【恋姫†無双】黒龍の剣   作:ふろうもの

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《真名早見表》
 土方歳三――義豊
 趙雲子龍――星
 徐晃公明――香風(シャンフー)
 程立仲徳――風
 郭嘉奉考――稟
 太史慈子義――梨晏(リアン)


鬼の仁義

「ぎゃあ! 誰か! みんなどこだぁ!」

 

 炎に巻かれ、熱さで眼球が弾けた男が歩き回る。

 

「ぐぇっ、俺の、うえっ、やめっ!」

 

 不運にも右往左往する軍勢の中で倒れ込んだ男は、哀れにも踏みつぶされていく。

 

「やめろぉ! やめてくれぇ!」

 

 ある男が、一人の剣士の前に懇願していた。全身を血に塗れ、右手に握り込んだ細身の刀身からは絶えることなく血が滴り落ちている。

 剣士は、首をこきりと鳴らした。

 

「一つ聞こう」

「へ、へぇ!」

「お前は、やめてと言われて一度でもやめたことがあるのか?」

 

 男の身体は固まった。

 黄巾党に身を落してからは、いや、男にとってはそれは出世だったかもしれない。

 冴えない貧農の倅から、今絶頂にある黄巾党に加われば、成功が確約されていると思えたからだ。

 だから、やめなさいという老母の懇願を断って、黄巾党に加わった。

 だから、やめてという襲撃した農家の女を、犯した。

 だから、やめてくださいと実りを貯めた壺にすがる農夫を殺して、奪った。

 剣士の眼は冷ややかだ。

 ない、と答えれば殺すという凄みがある。

 

「あ、あります! ありますから! た、助けてください!」

 

 血塗れの剣士は一度、片刃の細剣の具合を確かめると。

 

「そうか」

 

 と、だけ言って剣閃を奔らせた。

 首が身体から離れていく。

 遠ざかる自分の身体を見ると言う、奇妙な浮遊感を感じながら、男は母の顔を思い出していた。

 

 

「これで6つ目か、早く幽州からの援軍と会ってみたいものだな」

 

 血で柄巻きを腐らせた歳三が、そんなことを言った。

 柄糸を血で腐らせるなど、どれだけ戦に没頭しているかよくわかる。

 太史慈や徐晃でさえ若干肩で息をしているというのに、歳三はまるで無縁そうに柄糸を解き始めていた。

 

「いや、さすがにこれは私らが早過ぎるんだと思うよ!」

 

 というのは太史慈である。

 徐晃もうんうんと首を振って同意している。

 確かに歳三の進軍速度は異常である。

 それもこれも火付けが異様なまでにうまくいっているから、という理由もあるのだろうが。

 

「仕方ないだろう。私が苅田を実行しないためには、なるべく早く黄巾党を蹴散らす必要がある」

 

 郭嘉が付けた条件の一つに、速攻が不可能であれば焦土作戦を許可する、というものがある。

 つまりは早く黄巾党を攻略しなければ、その分歳三が周囲の作物を根こそぎ奪い取る命令を出すことに繋がる。

 それは流石に、太史慈も徐晃もさせたくない。

 既にあまりの火付けの苛烈さによって、黄巾党のみならず青州にまで悪評が広まりつつあるのだ。

 これ以上悪評が広まれば無用の誤解と闘争を生むのではないか、それを二人は危惧している。

 一方、連日その報告を受けているにも関わらず、歳三は素知らぬ顔なのが憎たらしかった。

 が、憎たらしいだけで憎めないのが、惚れた弱みというやつであろうか。

 

「で、この夜営地に関しては大丈夫か? 梨晏」

「もちろん、四方に策を張って篝火も万全。警戒兵は常に二人一組で行動するように命令してある」

「なら、いい」

 

 こういった夜営地設営に関しても、歳三の近代戦思想が生きていると言っても過言ではない。

 もっとも、効率が良いから使っているつもりしかない歳三がそうなので詳しくは書かない。

 それに、夜営地の出来具合よりも気になることがあった。

 

「で、幽州からの援軍というのは?」

「風からの話だと……星とあと三人が来るって」

「強いのか?」

「二人は……」

「ふむ……」

 

 歳三は一体誰だろうと考えだして、やめた。

 それよりも柄の糸を巻く方が先決である。

 器用に柄糸を巻いていた歳三であったが、続く徐晃の報告で動きを止めることになるとは、誰も思っていなかった。

 

 

「二人はわからないけど、一人は有名……関羽雲長だって」

「関羽だと?」

 

 歳三にその名前は決して関係のない話ではない。

 盟友であり義兄弟でもある近藤勇が、三国志の様な英雄譚が好きであったと言う話は既にした。

 中でも近藤は、関羽雲長を敬愛していたのは有名な話である。

 歳三も耳が痛くなるくらいに関羽殿は関羽殿は、男とは義とは滔々と語られたものである。

 その関羽雲長が、援軍に来ると言うのか。

 

「そうか」

 

 傍目にはわからないが、付き合いの長い徐晃と武人である太史慈にはわかった。

 ただ眠たげだった眼には覇気が宿り、身体からは戦の時と同じ精気が漲っている。

 太史慈は歳三の変化を強力な味方の到着を、ある意味(・・・・)で喜んでいると取ったが、徐晃は違った。

 付け加えるように小さく。

 

「あと、関羽は女の人」

 

 と、呟いたが、歳三は無反応だった。

 無反応であったのが、徐晃には嬉しかったが、はたと、徐晃は気付いた。

 何故私は嬉しいのだろうか、歳三が女というところに反応しなかったからか。

 歳三が無類の女好きで既に孫乾に手を出していることは徐晃も知っている。

 郭嘉にも手を出すのも、いずれ時間の問題だろうともわかっている。

 その中で徐晃は自分をどうして欲しいのかわからず、先の様な事を言ってしまったのだ。

 いつものようにぼうっとした表情でそんなことを考えていた徐晃だが、歳三がこちらを見ているのに気づいた。

 自然、居住まいを正すことになる。

 歳三に切れ長の眼は、時にすべてを見通しているように見えるからだ。

 

「香風よ」

 

 そう、時にこのようにして、歳三は女の気持ちを見通してしまうのだ。

 

「今日は私と共に寝よう」

「ちょ、ちょちょっと歳三!? こんなところでかい!?」

「何をそんなに慌てている。共に寝るだけがそんなに不味いのか」

「いや、だってさ、もっとこう、雰囲気とかぁ!? 何言ってんだ私!?」

「文字通りただ寝るだけだよ。何もしないさ。行こう、香風」

 

 歳三の後ろにとことことついていく徐晃を見送って、太史慈は顔を赤面させながら地面に(うずく)った。

 指の間からちらちらと二人の行く先を見送っていたのは、太史慈なりの抵抗だろう。

 

 

 朝、徐晃は歳三の言葉通り、あの男の寝所で目を覚ました。

 が、ここで言う言葉通りとは、歳三の言った通り何もされなかった、ということである。

 私は何かをされるほど魅力がないのだろうか、と徐晃は考えながら先ほどまで歳三が寝ていたのだろう、未だ暖かい隣の寝床をさする。

 急に、悲しくなった。

 本当は戦で戦功を立てて褒められる方が嬉しかったはずなのに、いつの間にか女として見られることの方に喜びを感じてしまっている。

 

「……う」

 

 涙が、零れそうになった。

 

「良い朝だな」

 

 なのに、この男の声を聞くと泣き顔を見せたくないと思ってしまうのは、武人の(さが)なのだろうか。

 徐晃は歳三に気付かれぬように涙を拭くと、寝床の中でぷいとそっぽを向いて素知らぬふりをした。

 

「なんだ、香風は寝坊する方なのか」

 

 笑いながら歳三が近づいてくる。

 絶対に顔を見せてやるもんかと思いながらも、そっぽを向けるだけなのは、やはり顔を見てほしいと言う気持がどこかにあるということに相違なかった。

 

「ふふ、すまんな。香風」

 

 何を謝ったのかはわからないが、徐晃の頬に何か熱いものが触れた。

 驚いて歳三の顔を見た時には、徐晃の唇は歳三によって熱く、激しく塞がれていた。

 今までのことが全部どうでも良くなるような、情熱的な接吻に徐晃は眼を白黒させている。

 歳三の懐の中にある時計の長針がきっかり一つ動くまで、接吻は続いた。

 ようやく、目の前一杯に広がっていた歳三の顔が遠くに行ったことに気が付くと、徐晃の顔は真っ赤になっていた。

 こんなことを当たり前にすることを望んでいたのかと、改めて思うと徐晃の顔はさらに真っ赤になった。

 

「香風よ、幽州からの援軍が来ている。落ち着いたら、来てほしい」

 

 そういうと、歳三は寝所を後にしながら。

 

「続きは、東萊城でな」

 

 とだけ言って去っていった。

 歳三の中では東萊城は既に陥落しているも同然らしいが、それよりも徐晃は自分が歳三に女扱いされたことに嬉しくて涙を流していた。

 

 

 あの劉備一行に会う、となっては歳三も少しは期待をしていたりする。

 関羽など近藤があれだけ心酔する存在なのだから、どれほどのものなのか見極めたいと思っているのだ。

 しかし、劉備一行が居ると言う、張られた天幕の向こうに居るのは意気消沈した美女三人のみ。

 いい加減見た目で判断するのは危険だとわかりきっている歳三でも、これには毒気を抜かれてしまう。

 三人と共に幽州からの援軍としてやってきながら、野営地でふらふらしている趙雲を捕まえると、歳三は理由を聞いて愕然とした。

 

「おい星。なんであの三人組はあんなに落ち込んでいるんだ」

「だいぶ、こう、お花畑というか理想が高いお人たちでしたからなぁ。風によって完膚無きにまでに叩きのめされたのですよ」

「で、その後処理を私に丸投げしてきた、というわけか」

「ははは。それは主が私たちをほったらかしにするのが悪い、という意思表示ですよ」

 

 風らしい、歳三の嫌なところを突いた復讐方法である。

 鬼と鳴らした歳三でさえ、こればかりは頭を抱えた。

 正しければ良し、悪しければ斬る、そんな単純な定法で生きてきた男である。

 鳥羽伏見を越え会津を越え蝦夷まで辿り着き、それでもなお喧嘩師だった男に、説教は辛い。

 

(そもそもこんな説教は近藤さんや総司の仕事だぜ)

 

 劉備たちの前に姿を現しながら、不満を心の中でぶちまけていく。

 

(俺ァなんかより永倉君や原田君の方が余程いい、下手すれば斎藤くんより俺はこんなことに向いてねぇ)

 

 黄巾党どころか幽・青・徐の三州で鬼と言われる歳三が入って来ても、三人はまったく覇気がない。

 

(さて、どうしたもんかね)

 

 三人たちと同じように席につき、それでも無言の三人を相手して、歳三は天を仰ぎたくなる気持であった。

 先に聞いていた話では、一番へこんで見えるようなのが丸っこい顔をした童女の張飛翼徳。

 そして右側に控えるようにしながらも、やはり沈んで見える、長い髪を一つにまとめたのが関羽雲長。

 

()ってみなけりゃわからねぇが、これは隙がねぇな)

 

 あまりにも不甲斐無いならば近藤の憧れの為に関羽を射殺するつもりでもあった歳三だが、それを改めた。

 まず隙が無い。張飛と違って常に周囲に気を張っているし、顔は沈んでいてもこちらの一挙手一投足に目を光らせている。

 

(で、こいつが)

 

 劉備玄徳。徳の人、あるいは仁の人と呼ばれているところからして、歳三とはまるで正反対の存在である。

 容姿、胸が大きく、長い赤髪のところどころを羽根飾りようなもので飾り立てている。

 それ以外は、特に取り立てて見るところはない。あるとすれば。

 

(関羽並に胸がでかい、ってぇくらいか。結構なことだが)

 

 歳三は思案した。

 こう落ち込まれていては、話を進めたくても進めることができない。

 近藤でもいれば史実の劉備殿は関羽殿はと激昂しているだろうが、生憎ここにいるのは歳三だ。

 目の前にあるものが本物であると、とっくの昔に割り切っている。

 仕方ない、と溜息の一つでも付きたくなりながら、歳三は問いかけることにした。

 

「で、何をそんなに落ち込んでいる?」

「私たちのやっていることは、偽善だって、程立さんが……」

 

「ふむ」

「それで、その答えは土方さんが持っているから聞いてみてください、って」

 

 歳三、不愛想な面のところで肩眉を上げた為か関羽と張飛の得物が動きかけたが。

 

(あんにゃろう本当に丸投げしてきやがったな)

 

 すぐに傲岸不遜のむっつり顔に戻った為に、関羽と張飛は若干肩透かしを食らった。

 

「それで、私たちの理想は駄目なんですか? 民の為に、戦えない弱い人の為に戦うというのは、悪いことなんですか?」

「別に、悪いとは思わんがね」

 

 歳三とて、王城の守護者であった時期のある男である。

 あの頃は確かに、押し借りや乱暴狼藉を働く不逞浪士を捕縛していたのだから、確かに民の為に戦っていたのだろう。

 

「だったら」

「しかし一つ聞くが、私は民の為に黄巾党を討伐しているが、黄巾党も元は単なる農民であることは知っているだろう」

「それは……はい。洛陽からの重税や圧政に耐えかねた者も多いと聞いています」

「では黄巾党の為に戦うということも、ある意味では民の為に戦うことと同義になっている、とは言えないかね?」

 

 鳥羽伏見で錦の御旗が翻った時、善と悪は完全に逆転したのだと思い知らされた屈辱を思い出す。

 そうして新政府と戦い続けたわけだが、これもまた、戦えぬ武士や民の為に戦っていたと言えるのではなかろうか。

 と、そこまで考えてどうでも良くなった。

 

(らしくねぇな。俺の考えることじゃねぇよ)

 

 とにかく、今は。

 

「まぁ、今のは詭弁だよ」

 

 喋り続けることにある。

 喧嘩のこつ(・・)は如何に弾みをつけるかにある、弁舌も一緒だ。

 弾みがつかなければ言葉だって出て来ない、その点歳三は弾みが付き始めていた。

 

「ともかく、程立が言いたかったのは一つだ。君たちは民の為に戦う。では、他に民の為に戦う集団が現れたら、君たちはどうするのかね? 軍門に降るのか? 共に戦うのか? それとも己の理想の為に戦うのか? 守りたい民を犠牲にしてでも」

「それは……」

「それを答えられなかったのだから、程立は怒ったのだろうよ」

 

 多分な、と心の中で思いながら歳三はあの腹黒軍師をどうしてやろうかと考えていた。

 すこし時があった後、困惑した表情で関羽が歳三に質問を投げかけてきた。

 それにしても、妙に肩肘張っていて疲れないのか、歳三は疑問だった。

 

「では、土方様は何のために戦っているのですか?」

「私はね私の為に戦っている。誰がどう言おうがそれだけは変えるつもりはない」

 

 それが、土方歳三だ。

 鬼と呼ばれた男の、仁義である。

 

「もっと言ってしまえば、漢帝国やそこに住む民のことなどどうでもいいのかもしれない」

 

 が、と言って。

 

「だからといって、民に仇なすものを許すつもりはない。さて聞かせてくれ劉備玄徳」

 

 歳三の眠たげな眼が、きっと劉備を睨んだ。

 

「君は、己の為に戦うが、その戦いが民を守る戦いに繋がっている私を、はたして悪として倒すことができるのか」

 

 劉備、しばし長考して答えた。

 

「……では、間違っていたんですか? 私たちのやっていたことは?」

「君たちはいつも答えを急ぐな。言っておくぞ、君たちの言う、民のために戦うというのは決して悪い理想などではない。だがいつか、絶対に壁にぶち当たる理想でもある」

 

 それが今回はたまたま程立で、その後に歳三が充てられたわけだ。

 まったく、してやられたと思いながら歳三は続ける。

 

「ああ、確かに、程立の様な人間にとっては、君のような理想論そのものを過ちと呼ぶかもしれぬ。だが、だがな劉備よ。その過ちによって救われた人間が、少なくともいるのではないか?」

 

 劉備らの顔が、やっと少し明るくなった。

 やれやれ、子守りも楽ではないなと(よわい)三十五になる男はこっそり思った。

 

「劉備よ、私は自分の為にしか戦えぬ男だ。この剣も、私の為にしか振るわれぬ剣だ」

 

 劉備はうんうんと頷いている。

 張飛は眼を輝かせ、関羽は感心したように聞いている。

 なるほど、弁舌の徒は口だけで中身がない屁みたいな存在だと思っていたが、これだけ人を動かすことができるとわかるとやめられなくなるのもわかる、と歳三は一つ学んだ気になった。

 

「けれどもだ、中には民の為に振るわれる剣があっても、良いのではないか?」

「民の為に……振るわれる剣」

「道を違えることを恐れるな、君の理想は誤解されやすいかもしれない。だからこそ、自分の選択を信じよ劉備。そして強くなれ」

「……はい」

「そして時に立ち止まって振り返り、これからの道を見よ。ただ前に進むだけが人間ではないのだからな。そしてその努力を誰が理解せずとも、私だけは認めよう」

「はい!」

「ただし、その進む道が私と戦う道であった時は容赦はしない。今言えるのは、それだけだ」

「は……え?」

「考えることだよ。考えて考えて、悩んで答えを出すことだ。少なくとも」

 

 歳三は珍しく、にっと笑って。

 

「私の様に、死んでから気付くような人間にはならないことだ」

 

 歳三は席を立った。

 最後は軽く煙に巻いたような感じであったが、これが歳三のできる精一杯であった。

 嫌な汗が、背中を流れている。

 

「おい、郭嘉を呼んでくれ。私は少し下がる」

 

 天幕の外で立っていた警備兵にそう声を掛けると、趙雲は天幕の影からひょっこり出てきた趙雲に思いっきり渋面をした。

 

「どうされましたか、主」

「……私はもう疲れた。二度とこんなことはしないぞ、絶対にな」

「あっはっは! 流石の主も苦手なものがあるのですなぁ!」

「その苦手に奮闘する私を肴に酒を呑んでいたのは誰だろうなぁ。今度軍中法度に酒類の飲食を禁ずると加えておこうか」

「主、私が悪かった」

 

 ともかく、と歳三は気持ちを切り替える。

 これで劉備も少しは現実を見て戦いを始めるかもしれない。 

 そうなればそれでこそ、近藤が憧れていた存在を越える意味があるのではないかと思っている。

 

(ああ、近藤さん。俺は関羽なんざ越えてやるぜ)

 

 沖田がいれば噴き出しそうな歳三の決意に、本人ばかりが気づかない。

 これでは友に自分より仲の良い友人がいる子供の嫉妬ではないか、と。

 

 

 ともかく、歳三との会話によって元気を取り戻した劉備らは、郭嘉との作戦会議で双方大まかな方向性が決まったことになる。

 青州楽安・斉方面に劉備らが、東萊方面に歳三らが向かうことになった。 

 が、これが郭嘉と程立らの策であることを気付いていたのが、この場に何人いたか。

 少なくとも自身の寝所で兼定の具合を見ていた歳三だけは、知らされていただろうが。

 兼定の刃が、暗闇のなかでぎらりと光り、歳三の姿を映した。

 刃に映っていたのは果たして人か、鬼か。




飛車厨様、久慈くじら様、HAGI1210様、誤字報告ありがとうございます。

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