この作品はハーメルンでの初投稿になります。
自分も艦これユーザーということで、艦これ作品を書かせていただきました。
駄文ですが宜しければ読んでいって下さい。
遅筆なので亀更新になってしまいますので、あらかじめご了承ください。
エタらないようには頑張っていく所存です。
提督が死んだ。
正確には遺体が発見されてないから「行方不明」だけれど、あの惨状の中で生きているとは思えない。
大本営の方でも「戦死」扱いになっている筈だ。
『………』
あの日以来、この鎮守府は静まり返っている。
新しい責任者が着任するまで活動を停止されている為、自分の部屋に閉じこもっている者が大半で、艤装の点検や、鍛錬をしている者は極少数である。
斯く言う僕も前者だけれど、自分の部屋ではなく執務室に閉じこもっている。
「……提督」
名前を呼ぶ。
「………」
答える相手はいない。
そのことが、僕にはとても辛くて、どうしようもなく悲しかった。
「てい…と、くっ……」
会いたい。
彼に会いたい。
ーー何故、彼が死ななくてはならなかったんだろうか。
ーー何故、彼が死んで、自分が生きているのだろうか。
ーー自分は「幸運艦」だから、自分だけ生き延びてしまったのだろうか。
そんなことばかり考えてしまう。
確かに僕にとって、彼の存在は無くてはならないモノだったけれど、こんなにも大きいモノだったなんて思いもよらなかった。
『よぅ時雨。今日もお互いに頑張ろうな』
『ははは、時雨は甘えん坊だなぁ』
『大丈夫か、時雨⁉︎』
『……ゴメンな、時雨』
彼との思い出が、幾つも浮かんでは消えていく。
「会いたい、よぉ……」
涙が止まらない。
思い出せば思い出す程、彼に会いたい気持ちが溢れてしまう。
でも、彼はもうここにはいなくて。
「一人は…嫌だよ、提督っ…‼︎」
その言葉は虚しく、部屋に響くだけだった。
◆ ◆ ◆
いつの間にか随分寝てしまっていたようで、外を見ると既に陽が落ちていた。
泣いた所為か、喉が渇いたので一先ず食堂に向かうと、先客がいた。
「扶桑?」
「……時雨?」
僕が声をかけると、彼女は手に持っていた湯呑みを置いてこちらを向いた。
立ち話もなんだから、と隣に座るように薦めた彼女は、少し間を置いて僕に話しかけて来た。
「少しは落ち着いたの?」
「うん……本当に、少しだけ」
そう答えると、彼女は優しく微笑んだ。
「……静かね」
「ここの主がいないからね」
普段なら、皆揃ってこの食堂で夕食を食べている時間だ。朝や昼と違う賑やかな食事で、その場の全員の笑顔で満ち溢れていた、そんなひととき。
「ちょっと新鮮ね。毎日この時間は大騒ぎだったのに」
「……提督が率先して騒いでいたからね。子供っぽいところもあったし。一緒になって騒いでいたのも、皆あの人が大好きだったからだよ」
「そうね……最初はおかしな人だと思ったけど、いつの間にかお慕いするようになってたわ」
「扶桑はそうでもなかったけど、山城は大変だったよね」
「あの子は思い込みが激しいから……それに、あの頃の私達の事を考えると、仕方のない部分もあったもの…」
提督が着任したての頃、僕らは前任の提督からの非道な扱いの所為で、殆どの艦娘が人間不信に陥っていた。
全員の彼に対する態度は最悪なもので、基本は彼の事は無視。その他にも朝礼のボイコット、備品等の破壊といった嫌がらせ、果ては死なない程度の暴行もした。
ーーーそれでも彼の態度は変わらなかった。
会えば必ず笑顔で声をかけるし、出撃で傷付けば本気で心配する。
嫌がらせに対しても文句一つ言わなかった。
暴行を受けている時も、まるで僕らの暴力のひとつひとつを噛みしめる様に受け止めていた。
だから分からなかった。
彼が何故そこまでするのかが。
「……そう言えば、あの時だよね。提督の『あの言葉』を初めて聞いたのは」
僕は扶桑に問いかける。
「ええ、そうね。……あの時の『あの言葉』は、本当に心に響いたわ」
扶桑はそう答える。
僕は黙ったまま、あの時の事を思い出していた。
◆ ◆ ◆
彼が着任してから暫く経ったある日、僕らは初めて出撃中での彼の命令を無視した。
その時は艦隊の殆どが中破、ないし大破していたので、彼は撤退命令を出した。通常であれば当然の判断だっただろう。けれど生きる意味さえも失い、茫然自失だった僕らはそれに従わずに進軍し、その途中で深海棲艦による奇襲に遭ってしまった。
その海域の、普段は苦戦するなど考えられない相手は万全であるのに対し、此方は手負い。
当然のことながら、戦いは熾烈を極めた。
必死の応戦の甲斐あってか、敵艦隊も残り一隻にまで追い詰めた。
少し余裕が出来たからだろうか、ほんの僅かに、ほんの一瞬だけ、僕らは気を抜いてしまった。
ーーー それが仇となり、艦隊の一人を凶弾が襲った。
その娘は大破していて満身創痍だった。その一発の凶弾に耐えられるはずもなく……崩れ落ちた。
『彼女』がゆっくりと沈んでいくのを、僕らは唯見ていることしかできなかった。
既にこと切れているのか、もがきもせずに沈んでいく『彼女』を見ているのは本当に怖くて、今いる場所が戦場である事も忘れて、唯々身を震わせていた中ーーー
ザブン、と。
海に何かが落ちる音がした。
正確には『誰か』が海に『飛び込む』音だったのだが。
音が聞こえた方向に、その場の誰もが目を向けた。敵でさえもだ。
そこで僕らはあり得ない光景を目にした。
そこには。
やけに澄んでいた海中で。
沈んでいく『彼女』に向かって、必死に手を伸ばす提督の姿があった。
後方の司令船で指示を出していたはずの彼が、初めて見せた必死な顔で手を伸ばすその姿を見て、僕らはやっと意識を取り戻した。
慌てて敵の方を伺うと、ソレは自身が持つ砲身の銃口を彼に向けていたーー
ーーけれどその弾が放たれることは無く、自身が砲撃を浴びて元いた場所へと還って逝った。
誰が沈めたかは分からない。
僕ら全員がソレに向かって一斉に砲撃していたから。
戦闘を終えて。
改めて提督の方へと目を向けると、彼は既に水上に顔を出していた。
水に濡れ、既に冷え切ってしまった『彼女』の亡骸を抱き抱えて。
その時の彼の顔は、濡れた前髪のせいで伺うことは出来なかった。
その後、僕らは一言も口を開かないまま母港に帰投し、直ぐに『彼女』の葬式が執り行なわれた。
あの日の事は今でもはっきりと覚えている。その場で誰よりも、人目も憚らずみっともなく泣いていたのは提督だったから。
その翌日。
提督は皆に休暇を指示した。仲間の『死』に向き合う時間を設けた方が良い、と判断しての事だった。
そのお陰で、一人ひとりが自分なりにその現実を乗り越えて、自分がこれからどうすればいいのか考えることが出来た。
そのまた翌日。
この日僕達らは初めて、全員揃って朝礼を迎えた。
提督が今後について話していく中、僕ら第一艦隊が彼に尋ねた。「何故、自ら『彼女』の亡骸を救い上げたのか?」と。
彼はこう答えた。
「一緒に帰る為だ」と。
「俺の仕事は、お前達全員『誰一人欠けることなく連れて帰る』ことだ。あそこでアイツの手を掴みに行かなかったら。あのままアイツの身体を暗く、冷たい海の底に沈めてしまったら。俺は絶対に後悔していた。」
それに、と提督は続けた。
「あいつを弔うのは、みんな一緒の方がいいじゃないか」
そう言った提督の顔は、目一杯の優しさの中に、ほんの少しの哀しみが混ざっていた。
◆ ◆ ◆
「『誰一人欠けることなく連れて帰る』、か……」
「時雨……?」
ボソッと小さく呟いた僕に、扶桑が心配したように声をかける。
「あ、ああごめん。気にしないで」
僕は内心慌てて彼女に笑顔で答える。提督の言葉を思い出してるうちに、どうやら口に出てしまっていたようだ。
あの一件から、僕らの提督に対する態度は180度変わった。
提督も最初は戸惑いを見せたものの、すぐに慣れたのか普段通りに笑顔で接してくれた。
今ではみんなが彼の事を信頼し、敬愛していた。彼の優しさが、みんなの心を癒してくれたのではないか、と今になって思う。
「……ねえ、扶桑?」
「何?」
扶桑は僕の目をじっと見つめてくる。
「……ううん、なんでもない。そろそろ部屋に戻るね」
「……そう。じゃあ、また後でね」
扶桑の言葉を聞くと僕は立ち上がり、そのまま食堂を出た。
「提督……私たちは、これからどうすればいいのでしょうか……」
扶桑の呟いたその言葉は、背中越しに僕の耳にも届いた。
扶桑と別れて、再び執務室に戻ってくるや否や、僕はソファーに倒れこんだ。この部屋に来ると、また涙を流してしまうと思ったけれど、ここ最近で散々泣いたのもあってか、流石に枯れてしまったようだ。
天井を見つめながら、ふと彼の言葉をもう一度口にする。
「『誰一人欠けることなく連れて帰る』……」
僕ら艦娘にとってはこれ以上ない、最高の言葉だと思う。彼が僕らのことを心から大切にしてくれていたことがわかる。
でも、
「提督の言う『誰一人』の中に、提督自身は入っていなかったのかい……?」
僕は呟く。
その言葉に答えるものなど、いるはずもないのに。
さて、いかがだったでしょうか。
二次創作でもゼロから書き始めるとなると、多大な労力が必要ですね……。
とりあえず、第1話を読んでいただきありがとうございます。良かった点や悪かった点、アドバイスなどがありましたら、感想の方に書いていただけたら嬉しいです。
次の更新は未定ですが、内容は一つ目の問題が浮上してくると思います。
では、あまり期待せずにお待ちくださいませ。