それと来週は試験三昧なので今週の更新はこれで終わります。
次回は来週の金曜か土曜(26か27)になると思います。
☆
「ひゅ~。貴公子は言うことが違うね~。」
「ひゅ~ひゅ~。お熱いね~。」
雄二と明久が一輝のことをからかっている。これは毎回やるのか?
「よかったのぅ姉上。」
「秀吉。久しぶりだから加減間違えるかもしれないわよ?」
「ご、後生じゃから許してほしいのじゃ。」
木下姉弟はなにをやっているんだ?
「…………いい写真が撮れた。」
「康太、そのカメラ寄越せ。」
一輝が手を出してカメラを要求する。これは危険な予感がする。
「…………」ブンブン
「次はお前らの番だから撮ってやるって言ってるんだよ。」
「…………頼む。」スッ
さっきまで入っていたメモリーカードを抜いて新しいカードを入れてから渡す。折角のベストショットを消去させるわけにはいかない。
「ったく、用心深えな。覚悟しとけよ。」
何か嫌な予感もするが仕方ない。早く終わらせよう。
「…………行くぞ。愛子。」
「うん。エスコートよろしくネ。康太。」
カシャ
愛子が俺の腕に抱きつくと同時に一輝がシャッターを切った。さっきのはそういう意味か……
◇
「では、男性の方はこちらに座ってください。」
上まで行くと男の係員が指示してきたので俺はそれに従ってスライダーに腰掛ける。
「女性の方は男性の脚の間に座る感じです。」
「こうかな? って康太 大丈夫?」
「…………問題ない。」
愛子が俺の前に座ったことによって、さっきまで気づかなかった背中の日焼け跡が目に入る。水泳部に入っているためか健康的な日焼け跡が目に眩しい。一輝の薬で抑えられているが、鼻血が出そうで余裕が無い。
「あとは男性は後ろからお腹を抱きしめる感じで抱き締めてください。」
「…………もう、いいか?」
俺は言われるがままに愛子に抱きついて係員に聞く。このままじゃ薬が切れて鼻血のプールを作ってしまいそうだ。
「はい、いってらっしゃい。」
係員に背中を押されて滑り始める。
「きゃっ!?」
思っていた以上に流れが強く、愛子を離してしまったので慌てて腕に力を込めたが、何を間違ったのか愛子の胸を掴んでしまった。
「…………すまない。」
「ベ、別にいいんだけど……いきなりだから驚いちゃって……」
「…………本当に――」
バシャーン
俺が再度謝ろうとしたら出口に着いたらしく俺は愛子と共に水に飛び込む。
「…………本当にすまなかった。」
俺は立ち上がるとすぐに愛子に頭を下げる。顔が水に浸かっているが関係ない。
「か、顔をあげてよ康太。皆も見ているしサ。」
顔をあげて周りを見るとなんとも気まずそうな明久達が居た。
☆
「康太、君は何をしたの?」
「工藤が顔を真っ赤にしてたな、何があった?」
「正直に話せば楽になるぞ。」
明久達がプールから上がってきた康太に詰め寄る。確かに工藤はどこか嬉しそうな、恥ずかしそうな様子で顔を赤らめておる。何かあったのは丸わかりじゃ。
「…………あれは事故。」
「何があったのじゃ……」
「…………話したくない。」
「さ、秀吉君。次は私たちだから行きましょ。」
紫織は儂の腕を掴み腕を組んでくる。
「し、紫織よ! む、胸が当たっておるんじゃが!?」
「もちろん当ててるのよ。」
儂の腕は紫織の腕と胸にしっかりと挟まれておりとても抜け出せそうにないのじゃ。
◇
「すいません。これって私が後ろでも大丈夫ですか?」
紫織は担当の係員らしき男性に尋ねる。何がしたいんじゃ?
「え? ああ、大丈夫ですよ。ただ、離れると危ないですから、ちゃんと掴まってくださいね。」
「じゃあ、秀吉君。いらっしゃい。」
「儂の尊厳が……」
紫織は先にスライダーに座ると儂のことを手招きする。本来ならば男を見せたい所じゃが、紫織はスライダーのギリギリの所に腰掛けており後ろに回ることはできそうにないのじゃ。そう思いながら紫織の前に腰掛けると、
もにゅっ
儂の後頭部のあたりに柔らかい感触の物が押しあてられる。
「ΓΠΣΨΦΞΛΚζδ!!」
「ほら、暴れると危ないわよ。もう行っても大丈夫ですか?」
「はい。じゃあごゆっくりどうぞ。」
当てられたものが胸だと分かったので離れようとしたのじゃが、しっかりとホールドされており係員に押されて滑り始める。
バシャーン
流石に滑っている間に暴れるのは危ないので仕方なく後頭部を紫織の胸に挟まれたまま滑り出口まで至る。やはり男としての尊厳がズタズタなのじゃ……
☆
「…………いい写真が撮れた。」
康太がカメラを確認しながら呟く。僕らとは違う滑り方だったけど何となく秀吉と神谷さんらしい感じだったな。
「……男としての尊厳が無くなったような気分じゃ……」
秀吉はそんなことを言っているけど、関係性は変わらない気がするな。なんだかんだ秀吉もそこまでいやそうではないし。
「明梨、最後になっちゃったけど行こうか。」
「うん。よろしく明君。」
明梨は僕が差し出した手に自分の手を絡めてきた。いわゆる恋人繋ぎと言う奴だ。
◇
「では、男性の方はここに座ってください。」
上に来るとさっきいたお姉さんはいなくってお兄さんが居た。よかった、変な目で見られたりしていたかもしれないもんね。一応は公式に重婚が可能になったってニュースでやっていたけど……世間体とか考えるといいイメージはなさそうだ。
「女性の方は男性の脚の間に座る感じです。」
僕が座ったのを確認してから明梨にも指示を出す。
「じゃあ、明君。お邪魔します。」
「あとは男性は後ろから抱き締めてください。お腹を抱きしめる感じで。」
「失礼します。」
僕は明梨に断りを入れてからお腹のあたりを抱きしめる。日向の時も思ったけど、女の子ってこんなにも柔らかいんだな。
「これでいいですか?」
「はい、いってらっしゃい。」
バシャーン
しばらくスライダーを滑ると出口が見え、明梨を抱きしめる形でプールへと飛び込む。
「よっと。」
「ひゃっ。」
日向にもしたのでお姫様だっこをしたら明梨が短い悲鳴を上げた。
「ご、ゴメン。変なとこ触っちゃった?」
「だ、大丈夫だよ。いきなりだから驚いただけで……」
一言断りを入れてからの方が良かったかな?
「じゃあ、上がろっか。」
「うん。よろしく。」
明梨は俯きながら答えるがその顔や首筋が赤くなっていたので恥ずかしがっているんだろうな。
◇
『ただいまより、本日のメインイベントである【高飛び込み度胸比べ】の受付を開始します。参加希望者はプールエリア東端の高飛び込み台前の参加受付までお越しください。なお、本イベントに参加される方は挑戦料として1,000円を頂きますのでご了承ください。』
僕らがお昼を食べてから一休みしているとスピーカーからそんな放送が流れる。
「ヘェ~、度胸比べだって。面白そうダネ~。」
「そうね。このメンバーで臆病なのは誰なのかしら?」
工藤さんと神谷さんは本当に楽しそうに笑う。
「ちょっと待ってよ。参加料って言われてもそんなにお金無いんだけど……」
お昼の分は持ってきているが、財布はロッカーにしまってあるし、ここからロッカーまで戻るには少し距離がある。
「……大丈夫。私が立て替える。」
霧島さんはどこからか1万円札を取り出しながら言う。
「ひとまず見てからでもいいんじゃない?」
「そうだね。詳しいルールとかも分かるだろうし。」
「大丈夫ですよ。明久君なら飛べますよ。」
◇
特に反論材料も無かったので受付会場の近くまできた。ルールをまとめると
・高飛び込みの高さは20m
・挑戦料は1,000円
・開始のホイッスルから10秒以内に飛びこむと挑戦料が戻ってくる。5秒以内ならさらに賞金として10万円が貰える。
というものらしい。
「挑戦料が戻ってくるなら参加してもいいか。」
「あの高さは相当なモンだがなんとかなるだろ。」
「むぅ。男ならば度胸を示さねば……」
「…………あのぐらいの高さなら……いけるか?」
「なんとかなりそうかな。」
「……受け付けは済ませた。」
僕らが飛び込み台を見ながら感想を言っていると霧島さんが腕章のようなものを持ってきた。
「……翔子。誰もやるって言ってないと思うんだが……」
「……大丈夫。雄二ならいける。」
もう受け付けは済ませてるらしい。しょうがない、飛び込むか。あのぐらいの高さなら飛び降りても力の逃がし方を間違えなければ怪我しないで済むし……なにより彼女の前ではカッコいい姿を見せたい。
「土屋君、双眼鏡か何か持っているかしら?」
「これでいいか?」
「ありがとう。(これで秀吉君の姿がよく見れるわ。)」
◇
『今のところ誰も時間以内に飛び込めた方はいませんね~。次はエントリーナンバー18番 吉井明久さんです。高校生ですが、彼の度胸はどれほどか。』
あれから少し時間が経って、イベントが開始された。目玉イベントの為か飛び込み台の近くには観客席が設けられていて明梨たち女子組はそこから観覧しているようだ。
『それでは始めましょう』ピーーーッ
「ひゃっほーーいっ!」
僕はホイッスルと同時に飛び込み台から飛び降りる。下手に時間をかけると怖くなるから、一気に飛び込んだ。
バッシャーーーンッ!
流石に20mの高さとなると落下時間も水しぶきも相当なものだった。
『……っと、吉井さんの記録は0.3秒です! なんといきなり1秒を切る大記録が出ました!』
☆
アキが飛んだ後に康太と秀吉の出番があったが、二人とも飛び込もうとしたところで思いとどまって、そのまま飛べずじまいだった。そして次はオレの番だ。
『現在の所飛び込めたのは吉井さんだけです。果たして20mの高さを恐れない今日心臓の持ち主は再度現れるのか?! 次はエントリーナンバー21番 高瀬一輝さん、またしても高校生の挑戦です。』
20mつーと落下時間は2秒くらいか。アキも合図と同時に飛んだしオレもそうするか。
『それではどうぞ。』ピーーーッ
「よっ」
オレはアキと同様にホイッスルと同時に飛びおりる。
ジャポーン
落下中に姿勢を整えていたのでアキの時ほどは水しぶきは立たなかった。
『……っと、高瀬さんの記録は0.2秒です! なんと更に記録が更新されました!』
司会係はオレの記録に驚いていたようだがすぐに我に返りオレの記録を発表する。
「っし!」
アキの記録に勝てたことに軽くガッツポーズを作る。競っているわけじゃないがやっぱり勝ちたいと思うのは性だろう。
☆
一輝と明久はすげえな。ここからじゃ高さの確認はできないが20mとなるとビル5~6階分の高さのはずだ。
『これで飛び込めたのは2人になりました。さてさて、次も高校生、エントリーナンバー22番 坂本雄二さんの挑戦です。』
司会に呼ばれて飛び込み台の所へと足を進める。思わず下を見てしまったがその高さに背中に冷たい物を感じる。喧嘩とかで度胸はあるつもりだったがこれは別モノだ。
『それではどうぞ。』ピーーーッ
「っつ!!」
明久みたく開始と同時に飛びこもうとしたがその高さに思わず尻ごみしてしまった。
『5秒経過~。残り時間は5秒です。』
司会の言葉が会場に流れる。
『3,2,1――』
「くそっ!」
こうなりゃ自棄だ、と思って飛び込み台から飛び降りる。
ザッパーーーンッ
『坂本さんの記録は9.1秒です。残念ながら賞金は出ません。』
仕方ねえか。あの高さから迷いなく飛び降りれるのは命知らずかよっぽどの体力自慢、命の危険が分からない馬鹿ぐらいなものだろう。あいにく俺はそれらのどれでも無い
☆
「優しいお兄ちゃん!」
「ん? ぐっ……」
賞金を受け取って明梨たちの所へ向かう途中に正面からツインテールの小さな女の子が走ってきて、僕の鳩尾にその子の頭が当たった。
「優しいお兄ちゃんカッコよかったです!」
「え~っと……確か葉月ちゃんだったよね? どうしたの?」
「葉月はお姉ちゃんが葉月の相手をしてくれないからお友達とここに遊びに来たんです。それで優しいお兄ちゃんにお祝いを言いに来たんです。おめでとうです。」
「ありがとうね葉月ちゃん。」
僕は葉月ちゃんの頭を撫でながらお礼を言う。
「葉月ちゃ~ん、早く次に行こうよ~。」
「あ、お友達が待っているので葉月は行くです。またです。星斗くん、待って下さ~い。」
葉月ちゃんは僕に頭を下げると声の聞こえた方にかけていった。
「アキ、お前ロリコンだったのか?」
「明久、遅くは無いから警察に行こう。」
「…………実刑は免れない。」
「友人として警察までは付き添うのじゃ。」
「ち、違うよ! あの子がぬいぐるみを買うお金に困っていたからお金をあげただけで――」
あの子にお金をあげて生活費が無くなっちゃったから、その後で何度か明梨の家で晩御飯を食べさせてもらったりしたんだけどね。
「冗談なのに慌て過ぎだ。大方アキが助けたんだろ?」
「明久は極度のお人よしだからな。」
僕の周りには他人をからかうのが好きな友人が多すぎるよ。まあ僕もみんなと馬鹿騒ぎするのは好きな方ではあるけどね。
僕らは明梨たちと合流してからプールを楽しんでそれぞれ帰宅した。やっぱりみんなで遊ぶのって楽しいよね。
書きたかった内容をなんとかかけた……
葉月に関しては無理やり入れた感が強くなってしまいすみません。
次からは合宿編に入る予定で多分導入部を書きます。
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