行きつく先へ    作:たまてん

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ヒエイたちはミョウコウの支援を受けながら、だんだんと距離をつめていく


行きつく先へ 第十二話 振り下ろす鋼

12.

 

 

――紫色の閃光が細く鋭く空を切る。

 

しかしキリシマたちの艦体に当たる直前、その光は彼女たちのクラインフィールドに弾かれ、儚くも分散していった。

 

その光景を自身の艦の上から見たミョウコウが苦い顔をした。

 

「――相変わらず硬いフィールドだな。あれには二年前もヤキモキさせられたものだ」

 

「ああ。けれど妨害として充分に効果がある。――タカオ、射程範囲まで届きそうか?」

 

隣にいた群像が耳元の通信機を介して、タカオに呼びかけると「いいえまだよ」と返答があった。

 

『けどあと少し。時間稼ぎしてもらったおかげで間に合いそう。そうしたら思いっきり撃ちまくってあげるわ』

 

『……ねぇヒエイ。とりあえず私が先行したほうがはやくない?』

 

――確かに、ハグロは霧の艦隊一の速度を有する。

 

彼女ならタカオたちの何倍より早く攻撃可能範囲に辿り着くだろう。

 

が、ヒエイは『いいえ』と首を横に振った。

 

『ハグロ。千早 群像が教えてくれるとはいえ私たちは未だ敵の反応が探知出来ない状態にあるわ。そんな中で貴方だけ先行させた状況でハルナたちまで動き出したら最悪、貴方を沈め兼ねないわ』

 

ヒエイの分析に、群像も同意した。

 

「この状況での最善策は君たちはそのまま単横陣で移動、射程圏内に入った時点で正面向けてのに一斉射撃だ。そうすれば、起爆跡から君たちでもハルナたちの位置を正確に特定できる。

 

あとは君たち五隻で彼女たちを囲んでしまえばこちらの勝ちだ」

 

『おおっ!ぐんぞー流石だね!』

 

そして彼は今度は対抗プログラムを組んでいるヒュウガに連絡をとる。

 

「ヒュウガ。そちらの状況は?」

 

『ごめんなさい。まだかかりそう。もう少し待って』

 

頼む、と言って通信を切るとミョウコウに振り返る。

 

「ミョウコウ、チャージが完了次第もう一度頼む。ヒュウガの方はまだ掛かりそうだ」

 

「承知した。……しかし、少しも彼女たちは動かないようだな」

 

「恐らく彼女たちも数でこちらには叶わないと分かっているだろう。超重力砲のみで決着を付ける気だ」

 

「……あるいは、はじめから勝つ気はないかも知れないな」

 

ミョウコウはそう言ったが、「それはない」と、群像は否定した。

 

「――ハルナとキリシマにとって、蒔絵はかけがえのない存在なんだ。だから彼女たちは全力で俺たちを潰しにかかる」

 

「――自分たちの存在よりも、一人の少女が大切なのか?」

 

「ああ。まだ君たちには、分からない感性かもしれないが……」

 

「いや分かるよ。うちの生徒会長の艦隊旗艦へのぞっこんぶりを見れば嫌でも分かる」

 

「――確かに。その通りだ」

 

ヒエイの日頃からのコンゴウに対する振る舞い方を思い出して、群像は苦笑した。

 

ミョウコウもしみじみとした声で言う。

 

「かつてあんなにも頑固だった彼女がああまで柔らかくなるとはな。多少行き過ぎかもしれんが……悪くはない」

 

「そうだな。以前のヒエイではとても考えられない変化だ。きっとハルナやキリシマたちもそうなのだろう」

 

「まさしくそうだ。驚きで顎が外れるかと思った。――とくにキリシマの変わりっぷりにな」

 

「――それは、確かに驚くな」

 

あの桃色のクマとキリシマが同一人物だという事実を改めて認識すると、つい笑みがこぼれる。

 

しかもキリシマはそのスタイルを変える気はないようだ。

 

元の姿の方が便利だろうにそれをしないのは、ひとえに蒔絵が喜ぶからだろう。

 

――彼女たちは、群像の理想でもあった。

 

霧と人、双方が思い合い共存していくという理想。

 

ハルナたちのような世界を作るそのために、群像は日々を費やしていたのだ。

 

けれど――。

 

「――しかしだ群像。我々はハルナたちを止められても、彼女たちを救えない」

 

「……わかってるいるよ」

 

――仮に、ハルナたちを止められたとしよう。

 

だが恐らく捕らえられているだろう刑部 蒔絵は助けられない。

 

その時、あの超戦艦がどんな判断をするかは検討がつく。

 

――事実、戦意を削ぐという意味では実に効果的だ。

 

「――だがここで俺たちが沈むわけにはいかない。何より君たちのためにも、今は、進むしかないんだ……」

 

ギュッと強く拳を握りしめ、それでも毅然とした態度で前を見続ける群像。

 

その姿を見てミョウコウは心の中で納得する。

 

――道理で、勝てなかったわけだ。

 

二年前の自分とは、覚悟がまるで違う。

 

「――やはりお前は強いな。千早 群像」

 

彼女は改めて、目の前の男に敬意を示した。その時だ。

 

ミョウコウたちの後方に控えていたナチから通信が入る。

 

「高エネルギー反応確認!超重力砲、来ます!」

 

「何だとっ!?」

 

「タカオ!アシガラ!避けろっ!」

 

向こう側で急に集まりだした光を見て軌道を予測した群像がそう叫ぶ。

 

瞬間、三度目の光が走るのを見てアシガラとタカオは驚愕する。

 

「え、はやいよちょっとっ!?」

 

「冗談じゃないってのにっ!?」

 

――群像の指示のおかげで直撃は免れた。

 

しかし咄嗟の対応だったので完全に避けることは叶わず二人の艦体を掠める。

 

しかも、アシガラの方はクラインフィールドが飽和されてしまい、被弾箇所から爆炎が上がる。

 

「アシガラ!?大丈夫か!?」

 

『……ちょっと、ダメかも。――推進部分やられた』

 

通信を通して聞こえてくる彼女の苦い声に、全員が青ざめる。

 

そしてナチが悲鳴にも似た声を上げる。

 

『またしても高エネルギー反応、アシガラ逃げて!?』

 

「アシガラ、早く脱出しろ!?くそ、どうしてあんなにも早いんだ!?」

 

次発装填までのタイムラグの異常な早さに、ミョウコウも叫ぶ。

 

対して、彼女の砲台はまだチャージを完了しない。

 

――そうしている間に、ハルナたちの超重力砲は臨海点を超える。

 

こちらに向けられた艦首を見て、アシガラがこりゃまいったといった感じに肩を竦めた。

 

「――これは無理かも」

 

そうして彼女は仕方ないかと、諦めて目を瞑る――。

 

 

――だがその時。

 

 

ハルナたちの艦体に何かが爆音を立てて炸裂した。

 

「何だ!?」

 

キリシマとハルナが驚いた顔をする。

 

クラインフィールドのおかげで大したダメージはない。

 

だがそのせいで、軌道がずれた。

 

超重力砲のエネルギーは、アシガラの艦体を少し掠めて放たれるだけに終わった。

 

しかし、呆気にとられたのは群像らも同じだった。

 

「――どこから撃ってきたんだ?」

 

『っ!?海中に反応あり!でもこの反応ってまさか……!?』

 

「どうしたナチ!?」

 

ミョウコウが言ったが、ナチが答える前にソレは姿を現す。

 

 

――ソレは、海面を引き裂き、水しぶきを立てて浮上した。

 

まるで、刃が降り下ろされるかのような光景。

 

そしてなにより、その刃は――蒼く染まった鋼の刃。

 

 

 

――見間違うはずはない。

 

 

 

共に戦い、共に生きてきた彼が、見間違うはずはなかった。

 

群像は、ブローチの入った胸元のポケットを強く握りしめながら、彼女の名を呼んだ。

 

 

 

 

「――イオナっ!!」

 

 

 

 

――そうして彼は、蒼き鋼(かのじょ)との再会を果たす。

 

 

 

 

 

 

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