ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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黒森峰との決戦です!

決勝戦当日。

試合会場では屋台もあり、展示会などもあり、人の数は今までの試合の規模とは倍以上とも言えるだろう。

そんな中で大洗のメンバー達は念入りな最終調整が行われていた。

飛鳥は特にメンバーからの信頼もある為に全車輌の最終チェックを任せられていた。

応援に駆けつけてくれた大洗の生徒達も興味ありげに覗きに来ている姿も見えた。

 

 

 

「最後の戦い、みんなのやる気は充分・・・か」

 

「あ、飛鳥様・・・ごきげんよう」

 

「んっ?おぉ・・・エクレールじゃないか!応援にでも来てくれたのか」

 

「え、えぇ・・・貴女様の勝利を信じてお伺いに来ました」

 

「サンキューな♪こんなモノしかねぇけど、どうだ?」

 

「あ、あっあ、ありがとうございます!!」

 

 

 

珍しく1人でやって来たエクレールの顔は真っ赤でたどたどしい感じではあったが、自分達の勝利を願ってくれる彼女に飛鳥は景気づけに買っていた『エネルゲンMAX』と言う瓶ジュースを手渡した。

かなりの強炭酸で人気な飲み物ではあるが、あまりそう言うモノに慣れていないエクレールは衝撃に驚きを隠せずにむせていた。

 

 

 

「Hey!飛鳥ぁぁぁ!!」

 

「うわっぷ!?試合前に変な体力使わせるなっての!」

 

「Sorry!久し振りに会ったからつい・・・ねっ?」

 

「私の飛鳥様に触るなぁぁっ!!この牛乳馬鹿女ぁぁっ!!」

 

「Oh!Crazy Girl!貴女の飛鳥じゃないデース!!」

 

「アタシはどっちのモノでもねぇっての・・・」

 

「ティナさん!飛鳥様がお困りになっていますわよっ!!」

 

「おいおいっ!?ラビオリ!応援しに来たんだろうがなんでいきなり会って早々に喧嘩になるんだよっ!」

 

 

 

飛鳥を挟む感じでティナと憑莉がバチバチと火花を散らし合っている。

火種となってしまっている飛鳥は大きな溜め息と同時に一回近くにあるベンチに腰を降ろす。

チラッとみほの居る方に目を向けるとサンダース、聖グロ、プラウダと言ったチームの隊長陣と会話をしている姿に自分と同じ状態にある事を察した。

 

 

すると影が自分を包むのに首だけを後ろに立つであろう人物に向けた。

背後に立っていたのは、何故か大福を美味しそうにほうばるミレイアの姿であった。

 

 

 

「なにしてんの?お前」

 

「カチューシャ様の付き人ですよ、見て解りません?」

 

「アタシには全然そうには見えんな」

 

「失礼な人ですわね。私の何処をどう見たらそう見えるんですの?」

 

「口の周りに白いモノ付けながら言われても説得力ねぇっての」

 

「飛鳥ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「この声は・・・・・っ!?」

 

 

 

口元に白い粉を付けながらも優雅な振る舞いをしているミレイアを見ていて馬鹿馬鹿しい気持ちになっていた。

だが、体に響く位の声で名前を呼ばれた途端にベンチから勢い良く飛び離れる。

迫り来るジープに目を向けると三代子が運転する助手席には焔が嬉しそうに手を振っていた。

 

 

 

「三代子さん!観に来てくれたんですね」

 

「当たり前じゃないかい・・・弟子の成長を観ずにいられるかい!」

 

「・・・母さんは?」

 

「西住流の家元さんに挨拶しに行くからこっちには来れないってさ!姉さんも向こうだよ」

 

「・・・・・真姉さんも来てるんだ」

 

「そうだぜ?今日は休みだったみたいでさ!母さんが連れて来たんだとよ」

 

「・・・そうなんだ」

 

「飛鳥ちゃん、大丈夫かい?顔色が悪いように見えたけど・・・」

 

「だ、大丈夫ですよ!!ちょっと今日の試合の事を考えていただけですよ!」

 

「向こうには西住ん所の長女に元パートナーか・・・いけそうか?」

 

「・・・・・仲間を信じ、アタシは全力で挑むだけだから」

 

 

 

長女の名に顔色を少し悪くした飛鳥ではあったが、不意に挑発的に投げ掛けられた問い掛けには低い声で発言した。

その姿にぞくっとする焔だったが、時間も迫っているのかアナウンスが聞こえると各々に観客席へと戻って行ったのだ。

さっきまで賑わっていたはずなのに静まり返った辺りを見渡すと大きく深呼吸した後に自分のチームの元へと戻った。

 

 

 

 

 

「両チーム!隊長、副隊長、前へ!!」

 

 

 

試合直前に両校全生徒が整列して挨拶が執り行われる。

呼び出されたようにみほが隊長として出て行き、飛鳥と桃は副隊長と言う形で大洗の代表として前へと出て行った。

 

 

 

「ふんっ!お久し振り・・・弱小チームだと貴女でも隊長になれるのね?」

 

「あぁ~キャンキャン吠えるなよ・・・弱く見えるぜ?副隊長さんよぉ~」

 

「な、なにをっ!?」

 

「止めろ、エリカ」

 

「た、隊長・・・」

 

「すまない、気を悪くさせたな・・・飛鳥」

 

「いえいえ、お構いなく。まほさんもお元気そうでなによりです」

 

 

 

まほと飛鳥の関係に周りに居た全員が気になった様子だったが、千智が飛鳥の方に手を差し伸べたのだ。

 

 

 

「久し振りだな・・・飛鳥。お前と共に戦えると思っていたのにまさかこうやって敵対するなんて驚いたよ」

 

「まぁ、戦車道をやるつもりはなかったんだけど、成り行き上仕方ないのさ」

 

「しかし、私は嬉しいよ。こうしてお前と戦ってみたいと思っていたからな」

 

「それは、同感だね」

 

 

 

がっちりと握手を交わした2人は試合前だと言うのに嬉しそうに笑い合うと後からやって来た蝶野亜美の号令によって両校共に挨拶を済ませた。

両校スタート地点へと向かうのだが、みほの元に黒森峰の生徒が1人近付いて来た。

飛鳥は事情を察したのかなにも言わずに先にみんなの元へと戻っていた。

 

 

 

スタート地点に到着した大洗のメンバー。

最後のブリーフィングも終わり、チームごとに円陣やら掛け声を行って鼓舞していた。

ネコさんチームも戦車の前で円になっていた。

 

 

 

「泣いても笑ってもこれが決勝戦だ。この試合でアタシ達の未来が決まる・・・かもしれん」

 

「やる事はいつもと一緒!そうだろう?」

 

「そうです!今日も勝って皆さんと一緒に大洗へ帰るんですっ!!」

 

「簡単には言えるが敵の戦力はうちの倍だ。いつも以上に気を引き締めないと・・・・・」

 

「ふっふっふっ・・・言うまでもないっ!相手の力量を見誤らずに慎重に・・・であろう」

 

「頭でも打ったか?カリエンテ様」

 

「なぁっ!?ま、真面目に答えただけなのじゃ!頭など打ってないわっ!!」

 

「ははっ・・・冗談だよ。今回はフォーメーションをコロコロ変える事になるかもしれないから各自その意識だけは持っておいてくれ」

 

「・・・了解した」

 

「それじゃあ・・・いつものやるぞ」

 

「いつもの?そんなのやってたっけ?」

 

「やりたくないなら別にいいぞ」

 

「・・・・・やる」

 

「こう言うの燃えますよねっ♪」

 

「天に誓う!我らは勝利を欲する者ぞっ!!」

 

「やるやるっ!!私だけ仲間はずれはいやぁぁぁ!!」

 

「そんじゃあ・・・いくぞぉぉぉっ!!!!」

 

「「「「おおぉぉぉっ!!」」」」

 

 

 

5人が拳を突き出してそのまま空に向かって突き上げると大声をあげた。

5人の顔には満面な笑顔があり、勢い良く5人は乗車していった。

飛鳥は車長の位置にいるフォーメーションだ。

車内では4人が各々に行動を開始した。

そして、決勝戦開始のアナウンスが合図を放送した。

それと同時に大洗のメンバー全員がこう口にした。

 

 

 

『パンツァー・フォー!!』

 

 

 

 

 

先行するのはネコさんチーム。

双眼鏡を覗き込みながら辺りをキョロキョロとしている飛鳥。

序盤だと言うのに厳重に警戒している飛鳥に運転している薫はいつものようにちょけたように口を開く。

 

 

 

「おいおい、まだ始まったばかりだぞ?そんなに警戒していても相手とはまだ離れているんだから良いんじゃないの?」

 

「相手を甘くみるな、今はアタシ達がチームの目としての役割でもあるんだ厳重に警戒しておいた方がいい。それにアタシ達は207地点を取らないといけないからな」

 

「・・・・・なにか空気が変わった気がするぞ」

 

「斬子ちゃん・・・それって・・・・・」

 

「・・・・・っ!?総員、衝撃に備えろっ!!」

 

 

 

カリエンテの一言と同時に飛鳥の大声が聞こえたと思えば、大きな衝撃が車内にいたメンバーに緊張感を与える。

飛鳥はすぐさまに砲撃された方向に双眼鏡を向けるとそこは森であった。

そう黒森峰は森を突き進んでショートカットをして最短で攻撃を仕掛けてきたのであった。

 

 

 

「そう来たか・・・慌てるな!近くの車輌に目掛けて砲撃を開始せよっ!!」

 

「「了解っ!!」」

 

「みほからの指示は?」

 

「出来るだけジグザグに移動して前方の森に入って下さいとの事ですっ!」

 

「薫っ!!」

 

「あいよっ!!」

 

 

 

一番槍として仲間の進路を確保する為に前進するネコさんチーム。

インカムからは未だに慌ただしくしている声が聞こえてはいるが、ちゃんと後方には付いて来ている模様。

飛鳥は激しく揺れる中でも警戒を怠らずに周りの状況に目を向けていたが、不意に聞こえた轟音に後ろを振り返る。

すると遠く離れた場所に直撃を受けたのか煙と白旗を出して停車してしまっているアリクイさんチームの車輌が目に飛び込んで来た。

 

 

 

「戦況報告!!」

 

「アリクイさんチームが走行不能!後方からは敵の戦車が攻撃を続行中です!!」

 

「みほっ!!」

 

『全車輌、もくもく作戦ですっ!!』

 

「もくもくいけるか?」

 

「・・・・・いつでもいける」

 

「んじゃま、派手に行きますかっ!!」

 

『もくもく始めっ!!』

 

『『もくもく始めっ!!』』

 

 

 

みほの指示を受けて全車輌は用意されていたスイッチに手を掛けた。

するとみるみる内に煙が大洗陣営すべてを飲み込むように包み込んでいったのだ。

 

 

その光景には観戦している皆も驚きを隠せずにいた。

 

 

 

「Wow!アレはテレビで観たことありマース!!ジャパニーズニンジャの技デース!!」

 

「煙幕を事前に用意してるなんてやるじゃないか、大洗の連中!」

 

「けど、危機を脱した訳ではありませんわ。煙が晴れてしまえばまた狙われて・・・・・」

 

「エクレールさん・・・飛鳥様が次の一手を考えずに行動すると思っているのですか?貴女の目は節穴じゃないの?」

 

「・・・・・そ、そうですわね」

 

「大洗に動きがありましたよ」

 

 

 

飛鳥関係のメンバー達は騒々しく観戦している様子である。

液晶画面では煙の晴れた光景が映し出されていた。

そこには坂道を登る大洗陣営。そして・・・・・。

 

 

 

「ポルシェティーガーを引っ張ってるのかっ!?」

 

「はっはっはっ!!動きが遅かろうとも力を合わせて引っ張ればそれを補えると踏んだね。よく考えた行動だよ」

 

「あたいには出来ない発想をよく思いつくよ、アイツめ」

 

「いや、あの隊長さんが合わさっているから良いアイデアも出て来るんじゃないかねぇ~」

 

「やはり・・・侮れないな。西住流は・・・・・」

 

 

 

こちらは焔と三代子が真剣な表情で液晶に映し出される状況を分析していた。

しかし、色々とアイデアが出て来る大洗に焔は血が滾るような感情が芽生え始めていた。

 


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