僕が騎空団を立ち上げてから大分経ったのでそろそろ振り返ってみようと思う 作:トマード
ああ、そうそう!
あの人のことを忘れちゃいけないな!
「フォレストレンジャー!
ウェルダーだッ!!」
これが彼の決め台詞。
うそじゃない、本当にさけぶんだ。
最近は慣れたけど、出会った頃なんか敵に出会うたびに叫ぶもんだから気恥ずかしくて仕方なかったよ。
あの頃はまだ、カタリナとラカムしかまともに戦える人がいなくて、ルリアを守っていけるのか本当に不安だった。
それでもなんとか空図の欠片の噂をたどりながら、やっとそれらしい話を聞いて訪れた森に、彼はいた。
「森を荒らすハンターどもめ!
痛い目にあいたくなければその祭壇から今すぐ離れろ!」
…あの時はまだまだ弱かったからなあ。
ビィがウェルダーの放った投げナイフに気付いてくれなかったら、きっと今頃…。
ルリアをかばって身をのリ出した僕を睨み付ける彼は、本気だった。
そういえば…その時も名乗りを上げて僕たちを威嚇してきたっけ。
ビィはなんでか感化されてたけど…正直、怖かった。
だって突然ナイフを投げてくるような奴だよ?
正気の沙汰とは思えなかった。
ウェルダーは僕たちを森を荒らすハンターだと勘違いしてたんだ。
でも理由はそれだけじゃなかった。
すぐにでもウェルダーは僕たちに襲い掛かってきそうだったけど、ルリアが止めてくれたおかげでどうにかその場は落ち着いた。
ルリアはその地に眠っている星晶獣を感じ取っていたんだ。
せっかくおとなしく眠っているのに、戦ってさわぐのはかわいそうだと。
ウェルダーはしぶしぶ納得してくれたようでナイフを腰に納めた。
僕も柄にかけた手を緩めると、笑顔でウェルダーに向き直った。
なんと彼も星晶獣の存在に気付いていた。
しかも名前まで知っていて、その星晶獣の名前はジェイドというのだ!と得意げに僕たちに言った。
ビィが二人の関係を詳しく聞くと、ウェルダーは嬉しそうに思い出を語りだしたんだ。
あまりにも嬉しそうなものだからビィはすこしあっけにとられていたけど、僕ももし誰かに君との関係を聞かれたら、きっとウェルダーみたく嬉しそうに語るのだろうな…と、微笑みながら心の中で思ったが、それは口にださないことにした。
ハンターに襲われていたところを助けられ、友情を深めたとウェルダーは言った。
…きっと、ビィが止めなければあのあとも小一時間は話してたんだろうな。
出会い、育んだ友情、楽しい日々。
そして、別れ。
ウェルダーに何も言わず、星晶となって眠りについたジェイド。
段々と暗い表情になっていくウェルダー。
彼の抱えている思いが僕に深く突き刺さった。
「俺にはどうしても、あの絆が偽物だったとは思えないのだ。」
そう語るウェルダーの表情はいかにジェイドへの思いが強く確かなものかを物語っている気がした。
彼は言った。
またジェイドと絆を深めたいのだ、と。
そして僕たちを見て、どこか悲しげにつぶやくのだった。
「外の世界にはジェイドと言葉を交わす術もあるのだろうか…」
ぼくはその一言である決心がついた。
ビィはそんな僕の様子に気付いたようで、僕がその決心を告げると「分かってたぜ」とばかりににっこり笑って言うのだった。
「こいつがお前に世界を見せたいってよ!
オイラたちは歓迎するぜ!」
ウェルダーは一気に明るい表情を見せると、どこか遠くを見るような目で祭壇を見るのだった。
「俺が広い世界で見てきたことをこいつに聞かせられたら…喜んでくれるのだろうか」
僕はその言葉を了解だと受け取って、ウェルダーをつれてグランサイファーへと向かった。
ウェルダーはその時もジェイドとの思い出を語り続け、ラカムとカタリナのいるグランサイファーについても、夕食の時も、寝るときになっても寝室に押しかけてきて語り続けた。
三日もたてば僕たちはすっかりジェイドに詳しくなっていて、ウェルダーが話そうとする思い出話を先に言って止めてしまうほどだった。
「ジェイドとの思い出は尽きることはない!」
するとまた新しい話を持ち出して、根の優しいジータが…ああ、僕の妹だけど、ジータはすっかり寝不足になってしまって、カタリナがついにウェルダーに思い出話を控えるように叱りつけたのだった。
本当にいい人なのだけれど、周りが見えなくなるところが玉に瑕かな…。
いい意味で諦めが悪いし、いつも明るいからムードメーカーとしてすぐに欠かせなくなった。
ウェルダーはジェイドの森で一人でハンターと渡り合ってきただけあって、戦力としても申し分なしだった。
その場にあるものを利用した戦術で、模擬戦ではよく足の裏についた泥を使った目つぶしを使ってきて苦労したっけ…。
森のスペシャリスト。
フォレストレンジャーの名前通り、森で彼にかなうものはいなかった。
そんな彼にも弱点があった。
「大きい町は、その…苦手なのだ。
森と違ってその…喧噪がな」
僕にだけこっそりと打ち明けてくれた悩みはものすごく意外なものだった。
ウェルダーもうるさいのに、と軽口を言うと「冗談ではないぞ!」と怒ってきたのでからかうのはやめた。
「大きい町にいると自分がえらく場違いに思えてな…」
肩を落として語るウェルダーを見ると本気で困ってるのだな、とわかった。
それはそうだろう、町への買い出しは欠かせないし、みんなが手を離せないときは自分にその役が回ってくるかもしれないのだ。
その前に団長であるお前に打ち明けたかった、とウェルダーは言った。
そのうち慣れるさ、とウェルダーの肩をたたいて慰めると、そうか…とウェルダーは元気のない声で答えた。
この続きはまた明日の夜に
さて、久しぶりにウェルダーにジェイドの話を聞いてこようかな