武装神姫バトルマスターズ with you   作:ひまっちゃん

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第二話 輝く才

 神姫が立つ足場が停止ころにはすでに筐体の外の賑やかな雰囲気は微塵にもなくなっていた。薄く緑色のライトで照らされたバトルフィールドへの入り口。大金を保管している銀行の金庫のような分厚い扉と何重もの鍵でとざされたその前には「CLEAR」と表示された小さなモニターがあった。

「マスター、では」

 青年の神姫が一歩前に進むとその表示は「RIDE ON」と変わり、同時にモニター全体がエメラルドグリーンに輝きはじめる。ライドオンシステム。人と神姫の精神を筐体を通じてリンクさせ擬似的に一体化し、人間の意のままに神姫を操られるそのシステムはまさにヴァーチャルリアリティ技術の革新であり、神姫バトルの歴史を大きく変えた。

「うっ……」

 マスターである青年の精神が神姫のCSCに宿りその身体のコントロールが青年に移る。その瞬間、ピンク色の閃光が神姫の胸から小さく放たれた。

「これがライドオンか。本当に一体化した感覚だな」

 神姫……否、青年は手を握ったり開いたりして自らが宿った身体の感覚を確かめる。筐体の外ではマスターは特殊なゴーグルをかけ神姫の見てる風景をそのまま視界にいれている。そしてライドオンシステムにより神姫の身体の操作はマスターに完全にゆだねられることになる。

「あははっ、なんかくすぐったい感覚ですね」

 ふと、青年の頭の中に声ではない、なにかが響く。それに対し青年は一瞬、目を見開いて驚いたそぶりをみせるもののすぐにその正体に気づいたのか安心したかのように目を細めた。

「なるほど、ライドオンしても話せるシステムなのか」

「はい、身体操作はマスターに委ねられますが武器エネルギーの確認やロックオン標示、敵神姫の状態把握等サポートは私の役目ですから。ボイスパーツは管轄外となっています」

「うーん、よく分からないけど基本的なバトルシステムはそっちにまかせていいのかな」

「そうですね。とりあえず初陣ですし私の体に慣れてみてください」

「あ、あぁ……分かったよ」

「……ん?」

 そう言いながら青年は顔を赤くしながら頬をかく。そんな彼の反応に神姫は怪訝な声をあげる。

「マスター、はじまりますよっ」

 しかし、バトルフィールドへの入り口が開いた瞬間、神姫の声色が変わった。それをきいて青年も表情をかたくする。

「よしっ、いくぞっ……」

 入口の先にあるのは白いキューブの中に閉じ込められたような白一色の世界だった。だが青年がフィールドにたったことを認識したせいだろう。瞬時に床や天井からキューブ状の突起物があらわれその空間は変形していく。

「景色が変わった瞬間バトルスタートです。気を抜かないでくださいね」

 淡泊な機械音が響く中、神姫は青年に対して注意を促す。それを聞いて青年は自らを宿した神姫の手首をくるくると回し始めた。

「はじまりますっ!」 

 神姫がそういった瞬間、その世界に色があふれ始めた。グリーンの床にところどころ点在するライト。天井から伸びる柱。中央には一際大きな天井から伸びた柱と床のライトがある。

「コロシアムステージです。敵神姫反応左にありっ。ロックオン操作をお願いします。その後の標準操作はこちらが引き受けますから!」

「うおっ……」

 と、青年の意思に反し頭部が僅かに左に傾く。ロックオンによる敵神姫情報の具体的把握。神姫バトルにおいて先ず最初にやらなければならない行動だ。

「なるほど。人間の俺じゃこの感覚は味わえないな……すごいよ」

 青年は目を細めながら感心のため息をつく。神姫の目には人間ではとらえられない相手の情報が詳細にうつっている。その情報は筐体のゴーグルを通し、青年の目へと入っている。敵との距離だけでなく、所持する武器の射程が届くかどうか、そして何より敵神姫の体力が。

「マスターッ!すでに相手は動いています。こちらも行動をっ」

「あぁ、ごめんごめん」

 青年は神姫の声に対して軽く謝ると敵神姫であるプルミエに向かって直進していく。この距離では青年の所持する武器では攻撃することがかなわない。

「はっ!」

 そして、ある程度互いの距離が縮まった時だった。プルミエはすっと足を止めると小さな銃をかまえてこちらにエネルギー体を発射してきた。

「マスター、ハンドガンです。回避をっ」

「了解」

 青年はダッシュしたままジャンプして球体状のエネルギーを回避する。

「遠距離攻撃かっ、こっちにも武器あったっけ?」

 しかしプルミエの放った攻撃は一回だけではない。青年は着地をした瞬間再びダッシュして弾の軌道から逃れようとする。

「はいっ。私の武装にもハンドガンがあります。相手のレベルもこちらと同じようですし武装はほぼ同じかと。防具は相手の方が充実してるみたいですが」

「そうか……」

 自分の神姫の返答に青年はくっと唇をかみしめた。

「どうしましょうか、こちらもハンドガンで反撃します?いつでも実体化できますよ」

 通常時の機動力確保のため神姫は攻撃の瞬間のみ武器を実体化させている。そのことを知らず青年が不安に思っていると誤解したのか、神姫の声色は青年を気遣うようなものだった。

「いや、こちらが攻撃するのは後ででいいかな。もうちょっと把握したい」

 だが青年は思いのほか冷静だった。最初はダッシュとジャンプだけで回避する青年だったが三、四回目の攻撃に対しては弾が来る直前で体を傾けるだけで回避している。

「あ、そうですよね。先ずは私の体に慣れてくださいって言ったのは私でした」

 その行動の意味を神姫も理解したようだった。神姫のダッシュはただのダッシュではない。自らに内蔵されたブーストを使って通常よりもはるかに早く移動することができる。しかし、ブーストの連続使用時間には限りがあるためどこかで息継ぎをしなければならないし、そもそもこれを消費しないですむのであればそれが最善の手となる。青年が最初にしたジャンプはブーストを消費せず、自分の行動の軌道を横から縦に移動させるもので息継ぎと回避、両方をこなすことができる行動だ。それを理解した青年は次に、ハンドガンの攻撃がどのぐらいの速度なのか、どのような動きをすれば回避できるのかをはかっている。青年が回避に徹することから、神姫はそう理解した。

「でもマスター。ずっと回避してるだけじゃ……」

 しかし当然、その行動だけで勝利をつかむことは不可能だ。神姫バトルの勝利条件が敵神姫の体力をゼロにすることにある以上、こちらも反撃をしなければならない。そのことを意識させるべく、神姫は青年に声をかけていく。

「大丈夫。ハンドガンの弾速はそこまで早くないみたいだし相手も遠距離攻撃にそこまで慣れてるとは思えない。狙いを定める時に明らかに足が止まってる」

「ですが……」

「うーん……ハンドガンでダメージを稼ぐ気はないかな。ちょっと考えてみるよ」

「わかりました」

 しかし、青年は反撃に出ようとはしない。これに対し神姫は少しだけ不満げな声色で返答するものの今回のバトルは青年の初陣だ。そうだとすれば勝利よりも青年が神姫の操作に慣れることを最優先事項、その行動に対し過度に介入するのは余計なお世話だということは神姫も理解していた。

 

 

「……地味ね」

 そのバトルを筐体の外から見ていた少女はおもむろにため息をついていた。青年の前にその筐体でバトルをしていた髪をポニーテールで結んだその少女。やや釣り目で眉間には小さなしわ。口角はやや下がっており一見して明らかに不機嫌なことが見て取れる。

「そうかな」

 そんな彼女に対して、マオチャオ型の神姫を肩にのせた青年が声をかけた。その姿をみると少女は再びため息をつくと僅かに顎を上に傾け、目を細める。

「なによ、あんた。負け惜しみでもいいにきたの?」

「むっしゃー、覚えてろですぅ。次は私が……」

「まぁまぁたま子、冷静になれって」

 たま子と呼ばれたその神姫の頭を軽くなでながら彼は苦笑いを浮かべる。先のバトルでその少女の勝気な性格は彼も認識していたのだろう。

「千歳さん、だったよね。さっきは勝負してくれてありがとな」

「なによ。私、負かした相手に興味なんてないんだけど?」

「ははは、いってくれるなぁ。でも、このバトルは見といた方がいいと思うぜ?」

 千歳と呼ばれたその少女は、彼の言葉に首を傾げる。そして改めて筐体のモニターに目を移すと、今度はわざとらしくため息をついた。

「こんな地味なバトルを? 珍しい色のアーンヴァルがいると思ってみてみれば。二人とも超初心者じゃない。見る価値ないわよ」

 言葉こそ中傷じみているがその言葉は確かなものだった。事実、彼らのバトルを興味深げに見ている者は周囲に一人もいない。その他の筐体で行われているバトルの方に人が集まり、その集まりからあふれた者がちらちらと青年達の筐体のモニターに目をやるぐらいだ。その客観的事実が千歳の言葉を裏付けている。

「確かに超初心者なんだろうが……マスターがアイツだからな」

「アイツ?」

 しかし、彼だけは違っていた。千歳と話しながらも青年のバトルからは気をそらさず注意を配っている。そんな彼の態度に、千歳は怪訝な表情を浮かべながらも興味をもったようだった。

「あんた、あの子の知り合いなの?」

「いいから見とけよ。昔からアイツは面白いやつなんだ。色々な意味でな」

 そういいながら彼は青年が使う筐体の方を指さす。だがその筐体で行われているのは柴田が無造作にハンドガンを乱射し、それから青年が逃げ回っているだけの地味なバトル。

「はぁ……?」

 千歳がその方を振り返ってもその様子は変わらない。だが────

「…………」

 なぜか、千歳はそのバトルから目をそらせずにいた。

 

 

「だめだ、プルミエ。全部かわされちゃうっ」

 他方、筐体の中のバトルフィールド。柴田は焦っていた。

「相手は初陣といっていましたが回避の動きがいいですね……」

 それはプルミエも同じだった。ハンドガンに限らず遠距離攻撃が可能な武器は弾の数に限りがある。全ての弾を使い切ってしまうとそのエネルギーが回復するまでその武器が使用不可能になってしまう。こちらの攻撃が全て回避されている以上、弾切れの瞬間に相手の猛攻を許す可能性がある。しかし、青年の徹底した回避行動は別の可能性を二人に疑わせていた。

「でもプルミエ、なんでお兄さんは全然反撃してこないのかな」

「確かに、それはちょっとおかしいですよね。もしかしたら遠距離武器をもっていないのかも」

「それなら弾切れするまで打ち切った後に近距離にいってもおそくないよね」

「そうですね。では最後の一発を打った瞬間にダッシュで近づきましょう」

 プルミエの提案に柴田は無言でうなずくとハンドガンの引き金を一気にひく。そして、僅かに腕に走る攻撃の反動を右足を一歩ひくことで処理。そのまま柴田は一気に青年の方向へとダッシュした。

「ここだっ」

 その瞬間だった。青年は待っていたといわんばかりに唐突にハンドガンを構えて攻撃の体勢に移行する。

「えっ!?」

 それに気づいた時には遅かった。柴田はダッシュ、つまりブーストを消費して青年に近づこうとしていた。ブーストを消費した行動は通常よりもエネルギーを多く消費した行動。すなわち同時に小回りをきかせることが難しいということを意味する。さらに、柴田側が青年に遠距離武器が無い、と思っていたことも足かせとなっていた。その小さな油断が柴田の反応を遅らせている。

「いつっ……」

 青年のハンドガンから放たれたエネルギー体を回避することができず、柴田はそのまま体勢を崩してしまう。しかし転倒までには至らないようになんとかその場で立ち止まる。だがその事で、一瞬柴田は青年から視線を地面の方へとそらしてしまっていた。

「相手もハンドガンを持っていたんですかっ、意表をつかれましたね。マスター……」

「でも大丈夫、この距離なら……あれ?」

 そして、それがまずかった。柴田が顔をあげた時、その視界から青年の姿は消えていた。

「マスター、上ですっ」

 柴田も青年をロックオンしているため、視界からは消えても青年がどの方向にいるかは理解できている。だが唐突に受けたダメージ、青年が消えた事への焦りが柴田の行動をにぶらせる。

「うわっ」

 柴田にとっては理解がおいつかないまま、再び柴田に対してハンドガンによる攻撃が浴びせらる。

「落ち着いてマスター、ガードで凌いでくださいっ!」

「わ、わかったっ」

 一発のダメージは小さいものの何度も攻撃を受けていては致命傷になりかねない。プルミエは焦る柴田を落ち着かせながら今とれる最善の策を提案する。柴田は急いで腕を前方でクロスさせ青い三角状のエネルギー壁を展開する。

「そっか、お兄さん。そうやって……」

 そして同時に、柴田は青年が今どこにいるかを理解した。青年のいる場所。そこは柴田の頭上にある、天井から伸びた柱だった。

「マスター、やられましたっ! 私たち誘導されたんです……」

 それを見て、プルミエは青年の策を全て理解した。最初の徹底した回避行動はこちらに油断を生むためだけに行われたのではない。コロシアムステージの特徴である天井から伸びた無数の柱。青年はこれを利用するために、柴田側が弾切れになった直後、近距離戦闘をしかけてくることを読み、丁度柱の位置が柴田の頭上に来たタイミングでハンドガンで奇襲をしかけたのだ。それにより自分の姿を柴田の視界から消して攪乱をしかけてきた。しかも、この青年の行動の意味はそれだけではない。

「プルミエッ、こっちも反撃……」

 とっさにハンドガンを青年に向けようとする柴田。しかし、それは意味をなさない。

「だめですっ、弾がありませんっ!」

「そんなっ……」

「くっ……」

 分かっていたことだった。弾切れの瞬間、相手の猛攻を許す可能性があることは。それだけに柴田もプルミエも悔しさを隠しきれない。しかも、これだけでは終わらない。

「いけませんっ! マスターッ!」

「えっ」

 頭上から放たれるハンドガンの乱射。ガードへの意識への集中。それは柴田の意識を青年の場所から離れさせるのに十分なものだった。

「はああっ!」

 すでに青年は柱から手を離し柴田への背後へと移動している。それは柴田にとって最悪の展開だった。

「うぐっ……」

「しまった、バックアタック……」

 ここまで裏をかかれてしまってはもはや二人になすすべはない。青年が攻撃の手を許すまで一方的に攻撃を受ける以外の選択肢は残されていなかった。

「うあああああっ」

 青年は武器を持たず素手で攻撃をしかけてきている。しかし、柴田も青年も装備が殆ど整っていないこと、すでハンドガンによる攻撃をいくつも受けてしまっていることからすればそれだけでも致命的だった。青年と神姫の渾身のアッパーにより柴田操るプルミエの体は大きく宙を舞う。

「う、っぐ……まだ、大丈夫ですよ。マスター」

「うん、プルミエ。こっからはんげ……」

そのままダウンするも、なんとか立ち上がり反撃をしようとする二人。だが、すでに勝負はついていた。

「うわっ!」

 柴田達を襲うのは近距離からのハンドガンの弾丸の嵐。

「しまった……こちらがダウンしてる間にリロードされましたか……」

「う、うわっ、回避できないっ……」

「くっ、体勢が立て直せない……」

 一発一発の攻撃力は低くともすでに限界まで体力を削られ体勢を崩している柴田達にとっては全てが脅威だった。そして、その隙を青年が見逃すはずがない。

「これで最後っ!」

 そのまま至近距離までつめより青年はプルミエの腹部に拳をねじこませる。それがトドメとなった。

「くっ……もう少しっ……」

 プルミエの体力がゼロとなりゲームが終了。バトルフィールド全体にそのアナウンスが響く。その中で柴田とプルミエは無念の表情でステージの地面へとたおれこんだ。

 

 

 

「な、面白かっただろ」

 筐体の外。青年側のモニターに表示された「You Win」の文字を見て、彼は満足げに千歳に話しかける。

「……別に」

 それを見て、千歳はくっと唇をかみしめながらモニターから目をそらした。だが、その苦虫をかみつぶしたかのような表情が彼女の心情を露骨に物語っている。

「いや、学ぶところはあったと思うぞ。千歳」

 そんな彼女に追いうちをかけるように、ふと千歳とは正反対の落ち着いた声色が響く。その声の主は千歳の腰にぶらさがるようにつかまっている神姫だった。緑色の髪に青の瞳、黒でパンクに彩られたボディ。アーンヴァルと対をなすモデル、ストラーフ型の神姫。

「なによリリス。こいつの肩でももつつもりなの? 私たちなら絶対に勝てるわ。あんなやつ」

「その言葉は否定しない。だが千歳。君はあの武装でここまで戦略的な動きをできるか? 筐体近くまで行ってみてきたがなかなか鮮やかな攻撃だったぞ」

 リリスと呼ばれたその神姫はそういいながら軽快な動きで千歳の肩まで移動する。千歳はそんなリリスを見て静かに唇をかみしめた。彼女も彼の輝く才は実感したのだろう。

「で、できるわよ……当然でしょっ」

 僅かに声色を高くして、早口で話す千歳。それを見てリリスも彼女の内心を察したのかため息をつきながら彼の方へと視線を移した。

 

 

 

「ごめんね、プルミエ。僕がもう少ししっかりしてれば……」

 筐体から離れた柴田は自らの神姫に声をかけ眉をひそめる。ライドオンシステムが採用されてから特に、神姫の性能のみならずマスターの実力はより強く結果に反映されるようになっている。今回のバトルも武装の強さは対戦相手よりもわずかとはいえ強力であったのにもかかわらず完封負け。その責任を強く感じても無理はない。

「それは私の台詞ですよ。謝る必要はありません、マスター。敗北も、強くなるための立派な経験です。まだまだ、頑張って強くなりましょう!」

 それに対し、プルミエはぐっと拳を握りしめマスターを励ます。確かに対戦相手たる彼の実力は柴田を上回っていたものの、何もマスターの強さだけで勝敗が決するわけではない。むしろ神姫はサポートに徹する以上、相手の行動を読むのは神姫の役割ともいえる。彼の武装を読み間違え柴田のとるべき行動を見誤ったのはプルミエも同じだった。

「お疲れ様。大丈夫?」

 そんな柴田とプルミエに対し、その青年は申し訳なさそうに声をかけてくる。神姫バトルとはいえ、先ほど思いっきりなぐりつけた相手だ。神姫バトルを初めてやった彼にとってはその感覚は慣れないものだったのだろう。

「大丈夫ですよ。神姫バトルはゲームですから。別にマスターにダメージが入るわけではありません」

 そんな彼に対しプルミエは恐縮したのか手を前で振りながら慌てたように返事をする。

「お兄さん。ありがとう。初めてって言ってたけどすっごく強いんだね」

 他方、柴田は少し悔しそうに、それでも嬉しそうに青年に手を差し伸べた。青年はそれを見てふっとほほ笑み握手に応じる。

「本当? 内心すごくひやひやしてたんだけどね」

「でも、私たちの動きを完璧に読まれていましたよね? とても初めての戦いなんて思えなかったです」

「それ、私もびっくりです。初めてのマスターがあんな大胆なことをするなんて──」

 柴田とプルミエの言葉に青年の神姫が口を挟む。それを聞くと、青年はため息をつきながら苦笑いを浮かべた。

「おいおい、あれは結構賭けだったんだぞ。っていうか、その言葉づかいはわざとなのか……?」

「え、何がです?」

「ははは、なんでもないよ。ごめんごめん。俺が邪だった」

 青年はそういいながら柴田から手を離すと自分の神姫の頭を人差し指でなではじめた。

「ひああっ、いきなりくすぐったいですよ」

 神姫はそれに対し手をかざして少しだけ抵抗するも照れくさそうに笑いながらそれを受け入れる。

「なんか息もぴったりでほほえましいですね。もしかしたら、貴方はFバトルで有名になるかもしれません。またお願いします」

 そんな二人の様子を見てプルミエは目を細めた。その視線に気づいたのか青年と神姫は少し気まずそうに柴田達の方に視線を返す。だが、すぐにその表情は力強いものへと変化した。

「次は勝つからね、お兄さん」

「あぁ、またな」

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