「一夏!この女とは一体どんな関係なんだ!」
「そうですわ一夏さん!折角わたくしというものがいますにも関わらずこんな女性と親しくしているなんて!き、キィィィィーー!」
「あ!ダメだよシンタロー。食事中くらいイヤホン外さなきゃ」
「うぐ……わ、わかったよ」
「ま、待てよ箒、セシリア……あ、鈴!」
「一夏、それ頂戴、えへへもーらい!」
「ぶふっ、に、似合ってるじゃんキド〜(笑)ぶふふ、ま、まさかの女用と男用制服の発注ミスとか(笑)しかもそれを自然に着こなす現役JK(笑)ぐぶっ!?ちょ、あだっ!?き、キドっタンマ……」
「うるさい、カノ死ね」
「お、みんな楽しそうっすね!エネちゃんも元気だったっすか?」
『いや〜ほんとご主人の周りはカオスすぎて面白いですよ〜』
うるせぇよ、エネ。
つーかこの事態は俺がしたわけじゃねえだろ………舌打ち紛れに口一杯コーラを飲み込んだ俺は事の始まりを思い出す……………
お昼、食堂。
俺やアヤノ、一夏達は昼食を取るためにIS学園の食堂に行った。
食券を買うために列に並ぶと、カノと仲良くなりたい一夏が丁度共通の話題になる俺の話を始め、俺に興味のない篠ノ之とオルコットは話すことが何もないので一夏達の話の輪に入れず、結果俺を凄い目つきで睨んでくる、いやなんでだよ…。
まあ、そこら辺はアヤノと俺がIS学園に行ってる間に親父さんらに勉強を教えてもらったとか、遥先輩の話とかであんまり気にならなかったけどな。
そして列も徐々に減っていって、食券コーナーに辿り着く、所にそいつは現れた。
「一夏、遅かったじゃない!待ちくたびれたわ!」
「お前……鈴か?いや、やっぱり鈴だ!」
一夏と親しげに話す謎のツインテールチビだ。
「席とっとくから早く来なさいよ」
「おう、悪いな鈴」
一夏に笑顔で返されて機嫌良いステップで席を確保しにいったチビ。
それを殺意ダダ漏れで睨み付ける篠ノ之、オルコット。
そこでカノが気を利かせて一夏にあのチビについて聞き込んだ。
「あれ、一夏くんの彼女?」
「え?なんだよカノ」
バカかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
お前バカか!?カノ!?なんで火に油注ぐような真似してんだ!はぁ!?
「一夏、お前……私に何も言わずに」
「え?どうしたんだよ箒?」
「い、一夏さんんん……??」
「え?お、落ち着けってセシリア」
そして始まった昼食会、最初は様子見で篠ノ之もオルコットも大人しくしていたが一夏とチビの和やかムードを見て激怒しやがった。
「い、一夏ぁぁ!その女は一体、お前とどんな関係だというんだ!」
「あ、お!おおおおおおおおおおおあおあおおおあおおおおおおおおおあ!!?」
バシンと叩かれたテーブルから、俺の昼食が……俺のコーラが、俺の……俺の、
「大丈夫?シンタロー、はいティッシュ」
「………う、うう」
『wwwwごwご主人のwwご主人のだけテーブルから落とされるとかwwwww』
「しかも全部制服にぶちまけちゃったっていうねー(笑)それもコーラ」
現在俺は上の制服とズボンに思いっきりコーラがぶっかかってる状態だ。
そして当の篠ノ之はそれに気をかける仕草もなく一夏を問い詰めている。
「………」
「「ご主人様(シンタロー君)、ドンマイ(笑)」」
「お前ら、笑ってんじゃねーよ!」
カノとエネのうざうざコンビに苛ついてると、誰かに肩をポンポン叩かれる。
後ろ振り返るとそこには一夏を超えるイケメンフェイスの男が立っていた。
「うおっ……」
あまりの格好良さに思わず「うおっ」が「うほっ♂」になるとこだった、あ、危ねえ。
イケメンは俺をジロッと見ると空いてる席に腰を下ろした。
しっかし長髪をポニーテールにしたイケメンかよ、まあ、似合ってるけどな。
………………ん?あれ、こいつって。
「エネ、あいつ」
『あ、あのイケメンさんですか?ご主人、確かにカッコいいですよね!まあ、ご主人の顔面偏差値じゃどんだけ修正しても届かないと思いますけどね!』
うっせえよ。
「おい、カノ」
「うん、シンタロー君。彼、結構なイケメンだよねぇ?………くく(笑)」
カノ、お前が分からねえのか。
いや、違った、こいつ分かっててワザと知らないふりしてる、キリッとした顔してるけど顔が若干プルプル震えてるもんな、完璧確信犯だ。
それでイケメンの方はそのカノの仕草を見てますます不機嫌になっていくので意を決して俺が口を開くことになった。
「お前、キドか………?」
「……ああ、そうだ。シンタロー。……はぁ、なんで俺がこんな格好を。父さんめ……」
つまり、そういうことだ。
恐らくキド用のIS学園の制服が何かの手違いで女性用が男性用に間違えられていたわけだ。
………聞いてる限りじゃアヤノの親父さんがワザと間違えたって可能性もあるけど。
『ほぁ〜、これが団長さんですかぁ〜。すごく似合ってますねぇ〜』
「つぼみ、凄い。すごく似合ってる」
「ね、姉さん!」
エネとアヤノが男装キドに好感触の感想を言い、キドは少し照れた感じで……いや結構満更でもないなあいつ。
「……………!ぶふーっ!き、き、キド。男装似合いすぎでしょ!ぶふっ!あはははは!?あはっ、げほげほ!」
カノは堪えていた分が爆発したようで腹を抱えてヒーヒー笑っている。
キドを指差しして笑う姿に周りの女生徒がニヤリと笑って手に持ったメモに何やら書き付けて……これ以上は止めよう。
「うるさい、カノ死ね」
「あだっ!?いつつ……酷いじゃんかー、キードー君、あははははぁ痛゛っ!?」
カノの笑う様に耳まで顔を赤くしたキドがうざカノを黙らせるために武力行使に出た。
まず顔面をグーパン、更に腹パン×3連撃。
これにはカノも堪えたらしく、笑顔を貼り付けたまま顔中冷や汗だらけにして突っ伏している。
「ふん、カノの癖に生意気だ」
我らが団長、男装キドも昼食を取り始め、俺も代わりを貰いにアヤノと席を立つ。
………しっかし、篠ノ之の奴、俺に一言も謝らないんだな。
『凄いですねぇ、あの竹刀さん。ご主人がヘタレとはいえ謝ろうとする気もないんですね!まあ、ご主人に年上の威厳がないのが一番ダメなんですけど!wwww』
「うっせえよ、エネ!」
やめろ、人が気にしてることを言うな!
「ふふ、シンタローも貴音さんも、元気で良かったです」
『……ふぅ。アヤノちゃんもね』
俺とエネのやり取りを聞いてアヤノは楽しそうに笑う。
ここにあと1人、遥先輩が居ればまた違った掛け合いが観れたのか、つくづくそう思ってしまう。
「あれ、人だかり」
「ちっ、待つしかねえか」
『あれあれー?そんなこと言ってご主人随分と嬉しそうですねぇーぇ?あ、アヤノちゃんがいるからですかそうですかそうですかぁーwwwいやぁw随分とw幸せそうで何よりですぅ、えぇ、えぇwww』
ぐ、こいつ、調子に乗りやがって……!
しかしなんだ?食券買うだけにこんなに集まるのかってぐらいの人だかりは。
今、目の前に移るのは人だかりも人だかり、全てIS学園の女生徒で構成された謎の集団だった。
そして、その中からひょっこりと頭一つ分飛び抜けた人物が姿を表す。
「あ?おいあれ、セトじゃないか?あいつ、なんでここに?」
「あ、本当だ。幸助ー」
その正体はゴーグルのついた緑色のフード付き作業服を着こなす長身の男、メカクシ団No.2、セトだった。
女生徒はみんなセトを一目見ようと野次馬目的で群れをなしていたらしい……って、IS学園の食堂で何やってんだこいつ。
「あれ、姉ちゃんにシンタローさんじゃないっすか。良かったら一緒にお昼どうっすか?」
こっちに気付いたらしく、長身のセトがこちらを向いて昼食を乗せたトレーを持ってこちらへ来る。
セトがこちらへ向かってくるごとに人の海が割れていく、圧巻だった。
「お、おう。その辺にキド達もいるから先に行って来いよ」
「本当っすか!あー、良かったっす〜。1人で食堂は随分気まずかったもんで」
ニカッと笑うセトの笑顔に周りの女生徒は当てられたのかへなへなと腰を下ろした。
セト………恐ろしい奴。
「じゃあ、シンタロー。早く買って、みんなでご飯食べよ」
「……おう」
最初買ったのと同じ物とコーラを購入して席に戻ると、一夏、カノ、男装キド、セトを一目見るために食堂にいるほとんどの女生徒が一夏達の席の周りに屯っていた。
「うわぁ、すっごい人気だねー、つぼみ達」
「アヤノ、お前なに呑気に言ってんだよ……」
アヤノの能天気さに呆れるものの、目の前の女子の群れに俺は恐怖を覚えた。
これでも昨年まで立派な自宅警備員職に着いていたニジオタコミショーヒキニートだ、こんな膨大な数の人だかりを押しのけて席に着くなんて俺にはハードルが高すぎる。
『もう、ほんっとご主人ってヘタレですねぇー!はいはいみなさーんっ!電脳世界のアイドルこと超絶美少女のエネちゃんが通りますよー!道をあけてくださーい!』
「っ!?うぇ」
「「「「チッ、キモ」」」」
「ごふっ………!」
『IS学園が誇る女生徒の罵倒が茫然自失のご主人の心にクリティカーーール!!』
エネの声かけで女生徒達が道を開けるもその代償は計り知れない。
1人のニートのガラスのハートを粉々に打ち砕いたのだ、俺はもうダメかもしれない。
「し、シンタロー?どこか痛いの?」
「あ、アヤノ……特に胸が」
「胸?」
(((チックソが彼女持ちかよ。つって女の子の趣味わりーわ、マジニートは無いわー)))
アヤノに背中と胸をさすられながら一夏達のテーブルへ、その途中女子から、
「氏ねよクソオタ。元々おめえとその子じゃ釣り合わねーんだよこの死に腐れニートが」
「ごふぉっ、ごぶふっ…」
「シンタロー!?」
『ーーーーーーっ!!?wwwwwww!!ゲホゲホッ?ゴホ、ゴホッ!』
あ、もう無理だ、目の前がなんか真っ白に……。
「一夏ぁ!この馬鹿者!こんな女にデレデレと鼻の下を伸ばしおって!」
ブン!
「うおっ、危な!」
「いでぇっ!?」
「シンタロー!?」
『あーっと!IS学園の女生徒よりも運動神経の無いご主人に竹刀を持った剣道有段者による強烈な一撃ぃーーー!!ご主人、ノックダゥーーン』
頭に篠ノ之の竹刀が当たった。
頭が振られて脳が揺さぶられる。
倒れるかと思ったが、誰かが俺の体を抱き留めた……アヤノだ、心配そうな顔で俺を見つめている。
はぁ、くそ、俺……だせぇ。
「も、もう!我慢ならん!一夏ぁ!!」
「落ち着けって箒……!?」
篠ノ之がまた竹刀を振り下ろす、反射的に一夏はそれを避けて、竹刀の切っ先は俺の方へと勢い良く伸びていく。
俺に出来るのはアヤノが巻き添えにならないように突き放すぐらい……って、もう、無理か。
パシッ!!
「………はぁ」
「あ……?」
「おー、ナイスぅ〜キド」
「キドっ、大丈夫っすか?」
「ああ、問題ない。シンタローこそ大丈夫か?」
『流っ石!団長さんですね〜、ご主人とは大違いですよ!』
いや、俺に竹刀が当たる直前に目の前に来てそれを受け止めた奴がいた。
現メカクシ団団長、キドだ。
長いポニーテールがゆらゆらと揺れてキドは男の俺から見てもカッコいいと思ってしまうキドメンさながらに篠ノ之を睨んだ。
「うっ」
それを受けた篠ノ之は今更ながらに自分のした事に気付いたようだ、俺とキドと自分が握る竹刀を交互に見ると気まずさから後ろに後ずさる。
「うちの連中に手を出したんだ。覚悟は出来てるんだろうな?」
キドカッコイイ!いやイケメン過ぎるだろ。
「よ、避けない如月が悪い!」
自宅警備員に剣道有段者が何言ってんだか。
「食堂の場で竹刀を振り回しておいてそんな言い訳が通用すると思うのか?……もういい、俺たちは別の席で昼食を取らせて貰う。おい」
キドはそう言いトレーを持って席を立つ、カノはやれやれと肩を竦めて、セトはうんと頷き、アヤノは俺の手を引いて。
「団員を守るのは団長の役目だ、いくぞ、シンタロー」
「「「「あぁ、キド様……♡」」」」
俺を見ながらフッと笑うキドメンに周りの女生徒が全員ハートを撃ち抜かれた。
そして怒りと恥辱でプルプル震える篠ノ之を無視して別のテーブルを陣取った俺たちは、メカクシ団メンバーで気兼ね無い昼食を取った。
「しっかし、篠ノ之はどうにかなんねえのか」
「私もあれはどうかと思うなぁ。シンタロー、本当に大丈夫?」
『無理ですねwご主人!まあ、その分アヤノちゃんに甘えられますし逆に嬉しいんじゃないですか?ご主人の笑い慣れてない引き攣った笑顔頂きましたwwwww』
「おおい!?」
エネの奴も篠ノ之とどっこいどっこいだろ………………。
アヤノとキドの口調ががが、小説8巻出ないかなー