黒髭は月の海を駈ける   作:天城黒猫

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召喚

 

 岸波白野は、自分が死ぬという事を理解していた。

 胸に刻まれた斜めの傷口から紅い血がどくどくと、際限なく流れ出、うつ伏せになって倒れている彼女の体に、生暖かい血の感触が伝わる。

 

 ──死ぬ?

 

 何故、こうなったのだろうか。と、彼女は思考する。この世界の謎を解くために、少年の後をついて行ったら、その少年は廊下の何も無い筈の壁をすり抜けた。

 その事に戸惑ったが、彼女も少年の後に続いて壁の中に入っていった。

 そして、人形を引き連れて、電子の世界を進んで行き、巨大な3枚のステンドグラスがある、まるで教会の聖堂の様な部屋に辿り着いた。

 そして、自分の引き連れる人形が、敵であろう人形に敗れ、その人形はそのまま彼女の胸を切り裂いたのだ。

 そのような経過があり、現在に至るのであった。

 ふと、霞む目で見てみれば、そこには彼女が後を追っていた少年の屍体があった。

 恐らく、彼も彼女と同じように、人形に敗け、死んだのだろう。

 

 ──私も、彼と同じ様になるのだろうか……

 

 ふと、そんな思いが彼女の頭をよぎる。

 こんな所で、何も解らないままに死ぬ?

 否。それは嫌だ。まだ答えが見つかっていない。責めて、ここが何処なのか、私は何者なのか──。

 それを知らないままに野垂れ死ぬなんて、御免だ。

 指先の感覚が無くなり、体の力も抜ける。このままでは彼女は死ぬだろう。

 

「──それは、嫌だ」

 

 歯を食いしばり、感覚のない指先を握り締め、身体中に力を入れて、彼女はもたつきながらも起き上がる。

 血はまだ傷口から流れ出ている。

 だが、それがどうした。まだ血が流れているということは、まだ生きているという証証拠だ。

 体の痛みを、抜ける力を、気合によって、抑え込む。

 そんな彼女に反応し、人形がトドメを刺そうと、彼女の元へと駆け出す。

 

「う、ああああぁぁぁッッッ!!」

 

 これから、如何すればいいのか。どうやってあの人形から逃れるのか。そんな事はさっぱり解らないし、考える様な余裕も無い。

 彼女の頭の中にあるのは、

 

 ──死にたくない。

 

 ただその一つだけ。

 だが、現実というのは非情であり、どうしようも無いほどに残酷なものである──筈だった。

 

『うほほほほーい! 何と言うキュートな少女! 具体的に言うならば、周りからはクラスで3番目とか言われているけど、実際は1番!そんな感じ!そんなあのコに惹かれ、黒髭惨状!』

 

 ──そんな声と共に、ステンドグラスが砕け散り、彼女の前に彼は現れた。

 上半身は何も着ておらず、申し訳ばかりの装甲()が両肩に装着しており、右手には、刃が1本の鉤爪が嵌められ、顎には黒い髭が結わえられていた。

 

 ──誰? 彼女は、そんな疑問を最後に力尽き、地面に倒れ伏した。

 

「──さて、そこの萌えすら感じないデッサン人形(フィギュア)よ。女のコに手ェ出した覚悟は出来ているんだろうなァ?拙者の怒りが有頂天でござるよ」

 

 そんな彼の言葉が理解できているのか、いや、出来ていなくても結果は変わら無かっただろう、人形は彼に襲いかかった。

 

「断罪!月に変わってお仕置きよ!!」

 

 だが、人形は鉤爪と蹴りによる攻撃で、たちまち粉々に砕け散った。

 

「ピンチなところを、拙者がカッコよく助けて──アレ?もしかしてコレフラグ立った?大丈夫でござるか?マスター」

 

 彼が振り返ると、そこには血まみれになって倒れた白野がいた。──

 

「ちょおおおぉぉっ!?医者ー!いやむしろ病院が来い!ハッ!そうだ、保健室!」

 

 彼は、少々パニックになるが、白野抱えて保健室に向かった。

 

 

 

 

 ────彼の名は、エドワード・ティーチ。

 

 嘗てカリブの海を荒らし回った残酷にして、残虐なる海賊。

 その知名度は『海賊』というカテゴリーに限定すれば、最高峰と言えるだろう。

 

 

 ──岸波白野と、エドワード・ティーチ。これから彼らは月の聖杯戦争を勝ち抜き、その先に何があるのか。それを探求する──と思う。というか、勝ち抜けるかなぁ……勝ち抜けたらいいなぁ……。






続く予定はない、というか、テスト週間なのに何書いているんだ……

1回戦と3回戦が混沌としそうで怖い。
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