行きつく先へ    作:たまてん

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群像たちとホウライの戦いが始まった
そのころヒエイたちは・・・



行きつく先へ 第二十三話 遊戯

 

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『――やはり、ダメだったか』

 

群像の報告を聞いた瞬間、通信機を通して、コンゴウのため息が聞こえてきた。

 

「すまない。止められなかった」

 

『気にするな。はじめからこうなることはわかっていたようなものだ。――こちらの準備は整っている。お前たちも早く戻れ』

 

「言われなくても戻っているわよ」

 

群像の隣にいたタカオがそう答える。

 

そして彼が401と通信を取ろうとした時、向こうからシグナルが来た。

 

回線を開くと、やっほーと栗色の髪の毛をした少女がこちらに手を振っていた。

 

「蒔絵か。――ということはもしかして……」

 

『うん。プログラムがやっと完成したよ。お待たせ』

 

「そうか。ありがとう。蒔絵、ヒュウガ」

 

『――ただちょーっと問題あるのよねぇ……』

 

そう言って、蒔絵の横からヒュウガが顔を覗かせた。

 

苦い表情をしている彼女に、群像は何事かと問い掛ける。

 

『――効果は保証するだけど、これ使うとなるとヒエイたちの協力も必要なのよ。ただ概念伝達すら使えないの通信状況だとねぇ……』

 

『――それならば問題ない。別れる際に、ヒエイと予め回線を繋いだままにしている。微弱なもので私はだめだが、お前の通信能力なら、割り込んでいけるはずだ』

 

『あら?たまにはコンゴウもやるじゃない』

 

『……引っかかる言い方だが今はおいておこう。さっさとお前も準備しろ』

 

はいはーい、とヒュウガは返事をして作業に取りかかり始めた。

 

『千早艦長。私は401のサポートに回っとくね』

 

「助かる蒔絵。よろしく頼む。それとコンゴウ。確認を取りたいのだがヒエイたちは無事か?」

 

群像がコンゴウにそう尋ねると、こくりと彼女は頷いた。

 

『私の通信能力では反応を見るのがやっとだが霧の生徒会を含め全員無事だ。それに、そう簡単に沈むわけがないさ』

 

『随分と自信ありげじゃない。何か根拠があって?』

 

『無論だ。……何せ、そのためのチェスだったんだからな』

 

――ヒュウガの問いかけに、そう言ってコンゴウは不敵に笑った。

 

■ ■ ■

 

 

『――ヒエイ!動きましたっ!』

 

 

ナチからの通信が入る。

 

ということは案の定、群像たちの交渉は失敗してしまったということ。

 

――分かってはいたが、ヒエイは何とも言えない気持ちになった。しかし、ここで落ち込んでいるわけにはいかない。

 

自分は今為すべきことを為さなければならないのだから。

 

「――コンゴウ様たちのところに行かせるわけには参りません。総員、戦闘準備っ!これよりこのヒエイが艦隊の指揮を取ります。異論はありますか?」

 

『ない』

 

『ありません』

 

『ぜーんぜんおっけーっ!』

 

『問題ない。――それでは会長。ご指示を』

 

そう言って、ミョウコウは頭を垂れる。

 

――異論など、彼女たちにあるはずがない。この霧の生徒会を率いるのに、彼女以外にふさわしい者などいないのだから。

 

そしてヒエイも胸を張る。

 

自分を信じる彼女たちの前で、情けない姿など見せられないから。

 

「これより生徒会を執行します。私に、ついて来なさい!」

 

了解っ!、とミョウコウたちは応える。

 

――かつての流されるだけだった自分とは違う。

 

確固たる意思の元、規律を守るために戦うことを決めた彼女はミョウコウたちに指示を下す。

 

「ハグロは右、アシガラは左から艦隊を囲うように砲撃なさい。残る二人はここに待機してミョウコウは砲台の準備、ナチは私の後方で索敵を続けなさい。伏兵がいる可能性があるわ。警戒なさい」

 

『わかった』

 

『まっかせてよね!』

 

そう言って、ハグロとアシガラは行動を開始した。

 

ハグロは自身に搭載されているブースターを起動させる。

 

そして海上を高速で移動しながら、ヒエイの指示通り相手艦隊の右側に攻撃を仕掛ける。

 

当然、向こうもただやられるわけには行かない。

 

ハグロに対し、砲撃を行なったがその全てが空ぶる。

 

「当たるわけないじゃん。私の機動力は霧の艦隊で一番なんだからっ!」

 

ハグロは誇らしげにそう言った。

 

他の追随を許さない速さ。

 

それが彼女の、彼女だけの強さだった。

 

「ハグロやるなぁー!よぉーし、私も行っくよー!」

 

アシガラも自身にだけ装備された銛の武装を駆使して左の方向から艦隊を薙ぎ払う。

 

しかしハグロほどの速さはないため砲弾は避けきれず、彼女のクラインフィールドは着々と消費されていく。

 

「やっば。流石にきついかも……」

 

臨界点に近付いていく自らのフィールドにアシガラは焦りを見せた。

 

だがその時、一筋の紫色の閃光が海上を走る。

 

その後、アシガラを砲撃しようとしていた砲台が爆炎を上げた。

 

「サンキューミョウコウ姉ぇ!助かったよ!」

 

「都合のいいときだけ姉付けするな。まったく、世話の焼ける妹だ……」

 

やれやれ、と姉妹の長姉はため息をついた。

 

色々とおっちょこちょいのアシガラだ。

 

ヒエイはこうなると分かってい彼女に援護射撃が出来るようにミョウコウを配置させたのだ。

 

「――これが、戦略というものなのですね。コンゴウ様」

 

呟いたヒエイは、以前コンゴウに言われた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

――チェスの駒にはそれぞれに出来ること、出来ないことがある。

 

闇雲に駒を進めてはただ戦力を失うだけだ。

 

それをどう活かし、どう補うかをお前に問われる。

 

まぁ、お前はアシガラたちとは長い付き合いだ。

 

彼女たちに何が出来るかよくわかってるだろう。

 

だからこそだ。

 

彼女たちを無駄にするなよ。

 

 

――ただ指示に従うだけだったヒエイには困難な話だった。

 

けれど、彼女も守りたかった。

 

ミョウコウたちを、そして彼女の大切な姉も。

 

必死で考えて、理解しようとした。

 

彼女たちに何が出来るのか。

 

自分に何が出来るのか。

 

その結果、今の自分が出来たのだ。

 

 

「ミョウコウはそのままアシガラの援護射撃を続けてください。ナチ、反応はありましたか?」

 

「――ありました。貴方の予想通り、後続の艦隊がこちらに向かっています。私の索敵範囲外に分散して待機させていたようです」

 

「そう。なら早々にこの艦隊を片付けなくてはね」

 

やはり、とヒエイは頷く。

 

これも、コンゴウからの忠告だった。

 

 

 

 

 

――それとなヒエイ。

 

お前も考えるように敵もどう戦力を活かしてくるか戦略を練ってくる。

 

それが決定打だ。

 

勝敗を決める分かれ目は、相手の考えをいかにして読み取るかだ。

 

常に先を読め、そうすれば必ず勝てる。

 

――大丈夫だ。

 

お前は、出来る妹だからな。

 

 

 

 

 

「――そうです。私は、貴方の自慢の妹なんですから」

 

期待してもらってる。

 

皆が、私を信じてくれている。

 

私の全身全霊をもってそれに答えたい。

 

だから――。

 

 

「アシガラ、ハグロ。もう充分よ。離れなさい。あとは――私に任せて」

 

 

――アシガラたちのおかげで、敵艦隊は中央に集まった。

 

これでこちらの射程範囲内となった。

 

「超重力砲、スタンバイ」

 

ヒエイのつぶやきとともに、艦体に亀裂が入る。

 

獣の口のように開いたその中から、光が収束しだしている砲身があらわになる。

 

「――ごめんなさい」

 

最後に、彼女は謝った。

 

自分には、従わされている彼女たちを救えない。

 

けれど、自分も沈むわけにはいかないから――。

 

今は、こうするしかできない……。

 

「――発射っ!」

 

ヒエイの一声とともに、朱色の光が解放される。

 

うねりをあげて閃光が海上を駆け抜ける。

 

そしてそれは数多の艦を薙ぎ払った。

 

爆発に巻き込まれ、さらに多くの艦が沈んでゆく。

 

 

硝煙を上げて、海中に没す彼女たちを、ヒエイは唇を噛み締めながら見送った。

 

――こんな感情を、已然の自分なら抱きはしなかった。

 

むしろその方が、ヒエイにとっては幸せだったと言えるかもしれない。

 

 

……けれど今の彼女は、同胞を悼む心を持てたことに、心から感謝をしていた。

 

 

『会長、大丈夫か?』

 

ミョウコウが心配したふうに声をかけてくる。

 

「……ありがとう。ミョウコウ。私は大丈夫です。それより警戒なさい。次が来るわよ」

 

『ああ。了解した』

 

 

ヒエイは目元を拭い、前を見る。

 

――泣いている暇はない。

 

守りたいものがあるなら、今はただ強くあるのみ。

 

「霧の生徒会に告げます。ここから先には、決して行かせませてはなりませんっ!必ず、守り通しなさい!そして全員で、必ず帰ります」

 

ヒエイはそう宣言し、迫り来る艦隊を迎え撃つ。

 

 

……けれど。

 

 

ここでの彼女のミスは。

 

 

敵は目の前だけではなかったということだ。

 

 

彼女がそう言った瞬間、その背後で――紅い光の爆発が起こった。

 

 

「……え?」

 

 

一瞬、何が起こったかわからなかった。

 

しかし、ごっそりと抉りとられた彼女を見て、ヒエイは我に返る。

 

「ナチ!?無事ですか!?返事をしなさいナチっ!?」

 

そう彼女の名を叫ぶと、ノイズ混じりだが応答がきた。

 

 

『……大丈夫、です。ただ、もう艦の形成維持が……』

 

 

『ナチ!艦体を放棄して私に飛び乗れ!早く!』

 

ミョウコウが艦を近付け、ナチは呼んだ。

 

ナチはミョウコウの言われた通りに、彼女に飛び乗ると、ナチの艦体は砂のように崩れ出した。

 

ほっと胸を撫でおろしたヒエイ。

 

そして、彼女はソレの降ってきた空を見上げる。

 

 

――恐らく、彼女たちの考えうる最悪の事態が現実となってしまった。

 

 

通信でコンゴウたちに伝えようにも、予備で繋いだ回線すらノイズの嵐だ。

 

 

「――やはり、とられていましたか……」

 

 

――振動弾頭。

 

かつて、人類の希望と言われていたそれは、いまや一人の少女の玩具と化していた。

 

 

 

 

 

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