行きつく先へ    作:たまてん

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群像たちの窮地にかつての戦友が集う


行きつく先へ 第六話 彼女のオモイ

6.

 

――よぉっし、決まったぁああ!!

 

群像にウィンクをしたタカオは心の中で歓喜の声を上げた。

 

登場するには完璧なタイミングだった。

海の中でスタンバってた甲斐もあって効果は抜群のはず。

そして決め台詞も確実にいけた。

これで艦長もきっと私の魅力にメロメロに……。

「――デレデレしてないでとっと行きなさいよ」

「って、あ、ちょっ!?」

えへえへとだらしのない笑みを浮かべていたタカオは背中をガンっと蹴り落とされ、見事に頭から落下した。

「あっははは!タカオってばドジだな」

「うっさい!アンタにだけは言われたくないわよっ!って、は!?」

 

 

 

笑うアシガラに鼻頭を押さえながら涙目で反論する彼女は周りの視線に気付いた。

群像たちを含め、皆反応に困っている。

というより、何だか憐れみの視線を向けられている気がする。

――気の毒なことに、先ほどまでのタカオの威厳は、完全に消失してしまったようだ。

 

「……タカオ。大丈夫か?」

「……う、うわぁぁぁん!」

群像にそう言われた瞬間、タカオは泣き出してしまった。

そしてうずくまった彼女は、ダンダンと艦体を揺らすほどの勢いで甲板を叩いた。

「何よ!せっかくかっこよく決めたと思ったのにぃー!これじゃ私の『逆白馬の王子様作戦』が水の泡じゃない!」

 

「タカオやめなさい!てゆうかやめて!私が壊れるから」

ヒエイがそう言ったが、タカオは「知るかーそんなことー」とふてくされるだけだった。

 

「何でこうなるのよー!!」

「――はい。とりあえず、アンタは一旦頭を冷やしなさい」

「がっ!」

半狂乱になったタカオの頭上にあろことか砲弾が落とされて、彼女は低くうめいた。

見ると、船首にはもう一人の女性が座っていた。

「ヒュウガっ!?君まで来ていたのかっ!?」

 

まぁねー、とヒュウガは群像に手を振った。

「とりあえず、もろもろ説明はあとで。今は後ろのあれらを止めるのが先ね。――ほらタカオ、アンタも起きなさい」

「ううう、人使い荒いわね……」

頭を擦りながら立ち上がったタカオは、一度深呼吸をすると両手を空に掲げた。

「――砲撃準備、開始」

彼女の言葉と同時に、後ろに控えていた彼女の艦の砲門が開き始める。

ナガラたちを迎撃するつもりだ、と察した群像が何か言おうとしたが、その前にヒュウガが「大丈夫よ」と言ってそれを制止した。

「事情はわかってるわ。とりあえず私らに任せといて」

「――発射っ!」

タカオのその言葉とともに、ミサイルが数発放たれた。

ミサイルは艦隊へと飛んでいったが起爆することはなく、代わりに白い稲妻のような閃光が走った。

「……なるほど。電磁ミサイルか」

白い閃光を見たコンゴウがそう呟くと、ヒュウガは「正解」と頷いた。

「即席で作ったわりにはいけたわね。――艦の駆動機関のところに高圧電流の一撃をお見舞いしてやったわけ。クラインフィールドを張っていてもナガラの波長はすでに登録済みだから、フィールドを中和してしまえば防ぎようはないわ」

「うっわぁ。痛そう……」

話を聞いたアシガラの顔が青くなる。

重巡、いや戦艦クラスが食らったとしても無事ではすまない代物でだろう。

「さてと。ナガラたちは沈黙、約一時間は麻痺して動けない。そんでもって中の人間は無事だし、戦闘を行う必要はなし。これで解決よ」

「どうだ!これが重巡タカオの実力よっ!」

「アンタは撃っただけでしょうに」

「――タカオ、ヒュウガ。……ありがとう」

群像はそう言って頭を下げた。

――彼女たちのおかげで最悪の決断をせずに済んだ。

精一杯の感謝込めた言葉に二人は微笑む。

「――あーあ。まさかこんな手で攻略されるとは」

がっかりである、とホウライは肩を落とした。

そんな彼女をヒュウガは冷たい目で見る。

「――ねぇ。いい加減その格好やめてくんない?虫酸が走るわ」

「あらら、お気にめさなかった?貴方の大好きなイオナ姉様よ」

「馬鹿言わないで。不愉快だわ」

「それは残念」

そう言った途端、彼女の姿が元に戻った。

「――それでヒュウガ。教えて欲しいんだけど、どうして私の索敵に引っ掛からなかったのかしら?」

「ステルス迷彩もあるけど、前に貴方が私たちに接触してきた時に打ち込んでおいたウィルスのおかげよ」

「……本当だわ。いつ仕込んだのかしら。抜け目がないわね。それじゃあ、だいぶ前からここにいたんだ?」

「ええ。貴方が千早 群像と話始めた辺りにはもうここにいたわ」

「――ナチ。気付いていたの?」

ヒエイの言葉にナチは、「ええ一応……」と目をそらしながら答える。

「お伝えしようかなって思ってたらヒュウガさんに言うなって言われちゃって……」

「少し間だけ隠れて起きたかったのよ。――でもおかげでアンタを解析できた。本体の居場所も特定させてもらったわ」

「――迂闊な自分に頭が痛くなるわ。こんな至近距離にいた挙句にそこまで干渉を許していたなんて……」

「本当ね。それもこれもたかが千早 群像と話をするだけだって言うのにリソースを大量消費していたせいね」

「……何のことかしら?」

惚けても、彼女に干渉していたヒュウガにはお見通しだった。

「――貴方は千早 群像を異常に排除したがってる。そして今も彼から何も影響を受けないように全力で自身を守っている。そのおかげで逆に私に付け入るスキができたけどね。そしてもう一つ。――貴方の本体が使用しているユニオンコア。反応がぴったり一致したわ。多少混ざりものの反応を感じるけど――イオナ姉様のものね」

「何だとっ!?」

一同が驚きの声を上げる。

対してホウライは逆に落ち着いていて、ヒュウガに向き直るとにこりと微笑んだ。

――ぞくり、と背筋に悪寒が走る。

「――驚いたわ。そこまでわかっていたなんてね。――なら私は、この事実を知った貴方たち全員を殺さなくていけないわ。一人残らず、ね」

「――イオナ姉様は、まだそこにいるのね」

「さぁどうかしら?もう私に取り込まれてしまったかも」

「嘘、なら貴方は千早 群像をそこまで警戒しないはず。――貴方は恐れてる。かつてイオナ姉様を起動させた、千早 群像という存在を」

「……今日の私は墓穴を掘っただけみたいね。これ以上ここにいる意味はないみたいだし、帰らせてもらうわ」

「待てっ!」

群像が止めようとしたが、それを聞く彼女ではない。

だんだんとホウライの姿が透明になっていく。

去り際に、彼女は群像に振り返り、そして嘲るように笑う。

 

「――けれど忘れないで。千早 群像。私がイオナのコアから生まれた存在であることに変わりはない。だから私の抱くこの感情も、貴方に訴えたあのイオナの叫びも、全て伊号401が内に秘めていたものだということをね」

 

そう言い残して、彼女の姿は消失した。

 

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