つい魔が差して!
「お~……そういえばこんなん昔買ったっけなぁ……」
そう言ってダンボール箱の中から手に取ったのは1つのソフビ人形。昔特撮番組で登場したキャラクターを模したソレは小さな頃の思い出を甦らせてくれる。
(懐かしいなぁ……ちょっとコレは……捨てたくないな……)
使う機会はこれからも来ることは無いだろう、しかし日本人ならついつい物を取っておいて思い出に浸ってしまうもの……ごみ袋には入れずに持っていく用のダンボール箱へと入れていく。
季節は春。出会いや別れ……色々と忙しくなったりするこの時期に俺の家は引っ越しの準備をしていた。
理由は父親の仕事の都合で。まぁ、ありきたりな話だ……転勤族であるウチは今回俺が生まれてから3回目の転勤となっていた。もうこの年齢になれば何ともなく、友達との別れも少しばかり胸が苦しくなる程度だった。
今のご時世飛行機で何処へだって行ける、ならば何時でも会えるさ。アルバイトもできる年齢になったのだからそれぐらい平気だろう。
「できるだけもってくもん減らせよー?うちはそんなにお金無いんだからなー」
「うーい」
前の引っ越しの時も父さんとはこんなやり取りをしたような……そんなことを思いつつ手を動かす。
もう必要の無くなった小学校の教科書やノート類、使うことなどとうの昔になくなったラジコンカー……などなど出てくる出てくる……。という感じでどんどん発掘していった。
日本人の持っているものの何割だかは使っていない不要なものとテレビ番組で言っていたが……まさにその通りだった。
これまたゴミが出るわ出るわ……気づけば満杯のごみ袋が部屋の中にて量産されていた。
「ふぃー……こんなもんかな?」
ある程度片付いたところで一息。かなり思い出のあるもの以外は大分捨てた筈、あとは必要な物とミリタリー系の本くらいしかないと思う。
……そして当日……
「それじゃ、向こうに行っても元気でな?」
「いやー……無理だな!」
「いやいやいや、コミュ障でも極めんのか?」
なんて友達と今までと変わらない会話を交えて別れを言う。どうせまた会える、いつでも話し合える、そう思っていた。
不意に襲いかかる衝撃。
俺らの乗る普通車に大型トラックが突っ込んできた。
フェリーで移動する予定だったので高速道路で港へ向かっていると、対向車線から蛇行運転をするトラックが突っ込んできた。しかもものの見事に俺だけに衝突。
父さんの咄嗟の判断でアクセルを踏み込みハンドルを切るが……後部座席は間に合わなかった。車体はひしゃげて体から骨が折れるような嫌な音が聞こえる……実際折れているのだろう。直後に全身を悶えようにも悶え切れない激痛が走り、叫びになっていない掠れた声が喉から発せられる。
「がっ……ぎ……」
父さんや母さん、姉ちゃんが何か言っているがさっきの衝撃で耳が聞こえない。ただひたすらキィーン……とモスキート音のような甲高い音が頭の中を駆け巡っていた。
数秒後には息が思うようにできなくなり、体の感覚も鈍くなってきた。
(このままじゃあ助からねぇなぁ俺……)
それにどの道助かったとしても以前のような暮らしができるのだろうか……?何かしら家族や他人に迷惑をかけるような体になってしまわないだろうか?それくらいならこのまま……
マイナス思考に染まっていき首の力も抜け頭がガクリと下がる。その視線の先には破れて中身が散乱した俺のリュック。
薄れゆく視界……最後に映った光景は
此方に顔が向いたダークザギの人形だった。
あぁ……見てくれてる人がいればいいなぁ……