0章:勿忘草は二度寝する
初夏、木漏れ日から漏れる光が少年と少女を照らす。
「また会えたね、おかえり、蓮くん」
その少女は僕の手を握り笑みを浮かべいつものように僕に身をまかせる。
俺は夢を見ている。
またこの夢だ名前も知らない少女に手をつながれ、ただ微笑みながら寄り添ってくる
温かかった、とにかく落ち着けて安心する。
…どこか懐かしい。
そりゃそうか、布団の中だもの
ごほぉん
なんて、言うのだろうか
大切なものを失くしてしまった時に感じる心のすきま、そのすきまに気づかせようとする虚無感
今、俺の心の中にある気持ちはそんな虚しさと共にはっきりとしっかりとした……と言う感情が…あっ…た………
朝、カーテンから差し込む初夏の殺人級の光に当てられ目を覚ます。
「あつい」
目が覚めて時計を確認すると短い針は10と言う数字を指し示している、俺の記憶が正しければ今日は7月14日…土曜日だ!
そうだ、今日と明日は休みなんだ、そうだ、そうなんだ!
…やめよう、今日は月曜日そして朝の10時…
遅刻だ
「今日も学校行くのやめるか」
睡魔から完全に抜けきれず垂れ下がりかけている瞼の力を抜き体を横に倒す。
すると枕元に何か紙のような物があることに気がつく。
「封筒…か」
勿論、俺は枕の下とかに好きな子の写真を入れたりとか夢を描いた手紙を抱いて寝るなんてしたことはない!
断じてない!
特に好きな子の写真を枕の下とかに入れた事なんて一回もない。
この封筒は俺の母が俺への連絡として置いていった、言わばおきてがみだ
母の職業は研究者で滅多に家には帰って来ない、しかもあちこちの研究所に呼ばれ日本中を飛び回っている。
そんな母からの手紙は実に4週間ぶりだ、いつもは1週間に1回ぐらいのペースで枕元におきてがみをしていた。
「久しぶりの手紙だな、なんて書いてあるんだろう」
封筒を開けると古くて趣のある木造の家の写真と手紙が入っていた、この手紙によると…
【蓮へ
おひさーげんきー
今度お母さんすっごい田舎に行かないといけなくなっちゃったー(笑)
引っ越すから準備しておいてね❤️
あと、写真の家で暮らすから、ママ達が前住んでた家よ。15年ぶりね。うふふ。
美人なママより】
「はぁーぁ⁉︎」
蓮はかたまってしまった。
「ま…まっさか〜そんなことあるわけないよね?まだ起きたばかりだから寝ぼけてるだけだ!うんっきっとそうだ」
俺は母からの手紙をたたみ、もう一度ひらいて読んでみた。
「やっぱだめか…」
当然のごとく手紙の文字は変わることはなかった…
「はぁーぁやっぱり学校行かなきゃダメか、そういえば凪沙のやつも学校行ってんのかなー」
仕方なくクローゼットから少しシワのついた制服に着替えた。
久々に着た制服はクローゼット特有の匂いと哀愁を漂わせている…
そりゃ自覚している、転校して3日しか通ってないし脱いだままクローゼットに放置だからシワくちゃだ。
それはそうと、早いとこ行かないと事務員さんがお昼休憩しちゃうな。
なんで、そんなこと知ってるかって?
そりゃ、慣れてますもの。
「さて、転校届けを貰ってー凪沙つれてーささっと帰るか、その前に凪沙にメールしとくか。」
ー午前10時43分、商店街ー
初夏の日差しが突き刺さり透明な雫が頬をなぞる。
引越しに必要な道具を買いに商店街にある雑貨屋さんに立ち寄っている。
兄さんそろそろ起きたかなぁー
リビングにある朝ごはん食べたかなぁー
テーブルの上の置き手紙みたかなぁー
はぁー大丈夫かなぁー
心配だなぁ〜
不安を隠すように微笑みを目の前の女性に向ける
「ダンボールと新聞紙こんなにたくさんもらっちゃっていいんですか?」
「いいのよぉ〜お得意様の凪沙ちゃんだもん。それにダンボールも新聞紙も腐るほどあるからね、気にしないで持って来なぁー!」
気前のいいふくよかなおばさんで、ここに住んでいた時はこの雑貨屋さんによく足を運んでいた。だかどうと言うことはない、ただそれだけの事だ。それよりも
兄さん大丈夫かなぁ〜
ぴろりん!
「あっ、兄さんからメールだ」
『今から凪沙を迎えに学校行くから職員室で待っててくれ
蓮』
「あー、やっぱり兄さんぼくの置き手紙みてない〜。
って事はぼくの作った朝ごはんも食べてないなー!!もーうっ!ふふふ。ぼくが学校に居ないの兄さんには内緒にしとこ、ごめんね
にーさん。」
ー午前11時00分、学校ー
過去3回しか通っていないはずの学校なのだかもう来ることが無いとなると、なんだか考え深いものがある。
すでにネイムプレートが剥がされている下駄箱、入ったら[え?何でお前いんの?]みたいな目で見られる職員室。
おかしい、何かがおかしい。
ただでさえコミュニケーションをとるのが苦手なのに、この晒し者状態からの脱却はキツイ!
どうしようとあたりをキョロキョロしていると
「十六夜さん…ですよね、忘れ物ですか?」
いかにも新任教師というカチカチで隣のおっさん教員に行かされたであるうその女性教諭は俺に救いの手を差しのべた。
まだ少しキョどりながらも
「い、いえ、転校届けと凪沙を迎えに…
あっ凪沙、十六夜凪沙来てますか?」
俺の問いかけに新任女性教諭もキョロキョロし始めた…え⁉︎
「え、いや、あの〜」
女性教諭が誰かに助けを求めてはいるが誰も助けようとはしない。
女性教諭と男子高校生が職員室の扉を挟んでキョドッている。きっと滑稽な画であろう、
見る側だったらな!
すると俺の後ろから若々しく、だけどどこか風格のある教師が話しかけてきた。
「おぉ、十六夜じゃないか、忘れ物てもしたのか?」
「い、いえ、俺は転校届けと凪沙を迎えに…」
「なに言ってるんだ、お前は昨日、転校しただろう」
「え⁉︎いやいや、だって俺、学校行って無いですし!」
「そりゃな、きてなかったもんな。
転校届けは凪沙くんに渡していたし、昨日君達兄弟は正式に転校されたことになってたぞ?」
「…」
はぁー⁉︎
おそらく、この時の俺の叫びは誰にも届いてはいないだろう。
何のために学校に行ったのか自問自答しながら帰宅の途についていると後ろから聞き慣れた声がひびく。
「にーさーん!」
振り返るとダンボールと新聞紙を大量に持った弟の姿があった。満面の笑みだ。
「兄さん、わざわざ学校までお疲れ様w」
「あっ、お前俺のメール見たのにわざと返信返さなかったな、何てやつだよ」
「ごめん、ごめん。
でも、兄さんだっていけないんだよ?
ぼくが作った朝ごはん食べてくれてないし、テーブルの上に置いておいた置き手紙も読んで無い。まったく、慌てん坊さんなんだから。」
そう言い終えるとダンボールを半分渡してきたので大人しくもらっておく。
「朝ごはん、ごめんな。
家帰ってから食べるよ。」
歩き出し、黙ってうつむいてはいるが機嫌が悪そうには見えなかった。
なんやかんやで引っ越しの支度は終わったのは夜の10時を回ってしまっていた。
何回引っ越しを経験しても懐かしいものを見つけると、つい脱線しちゃうよね。
ダンボールと何も乗っていない机、自分の部屋じゃないような綺麗さだ。
久々に広々とした自分の部屋を眺め満足感を満たしていると、隣の部屋から
ドン、ドン、ドン
「兄さん、明日は早いんだからもう寝なきゃ今日みたいに寝坊するよー」
弟からうちの母さんからすら言われたことの無い『ザ・母』なセリフが投げかけられた。
「はいよー」
「さて、終わったし今日はもう寝るか」
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初夏の光が木々を照らし
木の葉を撫でるように風がふく
縁側に腰掛けるぼくと少女は色鮮やかな光に当てられる。
そして、何時ものように少女はぼくに寄りかかる。
「おかえりなさい、蓮くん。
私との約束守ってくれたんだね。」
その少女はいつものように僕の手を握り、僕に寄りかかる。
「き、きみはだれ?」
少女は何も答えてはくれない、優しく瞳を閉じ
ただ寄りかかっている。その様子を見ていると
僕は自分の出した問の答えがもう少しで解けるような気がしていた。
この少女は誰で…ここはどこだ…
…ここは……じんじゃ、神社!
そうだ、ここは神社だ!
キミは…
「そろそろ、行かなくちゃ
また会おうね、蓮くん」
少女はいきなり立ち上がり僕に別れを告げた。
寂しそうに憂いを帯びているその笑顔に僕の心は掻き乱される。
「待って!もう少し、もう少しでキミを思い出せそうなんだ、まってよ」
少女は振り返り、さっきの微笑みのまま淡々と告げる。
「大丈夫だよ、すぐまた会えるから。」
そう言うと少女は前を向き歩き始める、次第に僕の視界は霞、重力に身を任せ、暗闇へと落ちていく。
「待って!…まってよ」
ドスッ
ベットからおちた
「いってぇー
あー、今日引っ越しかぁ」
ベットからおちて俺が目を覚まし時にはもう夢の中の少女との出来事は、杏那との思い出は記憶の奥底で眠りについた。
いかがだってでしょうか?
初投稿という事で文章がおかしかったりミスがあったり等が多いかもしれません、もしありましたら今後の発展のためお教えください。
勿論!感想などもお待ちしています。
そして今回は0章ということだったのでまだ、女の子は殆ど出てきていませんがこれからは何人かずつ登場していきます是非お楽しみに。