ストライク・ザ・ブラッド 錬鉄の英雄譚   作:ヘルム

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魔術

しばらくして警備隊(アイランドガード)と呼ばれる団体がこちらに辿り着いた。彼らはこのあまりにも無残な事態に目を覆い隠そうとしていたが、やがて自分たちの存在に気がつくと急いでこちらに向かい、倒れている銀髪の少女を救急車へ運び、自分も子供であるということから保護される名目で同じ救急車に乗せられた。

銀髪の少女が病院へと入っていくのを見送っていく中、シロウは自分に怪我がないことを相手に伝えて、その場を後にしようとした……のだが、

 

「君、ちょっと待ってくれるかな?」

 

今度は警備隊(アイランドガード)に身柄を確保されてしまった。別に振りほどくのは簡単だったのだが、この場で目立ってしまってもマズイとシロウは考え、仕方なく警備隊(アイランドガード)についていくことにした。

 

ーーーーーーー

 

「それで、君はどこまでわかっているのかな?」

 

そして今現在、シロウは尋問室の中で取り調べを受けている真っ最中である。

それに対し、シロウは肩を竦めた調子であくまで慎重に言葉を選び言い放つ。

 

「どこまで…と言われても困ります。あの火事が見過ごせないとおもったら気づいたら体が動いていた、で説明にならないのでしょうか?」

 

流石に今の自分の年齢のこともある。ここで変に相手に悪い印象を持たせてしまっては逆効果となり確実に目立ってしまうだろう。そう考えたシロウは久しく使っていない敬語を使い、話し相手である職員に問いかける。……正直な話、かなり背中がむず痒いものを感じる。

シロウの言葉を聞いた職員は、うーんと顔を捻らせる。

シロウの方もこのことについては無理があると予想している。あの火事は小規模ではあったものの確実に人の命を断てるだけの熱量があった。そんな厄災の中に子供が一人でしかもなんの準備もなく突っ込んでいったなど、無謀にもほどがある。

 

たとえ、本当にその通りだとしてもだ。

 

そのため、職員はこの子供が何か隠しているのではないかと考え込み、シロウの方はあくまで凄然とした構えを取り続け、腕を組み、職員の質問を待ち続けた。客観的に見ると一体どちらが職員なのだか分かりはしないと思えるかもしれない。それほどまでに両者の姿は対照的であった。そのためか、職員の方は完全に子供姿であるにも関わらずシロウから発せられる威圧感に呑まれてしまい、一体どこから話を切り出せばいいのか分からなくなってしまっていた。

 

質問せねば!だが、なんだか聞きづらい…いや、だが、質問せねば!でもやっぱり聞きづらい!

 

そんな感情のループが職員の頭の中で回り続け、その思考の回転が沈黙の継続をさらに加速していき、話しづらい空間を作り出していく。

 

そのため、しばらく両者は顔を見合わせ、室内をその重苦しい沈黙で満たしていた。

 

「失礼します。」

 

すると、一人の違う職員が尋問室の中に入ってきた。

 

「なんだ?」

「ハッ!実はそこの少年なのですが、もう、釈放していいとのことです。」

「「なに?」」

 

その言葉に驚きが混じり、思わず今入ってきた部下らしき職員の方をシロウと向かいにいる職員の両者が睨む。その視線に気圧され、部下の方は半歩後ろに下がってしまう。

 

「なぜだ?」

「は、はい!南宮教官の話ですと……」

 

「この事件は錬金術士が関わっている可能性が高い。まだ、詳細は分からんが、ここは古の大錬金術士ニーナ=アデラードが祀られている修道院でもある。

しかも、そのニーナだが、つい最近、天塚汞という弟子も抱えたとの噂だ。天塚を犯人像にするというのはあまりに安直すぎる話ではあるが、そこかしこに錬金術を行った痕のようなものがある。

少なくとも、錬金術を扱うものであることは確かだろう。だとすれば、その少年を捕らえても無駄なことだ。

私が見たところ、どう見ても錬金術を扱う類の魔力の質をしていない。釈放しても、正真正銘、子供だとわかっている以上、二次災害の危険性もそこまであるまい。」

 

「…とのことでした。」

 

その話を聞いていながら、シロウは驚いた。

 

(どういうことだ。これは?なぜここまで、魔術が広く知れ渡っている?)

 

魔術とは秘匿されなければならないもの。それがシロウの生きていた頃の魔術師としての絶対の掟である。でなければ、魔術師は根源へと至る道を自ら閉ざすことになるのだから。

だが今見たところ、この近未来風の出で立ちをした職員たちは確かに魔術というものを知り、そこに理解があると考えられる。

 

とすると、奇妙なことがある。なぜ、魔術という技術が失われていないのか?魔術というものは秘匿しなければ力を失うというのが自分の世界での常識である。

神代のような魔術が溢れかえった世界ならばともかく、このような科学がありふれた現代において魔術が溢れ返るということがあり得るのだろうか?

 

(やれやれ、()()ならその辺りの知識も含めて聖杯から支給されるはずだが、どうやらそれもなさそうだしな。これはまた厄介なことになりそうだ……)

 

早急に調べておく必要があるだろう。自分の不完全な召喚が誘発した事態なのかもしれないが、それで現代知識はお手上げですなどと言えるわけもない。

 

いずれこの時代についてわかる時も来るのだろうが、それがいつになるかわからない。何せ、今はマスターとの魔力のパスが不完全な状態の所為で自分の体は子供になるわ、力が十全に発揮できないわで散々だったのである。

ならば、情報は多い方がいいに決まっている。

 

「おい、帰っていいぞ!」

 

そんなことを頭の中で反芻し考えていると、あからさまに不機嫌な調子の声が目の前から聞こえてきた。

その声の主は誰であろう先ほど自分を尋問していた上官職員である。この上官はそこまで狙ってはいなかったものの、シロウが自然と生み出してしまった威圧に負けた。そのことについて、おそらく、頭の中では分かっていても納得はできていないのだろう。

気持ちはわからないでもないが、子供に対しその八つ当たり気味の口調はどうかと思う。とシロウは考えながらも素直にその言葉に従い、椅子から立ち、踵を返していくのだった。

 

「さて、やれやれどうしたものか…」

 

外に向かいながら、シロウは考える。予想外の事態には生前何度も出くわした。その対処法だってある程度心得ている。だが、今回は少しその程度が度を超えている。

ひとまず、どこかこの世界について知ることができる場所について心当たりがある者がいないか探してみるのも手だと考えたところで聞き慣れない声が耳に入る。

 

「すまない。よろしいかな?」

 

声をかけられ、そちらを振り向く。見ると、そこには眼鏡をかけた初老の男性が立っていた。身につけている白衣はどこかくたびれ、彼の調子を物語っていた。

 

「なにか?」

 

自分の今の年齢のことも考えて、比較的らしく振舞うためにも久しく使っていない敬語を使おうと決め、シロウは応対する。

 

「娘が君の世話となったと聞く。私は叶瀬賢生。何かお礼ができたらしたいのだが…」

 

娘というのはおそらく先ほど自分が救った少女のことだろう。失礼だとは思うが、正直、目の前の男性はあの少女の父親という割には共通点が少なすぎるため、一瞬面食らってしまった。だが、そこからすぐに思考を切り替える。

 

(もしや、この状況は今の俺にとって、もっとも都合の良い事態なのではないか)

 

そう考えたシロウは、

 

「では、申し訳ないんですが、どこか資料館か何かに連れて行って下さりませんか?」

 

まるで昔の自分に戻ったようだな、と心の中で皮肉りながらも慣れない敬語でシロウは応対する。

そう頼まれた賢生は、数瞬前の自分のような面を食らった表情をしたが…やがて、不思議がりながらも自分を図書館に連れて行く旨を了解してくれた。

おそらく、あまりにも謙虚すぎる願いに驚いたのだろうと予想をつけながらもシロウは賢生の後を追うようにしてその場を後にするのだった。

 

ーーーーーーー

 

調べ物をしていくうちに、彼はそこに書かれている事柄を見て少なからず驚愕した。

なんと、ここは自分たちが生きてきた世界の未来の姿の一つの可能性であることが高いことが予測されるというのだ。

 

自分が学んだ魔術というものは、一般の者に知られれば知られるほど、その力は失われる。魔術に力を与える全ての要因と成り得る根源への軸が細くなっていくからである。だが、一方で魔術への信仰心が強まれば強まるほど、魔術基盤は強化される。

 

この場合、おそらく、後者が異常な働きを見せたのだろう。

今から、数えることも馬鹿らしくなるほど昔に起こった魔族と人間の争いが引き金となり、魔術は広くに知れ渡ることになった。

結果、一時的に魔術の力は失われ人類はわずかに絶望した時期があったと考えられる。

だが、それを世界はよしとしなかった。当然だろう。全世界の人々に知られ畏怖ともいうべき信仰がなされ、魔術基盤は神代レベルまでに至るまで強化されているはずである。その信仰心をどこかに放出しなければパンクする。

結果、根源への道を永遠に失う代わりに、人類は変異した魔術をそのまま行使するに至れたわけである。

 

(恐らく、世界はこの世界に元々存在した根源に変わる、もしくは根源に並行してこの世界に力を与えていた()()をその力の要因へと変えたのだろう。その何かが何なのかは分からんが…)

 

間違いなく、その存在も並の存在ではないだろう。何しろ根源に代わって力を与えられるほどの存在だ。どう考えても異常である。

 

ただ……

 

(だが、だとすると不可解だ。)

 

自分は世界の“座”に登録された英霊存在である。英霊がいるべき“座”とはそもそも『根源』に由来しなければ絶対に存在し得ない。つまるところ、

今は違う存在であるにしても、このようなルールの変わったゲーム基盤の中に我ら(サーヴァント)が配置されるだろうか?

 

正直、ありえなくはないにしても、考えられる話ではない。

この世界はまだ何かがある。自分のこの予想を覆すような何かが……

 

「やれやれ……やはり、今回は想像以上に厄介な案件のようだ。」

 

だが、とにかく、今はこの事態に対して対処をすべきだろう。

自分が召喚されているということは他英霊たちも召喚されていると考えた方がいいのかもしれない。厄介ごとは今のうちに対処法を考えておくに限る。

 

そう思いながらシロウが外に出ようと歩を進めようとした瞬間、不意に足が止まる。足を止めたのは絵本が立ち並ぶいわゆる子供ゾーンのようなものの前だった。

その本棚に目を通し、世界で一番有名な絵本集というところにそれはあった。

 

そこには、無数の剣を背に荒野でただ一人立っている男の後ろ姿が写っている、そんな悲しげに赤を基調とした真っ赤な絵本が立てかけられていた。




次回、絵本を基調としているので舌足らずな説明頑張ってみます!
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