どうする?」
「どうするもなにも、解決するしかないんじゃない?」
後ろからアスナが歩いて来て言った。
「圏内PKなんてものが存在したとしたら、早くその仕組みを突き止めて対抗手段を公表しないと大変なことになる」
「………そうだな」
キリトも同意し、アスカも頷いた。
「じゃ、とりあえず地道に聞き込みから始めよっか」
アスカがそう言うと、三人は動き出した。