最強の光の巨人は静かに青春を過ごしている   作:鎧武 極

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告白  -プール-

気温も徐々に上がっていき、一般的な日本人の感覚で言えば夏に差し掛かってきた今日この頃、ノアをはじめとするオカルト研究部の部員たちは駒王学園のプールへと来ていた。駒王学園の生徒会からプール掃除の代理を頼まれる代わりに、オカルト研究部が掃除後にプールを独占させてもらえることを条件にリアス・グレモリーが決めたらしい。本来なら顧問であるノアに相談すべきことなのだろうが、基本的なことはリアス・グレモリーたちに任せているノアは特にそのことについて言及はしなかった。なので、オカルト研究部の面々は体操服とは別に各々がお気に入りの水着を持ってきている。もっとも、ノアはそんな事に興味もないので体操服だけしか持ってきていないが。

 

「それじゃあ皆、はやく掃除を終わらせてプールで遊びましょう!」

 

リアス・グレモリーが叫ぶと、ノア、兵藤一誠、木場祐斗は男子更衣室に、女子部員は女子更衣室へと向かっていった。

着替えを始めると、兵藤一誠と木場祐斗の話にノアは耳を傾けた。「僕はグレモリー眷属の騎士だ」や「僕は君を絶対に守ってみせる」などと、駒王学園にいる女生徒が聞いたら黄色い歓声を上げそうな言葉を木場祐斗が平然と言っているのを聞いて兵藤一誠は身の危険を感じたのか、早々に着替えを済ませようと急いでいる。この木場祐斗の発言は、「ゲイ」や「ホモ」の部類に入るのだろうかとノアは疑問に思ってしまった。無論そんなことを思うのは本人にはとても失礼なことだとノアは思っている。思っているのだが・・・

 

(なぜ頬を赤く染めている)

 

着替えをする兵藤一誠の体を見て、頬を赤く染めている木場祐斗の顔を見てなんとも言えなくなるノアだった。恋愛感情は人それぞれであるということはノアもよく理解はしている。これまで訪れた宇宙にも特殊な恋愛感情を持っている者はたくさんいたが、やはり慣れないものである。まあ人の好みに口出しをするなんて失礼に当たるため、ノアは何も聞いていないフリをして着替えを済ませると、先に出て行った兵藤一誠の後を追うように更衣室から出ていく。まだ女子たちは着替えが終わっていない様で、更衣室からは女子たちの声が聞こえてくる。

視線をプールサイドの左端に寄せると、そこには左腕を抑えて蹲っている兵藤一誠がいた。よく見ると、左腕が彼の持つ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に似た形状に変化していた。

今日の朝リアス・グレモリーから聞いて知ったことだが、兵藤一誠のお得意様の一人がアザゼルだったということが昨日の夜分かったらしい。しかも、アザゼル本人から正体を明かしたらしく、それを聞いたリアス・グレモリーは激怒していたらしい。「自分の領地で営業妨害をされていた」とノアには説明していたが、営業妨害はしていない上にいつの間にこの町は君の領地になったんだと突っ込みを入れたくなったノアだが、そのことは彼の兄であるサーゼクス・ルシファーに会った時にでもいうとしよう。幸い、彼と会うチャンスはアザゼルの方から作ってくれているらしい。

話を戻すが、恐らく兵藤一誠の腕が変化しているのは、アザゼルという強者と長く接触していたからだろう。ドラゴンは力を求める生き物、気付いていなかったとはいえ堕天使の総督という強者の力に反応して彼の左腕のドラゴンの血が騒いでいるのだろう。通常ならその程度の事なら抑えることはできるはずなのだが、生憎兵藤一誠は歴代でも最弱と言われるほどの赤龍帝。力が足りない分ドラゴンに翻弄されているのだろう。全く世話が焼ける少年だ。

ノアは兵藤一誠の元まで歩み寄ると、彼の抑えていた左腕を掴んだ。

 

「の、ノア・・・っ! いや、その、これは・・・っ!」

 

「何も喋るな」

 

一言で兵藤一誠を黙らせると、ノアは気付かれないように兵藤一誠の左腕を握っている手に力を溜める。ゼロ距離からのノア・ウェーブで兵藤一誠の左腕を人間の腕に戻すと、そっと手を放した。

 

「えっ!? う、腕が元に戻った・・・」

 

何が起こったのか分からない兵藤一誠は自分の左腕を様々な角度から見ていく。本来ならこんなことはしない主義なのだが、後々面倒なことが起こるような(主に彼に好意を抱いているリアス・グレモリーと姫島朱乃による女の戦いが)気がしたので早々に問題を解決しただけだ。無論、この借りは後々大きな代償を払って返してもらうことになるとは、兵藤一誠は知りはしなかった。あと、掃除中に水を被ったゼノヴィアが執拗にノアの腕に胸を押し付けていたが、一体何の意味があったのだろうか。

 

 

 

掃除も終わり、体操服から水着に着替えた部員たちは、泳ぎの練習をしている者、泳ぎを楽しんでいる者、オイル塗りを賭けて白熱したバトルを繰り広げる者、そしてそのオイルを塗る係になる不幸な者などに分かれていた。後ろ二つは何が起こっているのか察してほしい。そして、更衣室にはその4つに当てはまらない者が二名いた。

 

「す、すまんなノア・・・」

 

〈別に構わない〉

 

女子更衣室では、上半身が裸のゼノヴィアが顔を赤くしながらノアに水着をつけてもらっていた。元々教会出身のため娯楽とは無縁の生活を送っていたために水着のつけ方が分からないらしく、プールサイドの日陰に座っていたノアを無理やり連れてきてこうして水着を着させてもらっているのだ。ゼノヴィアが持ってきていた水着はピンク色のフリルが付いた一般的には着やすい部類(むしろ逆に着にくい水着があるのだろうか?)に入る水着をなぜ彼女は着れないのだろうか、それは永遠の謎になりそうである。

水着の紐を絞め終えると、ノアはゼノヴィアの肩をポンッと叩いた。

 

「ありがとうノア」

 

〈別にどうということはない〉

 

「そ、そうか・・・それでノア、どうだ?」

 

ゼノヴィアがその場でクルリと一回転をする。おそらく、今の自分が着ている水着が似合っているかどうかを聞いているのだろう。ならば、ここは本音を言わなければならないと思い、ノアはメモ帳に今の自分が思ったことを書いた。

 

〈一言でいえば可愛いぞ。君自身が元から綺麗だからそうなるだけかもしれないが、着ている水着がより綺麗に見える。まあ私好みと言ってもいいかもしれないな〉

 

無論この言葉に悪意はないのだが、どうやらゼノヴィアには刺激が強すぎたらしく、顔から今にも湯気が出そうなぐらい赤くなっている。

 

「あ、あのだな・・・ノア!」

 

〈どうした〉

 

とりあえずゼノヴィアの着替えも終わったため、更衣室から出てリアス・グレモリーと姫島朱乃の戦闘を止めようとしていたその時、ゼノヴィアに呼びかけられたノアは足を止め後ろを振り返る。

 

「いきなりで悪いが・・・・私は君が好きだ!」

 

ゼノヴィアの口から出てきたその言葉は、一瞬ノアの思考を停止させた。だが、一瞬でその言葉の意味を理解したノアは、すぐにどういうべきかを考えた。ゼノヴィア自身には悪いとは思っているが、はっきり言ってノアは恋愛には興味がない。女性が綺麗だと思ったことは確かにある。だが、それは綺麗な花を見て綺麗だと思うのと同じことであり、そこには恋愛感情は含まれていない。先ほどの「私好み」というのも、ただの草か花かという範囲の話であり、決してそのような感情はない。それ以前に、たとえ彼女の事を万が一好きになったとしても、いつかはこの宇宙を去る日がやってくる。全宇宙を守るものとして、一つの宇宙に長時間いることはできないのだ。だからこそ、ノアは悩んだ。彼女の想いに答えるべきか、それともこの場ではっきりと断るべきか。

 

「無論、君が私を恋愛対象としてみていなくても構わない。だが、私は自分の感情に嘘はつきたくないんだ!」

 

あまりにも純粋すぎるその視線に、ノアはメモ帳とペンを床に落とした。恋愛とは永遠に無縁になると思っていたが、まさかこんなところで自分に好意を抱く女性が現れるなんて想像しなかった。ノアはいっそのこと「ノア・スタードライヴ」を使って時間を巻き戻してやろうかとも思ったが、さすがにそれはまずいのでやめた。そして数秒の無言の時間が続いた結果、ノアが出した答えは

 

「と、友達からお願いします・・・」

 

ヘタレ男よろしくの「とりあえず告白されたら友達から」だった。

 

 

               ○●○

 

というわけで、ゼノヴィアから告白されたノアはとりあえず友達からということでゼノヴィアと付き合うことになった。人生初の恋が成功したせいか、更衣室から出た後のゼノヴィアは終始にやけていて部員たちから心配のまなざしを向けられていた。後戻りはできないため、こうなったらいけるところまで行くしかない。人生初の告白を受けてあんな返事しかできなかった自分が非常に憎らしいノア。とりあえず、今後をどうしていくかを考えて行かなければならない。

時刻はすでに午後3時を過ぎており、泳ぎ過ぎと暴れすぎで小腹もすいたため、今日はこのあたりで解散ということになった。初めてオカルト研究部全員と触れ合ってみたが、特にこれといった変なところもなく、普通の高校生という感じしかしなかった。悪魔というだけで、少し警戒しすぎたのかもしれない。だが

 

(全員が抱えてる闇は相当深そうだがな)

 

各々が抱えている心の闇は、ノアが想像した以上に深かった。ちょっとやそっとでは消え去らないほど濃い心の闇は、やがて破滅を導いてしまう。当面はこの闇をどうやって克服させるかがオカルト研究部の課題になりそうだ。

 

「久しぶりだな」

 

ノアを含めた全員がその言葉に足を止める。目の前にいたのは、ノアよりも黒いダークシルバーの髪をした青年だった。年は兵藤一誠たちと同じぐらいだが、なぜだかその雰囲気は兵藤一誠たちよりも長く生きているような感じがする。

 

「その声、貴方まさか白龍皇!?」

 

リアス・グレモリーの言葉に部員たちが臨戦態勢に入る。少しでも動けば、すぐにでも攻撃に入れるように。

 

「たしかに、俺は白龍皇だ。名前はヴァーリと言う」

 

「それで、白龍皇が私たちの学園に何の様かしら? まさか、ここで赤龍帝との決着でもつける気?」

 

リアス・グレモリーの言葉に一番反応したのは、左手に籠手を展開した兵藤一誠だった。自分の中に宿っている龍の宿敵が現れたのなら確かに警戒はするだろう。だが、ヴァーリの目には兵藤一誠の姿は写っていないような気がする。

 

「別にこんなところで戦ったりなどしないさ。俺たちの戦いには、もっとふさわしい場所がある。そうは思わないか?」

 

ヴァーリに視線を向けられたノアは、眼を閉じた。それを肯定の意として捉えたのか、ヴァーリは口元に笑みを浮かべる。

 

「では俺はこのあたりで失礼させてもらうよ」

 

『待ってくれヴァーリ』

 

ヴァーリがその場から立ち去ろうとした瞬間、彼の背中から白く輝くドラゴンの翼が生えた。ヴァーリの神器(セイクリッド・ギア)であり十三種の神滅具(ロンギヌス)の一つである白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)だ。そして神器に宿る白い龍――アルビオンは言葉を発した。

 

『ドライグの宿主、貴様に一つ言っておくことがある』

 

「お、おれ?」

 

兵藤一誠は自分を指さし、少し驚いた表情になる。

 

『君は悪運が強いようだな。ヴァーリは君と戦う気もなければ興味すら持っていない。一年前に奴と会わなかったヴァーリなら少しぐらいは興味を持っていたかもしれんが、奴に感謝するんだな。ただの悪魔としてその人生を全うできることを』

 

「ちょ、ちょっと待てよ! 奴っていったい誰の事なんだよ!?」

 

『・・・ノアの神。かつてこの世界に現れ、一つの国を破滅から救った伝説の光の巨人だ』

 

「そして、俺の超えるべき目標でもある。案外、君たちのすぐ近くにいるかもしれないぞ?」

 

それだけを言うと、ヴァーリは空高く飛び去って行った。再び聞いた「ノアの神」というフレーズに後ろでゼノヴィアといた筈のノアの方に顔を向ける部員一同だが、そこにはすでにノアとゼノヴィアの姿はなかった。

光の巨人だって、面倒くさいことは避けたいんです




あかん、暇つぶしのはずやったのにこっちの方がめっちゃ書きやすい・・・
今回は後々やる話の練習のため会話を最小限に抑えました。その後々やる話のヒントは『新宿』です。
ではまた今度
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