武装神姫バトルマスターズ with you   作:ひまっちゃん

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第三話 始まりの再会

「それにしても。最初のバトルを勝利でかざれてよかったです。マスター」

青年の服をよじのぼりながら神姫は、彼の肩にのぼりながらにこやかにほほ笑む。すでに筐体は別の人がバトルに使おうとしている。まるで先のバトルなどなかったかのように。

「あぁ、いろいろなサポートありがとう」

「えへへ……」

 だが二人の表情は満ち足りていた。神姫バトルでは神姫の操作はマスターがするものの様々なサポートを神姫が行っている。武器の実体化、ロックオン状態での遠距離武器の標準合わせ。たった数分のバトルの間でも、たとえ初心者同士のバトルだったとしても勝利の充実感を味わえる。その感覚をかみしめているようだった。

「でも、初めてのバトル……少し緊張しました。いろいろと反省するべきことがあると思います。マスター、なんなりとご指摘ください……あら?」

 ふと、神姫は首を傾げあさっての方向に指をさす。

「マスター、あちらの男性が、マスターに何か話があるみたいですよ……?」

「えっ……」

 青年が神姫の指さす方向をみると、その先には軽く手を振りながら近づいてくる青年と同年代の男の姿があった。

「おぅ、もしかしてと思ったら、やっぱりおまえか! 知らなかったよ、お前も神姫やってたんだ?」

「──!」

 軽く左右にウエーブがかかった髪型。よれよれのシャツにたてた襟。学生らしいジーンズ。肩にはマオチャオ型の神姫。少しだけたれ目のどこにでもいそうな優男。だが、彼の姿を見て、青年は息をのんだ。

「……なんだよ、きょとんとした顔して……オレ、オレオレ! オレだよ、オレ!……え、もしかして、おぼえてない?」

 そんな彼の態度に男は顔を少しだけ青くする。

「はははっ、そんなわけないだろ、驚きすぎただけだって。久しぶりだな。甚兵」

 だがそれは杞憂だった。青年はかろやかに笑いながらすっと手を差し出す。

「そうだよな! この大木戸甚平サマのことを忘れるわけ、ないよな~!」

 差し出された手を握りしめながら甚平と呼ばれた男はほっと溜息をついた。そんな甚平の態度に青年は申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。

「いやぁ~、それにしても、こんなところで知った顔に会えて嬉しいぜ~! オレの周り、神姫やってるやつ、いなくてさぁ」

「そうだな。俺も今日始めたばかりでさ。甚平とあえて心強いよ」

「そうなのか? でもよせよ、お前に心強いなんて言われるなんて背中がかゆくなる」

 そういいながら甚平は小さく頬をかく。それを見て青年はくすりと笑みを浮かべた。

「あの、マスター。お知り合いですか?」

 そんな彼らの姿を見ればただの知り合い程度の中でないことは察しがつく。それゆえか神姫は気まずそうにしながら声をあげた。それをみると、青年は彼女の内心を察したのか少し申し訳なさそうに眉を八の字に曲げた。

「あぁ、クラスメートだったんだよ。高校まで一緒だったんだ。」

「ど、どうもこんにちはっ。今日マスターの神姫となりました。えっと、名前は──」

「あ、どうもご丁寧に。大木戸甚平です。よろしく」

 神姫は青年の肩の上でよろめきながらも立ち上がるとぺこりとお辞儀をする。バランスのとりにくい場所でもわざわざ姿勢を正そうとするところは初心者でも扱いやすいと評判のアーンヴァル型らしい態度だった。そんな彼女に対して甚平は自分の肩にのせている神姫を掌にのせると青年の神姫の目の前まで移動させた。

「あ、これ、オレの神姫な。見ての通りのマオチャオ型で、名前はたま子っていうんだ」

「たま子ですぅ~ ふつつつかものですが、よろしくお願いしますですぅ~」

「はい、こちらこそ。よろしくお願いしますね」

 甚平の手のひらの上でぴょんぴょんとはねながら無邪気に挨拶するたま子。初対面の相手でもこうまで好意的に接してこられれば人間でなくても心をすぐに開けるものなのか。たま子がだきつこうしてくる様子を見て、体を前に倒し優しく抱擁する。まるで小さな妹をあやす姉のようなその対応に、青年は感嘆のため息をついた。

「……スルーするんだ、そこ」

 もっとも、そのため息には感嘆以外の感情も含まれていたが。

「え、何かおっしゃいましたか?」

「いや何もないよ。アーンヴァル型以外の神姫は起動前の姿しかみたことないからさ。なんか新鮮だなと思って。随分明るい子なんだな」

「へへっ、それでもメジャーどころなモデルなんだぜ。それにしても……」

 青年の興味深げな視線に甚平は自慢げに胸を張る。だが、甚平の視線も青年の神姫に釘づけになっていた。

「へぇ、そっちは最新のアーンヴァル型だな。一瞬、どの神姫かわからなかったけど。髪や瞳のカラーカスタマイズは普通にやってくれるけど。ボディまでは珍しいしな」

「店員さんが神姫をリペイントするのが趣味だったみたいでな。非売品だったんだけど起動前の神姫だったから特別に譲ってもらったんだ。娘さんを僕にくださいって言ってな」

「ちょっ、マスター!」

 青年の唐突な軽口に神姫を赤面しながらマスターの頬を軽くつく。

「はっはははは。気を付けたほうがいいぜ、このゲーセンじゃその冗談は通用しない時もあるからな。ま、冗談じゃないかもしれないけど」

「甚平さんまでっ……」

 あまりに真面目に反応する青年の神姫に甚平はくくくっと笑いをこらえる。しかし、青年の神姫が珍しいことも確かであるし、それへの興味はまだ消えていないようだった。

「それにしても……ほぉ。確かにこれはなかなかクールだよな。それでいて、しっかりしてそうだし、見た目もカワイイし……」

「いえ、そんな……」

 甚平の言葉に神姫は照れながらもじもじと手を体の後ろで交差させる。だが、その直後。

「ま、ウチのたま子のほうが、カワイイけどな!」

「にゃ~!」

 甚平は神姫への興味を失ったかのようにたま子の方に視線をうつし青年達に見せつけるかのようにその頭をなではじめた。

「あ、はは……」

 それを見て神姫はひきつった笑みをうかべる。いったん持ち上げられてから空中で放り投げだされたことに怒りを感じているのか。それを見て、先ほどまでニヤニヤしていた青年も若干顔を青ざめる。

「それにしても、神姫を今日はじめたばっかっていったよな? バトルみてたぜ、すごかったじゃないか。ノーダメージ勝利だろ」

 そんな二人の様子など目に入っていないかのように、甚平は嫌味の欠片も感じさせない爽やかな笑顔で話題を変えた。

「あ、ありがとう。でも、あの子にも言ったけど内心すごく焦ってたんだぜ? だからさ、いろいろ教えてくれるとうれしいよ」

 一方、青年はそんな甚平に苦笑いを浮かべる。とはいえ若干気まずくなった自分の神姫の空気をかえる好機だと思ったのだろう。助かったといわんばかりに話題を合わせた。

「まかせろ、オレが先輩として、いろいろ相談に乗ってやるからさ。ドロ船に乗ったつもりでいろよ!な!」

「マスター、ドロ船じゃ沈んじゃうですぅ! それを言うなら『黒船に乗ったつもりで』ですぅ~」

「あ、そうだっけ。こりゃたま子に一本とられたな、あははは!」

「あはははですぅ~!」

 しかし青年のその選択は先程までとは一味違った気まずさをその場に漂わせることになった。神姫は彼らのやりとりをあっけにとられたかのように見つめている。

「あの、マスター……これは、つっこむべきところでしょうか?」

 甚平とたま子の笑顔があまりに屈託のないものゆえに、神姫は判断をしかねているのだろう。甚平のキャラをよく知る自らのマスターに助言をあおるのは当然の行動か。

「そ、そうだな。ボケ殺しはかわいそうだろ。嫌な予感するけど……」

「わかりました。では……」

 神姫はそこでいったん言葉をきると一度大きく深呼吸をする。

「大木戸甚平さん、それに、たま子さん……失礼とは思いますが、それを言うなら『大船に乗ったつもり』では……?」

 人のギャグにつっこむにしてはあまりに淀みなく、聞き通りやすく、そしてゆっくりと話す神姫。

「突っ込み方も優等生なんだな、君は……」

 そんな彼女の行動に可笑しさを感じたのか、青年はくすっと笑いながら小声で自らの神姫に語りかける。それをきくと神姫は恥ずかしそうにしながらうつむいてしまった。

「べつにっ、そ、そんなんじゃないですってばっ。下手に失礼なことをいえばマスターの人間関係が壊れてしまう可能性だってありますしっ……」

「いや、絶対それ考えすぎだって……いくらなんでも真面目すぎるって……」

 そういいながらも懸命に自分のことを考えてくれる神姫の対応にはうれしさを感じていたのだろう。青年の表情は穏やかなものだった。

「……ん? なんだ、おまえの神姫、けっこー面白いこと言うんだな! 気に入ったぜ! あはははは!」

「あははははですぅ~!」

 しかし、そんな青年と神姫のちょっといい雰囲気も甚平達によって瞬時に壊されることになる。

「……ギャグだと思われてるみたいですね……」

「そだな。こういうやつなんだよ……はははっ」

 ため息をつきながら半ば諦めたように笑う青年。だが、ある意味純粋な対応をとる彼らに神姫もどこか好感を持ったのだろう。くすりとほほ笑むと青年の肩に座りなおす。

「それにしても、どうよ。せっかく再会したんだし、時間あるならどっか遊びにでもいかないか」

「それは名案ですぅ、私も~、マスターのお知り合いと~マブダチになるのですぅ~」

 と、甚平は青年のひじを軽くたたきながら唐突に提案をあげてきた。それをきいて、青年は待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべる。

「へぇ~、甚平は男をナンパする趣味があるのか」

「はははっ、こんなことをするのは君だけだぜ」

「気持ち悪いっつーの。そうだな。甚平はここら辺詳しいのか」

 軽口を言い合いながらゲームセンターの外を指さす青年。それを見て、甚平もどこかいくところに目星をつけたのか、パンと手をたたく。

「おぅまかせろ、オレがエスコートしてやるぜ」

「まったく、相変わらずだな。お前は……」

「お前こそな。そら、いこうぜっ」

 そう言うと甚平は青年をせかすようにゲームセンターの外に駆け出す。

「ふふっ……なんだか、にぎやかで面白い人たちですね。仲良くなれるといいな……」

 ふと、神姫はそういいながら青年と甚平を交互に、羨むような、それでいてどこか寂しそうな目線で見つめる。今までのやりとりを見れば青年と甚平が本当に仲の良い友だったことは明らかだ。そうでなければ、旧友とはいえ久しぶりの再会であそこまでハイテンションで、流れるように会話ができるはずがない。

「そこは心配しなくてもいいと思うよ。アイツは本当にいいやつだから」

 だが青年の神姫は今日起動したばかり。そんな友などいるはずがない。そのことからくるちょっとした寂しさに、青年は気づいたのだろう。甚平と話してた時よりも少しだけ声を低くして、神姫に語りかける。

「そうですか? マスターがそこまで仰るなら安心ですね」

 それをきいて神姫も少し安心したのだろう。どこか照れくさそうにしながらも青年に満面の笑みを返す。そんな彼女の様子を見て、青年はこくりと頷くと甚平の方に振り返った。

「あぁ、行こうかっ」

 それが、彼の物語の始まりの再会だった。

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