【恋姫†無双】黒龍の剣   作:ふろうもの

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《真名早見表》
 土方歳三――義豊
 黄忠漢升――紫苑
 徐晃公明――香風(シャンフー)
 趙雲子龍――星
 孫堅文台――炎蓮(イェンレン)


巨星、堕つ

 歳三は(すね)を斬る、身を低くして(みずち)の様に()いながら脛を斬る。

 この脛切りは本来、天然理心流にはない技である。

 元は幕末における剣術の大隆盛時に流行った流派の一つ、柳剛流(りゅうこうりゅう)の得意技である。

 それを歳三は改良を加えて、動きながら脛を斬るなどという器用なことをやっている。

 人間が多く持つ弱点の中でも、脛は弁慶の泣き所と言われるほどの場所である。

 斬られた方は(たま)ったものではない、立つことが出来ずに即座に崩れ落ちる。

 

(弱いな、劉表の軍は)

 

 また一人の脛を斬って足を(すく)い転がしながら、歳三は静かにそう思った。

 歳三の周りには劉表軍が殺到しているが、まるで歯牙に掛けていない。

 第一に気組みからして、劉表軍は歳三たった一人に負けているのだ。

 

(香風より(くみ)し易いと思ってるんだろうが、それこそとんだ見当違ぇさ)

 

 この男は別方面で猛威を振るう、徐晃の様な派手さは一切ない。

 ひたすらに地面を凄まじい速度で這っては脛を斬る、それだけである。

 だがそこには、歴戦で培われた技術がある。

 技術で(もっ)て歳三は劉表軍を翻弄していると、それがわかる指揮官がいればこうはいかない。

 更に歳三に言わせれば、殺意の質からして、劉表の軍は質が悪い。

 たかが優男が一人という、“たかが”という心の油断が歳三には見えている。

 こんなところに近藤がいれば、大喝一つで軍勢を縮み上がらせることができるだろう。

 

(でも俺ァ近藤さんじゃないからね、別の方法で度肝を抜くさ)

 

 ふっ、と歳三が涼やかな笑みを浮かべた。

 それを油断、と見たのか一人の兵士が地面に突き刺す様に槍を突き出してきた。

 

(遅いな。が、星の槍なら、私は死んでいるか)

 

 と、串刺しになった自分の姿をこの男特有の想像力で思い浮かべながら、鍔元で槍の切っ先を受けた。手応えからやった、と兵が(わら)ったのが見える。

 周りの兵たちも続けと言わんばかりに剣や槍を構えて続こうとする。

 

(わら)ったら、駄目さ)

 

 嗤いとは、勝利とは程遠い油断からしか生まれないことを、歳三はよく知っている。

 がっと、鍔元で受けた槍へと沿う様に兼定の刃を擦り上げて、斬りつけた。

 丁度、蛟が雲を得て龍へと変わるように、その速さは誰の目にも止まらない。

 だが致命傷ではない、男はたたらを踏んだ。

 よりも速く、返す刀で歳三は男の身体を真っ二つに袈裟斬りに斬り下げた。

 龍尾剣、近藤の得意技とも永倉の得意技とも言われる、電光石火の荒業である。

 男の上半身は吹き飛び、下半身は血を噴き出しながら二歩、三歩たたらを踏むとどうと倒れた。

 

「さぁ。次は誰だ?」

 

 と、歳三が言い終わるよりも早く、歳三自身が手近な兵士を斬り殺していた。

 兵士たち皆が、歳三の鋭い眼光と斬撃を前に浮足立った。

 一瞬でも、いけると思った自分たちが間違いだったのではないか、そう思わせる迫力が、ある。

 黒衣を鮮血で染めるその姿に、兵士たちは誰もが聞いたとある噂を思い出していた。

 南陽の黄忠を孕ませたのは人ではなく、龍であると。

 そして、目の前にいるのは青州では黒龍と呼ばれる土方歳三その人である。

 自然、この二つの言説が、兵士たちの中で組み合わさるのは当然とも言えた。

 完全に劉表軍の兵士たちは、歳三の気組みに呑まれていた、そこへである。

 呂蒙の指揮する、孫堅軍の一隊が突撃した。

 

 

 雨が上がり黄忠の軍を背に負って進軍する孫堅軍は、待ち構える劉表軍と数瞬のみ、相対した。

 次の瞬間には孫堅の巨大な号令によって、兵たちが一丸となって突撃していく。

 孫堅軍は正に、破竹の勢いで劉表軍を撃破していった。

 当たるところたちまちに軍勢を突き破り、撃滅する姿はただしく暴虎であった。

 その中でも呂蒙の軍は遊軍となって劉表軍の柔らかいところに入り込み、敵を浮足立たせてから各個撃破していく。現代戦の思想が呂蒙の中にも根付いていると、歳三は嬉しくなった。

 

「人を動かすというのは楽しいだろう、呂蒙?」

 

 全身に返り血を塗れさせながら、歳三が呂蒙に話しかける。

 この男、どういう不思議があるのか肩で息の一つもしていないのだから、可愛げがない。

 一方の呂蒙は手も足も全身を震えさせながら、歳三に短く答えた。

 

「はい」

 

 と。だが歳三にはこれで十分だった。

 呂蒙の眼には爛々と、指揮官としての眼が輝き始めている。

 歳三は、そう見ている。

 だからこそ、こうして自分と徐晃を使って各個撃破ができているのだ、とも思っている。

 

「だが、実戦がこれだけでは駄目だな」

 

 と、歳三は面白そうに言った。

 今の呂蒙ならば、間違いなく喰らいついてくるだろうという確信がある。

 事実、呂蒙は喰らいついてきた。

 見る人が見れば呂蒙もまた、歳三に毒されていると言うだろうが、もう遅いだろう。

 呂蒙が先を促す様に、眼を輝かせて歳三を見ている。

 

「これよりもっと楽しく、経験になることがあるんだがね」

「なんですか? それは?」

 

 歳三にそこまで言わしめることがあるのなら、どれほどのものなのだろう。

 呂蒙は眼を輝かせて、歳三の次の言葉を待った。

 そして、歳三は十分に溜めてから、言う。

 

「負け戦の中で勝つことだよ。あれほど楽しい物はないぞ」

 

 が、この言葉は呂蒙が歳三の正気を疑うだけに終わったのは、言うまでもない。

 負け戦の中で勝つことなど、まず無理だからである。

 だがこの男は、それこそが戦の醍醐味だと言わんばかりに、ただあっけらかんと笑っていた。

 

 

 孫堅の軍は暴虎であると、先に述べた。

 それは黄忠の軍の直接的な手助けを一切受けずに、進撃を続けたということもある。

 いとも容易く全軍で樊城を抜き、漢水を一気に渡河した孫堅軍は襄陽城の攻城戦に入った。

 この間、黄忠の軍は樊城に入り、即座に樊城の住民と兵士を鎮撫したのも大きいだろう。

 樊城陥落の報と黄忠、劉表に叛逆するの一報は襄陽城を大きく動揺させたのは言うまでもない。

 元々、最近の暴政によって劉表に対する臣民たちの評価は、地に落ちている。

 ここで劉表に味方するよりは、孫堅や黄忠に恭順を示す方が良いだろうと考える者たちが出るのも、時間の問題であると言えた。

 

「土方様」

「なんだね、呂蒙」

「土方様はまだ何か、起こると思っておられるのですか?」

 

 その一方で、襄陽城を囲む一軍に加わろうとする呂蒙を止めたのは、歳三だった。

 既に陽は落ち夜戦の様相を呈し始めている最中、どこにでも行ける様にと、城を囲む孫堅軍から遠巻きに呂蒙たちは布陣している。

 今にも襄陽城に駆け出したい兵たちを押し留めているのは、この眼光鋭い男がいるからだった。

 歳三は風を全身に受けながら、呂蒙の言葉に答えた。

 

「これは私の勘だが、何かうまく行き過ぎている気がするのだよ」

「勘、ですか……それで私に全権を任せるという約定を破ったと?」

 

 呂蒙の眼が、すっと細められた。

 この短時間の間で、呂蒙は将軍としての風格が備わり始めていると歳三は感じている。

 やはり戦は人を成長させる、と思いながらも、急な成長に追いついていない部分も、またある。

 

(まぁ、そこは追々どうにかすればいいさ)

 

 今は、襄陽城へ突撃の命令を下したくてたまらない呂蒙を引き留めるのが、第一である。

 

「終わって何もなかったら、鞭打ちでも斬首でもなんにでもすればいい。だから、待て」

 

 歳三の言葉に本気を感じ取った呂蒙は、それ以上歳三を糾弾するのを()めた。

 呂蒙もまた、歳三が見ているもの見てみようと歳三の横に並んでみる。

 ただ強い風だけが、呂蒙の顔を叩いた。

 呂蒙にはまだ、歳三が見ているものがなんなのかわからなかった。

 

 

「孫堅様より伝令!」

 

 呂蒙の陣に突然の伝令が駆け込んできたのは、それからすぐのことである。

 伝令に自ら水を飲ませると、呂蒙はこれが歳三の言っていたことかもしれないと直感した。

 事実、伝令が伝えてきたことは戦の趨勢(すうせい)を決めかねないことであったからである。

 

「孫堅様は御自ら襄陽城より逃亡した劉表を追撃しに行くとのこと!」

 

 伝令の叫びに、歳三はいち早く反応した。

 

「待て、ここで逃亡だと?」

 

 神仏よりも己の勘を信じる男である。

 歳三は先程から嫌な予感がしていたが、何か不味いという不安ばかりが募っていく。

 この不安は数多の修羅場を潜り抜けてきた、いわば経験則からくる不安であるとも言えよう。

 

「呂蒙、敵が逃げる場合はどんな時だと思う?」

 

 歳三の言い方は呂蒙に、ではなく自分に言い聞かせる様な響きがある。

 呂蒙も歳三の物言いに怪訝に思いながらも、戦の前に覚えたことを必死になって思い出す。

 

「えっとですね、一つは軍を立て直す時、一つは後方の仲間と合流する時」

「違う、この場合に当てはまるものは」

 

 半ば、呂蒙の言葉を遮るようにしてから駆けだした歳三。

 一拍遅れながらも、軍に指示を飛ばしながら、呂蒙は歳三に必死に着いていく。

 

「当てはまるものってなんですか!?」

「大物を釣り上げる時だ!」

 

 歳三は勘付いていた、これは孫堅を釣るための罠であると。

 孫堅軍の強さの一つには、圧倒的といえる孫堅自身の求心力の高さがある。

 ここで孫堅が倒れれば、襄陽の敵が盛り返し孫堅軍が瓦解しかねない。

 

(はや)るなよ、炎蓮!)

 

 歳三は孫堅の無事を祈りながら、劉表が逃亡したという峴山の道を急いだ。

 

 

 暗闇の山中をひた走る孫堅と、その先に見える陰りながらも威容のある男が見えた。

 徐晃と呂蒙と、その他兵を引き離す勢いで歳三は走り、孫堅に追いつこうとした。

 先に行っては駄目だ、ただそれだけを言う為に、炎蓮と、叫ぼうとした。

 無情にも、歳三が叫ぶよりも早く孫堅は走っていき、そして止まり、崩れ落ちた。

 歳三には見えた、孫堅の腰に深々と矢が突き刺さっていくその瞬間を。

 周囲から歳三を狙う殺気が立ち上っているのを感じるが、そんなものはどうでもいい。

 歳三は素早く孫堅の元に滑り込むと、崩れ落ちた孫堅を抱きかかえた。

 

「炎蓮!」

「よう……歳三じゃねぇか」

「あまり喋るな、傷に障るぞ」

「いいや、俺はいいんだ。逃げろよ、歳三。これは罠だぞ」

「わかっている。わかっているさ。だが私が、友を簡単に見捨てられる男だと思っているのか、炎蓮」

「はっ、それは違いねぇな」

 

 孫堅が自嘲気味に言葉を零す。

 背中を抱く歳三の手に、命の熱い奔流が纏わりついてくる。

 だが、このくらいならばまだまだ死なないと、歳三は知っている。

 

「香風!」

「うん、任せて」

 

 歳三が声を出すと、すぐさま徐晃が前へと飛び出した。

 そして歳三と孫堅を囲うように、呂蒙が布陣を展開させる。

 今ここには、四面全てに敵が居ると思って良いだろう。

 殺気があちらこちらから、立ち昇っている。

 

「お前が土方歳三か」

 

 遠く暗闇の向こうから、声がした。

 自分が勝者と確信して隠さない、居丈高な男の嫌な声である。

 歳三は嫌悪感を隠すことなく、その声に応えた。

 

「だとしたら、どうする」

「ここで殺すに決まっているだろう」

 

 嘲笑するような響きが、声の中にある。

 歳三は逸る心を抑え、慎重に夜目を闇に慣らしていく。

 今、歳三に必要なのは時間である。

 嫌いな相手であるが、あの男の弱いところを、歳三はよくわかっている。

 わかっているからこそ、言葉で時間を稼ぐことが出来る。

 

「劉表、お前の姿を先程ちらりと見たが、見た目は威風堂々として立派だな」

「当たり前だろう。私は景帝の第四子である魯恭王劉余の子孫であるぞ」

「私と違ってさぞ、立派な産まれのようだ。しかし、心は醜いな。なるほど、それでは紫苑から嫌われるわけだ」

 

 容赦なく、歳三は劉表の劣等感を抉り出す。

 夜の深い闇の中で、何者かが一人強く震えているのが見えた。

 あれが劉表か、と当たりを付けながら、歳三は心からの侮蔑を込めて、言った。

 

「失敬、劉表殿は黄忠の真名を知らなかったのだな」

「その口が矢を受けても開いていられるか見ものだよ、射手!」 

 

 歳三、劉表の立ち位置を完全に看破した。

 そして劉表の射手が弓を放つより早く、次の言葉を継いだ。

 

「私が何故、黒龍と呼ばれているのか知らないのか? 劉表?」

 

 拳銃嚢(ホルスター)から、拳銃を抜いた。

 歳三の前で大斧を構える徐晃が、真っ先に反応して伏せた。

 この場で歳三の拳銃を知る者は、徐晃しかいない。

 孫堅も、呂蒙も、劉表も、皆が奇妙な物を腰間から取り出した、くらいの認識しかない。

 その中で歳三は、一人自分への怒りで打ち震えている。

 

(この世界に銃がないとかどうとか、知ったことじゃねぇ)

 

 半ば不可抗力とはいえ戦いを呼び込み、(あまつさ)え友を負傷させた。

 こんなこと、戦時でなければ自ら腹を掻っ切るぐらいの失態である。

 だがそれは今するべきことではない。

 

(炎蓮は俺のために命ァ張ったんだ、俺が弾丸の一つを撃てなくて、当てられなくてどうする)

 

 歳三にはできることがある、やるべきことがある。

 それが全て済んでから、腹なんていくらでも裂いてやろうではないか。

 だからまずは、殺そう。

 劉表を。

 

「劉表!」

 

 叫んだ、歳三はただ叫んだ。

 暗い山中のことである、歳三の、己にも向けられた怒気の籠った声は、大きく響いたであろう。

 先から当たりを付けていた影が、大きく(おのの)いた。

 

「すまぬ、炎蓮」

「謝るなよ、お前らしくもない」

 

 引鉄が引かれ、撃鉄が降りる。

 銃声が鳴り響いた。

 

「ああ、まるで龍の咆哮だな」

 

 孫堅はそう、小さく呟いた。

 

 

 歳三は引鉄(ひきがね)を引き続け、影に銃弾を叩き込んだ。

 弾倉が空になるまで撃ち、最後の銃声が遠く闇の中へと消えていった時。

 どうと倒れたのは本当に劉表であったのか。

 歳三にはわからない。

 わからないが、劉表軍が(にわ)かに慌てだしたのを見て、弾は確かに当たったのだと確信した。

 

「逃げるぞ、炎蓮」

「逃げるとは、やっぱり今日はお前らしくないな、歳三。久しぶりの女と娘に出会って、気が落ち着いているんじゃないのか?」

「ああ、それだけ喋れるなら大丈夫だろうよ。呂蒙」

「はい! 皆さんは楔形陣を築いて退却してください! 殿(しんがり)は」

 

 呂蒙が言うよりも早く、徐晃がそのままの位置に仁王立ちしている。

 

「シャンに、任せて」

「殿は徐晃さんが務めます! 皆さん、孫堅様を守りながら退却を!」

 

 歳三が孫堅を横抱きにして、韋駄天の如く走り出す。

 そして歳三らを守るように兵士たちもまた、走り出す。

 劉表の軍は幸運にも、追って来る気配はなかった。

 かの軍もまた、急に頭を失うということがあって統率が取れていないのかもしれない。

 

「これなら襄陽は問題なく落とせるな」

「ああ、策と権ならうまくやってくれる」

 

 歳三の呟きに、孫堅はどこか遠い異国のことを喋る様に言う。

 

「何を言っているんだ、まだまだこれからだろう、炎蓮」

「いいや、俺はもう駄目だよ。腰から下の感覚が、さっきからない」

 

 ああ、と歳三は哀しくなった。

 戦好きには二種類の人間がいるものである。

 自分で戦うのが好きな者と、頭だけになっても戦えるのであれば戦う人種である。

 孫堅は間違いなく、前者だ。

 

「炎蓮」

「そんな悲痛な声を出すなよ歳三。それに丁度良かったんだ」

 

 孫堅は力なく呟く。

 それでも、孫堅はこれからの展望を見切っているようであった。

 

「これで荊州の力関係は変わる。これからは劉表に代わって黄忠が荊州北部を治める」

 

 歳三はただ、聞く。

 恐らく孫堅とは長い別れになるであろうことを思うと、言葉を挟む気にはなれなかったのだ。

 

「俺はその端っこの長沙に腰を下ろして、子供たちを追い出すのさ」

 

 その姿は一軍を率いる虎の様な猛将ではなく、母の顔であった。

 

「俺が居ちゃあ策も権も、このままだと俺の影に隠れちまって芽が出ない。だから、丁度いいのさ」

 

 歳三これには沈黙した。

 孫堅という偉大な母の前に、孫策も孫権も埋もれがちだったのは事実である。

 突飛な形ではあるが、劉表に討たれるということも、子供たちの母離れの一環だったのか。

 

「ふふ、黄忠への橋渡しと俺の自慢の子供たちを更に育て上げる役は任せたぜ、歳三」

「任せろ。返しきれない程の借りが、私にはあるからな」

「それを聞いて安心したよ。俺は、少し眠る」

 

 程なくして、歳三の腕の中から静かな寝息が聞こえてくる。

 腰の矢の激痛も凄まじいはずであるのに、孫堅とは真実、剛毅そのものの猛将であった。

 あった、というのはもう、その覇気が煙の様に消え去っているからである。

 歳三の腕の中にいるのは、安らかに寝息を立てるただの人の親であった。

 

(巨星が一つ、堕ちたか)

 

 と、歳三は悔いずにはいられないのではあったが、しかし。

 

(孫策と孫権、二人を炎蓮以上にしてみせる)

 

 と、新選組を創り上げた男は、別の炎を燃やし始めていた。




「」様、ご指摘ありがとうございました。

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