ストライク・ザ・ブラッド 錬鉄の英雄譚   作:ヘルム

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やっと試験が終わった…まあ、これから就活なんだけど…はあ…ま、わずかな時間のこの休みを楽しみますよ!
ではどうぞ!!


戦王の使者VI

「チクショウ。ここも行き止まりか。瓦礫を吹っ飛ばそうにも、獅子の黄金(レグルス アウルム)を召喚するわけにもいかねえし…」

「こんなところで、この前旅客船で見せた電気の塊なんて呼び出したら、私たち丸焦げよ。」

 

古城たちはあのナラクヴェーラがいた場所から大分離れた地帯を歩き、外を目指していた。だが、どこを見てもまるで出口なんて見当たらず、ただ瓦礫の山が延々と広がっているだけだった。

そんな中、先ほど注意するように呟いた煌坂はそんな風に話しながらも古城の手を握ろうと近寄ってみる。そして、スッと触れた後、すぐに離し、思う。

 

(やっぱり、嫌じゃない…)

 

紗矢華はその類稀なる霊能力の才能により父親から疎まれ迫害された過去を持つ。そのため、彼女は男に対し、恐怖から来る圧倒的な嫌悪があるのだ。だが、なぜだか今目の前にいる少年に限ってそのような状態は一切ない。むしろ、先ほどから顔が熱くなって妙な気分になっているような感覚も襲ってくる。

 

(って、だめよ!それは雪菜に悪いわ!!)

 

自分のこの感情が一体何なのか自覚できないほど鈍くないつもりの紗矢華はそう考え、また、手を引っ込める。

 

「だけど、瓦礫をどかさねえと先に進めねえんだよな…煌坂。お前のその…煌華麟だっけか?それで何とか…煌坂?」

 

ボーッとどこか上の空の表情を浮かべている紗矢華を怪訝に思い、彼はわずかに顔色を確認するように顔を近づける。

すると、それにすぐ気づいた紗矢華は驚き、すぐにそこから距離を離した。

 

「ちょ、な、何してんのよ!?近寄らないでくれる!あんたみたいな変態第四真祖に近寄られたら妊娠しちゃうから!!」

「するか!お前は一体吸血鬼を何だと思ってやがるんだ!」

 

今が緊急事態であるにも関わらず、思わず天を見上げたくなる古城。

だが、本当にそんなことをしている場合ではないとすぐに自覚したので改めて先ほど聞いた案件を聞き返す。

 

「で、どうなんだ?煌華麟って奴でこの瓦礫どうにかできねえか?」

「難しいわね…煌華麟はあくまで局所的な破壊を主とした霊的武装。瓦礫を斬れないことはないけど、さすがにこれだけの量、しかも、上に何段積みあがっているのか分からないこの状態でむやみやたらに斬れないわ。」

「そっか。そんじゃ、どうするか?」

 

ここでやはり考えられるとすれば、古城の中に潜んでいる眷獣(ジャジャ馬)たちだろう。ただ、彼らを呼ぶためには不完全な真祖である古城は霊格的に非常に優れた者の血を吸わなければならないのである。

ここに雪菜がいない以上、それは不可能だろうと思った矢先。

 

「…ねえ、暁古城。」

 

紗矢華が隣から妙に神妙な趣で声をかけてきた。お、おう、と思わずわずかに焦った調子で返す古城。

 

「その…さ、あなたって眷獣を従えるために雪菜の血を吸ったって言ってたわよね?」

「あ、ああ、ああするしか他に方法がなかったからな。」

「だ、だったらさ…」

 

紗矢華がベストの下のワイシャツのボタンを外し、首元の柔肌を古城に差し出すように曝け出す。

 

「な、ちょ、お、おい!」

「私の血を吸ったら、また新しい眷獣を使役することができるのかな?」

「いや、そりゃそうかもしれねえけど…」

「だったら、私の血を吸って!!これでも、舞威媛だし。霊格的にもあなたの眷獣は満足すると思うわ!それとも…私じゃダメ…かな?」

「っっ!?」

 

悩ましい声を上げながら、上目遣いで聞いてくる紗矢華に対して『反則だ』と心の中で思う古城。こんな風に頼まれてたら、自制心が割と(多分)高いと自負している自分でもクラッとくる。

ゴクリと生唾を飲み込む。

 

(これは緊急事態だから、仕方なくやってるわけで…決してやましい気持ちがあってやっているわけではない!…多分…)

 

必死に自分を正当化させるための言い訳を考え続ける。

しかし、最後の方はどこか自信なさ気である。

もう一度ゴクリと生唾を飲み込み、吸血鬼特有の鋭い犬歯が顔を覗かせる。そして、そのまま、その犬歯を紗矢華の首筋に当てるように顔を近づける。

瞬間、紗矢華にピリッとした痛みが走る。

その後、古城は己が吸血衝動に身を任せ、ズブズブと何か深層意識に沈んでいくように紗矢華の血を吸っていくのだった。

 

ーーーーーーー

 

『すー…ふぅううぅ…』

 

幾らかの擦り傷をこさえて、シロウは立ち、目の前の敵に相対する。

目の前の敵は無傷…とは言っても、ただ単に擦り傷や大きな裂傷ができたとしてもすぐに再生するため、無傷なだけであり、疲労がないわけではない。現にわずかに息が切れている。

だが、それはシロウも同じこと。自分の中にある彼女の宝具(・・・・・)をわずかに開放し、擦り傷を即座に治していく。

それを確認したヴァトラーは肩をすくめ、ため息を吐く。

 

「やれやれ、キリがないとはこのことだネ。どちらが攻撃したとしても先ほどから擦り傷しか身体に帯びない上に、どうやってるのかは知らないが、君の方もすぐに傷を治すことができるようダ。これじゃ、どうすれば、決着が着くのか分かりはしない。」

 

そう言いながら、ヴァトラーはずっと愉快そうにこちらを眺めてくる。

この戦いが心底楽しいと言葉で言わなくても、シロウに気付かせるようなはっきり言って吐き気がするような笑顔だった。

 

『…まったくだな。これではいつまで経っても決着が着かん。どうしたものかな?』

 

実のところ、彼を追い詰める手段はあるにはある。たとえば、『ハルペー』と呼ばれる鎌のように剣先が折れ曲がっている剣がある。あれを使ってしまえば、おそらく彼の眷獣や彼の身体にとっては確実に毒と言っていいはずなのでかなり有利に戦えるはずである。

ただ、それだとどうしても自分の戦い方の大半を見せることになるだろう。すると、ここでそれは使えない。

だが、それでいいと考えている節も彼には確かにある。

 

彼は英霊である。英霊とは過去の栄光が人々の『思い』、正確には『信仰心』によって肉付けされた存在である。

少なくとも、彼は英霊である以上、今の世界を動かそうとするのは英霊としてルール違反だと考えている。今の世界は今を生きていく者たちの問題である。

そりゃあ、マスターに命令されれば彼がサーヴァントでもある以上現世に干渉しようともするが、彼のマスターは知っての通り、争いを嫌う性格である。そんな彼女がそもそもサーヴァントたる自分の仕事である戦闘にすら賛成するとは思えない。

よって、彼は現世のものたちがこちらに干渉してきた場合、余程のことがない限り、適当にあしらおうと考えている。

 

つまり、この戦いも彼にとっては『あしらうべき戦いの一つ』に過ぎなく、決着を着ける気などサラサラないのである。

 

(さて、そろそろだな。あと少しでナラクヴェーラのいる人工基島(ギガフロート)に着く。いよいよ、本格的にどうやって離脱するのか考えなければな…)

 

そう考えた瞬間、いきなりその人工基島(ギガフロート)の方面で巨大な振動を伴った爆発が起きる。

 

『っ!?』

 

わずかに驚いて、ヴァトラーとシロウは同時にその爆発の元を見つめる。

するとそこには、赤い鬣を辺りに吹き散らしながら、圧倒的な威圧感とともに振動波を放つ二角馬(ヴァイコーン)が顕現していた。

二角馬(ヴァイコーン)は咆哮するたびに辺り一帯を振動波で覆い、破壊していく。

 

はっきり言って迷惑なことこの上ない行為をしている。

 

「あれは…そうか。第四真祖の眷獣ダネ。ふふ、素晴らしい。やはり、あちらも捨てがたいネ。」

 

そんな事を言いながら、彼は人工基島(ギガフロート)の方を向いた。それはつまり、シロウの方も呆気にとられるほどの隙をヴァトラーは見せてきたという事になる。一瞬呆気に取られてしまったシロウではあるが、そこは歴戦の勇士。

すぐに意識を立て直し、シロウは高速でヴァトラーの方へと接近し、すでにヴァトラーの頭の横に足を待機させる形で話しかける。

 

『そうか?では、もっと近くで見てみるか?』

「な…」

 

何を、という間もなくヴァトラーは横殴りに吹っ飛んだ。ヴァトラーの顔面をシロウの側頭蹴りが襲ったのである。ヴァトラーはまるでトラックに衝突したかのように体を回転させながら、人工基島(ギガフロート)へと吹っ飛んだ。

 

『さて…』

 

思わぬところで、逃げ切れる隙が出来上がってしまった。正直、自分でもこんなにうまく事が運ぶとは思っていなかった。

このまま逃げるか、それとも…と考えていたところで、いきなり、蛇の咆哮のようなものが辺りに響く。

何事かと辺りを見回してみると、ヴァトラーが吹っ飛んだ方向から紺に近い光の塊がシロウに迫る。それが攻撃だと理解した時、シロウはすぐさま右手をその光に突き出す。

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)!!』

 

シロウの目の前に七枚の赤い花弁が開く。

光は七つの花弁の隙間を通り過ぎ、その威力は後方へと完璧に逸らされた。光が終わった後、彼は七つの花弁を虚空へと消し去り、その光が来た先を鷹のような双眸で睨む。

 

『…なるほど、どうやら俺をこのまま逃してはくれない…か。

全く、抜けてるんだか、抜けてないんだか分からんなあの吸血鬼は…』

 

このまま、遠くから迎撃するという手段は同時にあの男にも遠距離戦を強いるという事になる。自分はともかく、あの吸血鬼が自分と同等かそれ以上の技量を持っているかと言えば、それはない。と断言できる。

これでも、自分の弓の技術は生前と同等の技術の場合、神域に到達していると自負している。

矢なんていうものは所詮、当たれと思えば勝手に当たってくれるものなのだから…たとえ対象が弾丸だろうが、ジェット機だろうがなんであろうが、生前シロウは射落してきた。

 

そんな自分と同等かそれ以上の技術を持つ者はサーヴァントの中でも指で数える程しかいないはずである。こればっかりは虚勢でもなんでもなく、シロウの心の底から感じられる自信のほどである。

 

…まあ、普通当たれと思っても当たらない事があるのが本来の弓というものなのだが、そこはこの男の場合、突っ込んではいけないところだろう…

 

さて、話が逸れてしまったが、ヴァトラーがぶっ飛んだ人工基島(ギガフロート)まで恐らく、500メートルほどといったところだろう。

我ながら、よくもまあ、今の脚力であそこまでぶっ飛んだものだと呆れる次第である。

 

当然、その500メートルの間には人間もいるかもしれないわけで、

(主にこの騒動に関与している警備部隊など)とすると…つまり自分が何を言いたいのかというと…こんなところで遠距離戦闘なんて行ってしまえば、自分はともかくあの吸血鬼の攻撃は絶対に自分たちの間にも降り注がれることは間違いないのではないのだろうか?ということである。

 

『やれやれ、吹っ飛ばしても結局逃げれずじまいの上に、さらには、もっと厄介な状況を作り出してしまうとは…なんというか、こればっかりは今の俺の運値を恨むべきか…』

 

一人ぼやきながら、シロウはヴァトラーが待ち、古城が交戦しているであろう人工基島(ギガフロート)へと急ぐのだった。

 

ーーーーーーー

 

「あなたは本当に無茶苦茶ね。煌華麟の瘴壁がなければ私たち、今頃ペシャンコよ?」

 

咎めるような口調で注意をする紗矢華。それに対し、遅れて瓦礫の中から脱出してきた古城はうんざりといった調子でそれに対して返す。

 

「文句はあいつに言ってくれ…俺はただ目の前の瓦礫を吹っ飛ばせればそれで良かったんだ。」

 

なのに、あのニ角馬(ヴァイコーン)と来たら目の前の瓦礫どころか地下の瓦礫全体を等しく平等に攻撃しやがったのである。

そんなことをすれば古城たちのいる階がどうなるかなど火を見るよりも明らかで…

そんなわけで危うくあのはた迷惑な眷獣のおかげで死ぬところだった古城たちである。

 

「やっぱり、あなたの側にいると雪菜が危ないわ。だから…今回だけは私がサポートしてあげる。」

 

ニッとそこには最初にあった頃のようなあのとげとげしい表情はなくなり、純然たる笑みがそこにはあった。

古城の方もそれに対して、『ああ。』と返そうとしたところで古城の近くの瓦礫が勢いよく弾けとぶ。それが何かが衝突した事により出来上がった衝撃だと分かった古城は即座にその場を確認する。

すると、そこにはあの旅客船の中にいた吸血鬼が傷だらけの状態となって立ち上がろうとしていた。

 

「お前、ヴァトラー!!」

「やれやれ、痛いナ。ふふ、この僕に簡単に傷をつけさせる…か。まあ、僕が余所見していたことも原因の一つなんだけどネ。

さて…やあ、古城!

その様子だとナラクヴェーラはまだ無事みたいダネ。」

 

友人に語りかけるように嬉々としてヴァトラーは傷だらけの五体を動かしながら、両手を前に差し出すような形をとりながら立ちながら話しかけてきた。

それに対して、背筋が怖気に見舞われるもののなんとかその嫌悪感を振り切ってヴァトラーに尋ねる。

 

「お前…一体、なんで吹っ飛んできたんだよ!」

「うん?なんでって、そんなの闘って、攻撃されたからに決まってるじゃないか。古城。」

 

何を当たり前のことを聞いているんだ?といった感じで不思議そうに答え返すヴァトラーに対して、『決まってねえよ。』と心の中で突っ込む古城。

 

「ほう、やはり来たか。ほら見てみなヨ。古城。アレが僕をここまで吹っ飛ばした張本人サ。」

 

いつ間にか体の傷は消えたヴァトラーが指す先のコンテナの天辺には黒いレーサーヘルメットに黒いコート、プレートアーマー、チノパンと更には黒い弓、と全身が真っ黒に染められた異様な風体の男がいつの間にか現れていた。

その風体だけでも異様だとわかるのに、恐らく、()の体から滲み出るオーラと言うのだろうかそれは確実に近寄ってはいけない類の何かだとハッキリと解らされた。

 

「何だよ?あいつ…」

「さぁ?僕としてもそのあたりは是非知りたいところなんだけどネ。何しろ口が固い上に、これが中々の強者でね。僕が本気でかかったとしても勝てるかどうか分からないほどだヨ。彼は。」

 

その言葉を聞いた瞬間、古城の隣にいる紗矢華の警戒は確かなものになった。この男、ヴァトラーは強者に対してそれなりの敬意を持って接し正当に評価する。故にこの男が勝てるかどうか分からないという言葉は真祖に最も近い彼が言った場合、目の前のこの男は『真祖に匹敵する怪物である』と言っているのと同義であるようなものなのである。

そんな紗矢華の様子の変化に気づいたのだろうその真っ黒な男は低い声で語りかけるように言う。

 

『そう殺気立つな。俺はそこのバトルマニアのように強者と戦いたいから戦うなどという狂気染みたことは言わん。むしろ、俺はこの戦いに関しては積極的に参加しようとは思ってないしな…ただ…

 

そこの吸血鬼が何かしようものなら、こちらとしても応戦させてもらう。それだけなのだ…俺としても、俺が傷つくことは我が主を傷つけることに他ならん。なので、できることなら、戦いたくないのだが…』

 

と、ここで言葉を止める。彼がここまで語ればこのヴァトラーという男が積極的に暴れることをよく思わないものがいる。

 

そう古城だ。

 

ヴァトラーがシロウのそんな言葉など聞こえないと言わんばかりにまた手をシロウの方へと掲げ、再び戦いを再開させようとした時、

 

「待て!ヴァトラー!!」

「何だい?古城?僕はナラクヴェーラには手を出してないだろう?彼と戦っても別に君との約束を破ったことにはならないバズだ。」

「あんたが元々挨拶に来たのは、この絃神島をオレの(・・・)領土として考えていた面もあったハズだ。なら、この場、この島で戦闘を起こすということは俺に喧嘩を売ることにも繋がる。

つまり、今この場であんたはオレとそこの真っ黒いヤツを同時に相手取るって言ってんだ!!」

 

無茶な理由だと自分でも思う。元々彼は戦うために来たと言っていた。なら、自分とあの男をどちらも相手取るということはこの男にとって最高のスパイスになりかねない。

つまりそもそも脅しにすらなっていない。たとえ、あの黒い男が単体でヴァトラーを上回っていたとしても、彼は嬉々とした笑みを絶対に浮かべるだろう。

だが、その瞬間、彼ディミトリエ=ヴァトラーはわずかに逡巡するような顔を見せる。

 

「ふむ。それは困ったな…」

 

と、この男にしては珍しい…というかこの男を知るものなら絶対にありえないと言い切るだろうセリフをヴァトラーは呟き出す。

なぜ、この男がこんなことを言い出したのかそれは簡単である。

ただ単に、この男はもっとこの目の前の黒い男との闘い、正式には一騎討ちをもっと楽しみたかったというのが理由だった。

彼ら吸血鬼は不死故に闘いを求める。だが、吸血鬼の眷獣を交えた闘いというのはほとんど一瞬で片がつくものが圧倒的に多い。ヴァトラーほどの吸血鬼になるとなおさらそうである。

 

故に退屈、不満、飽きというものが不死の彼らには必ずついて回るものである。

 

彼ら吸血鬼はある意味そういったものと戦っていると言っていいだろう。

そんな彼の前に眷獣を交えずに自分と対等か、それ以上かもと思わせるものが出てきた。これは相当レアだ。彼らにとって喉から手が出るほど欲しいものには違いない。

 

故に今回に限って言うのなら、彼はこの一騎討ちを邪魔されたくないと思ったのだ。別に危機的状況なら状況で楽しめる方法はいくらでもあるが、今回は別だ。

 

「仕方がない。僕も結構満足したしネ。今回は手を引くことにするよ…そこの君、闘いはまたの機会ということでいいかな?」

 

ヴァトラーは本当に残念そうに、だが、わずかに満足そうに呟き黒男の方を見つめる。それに対して黒男は厳かに…

 

『別に、元々闘いたかったわけではない。貴様が闘おうなどと背中ごしに言ってきたのがそもそもの問題だっただろう?』

 

黒男の方もヴァトラーに闘う気がないことが分かったのだろう。彼はすでに座り込んで弓を肩に立て掛け、こちらをじっと見つめていた。

 

「そういう訳ダ。僕たち二人を止めるんだナラクヴェーラをちゃんと止めてくれるんだよネ?古城?」

 

試すように挑発の言葉を投げかけるヴァトラーに対して明確な怒りと苛立ちを覚える。

 

「うるせえ!!ったく、ドイツもコイツも勝手抜かしやがって!いい加減こっちも頭に来てるんだよ!!」

 

そう古城が言った瞬間、古城の後ろから何か吹き上がるような瓦礫音が辺りに炸裂する。ナラクヴェーラが下からこの地上へと迫り、この階に再び降り立とうとしてるのである。

それだけではない。その炸裂音の源である瓦礫によって出来上がった煙の向こう側からうっすら影が出てくる。視認できる形だけで分かる。アレは全部ナラクヴェーラなのだと…しかもその中で一際異彩を放つ出で立ちをしたものがその後方にいる。

ナラクヴェーラと似通ったフォルムながら、ナラクヴェーラよりもひと回り体躯は大きく、そして、決定的に違うのは通常のナラクヴェーラと違い、カニのような脚の上に黒いアームらしき装備をあの機械は装備し、そして、威風堂々とただ泰然と立つ姿は他のナラクヴェーラとは兵器であるにもかかわらず一線を画すものがあった。

それは見ただけで、他のナラクヴェーラとは性能が違うと理解させられる。だが、彼はそれを見てもなお堂々と立ち、宣言する。

 

「戦王領域のテロリストだろうが、古代兵器だろうが関係ねえ!!ここから先は第四真祖(オレ)聖戦(ケンカ)だーー!!」

 

その瞬間、その女王とでも言うべき体躯のナラクヴェーラが魔道狙撃を古城に射出する。その攻撃を横から乱入してきた銀色の閃光が弾き飛ばす。

 

「いいえ、先輩!私たちの聖戦(ケンカ)です!」

 

ここに世界最強の吸血鬼とその監視役が揃い、いま決戦が始まる!!

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