行きつく先へ    作:たまてん

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黒き艦隊と蒼き艦隊と新たに同盟を結び、群像たちは次なる作戦を立てる


行きつく先へ  第十五話 反撃準備

 

15.

 

 

「――遅れました。申し訳ありません」

 

作戦室に入ってきたヒエイは先に待っていた群像、僧、コンゴウ、ヒュウガ、タカオ、そしてキリシマに頭を下げた。

 

気にするな、と言ったコンゴウはついで彼女に尋ねる。

 

「アシガラたちの様子はどうだ?」

 

「だいぶ落ち着きましたので部屋に待機させています。この後報告は私から伝えておきますので、お許しください」

 

「構わないさ。彼女たちには休息が必要だろう。お前も休んでいいのだぞ?」

 

「いえ、私は大丈夫です。居させてください」

 

「そうか。だが無理はするなよ」

 

はい、とヒエイが頷く。

 

そしてコンゴウは、群像に始めてくれと目配せをする。

 

「それでは、これより作戦会議を始める。まずは僧、あの伊号401の現状について話してくれ」

 

わかりました、と彼は頷き、モニターに現在の伊号401の内部構造図を映し出す。

 

 

「現在、あの伊号401はイオナのユニオンコアは搭載されていませんがそれ以外はかつての401と同じ性能です。超重力砲も存在します。ただ、代わりに搭載されている擬似コアでは演算処理能力が低いため、超重力砲を扱うことは出来ません。他にも、一部機能の制約が出てしまうのが現状です」

 

「だがそれの解決策はもう出た。伊号401のコアの代わりに私とハルナを使えばいい。そうすれば、全ての機能が使えるはずだ」

 

キリシマの言葉に、群像は頷く。

 

現在、杏平たちがハルナのコアと401との接続作業を行っている。

 

ここにいるキリシマは無事リンクに成功したので、ハルナの方も恐らく問題はないだろう。

 

何故二人も必要になったかと言えば、解析したところハルナ、キリシマの両名がいて丁度の演算処理になるという結論になったからだ。

 

予想以上の容量を有していたらしい。

 

すると「ああそういえば」とヒュウガが何かを思い出す。

 

「私疑問に思ってたんだけどさ、僧たちが集まるよう指示を受けてからまだ一日も経ってないわよね?じゃあ、どうやってこの短時間で台湾やらアメリカやらを動き回れたのかすっごい気になるんだけど」

 

「あ、私もそれ気になる。とても一日で回れる距離ではないと思うわ」

 

それに海洋にはホウライの配置した霧の艦隊もいたはずだ。

 

コンゴウとタカオも無駄な戦闘を避けるために彼女たちになるべく接触しないよう遠回りをしてきたのだ。

 

そんなヒュウガとタカオの質問に、僧も少々困惑した様子になる。

 

「それが、ここにくるまで全て疑似コアによる自動操縦だったので自分にもよく分からないのですが、恐らくムサシとの戦闘の際に群像がとった方法と同じと考えられます」

 

「……なるほど。ミラーリングシステムか」

 

はたと、思い至った群像は手を打った。

 

ムサシとの戦闘の際、群像たちは彼女が発動したミラーリングシステムが作り出したワームホールに飛び込み、別次元空間による移動でムサシの直上へとワープした。

 

それと恐らく同様に、伊号401もミラーリングシステムの応用で小規模なワームホールを作り出し、転移を繰り返してここまで来たということになる。

 

「ワープシステムか。よくそんなものを積めこめたな、401」

 

キリシマがしみじみとして言う。

 

ミラーリングシステムは本来潜水艦ごとき積める代物ではない。

そうなると、ハルナとキリシマ二人してちょうどという話も納得出来るものがある。

 

「ただ、先ほども述べたように自動操縦だったのでワームホールの使用方法が未だに分かっていません。今後も使えるという保証はない以上、それに頼った戦法するわけにはいかないでしょう」

 

「だろうな。それはないものとして考えていいだろう。――ところでヒュウガ。例のアレは完成しそうか?」

 

コンゴウがそう尋ねると、ヒュウガが「あー」と言って渋い顔をする。

 

「いやぁぶっちゃけギリギリってとこかも。理論的に出来なくはないけど次の戦闘までに間に合うかって問題があるかな」

「何の話をしてるんだ?」

 

キリシマの疑問に群像が答える。

 

「ホウライの動きを止めるためのプログラム、まぁウィルスを作っているんだがこれがまた難航を極めていてね。実際に出来るか不安なところだ」

 

「ウィルスって、果たして二度も同じ技が通じる相手かしら?」

 

タカオの疑問はもっともだ。

 

ヒュウガは一度ホウライにハッキングを仕掛けている。

 

色々と念入りに仕込むホウライだ。

 

既に、もうハッキングは受けないよう万全の体制にしているだろう。

 

「それはわかってるわ。ただ今回のウィルス直接ホウライに干渉するタイプじゃないから行けるかなとは思ったんだけど……あんまり当てにしてもらわない方がいいわね。提案した人も、賛同した誰かさんも役に立たないし、私一人じゃたぶん間に合わなそう」

 

「面目ない」

 

「――苦手なんだから仕方ないだろう」

 

申し訳なさそう頭を下げる群像と決まり悪そうに目をそらすコンゴウであった。

 

そんな二人に嘆息しながらキリシマは言った。

 

「つまり、我々はホウライにドンパチすることに変更はないわけだな」

 

「そうなりますね。刻限まで残り二日。まず一番に人類への総攻撃だけは避けなければなりません。――しかし、出来ればこちらにも切札的なものが欲しかったですね。あちらは振動弾頭を欲しがっているようですから」

 

「だな。渡さないとは言っているが正直完全には信用できん。人間はいつ気が変わるか分からないからな」

 

「ああ、それについては問題ない」

 

「何だと?」

 

絶対と言い切れる保証は何処にもない。

 

皆が断言する群像に疑問を抱いた。

 

彼は胸元のポケットからあるものを取り出す。

 

上陰から渡されたボイスレコーダーだ。

 

彼はその後ろにある蓋を外すと、その中から一本のスティック状の物体を取り出す。

 

黒いメモリスティックだ。

 

彼はそれを皆にかざし、そして言った。

 

 

「――これが、その解除コードだ」

 

 

――一瞬の沈黙。

 

 

そして次の瞬間、一同が「はぁあっ!?」と目を剥いた。

 

 

「あ、本当だ!これ私が横須賀に持っていったやつだ!」

 

「流石に、これは意表を付かれたな……」

 

「てゆうか、何でさっさと話さなかった千早 群像!?」

 

キリシマが食ってかかったが、群像が「すまん。言うタイミングを逃した」と謝った。

 

「しかしよいのでしょうか。確かにこれでホウライが振動弾頭を手に入れることは出来なくなりましたが、人類に反撃の手段がなくなったのも事実です」

 

僧の言葉に、群像も頷く。

 

「だが現在の通信状況ではアメリカにこのパスワードを伝えるのは困難だ。それなら彼女に奪われる可能性をなるべく下げるためにという上陰次官の判断なんだろう。――それに、俺たちに必ず人類を救えと、圧を掛けているんだろうな」

 

「――負けられませんね。この戦い」

 

「ああ。でもはじめから、負けるつもりはない」

 

そして群像は皆に言う。

 

「――状況を整理した限り、やはりまず第一にしなければならないのは超戦艦ホウライの無力化だ。話し合いに持っていきたいところだが彼女が素直に応じるとは思えない。人類への総攻撃を避けなければならない今、選べる選択肢は一つだ」

 

「無力化か。戦力数では圧倒的にあちらが優位だな」

 

「何を泣き言を言っているキリシマ。千早 群像たちはたった一隻で我々に立ち向かったのだぞ。――それに、今は私の自慢の妹たちがいる。そうだろう?ヒエイ」

 

「お任せくださいコンゴウ様。キリシマ、やるわよ」

 

「……まぁ、言われずともそのつもりなんだがな」

 

キリシマがやれやれと肩を竦める。

 

それじゃあこれを、と言ってヒュウガが前のモニターに海図を表示する。

 

「ここが現在ホウライがいる場所よ。まっすぐ行けば一日といったところかしら。こっちには電磁ミサイルを搭載してるからホウライも無駄に艦をぶつけてくることはないでしょう。直進ルートで行けると思うわ」

 

「ホウライは移動してないんだな。何故だ?」

 

「こちらを迎え撃つつもりかもな。どちらにせよ、我々は行くしかない」

 

「ああ。作戦に変更はない。俺たちは明日の朝ここを出向する。準備が出来次第、各自で休息をとってくれ」

 

そう群像が言って、解散となった。

 

 

■ ■ ■

 

 

「そう言えばキリシマ。貴方、何故蒔絵を取られたの?いくら平和ボケしてたとはいえ貴方らしくない失態ね」

 

傷をえぐってくれるな、と解散したあとに尋ねてきたヒエイにキリシマはため息をついた。

 

「……ハルナの姿に化けられたんだ。油断していたとはいえ見分けをつけられなかったのは屈辱の極みだ」

 

「お前を騙すほどのコピーか。前々から思っていたがホウライの演算処理能力の底が知れんな」

 

コンゴウがそう言ったのを聞いて、キリシマがそういえばと思い出す。

 

「確か、何かを代償にして得た力とは言ってたなあいつ」

 

「代償か。アシガラたちのように超重力砲でも犠牲にしたかな。そうであるならあの莫大な処理能力に合点がいく」

 

「超戦艦の超重力砲を犠牲にするとは、随分思い切った真似をしますね」

 

「それほどまでにして手に入れたい何かがあったんだろう。……しかし本物と見間違うほどの出来か。一度見てみたいものだな」

 

「私は二度と見たくない……」

 

キリシマは苦い顔をする。

 

「けれど例えコンゴウ様の偽物が現れても私なら見分ける自信があります。絶対に間違えません」

 

「――お前が言うとなんか説得力あるよな」

 

「可愛い妹だ」

 

「お前も最近全部それで済ませてないか?」

 

コンゴウの言葉にヒエイが「ありがとうございます」と嬉しそうに頭を下げる。

 

少し、姉たちの将来が心配になるキリシマであった。

 

 

 

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