行きつく先へ    作:たまてん

20 / 39
ホウライのもとへと航海を続ける群像たち

そしてナチはある反応を見つける


行きつく先へ 第二十話 誓い

 

20.

 

 

「っだぁぁっ!まーたーまーけーたー!」

 

「アシガラ、成長しなさすぎ」

 

「いや。前よりはできるようになったんじゃないか。少なくとも、ポーカーフェイスを作ることは出来るようになったな」

 

「それでも、口角がぴくぴく痙攣してる残念なポーカーフェイスなのだけれどね」

 

「……てかアンタたち。何で今度は私の上で遊んでるのよ」

 

ヒエイの甲板と同じように自分の甲板の上でトランプを広げて遊んでいるアシガラたちに、タカオはため息を付いた。

 

「だってヒエイってばコンゴウのとこ行ってるみたいだし、邪魔しちゃマズイじゃんて思ってね」

 

「だからって何で私のとこ来るのよ!?アンタたちのとこでやんなさいよ!」

 

「……私もそう言ったけど、ヒュウガもプログラミングのために千早群像たちのところに行ってしちゃったじゃん。そしたらアシガラが一人じゃタカオも寂しいって、煩くってさー。だから仕方なく」

 

「おうタカオ!いっしょにいてあげるからね!」

 

「……別に寂しかないわよ。まったく、余計なお世話ね」

 

満面の笑みを浮かべたアシガラの言葉に、タカオはツン、と顔を背けた。

 

そんな彼女の態度にミョウコウは苦笑する。

 

「素直じゃないなぁ重巡タカオ殿。そこは『ありがとう』と言ってもいいんじゃないか?」

 

「うっさい!だから余計なお世話だって言ってるでしょうに!」

 

「……ま、本音を言うとコイツらが騒いだ後の片付けが面倒くさいからお前のとこに来ただけなんだがな。私は」

 

「か・え・れっ!!」

 

威嚇するタカオを、ミョウコウは笑いながらあしらっている。

 

傍目から見たら姉にからかわれてる妹のようだ。

 

「ねぇねぇタカオー!いっしょにババ抜きやろババ抜き!」

 

そしてそんな二人の間に、アシガラはいつもの調子でトランプをかざしながら割り込んだ。

 

しかしタカオはふん、と鼻で笑って一蹴する。

 

「誰がやるもんですか。勝手にアンタらでやってなさい」

 

「……もしかして。またアシガラに負けるの怖いの?」

 

ハグロがそう言うと、その場を去ろうとしたタカオの足が止まる。

 

隣にいたミョウコウは「こらやめないか」とハグロをたしなめる。

 

「アシガラに負けるというある意味屈辱的な敗北を二度と味わいたくないと思うのは当然だろう。そう彼女を煽るのはあまりに酷な話じゃないか」

 

「っっいいわよ!やってあげるわよ!絶対圧勝してやるんだからっ!」

 

そう言って、タカオは彼女たちの輪の中に入る。

 

そんなタカオの態度にミョウコウとハグロはニヤニヤと笑い、アシガラは嬉々としてカードを配り始めた。

 

……段々と、タカオが自分たち姉妹に順応、というか同化してきている気がする。

 

性格や立ち位置的なものの大差がなくなってきた。

 

仲間との交流を深めるという意味では素晴らしいのだろうが、きっとタカオ自身にとっては嬉しくないことだろう。

 

「……お気の毒に」

 

むむむ、と真剣な顔でアシガラの差し出す手札を睨んでいる彼女を見ながら、ナチは同情した。

 

――そして同時に、彼女のセンサーが反応を示す。

 

「あら。でもこれって……?」

 

その反応が現れた位置に、彼女は目を細めた。

 

■ ■ ■

 

 

「――後方に艦影だって?」

 

そう聞き返した杏平に、キリシマが「ああ」と頷く。

 

「――ナチからの情報だ。ヒュウガからのセキュリティとセンサーのプログラム強化も行なっているし、間違いはない情報だ。……ただ、その現れた位置がこれでな」

 

そう言うと、キリシマは正面のモニターに海域地図と、ナチから送られてくる艦隊の位置データを表示する。

 

「……遠いな」

 

それを見た群像はそう小さく呟く。

 

表示されたデータには、群像たちからかなりの距離をとって航行している艦隊の反応があった。

 

「速度は私たちと同じ。この間隔を維持したまま進んでいるようだ。当然攻撃は互いに届かないが……反応を見る限り、数が五十を超えてる」

 

「うっわ。すっげー大所帯」

 

ハルナがそう言うと、杏平が大げさに両手を上げた。

 

……彼の言う通り、実際にかなりの数だ。

 

しかしそれだけの数があるにもかかわらず、彼女らは攻撃するような素振りも見せず、ただ群像たちあとを追うようにしている。

 

謎ではあったが――何度も死線を掻い潜ってきた彼らだ。

 

その意図はすぐに察せられた。

 

 

「――群像。これはつまり」

 

「――ああ。恐らく挟撃するつもりだろう」

 

――群像たちがホウライの艦隊と接触する。

 

同時に、後方に控えている艦隊が攻撃する。

 

ただでさえ数で劣る戦力だ。

 

挟まれたら対応仕切れない。

 

かと言って、背後を片付けようと動くと恐らくホウライたちも行動し出す。

 

単純ではあるが、群像たちに対して実に効果的な戦法だった。

 

「どうする艦長。ぶっちゃけ、これは不味いんじゃないか?」

 

「そうだな……」

 

『――では、二手に別れるというのはどうでしょうか?』

 

すると、思案している群像たちに対し、ヒエイが通信を介してそう提案してきた。

 

「ヒエイ。それはどういう意味だ?」

 

『言葉通りです。ホウライと接触するグループと後方を叩くグループに別れる。――401は前者のは確定として、後者は私と霧の生徒会の数名が引き受けます。流石に、生徒会すべてを持っていくわけには参りませんから』

 

『――いやヒエイ。こちらは大丈夫だ。生徒会全員を連れていけ』

 

『コンゴウ様。しかしそれでは……』

 

構わない、と通信に混じってきたコンゴウは言った。

 

『401は私とタカオでカバーする。だからお前たち霧の生徒会には後方に控える艦隊を無力化して欲しい。戦力としてもそれぐらいは必要なはずだ。――どうかそうさせてやってくれないか。千早群像』

 

「ああ。異論はない。」

 

戦力的に見ても、それが妥当だろう。

 

二手に別れるのはベストな作戦だ。

 

しかし、ヒエイたちには申し訳ないが群像たちとは戦闘経験の差というものがある。

 

そう考えると、ヒエイのグループには数は多いに限るし、何かと息の合う生徒会メンバーをいっしょにさせておくほうが最善だ。

 

「――ではヒエイ。及び霧の生徒会には背後に控える艦隊への牽制を願いたい。――頼めるか?」

 

群像がそう彼女に頭を下げた。

 

ヒエイはまだ少し悩んでいたが、コンゴウが大丈夫だと頷く。

 

「――心得ました。ではさっそく行動に移ります。――みなさん、御武運を」

 

「ああ。健闘を祈る」

 

群像たちもヒエイの言葉に固く頷き、彼らは通信を終えた。

 

■ ■ ■

 

 

「――ではコンゴウ様。行って参ります」

 

 

「――ヒエイ」

 

 

自身の艦に戻ろうとしたヒエイをコンゴウは一度呼び止めた。

 

彼女が振り返ると、コンゴウはいつになく真剣な眼をしていた。

 

そして言った。

 

「――無理はするな。必ず私の元へ戻れ。いいな」

 

有無を言わさぬ絶対の言葉。

 

その言葉に、ヒエイは微笑んだ。

 

そして心から尊敬する自分の姉に、彼女は頭を垂れる。

 

「――必ず全員連れて戻ります。それまでの間、しばしお待ちください。――コンゴウ様も、お気を付けて」

 

「――ああ。ありがとう、ヒエイ」

 

 

そして彼女たちは互いに背を向ける。

 

 

固く契った、その誓いを果たすために。

 

 

今はただ、進みゆくのみ。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。