アンチ姫路要素が含まれます、ご注意ください
―― 放課後 ――
僕は手紙を姫路さんの鞄にこっそり戻し、明梨を探していた。途中で霧島さんに会ったので雄二と先に帰ってもらった。日向は待っていると言ったので仕方がないのでAクラスで待ってもらっている。明梨がなかなか見つからないからね
「あ、明梨、ここにいたんだね」
明梨は屋上で空を眺めていた
「あ、明君。どうしたの?」
「いや、これを明梨に渡しに来たんだけど、明梨はこんなとこでどうしたの?」
僕は明梨にキーホルダーを渡しながら聞いてみた。一人で何か考えていたんだろうか
「あ、ありがとう。明君、迷惑かけちゃってごめんなさい!!」
「迷惑なんて思っていないよ。そんなこと考えていたの?」
「で、でも、わたしが戦争に参加できなかったせいでFクラスの皆にも迷惑をかけちゃったし、いつも明君に助けてもらってばっかりで…」
「僕は好きで明梨のことを助けているんだし、明梨が参加できなかったのは根本君が脅迫したからだしさ」
「それでも…」
「それでも納得いかないなら明日のお弁当、頑張って挽回すればいいよ」
「う、うん、分かったよ明君。ありがとね」
まだ納得してないようだが明梨はそう言うと笑顔になった
「やっと笑ってくれた。明梨は笑顔が一番かわいいよ」
「か、かわいいって、そんな…」
しまった本音まで口走ってしまった
「あ、日向が待ってるから早く帰ろう」
そう言って逃げるように僕は屋上を後にした
「日向、お待たせ」
「ゴメンね、ヒナちゃん待たせちゃって」
僕らは教室に戻り荷物をとるとAクラスに行って日向に謝った
「い、いえ。大丈夫ですよ、明久君、明梨ちゃん。そんなに待ってないですし」
そう言っているがもうAクラスに生徒が残っていないのを見ると結構待っていたんだろうな
「そう、じゃ帰ろうか。二人は明日必要なものとかある?買うものがあるなら付き合うけど」
「えっ明君、道場はいいの?」
「雄二が龍司さんに話したらしくてね、今日は休みだって」
さっき龍司さんから電話が来たときはびっくりしたよ。明梨を探している時に突然掛ってくるんだもん
「じゃあ、お願いします」
「わたしもお願いしようかな」
「了解、じゃあ帰りにスーパー寄れば大丈夫かな?」
「「うん(はい)」」
その後、僕達はスーパーによってお弁当の食材を買って日向を送り届けた後、明梨と一緒に帰った。もちろん僕が荷物を持ったよ。明日の昼食が楽しみだ
――――――
翌日、僕らはAクラス戦のために全教科の補充試験をしていた。今回は僕、雄二、康太、秀吉も本気で試験を受けている、そうしないとAクラスには勝てないからだ
そして、昼休み僕らは午前中に4科目も受けたのでクラスのほとんどが机に突っ伏している
「さすがに連続で本気で試験を受けるとなると疲れるのぅ」
秀吉が疲れた表情でこちらに来た。ただ、その髪型は
「秀吉、男として見られたいならその髪型はどうかと思うよ」
ポニーテールだった。まぁ男がポニーテールでも問題は無いんだけど、秀吉の場合はね
「そ、そうじゃったの。試験中に髪が邪魔だったので纏めたのじゃが」
そう言っていつもの髪型に戻す秀吉。教室から落胆の声が聞こえたのは気のせいだろう
「さてと、飯にするか。藤崎、場所は屋上でいいのか?」
「あ、はいヒナちゃん達も屋上でと言ってました」
まぁどちらかの教室ってのもアレだし今日は晴れているから屋上は気持ちよさそうだ
「じゃあ、行くとするか」
「あ、あの」
雄二がみんなをまとめて屋上へ行こうとすると、突然声がかかった
「姫路か、どうしたんだ?」
「私もお弁当を作ってきたので迷惑じゃなければご一緒しても良いですか?」
一輝の問いかけに姫路さんが答える
「……問題ない」
「みんなで食べた方がおいしいですしね」
「じゃあ行くとするか」
―― 屋上 ――
ガチャ ガチャ
僕らが屋上の扉を開けるとほぼ同時に新校舎側の扉も開いた
「あ、明久君達も今来たんですね」
日向たちもちょうど来たみたいだ
「うん、ちょうどよかったね」
「さて、腹も減ったし早く食おうぜ」
雄二の言葉にみんながお弁当箱を広げる
「「「「「おぉっ!!」」」」」
みんなのお弁当を見た男性陣が驚嘆の声を上げる
「あの、あまり自信は無いんですけど…」
「が、頑張って作ったので食べてください」
姫路さんと日向はあまり自信がないようだが見た目は美味しそうだな。姫路さんのは知らないけど日向の料理はお店を出せるほどおいしいから楽しみだ
「わたしも頑張ったので、どうぞ」
うん、明梨のお弁当も美味しそうだ
「…雄二、いっぱい食べて」
「翔子、気持ちは嬉しいんだが今日はみんなで食べるんだからな。俺の前に置くのはどうかと思うぞ」
雄二と霧島さんは夫婦漫才を繰り広げている
「明久、今何か変なこと考えてなかったか?」
「いや~相変わらず夫婦仲がいいなぁって」
「だから、まだ結婚してねぇって」
こういう時は雄二をからかえるから面白い
「頑張ったんだからちゃんと食べてよね」
「姉上は昨日から張り切っておったからのう」
「ほう、それは楽しみだな」
優子さんは秀吉と一輝から期待の眼差しを向けられている
「それじゃ」
「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」
雄二の掛け声でみんなで食事前の挨拶をする
「さて、どれから貰おうかな」
ちなみにメニューは明梨がハンバーグ・一口とんかつ・ほうれん草のお浸し、日向がアスパラベーコン・春巻き・ポテトサラダ、霧島さんが卵焼き・コロッケ・小松菜の胡麻和え、優子さんが豚の生姜焼き・唐揚げ・きんぴら、姫路さんはエビフライ・ミートボール・ウインナー・ハムチーズカツ・肉じゃが、あとはみんなおにぎりや一口サイズの巻きずし、といった感じだ。僕がどれから食べようか迷っていると
「……(ヒョイ)」
康太が素手で姫路さんのエビフライをとり口に運んだ
「あっ康太、行儀が悪いぞ!!」
僕が康太に注意をすると
バタン ガタガタガタガタ
康太は頭から倒れ、小刻みに震えだした、何が起きたんだ。毒でも盛られたのか
「わわっ、土屋君!?」
姫路さんが慌てて、配ろうとしていた割り箸をとり落とす
「……(ムクリ グッ)」
康太は起き上がり、親指を立てる。たぶん「美味かった」と伝えたいのだろう
「あ、お口に合いましたか。よかったです」
姫路さんに康太の意図は伝わったようだが、康太の脚はKO寸前のボクサーのようにガタガタだ。とりあえず
「フッ」
僕は康太の腹に拳を入れる
「ガハッ……ケホッケホッ」
康太はエビフライを吐きだすとせき込んだ。何とか命はあるみたいだ
「大丈夫、康太?」
「……危なかった。助かった明久」
「無理をしないで少し横になってて」
僕は康太を寝かしつけた。さて
「姫路さん、君はあのエビフライになにを入れたの?」
一応、作った本人が毒物を入れてないか確認してみる
「えっと、酸味を出すために硫酸を少々」
硫酸――濃硫酸は強い酸化力や脱水作用を持ち、希硫酸は強酸性を持つ劇物。毒物及び劇物取締法によって使用や売買について制限されている。食材や調味料ではない
「して、味見はしたのかのぅ」
秀吉が恐る恐る聞くと
「『味見をすると太る』と聞いたのでしてませんよ」
ブチッ
イマナンテイッタコイツ?コレハオハナシノヒツヨウガアルナ
「おい姫路、ちょっと向こうでハナシがある」
「えっ、よ、吉井君。なんかいつもと雰囲気が…」
なんか喚いているが気にせず連れて行った
一輝Side
あぁアキが完全にキレたな
「明久はなんであんなに怒っているんだ?」
雄二は知らないようだな
「明久君は料理を侮辱されるのが我慢ならないからね」
「そうなんですか」
優子の言葉に久遠は驚いている。まぁ普段温厚なアキがああなるんだもんな
「しかし、硫酸を入れるとはのぅ」
「姫路さんの常識力を疑いますね」
秀吉と明梨は姫路の常識はずれな行動に呆れていた
「…吉井の意外な一面、発見」
「……(グッタリ)」
霧島は見当違いなことを言っており、康太はいまだに倒れている
『姫路、劇物を料理に入れるとはどういうことだァ?』
『げ、劇物なんて、私はただ美味しい料理を作ろうと…』
『アレが料理だと?ふざけんな!!他人に食わせるモンの味見もしないで料理を語ってんじゃねぇ!!』
『そ、そんな私はふざけてなんて…』
『料理ってぇのはな、食材の命をより美味しくいただくためにするものなんだ!!だからこそ食事の前には料理人や食材に感謝の言葉も言うし、無駄のないように食うんだ!!なのにお前はその命をいただけないようにしたんだぞ?これでふざけてないなんてよく言えるな!!』
どうやらアキの怒りは沸点を軽く突破しているようだ。その後2,3分でアキは戻ってきたが、姫路は戻ってこなかった
Side out
「さて、気を取り直して食べるか」
「そうだね、待たせちゃってごめんね、みんな」
僕が戻ってくると昼食が再開された。結局誰も食べてなかったからな
「お、この卵焼き美味いぞ、翔子」
「…うれしい」
「うん、明梨のハンバーグも日向の春巻きも美味しいよ」
「ほんと、明君。ありがとう」
「あ、ありがとうございます、明久君」
「お、この唐揚げ俺好みの味だな」
「本当、一輝君。よかったぁ」
「康太、食べれるかの?」
「……なんとか」
「…雄二、戦争の調子はどう?」
みんなが食べ終わると霧島さんが雄二に話しかけてきた
「あぁ順調にBクラスまでは落としたからな。今日と明日補充をしてAクラスに戦争を仕掛けるつもりだ」
「坂本君は本当にAクラスに勝てると思っているの?」
雄二の返答に優子さんが問う
「まぁ普通の戦争では無理だがやり方次第って感じだ」
雄二の代わりに一輝が答える
「やり方って何ですか?」
「……一騎打ち」
日向の疑問に康太が答える
「でも、アタシたちはいいとしてもAクラスのみんなが納得しないんじゃ…」
「そこで優子に一芝居打ってほしいんだ」
「確かに姉上も演技は上手いからのぅ」
優子さんも秀吉ほどではないが人を騙せる演技ができる
「…芝居って?」
「簡単なことだ。俺らと交渉して試召戦争を7vs7の一騎打ちにしてくれればいい」
雄二は簡単というけどAクラス全員を納得させるとなると難しいはずだ
「でも、Aクラスのみなさんを説得できる条件でもあるんですか?」
「Bクラスが試召戦争の意思があると伝えに来ただろう?アレで連戦をチラつかせるのと勝ったときに設備を交換しないことだ」
日向の疑問に雄二は何でもないように答える
「えっ設備を交換しないんじゃ戦争の意味がないんじゃないの?」
「いや、俺たちが勝ったら設備交換の代わりに振り分け試験を再度受けられるようにしたんだ。Aクラスにはデメリットは無いだろう?」
「まぁ、そうね」
一輝の言葉に優子さんは納得する
「じゃあ、たぶん明日にでも宣戦布告に行くから、その時はうまくやってくれ」
そろそろチャイムが鳴るので僕らは屋上を後にした。姫路さんのことについては試召戦争に関わるといけないので署長にAクラス戦の翌日に話を聞いてもらえるように頼んどいた。『毒劇法に違反している女子生徒』と言ったら署長さんが「またか」と言っていた。署長さんが若い頃に父さんも同じような経験をしたそうだ
手紙は内容を知らないので、そっと返しておきました。
キーホルダーはやっぱり手渡しで、明梨が悩んでいて明久が励ますってのをやりたかっただけです。