最強の光の巨人は静かに青春を過ごしている   作:鎧武 極

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冥界 ‐ハデス‐

『ご覧ください! いま私たちがいるこの場所。つい先日、ここで信じられない事件が起こりました! 地底から現れた巨大生物がこの新宿の街を次々と破壊、多くの負傷者がでました! しかし、その直後に現れた謎の光の巨人によって巨大生物は撃退されました! 果たして私たちの住んでる星、地球で一体、何が起こっているのでしょうか!』

 

冥界のグレモリー家本家。そのリビングにいたリアスたち眷属は、人間界のニュースを見て驚きを隠せないでいた。自分たちが夏休みで人間界を留守にしている間、東京の新宿では恐ろしいことが起きていたのだ。謎の巨大生物が現れ、破壊の限りを尽くしたという。それだけでも驚くべきことなのだが、問題はその巨大生命体を倒した巨人の事だった。

 

「部長、あれって・・・」

 

「ええ、あの時現れた『ノアの神』に似てるわね」

 

光の巨人――世間では「ウルトラマン」という呼び名が広まっているらしい。そのウルトラマンの姿は、つい一週間ほど前に自分たちが見た『ノアの神』の姿とそっくりだった。微妙に細部は異なっているが、胸のクリスタルの形状が同じなため、ほぼ同じだと思って間違いないだろう。

 

「まさか私たちがいないときに現れるなんてね」

 

「しかも、この映像から推定するに大きさは約50メートル前後。私たちが学園で見たときは人ほどの姿でしたのに」

 

「それだけじゃありません。この巨人、攻撃も防御も私が見てきた中ではトップの凄さです」

 

「スピードにも目を見張るものがあります。いくら早くても、地上から上空1000メートル以上の距離を一瞬で詰めるなんて芸当、僕には到底できません」

 

リアス、朱乃、小猫、木場がそれぞれネクストを見ての感想を言っていく。イッセーやアーシア、ギャスパーにゼノヴィアは未だに画面にくぎ付けになっている。

 

「すげぇ、昔テレビで見てたヒーローの戦いをそのままでっかくしたみたいだぜ」

 

「とても強いのですね、ウルトラマンさんは!」

 

「な、なんだから無性に胸が熱くなります!」

 

「ふふーん、惚れ惚れする戦いっぷりだな」

 

まるで小さな子供が特撮を見るかのように、何度も何度もテレビ局が映すザ・ワンとネクストの戦いを見直す4人。というより、全世界のテレビ局がこの事件しか流していないため、必然的に何度も見る形になるのだ。

この事件は冥界や天界にも広まっており、ウルトラマンは今ちょっとしたブームとなっている。この熱は当分止む気配はない。

 

 

 

 

『「新宿大災害」から3日、街には怪獣と巨人の戦いの爪痕が生々しく残っています。政府はこの二つの未確認生命体を、怪獣の方を「ザ・ワン」巨人の方を「ザ・ネクスト」と命名しました。果たしてこの2体が現れた理由はなんなのでしょうか? また、巨人の方はいったいどこへ消えて行ったのでしょうか このことについて、スタジオの皆様はどうおもいますか?』

 

『この巨人、巷だと「ウルトラマン」と言われているようですが、私はウルトラマンに好印象を抱いています。彼は怪獣と戦う際、街に被害が及ばないように上空で戦闘を行いました。また、ウルトラマンが地上に落とされ怪獣が攻撃を仕掛けたときにも、彼は避けずにバリアのようなもので攻撃を防いでいました。この時まだ周辺の避難は完了しておらず、もしウルトラマンが攻撃を避けていたらさらに被害が出ていたと思います』

 

『助けたって、そんなのただの偶然でしょ。この巨人も怪獣も人間の敵だ。人間の敵はすべて排除すべきなんだよ』

 

『そうやって異星人に対して敵意しか持たないなら、いつか戦争になりますよ?』

 

テレビの前では、評論家同士が意見をぶつけ合っている。ウルトラマンは敵か、味方か。別のチャンネルに変えてみるも、やはりザ・ワンとネクストのニュースしかやっていない。新聞も一面新宿でのことしか書いておらず、まともなニュースをここ最近見ていない気がする。

国会議事堂の前では、ウルトラマンを正義もしくは神と崇める人と、ウルトラマンを悪と訴える人間同士の争いが連日続いており、東京都内の警察全てがそちらに出回っている始末だ。しかも新宿周辺はサンプルの採取などで世界各国からの研究員たちが押し寄せており、完全に封鎖されて一般人にも被害が出ている。

ある程度の想像はしていたが、まさかここまで人間たちが大騒ぎするとはさすがのノアも思いはしなかった。さらに厄介なのが、世界中の宗教の言い争いだ。ウルトラマンを自分たちが崇める神として疑わない者たちが今も世界中で争っている。

 

(結局人間はこうなるしかないのか・・・)

 

ノアは激しく人間たちに落胆をした。自分は決してこんな結果を望んだわけではない。突如現れた絶望(ザ・ワン)をウルトラマンが倒すことで、世界中の人に希望を持ってほしかった。争いをやめてほしかった。だが結局、人間たちは争いの選択を取ってしまった。こうしている間にも、アメリカなどの大国は新しい兵器を作っている最中だろう。

異星人の侵略

最早それは、現実に起きうる出来事になってしまった。それに対抗するために、人間たちは新しい兵器を作り争いあう。それもまた人間たちが決めた選択なら仕方がない。だが、もし人間が他の星を攻撃しようものなら、その時はノアは人間たちの前に立ちふさがらなければならない。それが自分の為すべきことなら

そこまで考えて、ノアはテレビの電源を消す。これ以上考えるのは無粋だからだ。今は自分のするべきことをするのが最優先だ。

ノアは足元に置いてあったバッグを肩にかけ、テーブルの上に置いてあったカードを取ると、兵藤邸の鍵を閉め駅へと向かっていく。

これからノアがいくのは、リアス・グレモリーたちの故郷の冥界だ。光の巨人である自分が冥界に行くという何とも奇妙な話だが、アザゼルたっての願いだったので仕方なくいくことにした。アザゼルから頼まれた内容は主に2つ。1つ目はグレモリー眷属全員の強化。禍の団(カオス・ブリゲード)と戦うための特訓を夏休みを使い冥界で行うらしい。

そしてもう一つは、グレモリー眷属たちに『圧倒的な実力差のある相手との対戦』をさせることだ。これは少々荒療治だが、兵藤一誠の禁手(バランス・ブレイカー)を完璧なものにするためと、これから出会うであろう強敵との戦いでの冷静な判断力を養うためらしい。

弟子は()()()()()()取ったことはあるが、それは皆将来が期待できるウルトラマンのみだ。圧倒的な力の差がある彼らに対して、一体どこまで自分の訓練に耐えられるかは不明だが、やるだけやるしかない。

 

「お待ちしておりました」

 

駅に到着すると、そこには熾天使のガブリエルが立っていた。その美しさに周りの男性たちの目が釘付けになっているが、本人はあまり気にしていないようだ。

 

〈なぜ君がここにいる〉

 

「私が自分からミカエル様に言ったのです。貴方と一緒に冥界に行って、天使側としての視野を広げてくると・・・

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンノアさん?」

 

〈そうか〉

 

ガブリエルの言葉に、ノアは動揺をせずに返事を返した。元々自分の正体がバレることは予測していたし、天界から人間界に戻るときに彼女たちの前で本来の姿をさらしたのだから当然だと思った。

 

「大丈夫です、天使で正体を知っているのは私だけですから」

 

胸を張るガブリエル。その胸が揺れた瞬間、周りの男性十数名ほどが顔を真っ赤にしてその場に倒れこんでしまった。これ以上ここにいるのは危険だと判断したノアは、ガブリエルの手を取ってその場から離れる。

駅のエレベーターに乗った二人は、リアス・グレモリーから預かった特殊なカードをかざして、悪魔専用のホームへと移動していく。

 

〈それで、なぜ私の正体を秘密にしている?〉

 

「そうですねぇ~」

 

ノアの質問に、ガブリエルは目を閉じて口に指で触れると、首をかしげて「ん~」と唸る。

 

「私の勝手です」

 

その言葉に、少しノアは驚いた。ガブリエルが自分の正体をミカエルに明かさないということは、自分たちの長を裏切るという堕天しかねない行為だ。だが、彼女からは堕天したような気配は感じない。

 

「うふふ、システムが先日の出来事で大分狂ってしまいましたからね。天使が堕天する条件が大分緩くなってしまったらしいです」

 

先日の出来事、というのは「新宿大災害」と言われている、ネクストとザ・ワンの戦いの事だろう。あの戦いが、天界のシステムに何らかの負荷を与えて、ただでさえ不安定なシステムが完全に狂ってしまったのだろう。

 

「それよりも、先日はありがとうございました。貴方がいなければ、恐らく天界は大パニックになっていたはずです」

 

〈褒められるようなことはしていない。今の世界の混乱を作ったのは私だ〉

 

ノアはそう自傷するような言葉を綴る。結局自分は、あの時と同じように世界を混乱に陥れただけだった。人間たちは未だに憎み、争い、傷つけあっている。

柄にもなく少し落ち込んでいると、ガブリエルがそっとノアの手を握った

 

「そんな事言わないでください。貴方は素晴らしい事をやりました。ここに来るまでに、子供たちが貴方の事を噂してましたよ? ウルトラマンは凄い、ウルトラマンはヒーローだ、と言ってました。もし貴方がいなければ、あの子たちは笑顔でいられなかったと思います。だから私は貴方の事を誇りに思います。貴方は間違いなく、私たちのヒーローです」

 

屈託のない笑顔でそういったガブリエルに、微かにほほ笑んだノアは、目的の場所についたエレベーターから出ていくと、冥界生きの列車が待つホームへと向かう。

その胸の内は、ガブリエルと会う前よりも少し軽くなっていた。




現実世界(円谷プロのない世界)にウルトラマンや怪獣が現れたら、絶対こうなると思うんですよね。人間なにかと未確認生命体に対しては騒がないと気が済みませんからね。

ガブリエルの描写入れた経緯については、結局世界が混乱に陥る原因を作ってしまったノアに対しての謝辞をしたかったからです。最近で言うと、ギャラクトロンごと自分を殺そうとして世間から非難を浴びたオーブを許したナオミみたいな感じですかね。やっぱりウルトラマンみたいに異星人のヒーローには、近くに寄り添ってくれる人が必要なんですよ。
強さだけじゃない、弱さも見せることがノアに対しての礼儀だと思っております。


ではまた今度
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