日も落ちかけている時間帯。茶髪の少年兵藤一誠と、金髪の少女アーシア・アルジェントは一緒に下校をしていた。だが、その表情はとても暗い。その理由は、自分たちの部活の仲間である、木場祐斗のここ最近の不可解な行動にあった。数日前にオカルト研究部の皆と一緒に一誠の家に来た時に見せた一枚の写真。その写真に写っていた剣――正確に言えば聖剣――を見たあの日から、彼はまるで別人のように変わってしまった。何かに取り憑かれたかのように静かになり、部員とはだんだん距離を置いて行ってしまっている。本当は、アーシアと一緒に部長であり自分の主でもあるリアス・グレモリーとも話したかったのだが、あいにく彼女は今別の用事でいない。
なにが木場をあそこまで駆り立てるのか、それを知らないといけない。いや、知らなければならないのだ。部活の皆のためにも、彼のためにも。そして、主であるリアス・グレモリーのためにも。
そうしている内に、一誠とアーシアは兵藤家の前まで来ていた。
すると突然、一誠とアーシアは悪寒を感じた。
「い、イッセーさん。今の悪寒は・・・」
「まさかっ!」
一誠の頭に嫌な予感が走った。この悪寒は前にも感じたことがある。これは、教会の人間から感じる悪寒。もしかしたら、自分たちが悪魔という事がバレて、自分より先に親を殺しに来たのではないかと思った。
一誠は家のドアを乱暴にあけると、靴を脱ぎ捨ててリビングへと向かった。
「母さん! だいじょう・・・ぶ?」
「あら一誠、お帰りなさい」
イッセーの目の前にいたのは、アルバムを取り出して懐かしそうに笑っている母の姿だった。そして、母と向かい合って座っているのは、白いローブを着た栗毛のツインテールの少女と青い髪に緑のメッシュが入った少女だった。悪寒の正体はおそらくこの二人。だが、それ以上に一誠には気になる人物がそこにいた。
「なんでお前がいるんだよ、ノア・・・・・」
白い布でまかれた聖なる波動を放つ物と、同じく聖なる波動を放つ紐を腕に付けた、銀髪に赤い瞳が印象的な少年。一誠と同じクラスメイトの、ノアが座っていた。
一誠たちが帰宅する数十分前。
聖剣をものの見事に奪われたゼノヴィアとイリナはノアに兵藤家までの道案内をされていた。ノアは自分の名前を言ったきり喋らなくなり、こちらからの呼びかけにも全く答えずにただ歩き続けていた。ゼノヴィアの持っていた
二人は何とかしてエクスカリバーを取り戻そうとしていたが、ノアからは一切の隙が見えない。自分たちから一瞬でエクスカリバーを奪ったあの動き、明らかに人間ではない。一瞬二人は悪魔、もしくは堕天使かと疑ったのだが、彼からは一切邪悪な気配が感じ取れない。逆に、自分たちが信仰する神のようなものが感じ取れたが、彼からは魔力のようなものは一切感じ取れなかった。謎ばかりが出てくるノアに、ゼノヴィアとイリナはわずかな恐怖を抱いていた。
すると、ノアが突然一軒の住宅の前で足を止める。日本語が読めるイリナが表札をみると、「兵藤」と書かれていた。間違いない、記憶にある兵藤一誠の家と同じだ。
「うわー懐かしい! イッセー君の家、昔と全然変わってない!」
「イリナ、思い出に浸っている場合ではないぞ。用が済んだから、早くあの男から聖剣を返してもらえ」
「ああそうか! ここまで道案内してくれてありが・・・って、あれ? ノア君は?」
イリナが振り返ると、先ほどまでそこにいたはずのノアがいない。どこにいるのかと思って周りを見ると、ノアはいつの間にか兵藤家の敷地内に入っており、インターホンのボタンを押していた。
「は~い」
扉をあけて出てきたのは、兵藤一誠の母だ。出てきた母親にノアが一礼をすると、一誠の母親は手を叩いた。
「あらノア君! 久しぶりねぇ~、またうちの一誠が何かしたの?」
一誠の母親の質問にノアは首を横に振ると、視線をゼノヴィアとイリナに向ける。それに気づいた一誠の母親も視線を移すと、イリナを見て叫ぶ。
「あらイリナちゃん! お久しぶりねぇ~、それにずいぶん女の子っぽくなったじゃない!」
「お、お久しぶりですおばさま・・・」
久しぶりの再会なのにうまく喜べないイリナ。
二人はノアからエクスカリバーを取り返すチャンスを逃してしまい、そのまま兵藤家へノアと一緒にお邪魔することになってしまった。
兵藤一誠に用件を伝えた後、3人はすっかり暗くなった道を歩いていた。
兵藤家に居る時もノアは一言もしゃべらず、ずっと座っていた。そして、結局エクスカリバーを返してもらえずにズルズルとこんなところまで来てしまった。
このままでは教会の戦士、なにより主に使える聖職者としての名が廃る。
「あの! そろそろエクスカリバー返してよ!」
イリナが叫ぶと、ノアは足を止めた。
「いい加減にしないと、私たちも本気で君を倒すぞ。私たちは聖剣の使い方のほかに体術も習っているからな」
ゼノヴィアが構えを取る。
それを感じ取ったのか、ノアは鞄の中からメモ帳とペンを取り出すと、スラスラと何かを書きだす。何を書いているのか気になったゼノヴィアとイリナに、ノアは担いでいた
「うわっ!」
「ちょっ! おりゃ!」
飛んできた破壊の聖剣を受け止めるゼノヴィアと、紐の故ひらひらと飛んで行く擬態の聖剣を両手でつかむイリナ。いったい何をすると、文句を言おうとノアの方を振り返ると、そこにノアの姿はなかった。代わりに、一枚の紙が置かれているのを見て、気になり紙をとるゼノヴィア。
〈明日のオカルト研究部との話し合いには私も参加する。少し遅れていくがよろしく頼む〉
綺麗な字で書かれていたその文の書き主は、おそらくノアだろう。だが、肝心のノアがいない。どこまでも不思議な奴だと思いながら、ゼノヴィアとイリナは自分たちの隠れ家の教会まで戻って行く。
その様子を、
「ノア、見つけた」
誰もいないはずのその部屋に、少女の声が響き渡る。
露出の多い黒いゴスロリを着た少女の名は、無限の龍神オーフィス。彼女は、一年前にノアがこの世界に現れたとき、ノアの体からあふれ出ていたエネルギーを感知して以来、ずっとノアの事を付けている。これが、ノアが人間の姿を取り、力も一般人程度に抑えて人のいない建物に隠れている理由だ。だが、このオーフィスはどこに隠れようともノアを見つけてくる。そしてノアに会うたびに、彼女は同じことを言ってくる。
「ノア、
禍の団。あらゆる種族が集まってできたテロリスト集団だ。このオーフィスはその集団のトップ。彼女がこうしてノアを勧誘しているのも、次元の狭間に住むグレートレッドを倒してもらうためだった。グレートレッドを倒す理由はただ一つ。彼女の、そしてグレートレッドの生まれた場所である次元の狭間に戻るためだ。
だが、ノアはそのような集団に入るつもりは全くない。そう最初にオーフィスに言ったのだが、彼女は諦めずに何度もノアに頼み込んできていた。
「ノアの力、無限の我、超えている。夢幻であるグレードレッドよりも、断然強い。その力、我に貸してほしい」
今回はいつもよりねばっているが、ノアの答えは変わらない。このままオーフィスを別の場所に飛ばそうとしたのだが、オーフィスの足を見てその考えを改める。オーフィスの足は、泥で汚れまくっていた。しかも、足裏から血まで出ている。それ程になってまで自分を探していたと思うと、ノアはオーフィスを別の場所に飛ばすことが出来なかった。
ノアはオーフィスの体を持ち上げると、近くにあったデスクの上に座らせる。
「じっとしてしろ」
オーフィスの足を掴むと、ノアは右手に光を集中させ、その光をオーフィスノア足に向けて放つ。すると、オーフィスの足のけがが徐々に消えていき、泥だらけだった足は綺麗に治った。対象の傷を治し、体力を回復するなどの奇跡を起こすノアの技の一つ「ノア・ウェーブ」。それをオーフィスの足に放ち、彼女の傷や泥だらけだった足を治療したのだ。もう片方の足も同じようにすると、オーフィスが尋ねてきた。
「ノア、なぜそのようなことをする?」
オーフィスの質問にノアは何も答えなかった。オーフィスの足を直すことだけに集中していたノアの顔を、オーフィスはそのままじっと見つめていた。
オーフィスの足の治療が終わると、ノアはオーフィスと脇に抱えて、空間を指で縦になぞると、空間を開いてその中に入り、駒王町にある銭湯の前まで移動する。
「ここはどこ?」
「駒王町にある銭湯」
それだけ答えると、ノアはオーフィスを抱えたまま銭湯の中に入り、靴をしまって二人分の料金を番頭に渡すと、男湯の
そして、無言で再びノアの脇に抱えられると、ノアとオーフィスは風呂場に入る。湯気が立ち込めており、壁に書かれた富士山がいい味を出している。ノアはオーフィスをプラスチックで出来た椅子に座らせると、オーフィスの頭を洗い出した。
「ノア、なぜこのようなことをする?」
ノアは無言のままオーフィスの頭を洗い終えると、今度は体を洗い始めた。静かな時間だけが二人の間に流れる。ノアも頭を体を洗い終えると、オーフィスと一緒に湯船につかる。
「ノア、もう一度聞く。なぜこのようなことをする?」
「・・・・・君とこうしてみたくなっただけだ」
それだけ言うと、ノアとオーフィスはそのまま湯船に浸かっていた。この時間が、オーフィスにとって幸せであったかどうかは、誰も知らない。ただ、ノアといたオーフィスの顔は、どこか嬉しそうな顔だったということをノアだけが知っている。
前回のノアのセリフが約80文字程度。そして今回のノアのセリフ(書置きは除く)は約30字程度。・・・・・喋りなさすぎいいいいいいい!いづれ一言も喋らない回が出来ちゃうかも
さあて、まあ当然のことながら、渦の団に勧誘されるノア。現状第5の勢力(一人だけど)って位置づけですかね。時には突き放し、時には手を差し伸べるのが「ノア」だと僕の中ではキャラ付けされている。
マックスとサーガ見直してたら、イフとハイパーゼットン出したくなってきちゃった・・・イッセーたちの修業相手にでもするか?