時刻は夕方。肩まである銀髪に赤い瞳が特徴的な少年ノアは、駒王学園の校舎内を歩き回っていた。週に3度ほどある彼のこの行動は、特に意味があるわけでもなく、自身が見たいものがあるからである。とは言っても、それが分かるのは全宇宙を探しても一人もいないだろう。
ノアは3年生の教室の前で足を止めると、身をひそめて教室に残っていた一人の男子生徒に視線を向ける。
「ううぅ~このままじゃ志望校に合格できない・・・・・なんて言ってる暇があったら勉強しろ俺! 絶対に合格するんだ!」
志望校合格のために一人頑張る男子生徒。彼は先生から、「このままでは志望校に合格できない」と先週通告されたばかりなのをノアは知っている。だが、彼はそれでも諦めずにそれから毎日下校時間ぎりぎりまで教室に残って勉強をしている。ノアがこうして校舎を巡廻しているのは、彼のような「希望を諦めない者」を見つけるためだ。「希望を諦めない」ことほど、この世で一番美しい物はないと思っている。それは、これまで数々の人間と融合し、共に戦ってきたノアだけが分かることだ。
「だあああああああああああ! この問題どうやって解けばいいんだよ!」
どうやらかなりの難問に直面したらしく、男子生徒は頭を抱えて悩んでいる。
ノアはその男子生徒の様子を見ると、少し笑みを浮かべながら目を閉じてパチンッと指を鳴らした。
「おっ? そうかここはこうすればいいのか!」
突然、男子生徒がペンを握って問題を解き始めた。先ほどノアが行ったのは、相手の脳内に直接自分のイメージを送り込む「イメージ・ノア」と言う技だ。この技を使って、ノアの脳内にあった問題を解くための公式を男子生徒に送ったのだ。無論、誰にでもノアは力を貸すわけではない。先ほどの男子生徒のように、希望を捨てずに頑張る者のみにノアは力を貸す。かつて「ウルティメイトイージス」を授けたウルトラマンゼロも、最後まで希望を諦めなかったからこそ、ノアは彼に力を授けたのだ。
静かにその場から立ち去ると、ノアは旧校舎へと向かった。昨日兵藤一誠の家まで案内したゼノヴィアと紫藤イリナが、おそらくオカルト研究部の部室で話し合いを終えていることだろう。無関係な自分が行って、話し合いが進まなくならないように、少し時間をおいていくことにしたのだ。
後は、オカルト研究部の面々にどう話をするかが問題だ。ゼノヴィアと紫藤イリナには自分が「光の巨人」と言ってしまったが、悪魔に取って光は毒と同じ。それを纏う巨人を、一体誰が信用するだろうか。幸い、ゼノヴィアと紫藤イリナは冗談という事で流してくれたが、さてどうすればよいのか。
そう考えていると、いつの間にかノアは旧校舎の近くまで来ていた。だが、少し様子がおかしかった。まるで人が近寄る気配がない。いや、それ以前に音までが聞こえてこない。おそらくは、人払いの結界と遮音の結界でも張っているのだろう。そして、そんな状況になっているという事は、オカルト研究部が何かをやらかしてゼノヴィアと紫藤イリナと戦うことになったか、またはその逆。とにかく、面倒なことになっているのは間違いない。すると、ノアの視界に旧校舎の前で何かしているオカルト研究部とゼノヴィアと紫藤イリナの姿が見えてきた。
「やはり、か・・・」
オカルト研究部の男子生徒とゼノヴィアと紫藤イリナが戦っていた。ゼノヴィアと紫藤イリナがその手に持っているのは、二人が教会から預かった聖剣エクスカリバー。そして、その二人と対峙している男子生徒――駒王学園の2年生木場祐斗と同じく2年の兵藤一誠は、それぞれ自分の
ノアは足を大きく一歩踏み出すと、そのままゼノヴィアと木場祐斗の間に入り込み、二人の剣をその両手で受け止めた。
「なっ!」
「き、君は!」
二人が驚きの声を上げる。当たり前だ、突然現れた人間が聖剣と魔剣を素手で受け止めたのだ。驚かないはずがない。二人の声に気付いたのか、紫藤イリナと兵藤一誠や他のオカルト研究部の者もこちらに顔を向ける。
「えっ! ノア君!?」
「の、ノア! なんでお前素手で剣掴んでるんだ!?」
木場とゼノヴィアよりもさらに驚いている紫藤イリナと兵藤一誠。どうやら、これは説明するのが大変になりそうな予感がする。
オカルト研究部の部室。そこに、ゼノヴィアと紫藤イリナに加え、招かれざる客が一人加わっていた。オカルト研究部とゼノヴィアに紫藤イリナが見ている中、ノアはオカルト研究部の副部長である姫島朱乃から出された紅茶を飲んでいた。ノアが紅茶の入ったカップをテーブルに置くと、紅髪の少女リアス・グレモリーがノアに話しかける。
「それでノア君? なんであなたがここに来たのか教えてもらっていいかしら?」
だが、ノアは答えない。元々ノアが無口だという事は学園にいる人ならだれもが知っていることなのだが、まさか先輩からの質問にすら答えないとは思わなかったらしい。リアスがムッとした表情を取ると、ノアはリアスの前に文字を書いたメモ帳を突き出した。
〈あまり私は人としゃべる主義ではないのでね。これで我慢してくれ〉
リアスがその文章を読んで「本当に変わった子ね」と小さな声で呟くと、ノアは次の文章を見せる。
〈私は君たちのことはすべて知っている。君たちオカルト研究部が全員悪魔だという事も。そして、そちらの兵藤一誠とアーシア・アルジェントが一度死んで悪魔になったという事も〉
その一文を見て、オカルト研究部の面々は驚きを隠せなかった。ただの一般人であるノアに、自分たちの正体や兵藤一誠とアーシア・アルジェントが一度死んだという事が知られているからだ。ノアは気にせずに次の文章を見せる。
〈そのことはおいおい話すとして、私がここに来たのは単純に君たちと話がしたかったからだ〉
「話? いったい私たちと何を話そうって言うのかしら?」
リアス・グレモリーや他の者たちも緊張した表情でいる。そんな彼らに、ノアは珍しく自分の言葉で伝えた。
「それはもちろん・・・・・君たちが悪かどうかという事だよ」
ほとんどの者たちが初めて聞いたノアの声。ゼノヴィアと紫藤イリナは一度聞いたことはあるが、あの時とはまるで違う。たった一言しゃべっただけで、体中から汗が吹き出しそうになっている。まるで、
「私たちが悪とは、一体どういう事かしら?」
リアスは何とかして声を出した。だが、彼女の頬からは汗が垂れ流れている。それを見越してか、ノアは再びメモ帳に書いた文章を見せる。
〈君たち悪魔が害をなすかどうかを見極めたいのさ。過去の経験から悪魔の名を冠する者は信用することが出来なくてね〉
その言葉は、かつて戦ったウルティノイド――ダークメフィストの事を知っているからこその言葉だった。自身と対局の存在、ダークザギが創ったウルティノイドの一体であるメフィストは、自身の
「悪いけど、私たちは君が思っているような悪魔ではないわ」
〈それを証明する証拠は〉
「そ、それは・・・・・」
リアスの言葉はそこで止まった。よくよく考えれば、この町の人間に気付かれないように行動をしていたため、証拠と言う証拠は全くない。かつてはぐれ悪魔のバイサーを倒したことはあるが、それについても証拠も持っていない。
〈君たちが善か悪かは、今後の君たちの行動次第だな。それに今日はもう遅い、この話はまた明日させてもらうよ〉
リアスが時計を見ると、完全下校時刻まであと15分となっていた。そろそろ旧校舎からでなければ、学園にいる教師たちから指導されてしまう時間だ。
〈それでは私はここで失礼させてもらうよ。この後予定があるのでね〉
ノアは立ち上がると、荷物を持って部室から退室する。
旧校舎から出て空を見上げると、空にはすでに星がいくつか出ていた。これならば、今日の釣りは雨を心配せずにのんびりできるだろう。
校門から出ると、そこに一人の男性が壁に背もたれをしていた。
「よっ、今日も付き合ってもらうぜ」
前後が金と黒で別れた髪色の男性の名はアザゼル。堕天使の総督にして、オーフィス以外にノアの正体を知っているもう二人の人物の内の一人だ。
「それにしても、お前がこんなことしてるって知ったら、サーゼクスやミカエル、それどころか全勢力のお偉いさん方の顎がはずれるだろうな~なんせ、
〈変なことを言うな。私は神ではない〉
「またまた~そんな謙遜するなって・・・・・・・なぁ?
ノアがメモ帳を使って会話する元ネタは、「これはゾンビですか?」のユーが元ネタです。これなら、直接喋らなくても会話は成り立つはず・・・
次回はアザゼルとちょっとした話。現在ノアの本当の正体を知っている3人に最後の一人が出てきます(名前だけ)
では、また今度