恋と召喚の学園戦闘記 作:竜華
ー 体積の限界を知らない次元の中では、ここ、
科学を創造、運営する人間。その派生であり、魔術を軸として生きる魔術師。そして、唯一異世界の魔獣や神などとの交流を持ち、その力を借りて戦う、魔術師の派生・召喚師。この三種族が、種族の誇りと王座をかけて、一部の軍人達しか喜ばないような、戦争を繰り広げた。
『
この無駄な戦争は、後にそう名付けられることになる。
明くる日は、火柱が空気を穿通する。焼ける人型。また明くる日は水が地を覆い隠した。暴れる水面から、人たる者の手足、引き攣る顔面が覗いた。街に覆い被さる黒い巨人。天空高く咆哮する神竜。それらに銃口を向ける巨大戦車の数々。三つ巴状態。正に、地獄絵図。悲鳴の合唱は連日続くのであった。
しかし、この下らない戦争は呆気なく終結する。
三種族の中から、調和を求める声が上がったのだ。「このままでは、地も人の心も歪み、草木は枯れ果て、空は青さと光を失うだけだ。最悪、この世界の存在そのものが、次元史から抹消されることになりかねない」。この声は忽ちどの種族の間でも広がり、戦争を滞らせた。この
そこからの三種族の行動は迅速だった。手始めに、平和同盟を結び、戦争を急速に鎮めた。人々は種族関係なく手を取り合い、一つの『人』という生き物の括りとして生きていくと、世界中から歓喜の声が上がったのは言うまでもない。
次には、壊れた文化の修復。いっそのこと、文化を混ぜて協力のシンボルにしてしまおうということで、魔術師の魔術に必要不可欠な《
*
『共同種族立 リーネイル・ハイスクール』
魔法機製造者関連が建てた、三種族混合の私立高校である。入学は困難を極め、入った者には生涯の安泰が約束される、王道の難関校。一般的見解だと、勉強ができない者は、どんなに実技ができても、入学は許可されないだろう。
そう、普通なら、の話だが。
*
「……ぁあぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎やっと終わったぁぁぁぁぁっ……とぉぉっと‼︎」
ガタンッ……
ドサッ‼︎
「むぎゅっ⁉︎」
夕日に照らされ、オレンジに光る教室で、茶色の髪と悲鳴が机の隙間に消えた。投げ出された本が、その上で縦長の半円を描いて、先に転げた少女の顔面に、引きつけられるように着地。数秒の呻きの後、白い手が机の上に乗せられる。それを軸として、一人の少女が姿を現した。
「志桜里、煩いのです〜」
「ご、ごめん……でもさ、あたしが、こんなあたしがだよ‼︎こんな分厚くて挿絵も写真も無い本を読み切ったんだよ⁉︎凄いでしょ⁉︎」
「歴史書一冊読み終わった位で叫びすぎるから、そんな目に逢うのです〜。いつも読んでたら、そんな本、読むのに苦労はしないのです〜」
「うっ……」
隣で呆れる金髪の美少女の呼んだ通り、
「確かに、学校の蔵書を完全読破した
床で広がる本を手に取り、志桜里の親友、
「あ〜はいはい、良く出来ましたなのです〜」
「……なんでだろ、嬉しくない」
遂にしょげてウジウジと床をこねくり回しだした志桜里。
(……流石にやり過ぎたのです〜)
いつもの毒舌スキルが暴走した、と後悔の念が頭を掠めた杏愛はしゃがみ込む。
「……確かに、志桜里にしては、今回は頑張ったのです〜。凄いのです〜」
「……本当?」
「本当です〜」
煽てるとこうなるから、志桜里は面倒がられるのだろう、と杏愛が思っているのは、内緒である。
しかし、彼女の言い分も一理ある。本人も自覚する程のとんでもない馬鹿なのである。赤点はおろか、点数が二桁行くかも怪しい。そんな馬鹿が、字のみの本を読んだのだ。後日、雨どころか槍でも降ってくるような大事件に発展しかねないことなのである。
「……じゃあ、もう図書室に返すのです〜。志桜里の記憶力じゃ、貸し出し期限をすぎて怒られるのがオチですから〜」
「……あたし達、親友だよね?」
「それがどうしたのですか〜?」
「……もう、いいわ」
項垂れる志桜里を見て、小首を傾げる杏愛なのであった。
*
「……いつ来ても思うんだけど、すっごい静かだよね、ここ」
「逆に、叫びが木霊する図書室なんてあるんですか〜?」
「……あったら怖いね」
「そうです〜、これがノーマルなんです〜」
本を片手に、カウンターまで二人で歩く。こうやって無駄話が出来る程、この図書室は広いのだ。そんじょそこらの図書館の三倍の大きさ、と言うと分かり易いだろうか。そこに、天井まで伸びる本棚が所狭しと並び、本がある程度まとまった状態で置かれている。荘厳、という言葉がピッタリな空間となっていた。
「……!あら、志桜里ちゃんじゃない。珍しいわね、
「……ミリィさんまで……」
ミリィ ー ミリィ=シトレア ーと呼ばれる落ち着いた容姿の女性は、柔らかな微笑みと薄緑の視線を向けて話を続ける。
「……あぁ、そう言えば、友達に煽てられて《リーネイル史の真実》なんていう難書を借りた
しかし、彼女の瞳は、持ち主の本当の気持ちを映していた。
(完っ全に笑われてる‼︎)
視線が嗤っていた。それこそ、瞳の中に草が生えているのが良く分かる程に。
だが、志桜里だって、その程度の嘲笑で憤激する程餓鬼ではない。いつもの笑顔で、優しい声で
「そうですね……ですが、そんな馬鹿が『リーネイルの四天王書』とうたわれる本を読んだんですよ……今なら、感想文書ける筈ですが……どうします?」
精一杯の嫌味を返してやった。ミリィは、小さく溜息を漏らして、軽く手を振った。
「生憎だけど、辞めておくわ。嫌味無しで、貴女が本に興味を持ってくれたことは嬉しいし。じゃあ、興味を持ってくれた志桜里に、お勧めの新刊を教えてあげる」
今度は本当に優しく笑ったミリィは、腕の機械の電源を入れた。即座に、可愛らしい絵、寂しげな写真などなどが映し出される。これも、魔法機の一種だ。
「えぇ〜っと、最近入ってきた奴は……っと、あったあった。志桜里って、『恋戦争』って漫画、知ってる?」
「あっ‼︎知ってる‼︎主人公に妄想グセがあって、恋のライバルとの泥沼的な戦いを、戦に例えてるんでしょ⁉︎クラスでも人気だし、あたし読んでるもん‼︎」
志桜里は急に飛び付く。彼女もまた、『恋戦争』たる漫画の大ファンらしい。
「そ、それ。それが文庫化されてね、全巻が一昨日来たのよ。確か、九類の棚の廊下側にある筈よ」
「マジで⁉︎行ってくる‼︎」
そう叫ぶや否や、杏愛の腕を引っ張って走り出した。
「図書室では静かにねー」
その声が届いているか、ミリィには知る術はない。
*
「ミリィさんの言った通りなら、この辺に……あ、これだっ」
梯子の上で、笑みを零す志桜里。少々変態チックである。
「へぇ〜、これが『恋戦争』ですか〜。なんともまぁ、乙女チックな表紙ですね〜」
「読んだらきっと杏愛だってハマるよ‼︎」
「勿論、読破記録を伸ばす為にも、こういうラノベ系も読むのです〜」
話しながらも、本をどんどん脇に挟んでいく。その数、なんと19冊。
(こんなに一気に借りて、読み切れるのでしょうか〜?)
「……よし、これで全部だね。さ、借りてこよっと」
喜々とした表情で降りた志桜里は、そのまま軽やかな足取りで、カウンターへ向かった……
筈だった。
「おい、
「……誰?」
柄の悪い青年五人が志桜里に声を掛けることがなければ。
初オリジナル小説……遂にやってしもうた。誤字・脱字はたっぷりあるかと思われますが、暖かい目で見守ってやってください‼︎