今回はシンがポッケ村に行きます。というか既に行ってます。(笑)
...逃げろ、逃げろ、逃げろ!くそっ、オーブは平和じゃなかったのかよ!なんで連合がすぐそこまで迫ってきてたのに避難警報はこんなに遅れてんだよ!
妹のマユが携帯電話を落とした。
「俺がとってくる!」
シンは携帯を取りに、一緒に避難していた家族と別れ、坂を駆け下りた。携帯を無事取り戻したシンは坂の上の方を仰ぎ見た。未だ爆撃は続いており、ここで急がねば二度と家族に会えなくなるのではと思い、急いで坂を駆け上る。そこにいたのは
「なんで...こんな...」
雪山で遭ったあの巨獣だった。家族はどうなったという疑問の答えは、こいつに付着した血を見てすぐに導き出すことができた。さらに周りを確認すると...家族は既に、奴の爪でめちゃくちゃにされていた。怒りと恐れに打ち震えつつ奴の方に向きなおると
「お前...よくも!」
奴の牙の間から、マユの腕がはみ出していた。瞬間、奴への恐れはなくなった。敵は...倒さなきゃ。
自分を鼓舞せんと叫びを上げ、シンは巨獣に向かっていった。奴もこちらを威圧せんと咆哮を上げその巨大な前肢を振り上げた。シンの眼前に奴の爪が迫り来る。それでもシンは、止まろうとはしない。視界いっぱいに奴の爪が映り、そして...
...ボロっちい宿だった。よくよく考えてみれば、シンの故郷のオノゴロ島にあんな化物がいるはずはないのだ...ではあの雪山は?そもそもここはどこなんだ?プラントは、オーブは、戦争はどうなったのだろう...
身を起こし、窓を開け放つ。とたんに身を切り裂くかのような冷気が流れ込んで「寒っ」シンは即座に窓を音が鳴るほど激しく閉めた。その音を聞きつけたのか、ドタバタと足音を立てて一人の男がシンのいる部屋にやってきた。
「お、目ぇ覚ましたか。よう!」
「ちょっと何なのそのあいさつ?初対面の人に向かって失礼でしょ」
続けて女が一人駆けつけてきた。見た目からすると男の方は30前後、女の方は20前後といったところだ。シンが状況を把握できないといった表情をしているので、さらに二人組の口論が続く。シンはうんざりして
「とりあえず、ここはどこなんだよ!」
と怒鳴ってやっと二人は口論を止めた。男から話を聞いて、ここはポッケ村という高山地帯の村であることだけはわかった。そしてシンが、どこの国にある村なのかを聞こうとしたとき
「ここは、ミナガルデとかドンドルマとかいった大都市から遠いからな...お前さんの故郷がどこか知らんが帰るのは随分先のことになるかもしれんな」
こいつ、今、何といった?大都市?聞いたことねえぞ。
この時シンの頭に浮かんだのは「異世界」の三文字。そんな馬鹿なと、地図を見せてもらうと、明らかに自分の知る地図と全く異なった大陸の構成であった。この時点でシンは自分の世界のことはどうなった?などといった質問が意味をなさないことを悟った。
「さーて、名前は?そろそろ、君、じゃ呼びづらいから。」
と、女がシンに聞いた。さっきから動揺しているというのに、この女はお構いなしに喋ってくる。そういうところは、見た感じの年齢も含めてルナマリアそっくりだな、と心の中で苦笑しつつ
「俺はシン・アスカ。今まで旅をしてきた。故郷はこのでかい地図には載ってない。」
と、名前以外は嘘をついた。二人は特に疑うこともなく、自己紹介をしてくれた。
男の方は、ライアン・ウィーバー・ゲイル。ここの人たちからは「教官」と呼ばれることが多いそうだ。身長は190cm台はあるように見え、その他諸々の雰囲気から、他の人との見分けは付きやすそうである。
女の方は、ミラ・フォーマルハウト。その青い目は、性格と同じくルナマリアそっくりである。それにただ快活というだけではなく、ルナマリアと同じ「戦う女」という感じがした。
そして、二人とも、自らを「ハンター」であると名乗った。
「ハンターって、何を狩るんだ?」
シンのこの発言に、二人共唖然とした表情になった。
「何って、シンは大型モンスター見たことないの?」
「大型」、「モンスター」という単語から、シンは雪山で見たあの巨獣のことを話した。するとミラは、そういう感じの大型生物が人間に被害を及ぼす前に倒す仕事がハンターだとシンに教えた。シンはあの巨獣に立ち向かうミラの姿を一瞬想像し
「あんなおっかない奴を...」
少しだけ弱気になった。そこに
「こいつはまだ駆け出しだ。そんな任務はまだやっていないぞ」
と、ライアンもとい教官が補足をした。どうやらうまくごまかせたということと、ミラにはまだ追いつけそうだということに対する謎の安心感をシンは得た。そして、そのあとのライアンの発言で安心感は吹き飛んだ。
「お前さんも、ハンターをやらんか?」
シンは身震いした。今しがた夢に出てきたあの怪物を倒そうなど、こいつらは正気なのか?金ががっぽり?大金より命だ。村人を守ったという名声?今まで何も守れなかった俺がだと?人手が足りない?他をあたってくれ。新参者の仕事はない?あれを倒すぐらいだったら...
どうやっても説得に応じようとしないシンに対し、ミラは言い放つ。
「じゃあ、シンが言ってたあのモンスターはあたしがぶっ倒してくるから、安心してね(笑)」
そんなことを言ってくるミラの表情は、最後にミネルバで見た時のルナマリアに似ていて、危うげで、儚くも見え...
「ちょっと待て、あんた一人で行かせるくらいなら俺もついてく」
「じゃあ、シンは明日からハンター、でOKね」
「では、明日からみっちり鍛えこんでやるからな」
この時、シンはあの化物をも倒せる力を手に入れると密かに誓った。そして次の瞬間の、してやったりと言いたげなミラの表情に、少しだけ決意を後悔した。
ふう、前話の二倍の文字数書けた。ちょっとうれC