武装神姫バトルマスターズ with you   作:ひまっちゃん

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第八話 恐怖の核心

「…………」

「っ……」

 しばし、流れる沈黙。その気まずい空気に耐え切れなくなり言葉を最初に発したのは青年の方だった。

「えっ、俺?」

「はいっ、あのっ……」

 青年の問いかけにあわてた態度をみせる美幸。そんな彼女の様子を察してか、ライラが美幸の肩から声をあげる。

「すいません、いきなり。私ライラと申します。こちらはマスターの山中美幸」

「先ほど千歳さんとバトルしてた方ですか?」

 そのままぺこりとお辞儀するライラに青年の神姫が問いかける。

「はいっ、そうです……」

 話の流れができたことからか、美幸が少しほっとした様子をみせた。それに続き、ライラが助け舟を出すように言葉を続ける。

「先のバトル、拝見させていただきました。お見事でした」

「こ、これはどうも……」

「あの、貴方はFバトルランカーなのですか? 新しい機体で成績をリセットなされてるとか?」

「えっ……? いや、ちがいますよ。俺は神姫バトル始めたばかりの初心者です。人違いじゃ……?」

「始めたばかり……? そんな……でも……」

 ライラは青年の肩にのっているセレーネに視線を移す。

「そちらのゼルノグラード型さんはかなり調整が施されているとおもうのですが」

「え、私?」

 不意に話をふられきょとんとするセレーネ。しかしすぐに状況がのみこめたのだろう。客観的にみればセレーネは青年の神姫のようにみえる。

「違います。私は……その……」

 やや気まずそうに自分の事を説明しようとするセレーネ。それを察してか、さえぎるように青年が声を挟んだ。

「この子は今、野暮用で俺があずかってるんです。俺の神姫じゃないですよ」

「そうですか……」

 少し残念そうにするライラ。しかし、美幸はそうでもなかった。

「あのっ、どうやったらさっきみたいに戦えるんですか?」

「えっ?」

「美幸……」

「バトル始めた時期とか、そんなのどうでもいいんです。ただ、私も貴方みたいに戦えるようになりたくて」

「ちょっ、ちょっとまって……俺、そんなたいそうな……」

 叩き込むように話しかけてくる美幸に少しのけぞる青年。青年の神姫も苦笑いを浮かべながら自身のマスターに話しかける。

「マスター……この人たちも本気みたいですよ……」

「う、うーん……、でも大阪さんも探さないと……」

「私のことはそこまで気にされなくても大丈夫ですよ? あの人、行動範囲広いですから探すにしても気長にやらないといけないでしょうし」

 他方、セレーネはそこまで気にした様子もなく声をあげる。

「あまり私のことで貴方の行動を束縛するのもいやですし。お友達を増やす良い機会では?」

「セレーネ……」

 気遣っているのか、本心なのか。セレーネの表情からは読み取れない。しかし、ここで必死に探し回っても無駄足になる可能性が高そうなことは青年もわかってはいるようだった。

「お願いしますっ、おねがっ……」

 と、美幸がいきなりその場で頭を下げ始める。同時に、唐突に悲痛な叫びをあげる少女の姿に、周囲の雰囲気も若干異様なものにかわりはじめた。

「ちょっ、ちょっとまって。わかった、わかったから。なんか俺ヤバい人みたいじゃないか」

「あっ……」

 それを感じあわて始める青年。美幸もそれを察したのかはっとしたように頭をあげた。それを見て青年はほっと一息つくと、すっと手を差し伸べる。

「力になれるかわからないけど、とりあえず一緒にやってみる? バトル」

「は、はいっ……!」

 青年の差し伸べた手に笑顔でこたえる美幸。しかし、そんな穏やかな空気も長くは続かなかった。

「でも、バトルを教えるっていっても具体的に何もすればよいのでしょう?」

「そ、そうだよな。正直俺も知識は全然ないからなぁ……」

 具体的に何をするか、それが全く分からないのだ。バトルについて基本操作を知ったばかりなのだから当然といえば当然なのだが。

 そんな青年に助け舟を出すようにライラが声をあげる。

「では、バトルログを見てもらってもよいですか?」

「バトルログ……?」

「はい。美幸と一緒に戦ったバトルの経歴です。私のメモリーに記憶されていますから筐体を使えばバトルビデオとして再生できます。なんとなくでもいいですから、何かわかることでもあれば」

「へー……じゃあ、見てみようかなぁ」

「はい、お願いします。ではこちらへ」

 青年の快諾にライラはにっこりとほほ笑むと筐体へと青年を誘導する。バトル用とは別にバトルログや武装エディットの改良などに用いるための筐体がいくつも置かれている場所。主にバトルの準備等に使われるスペースだ。その一つに移動すると、ライラは手慣れた様子で筐体の一つへと入っていく。直後に、筐体から3Dのバトルビデオがあらわれた。

「これは……」

 ライラと戦うのはストラーフ型。と、いうか先ほど青年と戦った千歳の神姫、リリスだ。どうやらライラは直前のバトルを青年に見せるつもりらしい。

「ふむ……」

 序盤は機関銃でライラが先制攻撃。フローラルガードで守りに入るリリス。ここまでは牽制としては悪くない。

「あっ、ここでやられちゃって……」

 しかし、リリスが大剣のレールアクションを使ってから一気にライラが劣勢になる。なんとかロッドの十手で反撃に出ようとするも大剣のガードポイントでさらに攻め込まれ──

「うわっ……」

 自分がやられた故にタイミングが分かっていたのだろう。思わず美幸が目をそらす。千歳の強烈な大剣の一撃がライラを貫くその瞬間から。

「…………」

「どうでしょう?」

 やや不安げに青年を見上げる美幸。

「ど、どうでしょうと言われましても……」

「これだけで何かわかるんですかね……」

 青年の神姫とセレーネはやや困惑した表情で青年を見つめる。彼女達には千歳と美幸の実力差がはっきりしていることしか分からなかった。このバトルログから具体的にどのようなアドバイスができるというのか。

「他のログはあるの?」

「えっ?」

 ふと、唐突に青年は筐体の中のライラにむかって話しかける。

「バトルログ。千歳と戦った時のものだけじゃなくて」

「え、えぇ……練習試合としてこの子のお兄さんとのものが……」

「じゃあ、それみせてくれるかな」

「でも、練習試合ですよ?」

「いいから。ちょっと気になることがあってさ」

「は、はい……」

 今度表示されたのは青い髪のアーク型との戦闘画面だ。ライフルを用いて美幸の出方をうかがうように射撃攻撃をしかけてきている。ライラはそれをかわしながらオブジェクトの影にかくれ機関銃で反撃。

「あ、あのアーク型……」

 と、セレーネが不意に声をあげる。その思わずあげられた手に青年の神姫は不思議そうに首をかしげた。

「ご存じなんですか?」

「はい、F2バトルの上位常連ですよ。名前はたしか葵さん……マスターは山中日向……」

「え、じゃああの子ってFバトルランカーの妹さん!?」

 青年の神姫は息をのみながら美幸の方をふりかえる。だが美幸はそれに気づかず不安げに筐体と青年を交互に見つめているだけだ。

「でも、なんかそれはそれで大変そうですね……」

 ため息まじりに青年の神姫はそうつぶやく。セレーネもやや曇った表情で彼女を見つめていた。

 

 

「……ふむ」

 そんな中、バトルビデオの再生が終わり青年がひとつため息をつく。

「何かわかりました?」

 筐体から出てきたライラがやや不安げに青年にといかける。それに対し青年は少しの間を置くとこくりと頷き美幸の方に振り向いた。

「少し、俺とバトルしてみようか。山中さん」

「えっ、バトルですか?」

「うん。確かめたいことがある」

 唐突な申し出に美幸は少し唖然とするもすぐにライラに視線をうつしアイコンタクトを送った。

「わかりました。ライラ」

「はい、マスター。あの、お手柔らかに」

 ハッタリではなく、青年は何かを感じた。そう確信したのだろう。柔らかな口調とは裏腹にその表情には厳しさがある。そんな彼女を見て少しむずがゆそうに微笑む青年。

「セレーネ、俺が君にライドすることってできるのか?」

「わ、私っ!?」

 ふと、唐突に青年はセレーネの方に振り替える。自分に話がくるとは思っていなかったのか、セレーネは頓狂を声をあげてしまった。

「あぁ、俺の神姫じゃ武装が少なすぎてさ。君の武装エディット、昨日確認したところだと結構いい武器がそろってたから」

「べ、別にできますけど……」

 青年の神姫の方をちらりと見るセレーネ。

「っ……」

「なら頼む。セレーネの武装なら都合がいい」

「あの、確認って何を……」

「いや、そんな大したことじゃないよ。いってくる」

「マスター……」

 少し不安げな表情を浮かべる青年の神姫の頭を軽くなでると、青年は美幸たちと共にバトル用の筐体に移動していった。

 

 

 

「あの、どうして私なんですか?」

「え?」

 筐体の中、バトルフィールドに向かう途中。セレーネがふと問いかける。

「一応、貴方には自身の神姫がいるのに……」

「あぁ、俺の神姫は武装が少なすぎるからな。ちょっと確認できないんだ」

「確認って……?」

「あぁ、つまりね──」

 

 

 

「いくわよ、美幸。リラックスできてる?」

 バトルフィールドが形成されていく。フィールドはコロシアム。スタンダードなフィールドだ。

「うん、あの人がお兄ちゃんと似てる人でよかった。なんか落ち着いてる」

「よかった」

「やっぱり私の実力を知ってもらわないといけないんだよね。バトル頑張るよ」

「そうね。勝つつもりでいくわよ」

 さっき惨敗したものの、美幸の戦意は衰えていない。それを確認したことでライラはほっとしたように笑みを見せる。

「でも……何するつもりなのかしら……彼は……」

 だが、青年の狙いが分からない。確かにバトルをしないことには美幸の実力も把握できないということだろうが──

「いくよっ、ライラ」

 と、美幸のその声でライラは我に返る。これからバトルが始まるのだ。そんな事を考えている場合ではない。

「了解っ!」

 今は自身のマスターを勝たせることに集中する。それが神姫の役割なのだから。

「せーっのっ……!」

 戦闘開始直後は互いの神姫は距離が離れている。しかも今回のコロシアムステージのような視界が開けたフィールドなら予備動作の大きい機関銃は牽制としては有効だ。アルヴォPDW9を構え攻撃を開始するライラ。しかし、流石にそんな大振りの攻撃はセレーネには当たらない。中央部にあるオブジェクトにセレーネは身を隠す。

「流石にいきなり機関銃がヒットする相手じゃないみたいね……くるわよっ!」

「うん、大丈夫……」

 だがこれは当然美幸も予想している。そして、青年の先の戦いを見た二人なら、彼が爆弾を使ってくることを警戒しないはずがない。手で投げるだけの爆弾は隠れながら攻撃ができる数少ない武器でもある。

「ここっ!」

「わかった、お願い、ライラ──!」

 オブジェクトに隠れながら爆弾を投げてくるセレーネ。だがあらかじめそれを読んでいた美幸はレールアクションを起動させる。

「ROUTE2!」

 ライラの身体が白く輝き、一気に斜め右方向に直進。そのまま対象へと接近する。その手にロッドの十手を構えて。

「はあああああああ!」

「っ──!?」

 しかし、その攻撃は青年に読まれていた。ライラが突進する方向には斧を振り上げたセレーネの姿があった。オブジェクトに隠れたのは一方的に爆弾で攻撃をしかけるためのものではない。予備動作の大きい斧を構える姿を隠しつつ突進を誘発させカウンターをしかけるための布石。

「うあああああっ!?」

 その策に完全にはまってしまい、セレーネの斧で弾き飛ばされるライラ。

「美幸……大丈夫?」

「う、うん……」

「追撃、くるわよっ」

「わ、わかっ……」

 体制を崩すライラの腹部をセレーネが蹴り上げ追撃をしかける。その両手に斧をしっかりと握りしめて。

「あっ……!」

「美幸っ!!!」

 おびえるように顔を隠す美幸。しかし、その行動はさらにライラを窮地に追い込んでしまう。

「うぐっ……あっ……」

「だめ、体勢を整えないとっ!」

 だが時既に遅し。斧による二撃目がライラの背中を殴打しそのままライラは地面にたたきつけられる。

「がっ、ぐっ……」

 

 

 

「……うぅ、完敗だよ……」

「美幸……」

 セレーネの武装は青年の神姫よりも数段ランクが上のものが装備されている。そのため仕方ないといえば仕方ないのだが時間にして三十秒ももたなかったことに美幸はがっくりとうなだれてしまっていた。そんな彼女の肩をとんとんと優しくたたく青年。

「やはりね、山中さんは結構うまいよ。バトル」

「そんな……私……」

「お世辞じゃない。ちゃんとレールアクションも使えてるじゃないか。ただ癖というか、致命的な弱点があるね」

「えっ……?」

「癖?」

 その言葉に美幸、そしてライラも首をかしげる。青年の言葉に心当たりが全くないのだろう。

「接近武器、それも大型の、その中でも振り下ろすような相手の攻撃動作をみるとおびえてうごけなくなっちゃってる」

「え……」

 だがその言葉で美幸はびくりと肩を震わせた。はっと、何かを思い出したかのように。

「もう一度、バトルログを再生しようか」

 論より証拠、とも言いたげに青年はバトルログ再生用の筐体を指さす。むろん、それを二人が断るはずがなかった。

 

 

 

「山中さんの練習試合の動きは結構良かったと思う。相手も手加減してるんだろうけどちゃんと攻撃に反応してるよね」

「……」

 アークとの戦い。明らかに相手は手加減しているが放たれた攻撃に対して美幸はある程度順応に対応している。

「でも千歳とのバトル、相手の大剣が見えてから山中さんの動きがかなり鈍ってる」

「あっ……」

 だが次に再生された千歳とのバトルログ。その大剣の袈裟切りが放たれたシーンで青年はそのログを一時停止させた。その後、ゆっくりとこれを再生する青年。確かに、この一撃の前と後では攻撃への対応速度が鈍っている。

「さっきの俺とのバトルもそうだよ。最初の爆弾に対してはちゃんと反応してるのに。予備動作が大きい斧の対応が全然できてない」

「確かに……」

 自分でも気づいていなかったのか。考え込む仕草をとる美幸。

「多分なんだけど……」

 そういいながら青年は美幸の肩をたたき自分に注意を向けさせると拳を高くふりあげた。

「ひゃっ!?」

 それに対し反射的に顔をかくす美幸。

「こういう、相手の動作を見る事に慣れた方がいいんじゃない?」

「あっ……」

 はっとした表情で青年を見つめる。客観的に見てみれば青年はただ拳をふりあげただけだ。別に殺気を放っているわけでもなくただ単純に。

「美幸、その動きが怖いの……?」

 ふと、バトルログの再生が終わり筐体から出てきたライラが美幸に話しかける。

「そう、みたい……自分でもあんまり気づかなかったんだけど、特にその動きをみると、なんか何も考えられなくなる……」

「美幸が怖がっていることは私も感じてた。でも恐怖の対象が相手の『攻撃』じゃなくて『動作』だったなんて……」

 それを聞いて少しの間、目を閉じるライラ。

「どこで気づいたんですか? その美幸の『癖』に」

「えっ? バトルログだけど。だから見せたんじゃないのか?」

「それは……でも、まさかここまで具体的に……」

 青年が千歳に勝った時と同じように、いや、それ以上に目を大きく見開くライラ。心底、彼の言葉に驚いているようだった。

「……なるほど、だからセレーネさんを」

「あぁ、俺は大型の近接武器を持ってないからさ。セレーネに頼むしかなかった」

 納得したように感嘆のため息をもらす青年の神姫。

「美幸と一緒に戦ってきた私でも……しかも、美幸自身も良くわかっていなかった恐怖の核心を……たったあれだけで……」

 一方、ライラは唖然としたまま青年を見つめていた。そんな彼女をよそに美幸が青年に問いかける。

「えっと、じゃあ私はどうすれば……」

「うーん、具体的に対処法はわからないんだけど……ショック療法がきくとか?」

「うっ、そ、それはあまり……」

「はは、じゃあ先ずは小型の近接武器で似たような動きをするから、それに慣れてみようかな」

「は、はいっ!」

 具体的に何をすべきなのか、その方針が定まった。それ自体は喜ばしいことだ。だが無邪気に喜ぶ美幸に対し、ライラの表情はかたいままだった。

「この人、絶対初心者なんかじゃ……いったい、どんな……」

 

「おー、いたいた。探したんだぜお前」

「鬼さん、みーつけたーなのですぅー」

「えっ?」

 

 ふと、気の抜けた二つの声が響く。

「甚平! どうしたんだよ」

 青年はその声の主、甚平を視界にいれると目を丸くする。そんな彼の対応にやや不満げな表情を見せる甚平。

「『どうしたんだよ』じゃねーよ。お前がメールしたんだろーが」

「メールにこたえて。かれーにさんじょー、なのですぅ」

「いや、そうだけど……」

「よろこべ。大阪に会える方法が分かった」

「っ! 本当かっ……」

 と、甚平のその言葉に表情を一変させる青年。本来の目的に直結する手がかりが突然ふってきたのだから当然か。

「あぁ、本当だ。しかしお前……」

 だがそんな彼の真剣な声色をよそにおき、甚平はからかうように美幸の方に視線を向ける。

「小学生……中学生? いや、どちらにしてもその守備範囲は社会的にどうかと思うぞ」

「あ、あのなっ……!」

「ははは、冗談だって。え、なに。いきなり友達できたの? はやくね?」

「もしや貴方もたま子と同じく、友達百人作るですかー?」

「こ、こんにちは……」

「あ、警戒されてる? まぁそりゃそうか。俺こいつの親友の大木戸甚平。甚平な」

「ど、どうも……」

 良くも悪くもなれなれしく、美幸に話しかける二人。直後、二人は青年の肩にのるセレーネにも気が付いた。

「お、セレーネか。俺のこと覚えている? 昨日ちらってあったんだけど」

「たま子ですぅー。また会えてうれしいのですぅ」

「あ、はい。もちろんですよ」

「あの、もしかして。私邪魔……」

「いやいや全然。伝えること伝えたら俺は消えるんで。ちょっとまっててくれよな」

 急に知らない人が話しかけたことで居心地が悪そうにする美幸。ひきつった愛想笑いが彼女の動揺を隠さず伝えている。しかしそんなことを甚平達が気にする様子は全くない。

「いいか、大阪はかなりいろんなゲーセンうろついてるようだぜ。無駄に豪華な服きてるから神姫NETでちょっこり話題になってる」

「神姫NET?」

「それは後回しだ。とにかくな。偶然出会うなんてことは普通に考えて無理だろ。だからこの天才甚平様は考えたのよ」

「お前なぁ……もったいぶんなって……」

「わりぃわりぃ。いいか。次に神姫センターで開かれるF3バトル予選。そこにいけ」

「は?なんで……」

「単純な話だって。その出場応募者に大阪幾男の名前があった」

「な、なるほど……F3バトルか……」

 その言葉に、考え込む仕草を見せる青年。それをFバトルへの興味と受け取ったのか甚平はにやりと笑みを浮かべた。

「あぁ。その予選な。お前も出てみたらどうだ? 次の予選はタッグだから、この俺と一緒にだな……」

「強いマスターのおこぼれで私達もFバトルランカーになるのですぅ!」

「うわっ、たま子……さらっと本音をばらすなっ!」

「むぎゅっ」

 急いでたま子を服の中に放り込む甚平。それを見て呆れたようにため息をつく青年。

「お兄さん、Fバトル予選出るんですか?」

「え?」

 唐突な美幸の言葉に甚平は気の抜けた声をあげる。それを見て気まずそうに美幸は視線をそらした。

「あ、ごめんなさい……口はさんじゃって……」

「いや、大丈夫だよ。時間とらせちゃってごめんねー。君も出るのかい? Fバトル予選」

「わ、私は……」

 ライラと視線をかわす美幸。それを見てライラは首をかしげる。

「…………俺と、組んでみようか。山中さん」

「え?」

「んがっ!?」

 青年の言葉にあんぐりと口を開ける甚平&服の中のたま子。だがそんな二人の存在が目に入っていないかのように青年は言葉を続ける。

「一緒に出場してみようよ。Fバトル予選。良い目標になるんじゃないか」

「え、いや……でも私は……」

「お、おいちょっとまて。お前、俺との友じょ……」

「いいんじゃない。美幸。せっかくのお誘いなんだし」

「ライラ……」

 ライラのその声に、美幸はこくりとうなずく。そして改めて青年の方を見るとにっこりとほほ笑んだ。

「わかりました。さっきは私のお願いをきいてもらったので。今度は私が応えるばんですね」

「あぁ、よろしく」

 

 

「えー、おーい。じょうだんだろー……俺のFバトル出場への夢がぁ……」

「マスター……人望が無さすぎるのですぅ……」

 そんな青年と美幸の二人を前に。四つんばいになる男と神姫がいた。

 

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