勇者・・・・・・それは魔王を打ち倒すために存在する人類の救世主
魔王と勇者は戦う宿命・・・・・・
これはそんな宿命に縛られし二人の終末の物語
満月の夜。色とりどりの花々が咲き乱れ、鮮やかな蝶達が舞う花畑にて黒い髪に鉤爪のついた大きな黒い翼を持つ少年・・・・・・魔王が座り込んでいた。
慈しむような目で花畑を眺める魔王・・・・・そんな魔王の元に来訪者が一人。
「来たぞ魔王」
来訪者は美しいプラチナブロンドをポニーテールにし、整った顔立ちをした少女であった。
「ああ・・・・・こんばんは勇者」
その少女は・・・・・・魔王と相対す存在。人間達の救世主たる勇者であった。
勇者はさも当然のように魔王の横に腰を下ろす。
「本当に魔王はここが好きなのだな。毎日毎日飽きもせずによく来るものだ」
「それはお互い様だろう。勇者だって毎日来てるじゃないか」
「私は・・・・・・確かにここは好きだ。だがここに来る理由はそれだけではない。ここ来れば・・・・・魔王に会える。だから来ているのだ」
勇者は魔王の肩に甘えるように頭を乗せながら言う。
「よく言うよ。初めて会ったときは斬りかかってきたくせに」
魔王は呆れたように苦笑いを浮かべる。だが、その手で勇者の頭を優しく撫でていた。
勇者と魔王・・・・・・今でこそ静かに、和やかに過ごす二人であったが最初は違った。
全くの偶然にこの地で出会った時、二人はお互いに相手が何者であるのかを察した。言葉に出さずとも・・・・・・・相手が自身が倒すべき宿敵であることを理解した。
仕掛けたのは勇者の方だった。勇者は剣と魔法をもって、魔王を打ち倒さんとしたが・・・・・勇者の力は魔王に全く及ばなかった。勇者は手も足も出ずに、僅か数秒で魔王に素手で押さえ込まれたのだ。
その時、勇者は死を覚悟していた。だが・・・・・魔王は勇者を手にかけることはなかった。
魔王は言った、この地で殺生は行いたくないと・・・・・・ましてや戦うことさえもしたくないと。戦えばこの地が荒れ、血で汚れてしまう・・・・・それが魔王にとって嫌がったのだ。
その言葉を聞いた勇者は・・・・・自身の中で抱いていた魔王のイメージとの違いに戸惑った。それと同時に勇者は魔王に興味を抱いた。
魔王とは一体どのような者なのか。魔王が何を考えているのか。魔王はなぜ魔族を率いて人間の世界を侵略しに来たのか。
それを・・・・・・勇者は知りたくなったのだ。
「始まりはあの時だった。あの時魔王に出会って私は・・・・・・魔王のことを知りたくなった」
「そして勇者は俺に会うために毎日ここに通うようになったんだよな。どこにいても来られるようにわざわざ転移魔法まで覚えて・・・・・・・仲間にも告げずたった一人で」
「当然だ。私の仲間は魔王を倒すことを悲願としている。そんな彼らをここに連れてくれば戦闘は避けられないからな」
「・・・・・そのことに関しては感謝してるさ」
クスリと、互いに微笑み合う二人。この二人の間には、既に宿敵に向ける敵意など存在しなかった。
日を重ねるごとに、知るごとに二人は・・・・・否、勇者は魔王に対する敵意が薄らいでいった。そして同時に。人間に対する失望が大きくなった。
魔王曰く、そもそも魔族たちが人間の世界に訪れたのは侵略のためではなく・・・・・・共存のためであった。人間との共存、そして友好な関係を築こうとやってきた魔族達。だが・・・・・人間達はそれを拒絶した。
人間の大国に対し和睦の使者として遣わされた魔族を・・・・・人間達は話も聞かずに容赦なく惨殺した。悲しみに暮れながらも、今度は別の国に大してあらかじめ書状を送り、了承の返事をもらった後に使者を送ったが・・・・・その使者も惨殺された。
人間は魔族との共存を否定した。故に使者と分かっていながら、国の王族達はわざと惨殺したのだ。国民達に、侵略に来た魔族を打ち倒したと偽って。
あらゆる国に何度も送られた魔族の使者・・・・・・その悉くが殺される。そしてようやく・・・・いや、とうとう魔族達の怒りは抑えられないところまできてしまった。
その結果が・・・・・人間と魔族の戦争の幕開けである。
殺された使者の弔いのために戦う魔族。魔族という存在そのものを否定するために戦う人間。
勇者が・・・・・・・人間に失望してしまうのも無理のない話であった。
「魔王よ、私は思う。この時が・・・・・お前と共に過ごすこの時が永久に続けばいいと」
「ああ・・・・・俺もだ。俺も永久に勇者の傍らに居たいと思う」
「魔王と想いは同じ・・・・・・こんなにも嬉しいことはない。嬉しいことはないのに・・・・・」
魔王に寄りかかる勇者の顔が曇る。ひどく悲痛で・・・・・・ひどく哀しそうなものへと。
「・・・・・今夜で最後なんだな」
「ああ・・・・・・私がここに赴くのはこれで最後だ。私は明日・・・・・魔王の居る居城に乗り込む。勇者として魔王を倒すために」
「・・・・・よくもまあ、ここまでたどり着いたものだ」
「私からすれば・・・・・・たどり着いてしまった、だ」
明日・・・・・・勇者は魔王と戦うことになる。勇者として、魔王を打ち倒し・・・・・人間に偽りの安寧を与えるために。
魔王と戦いたくはない・・・・・・魔王を倒したくはない。勇者はそう願っていた。だが、それは許されない。
なぜなら彼女は『勇者』なのだから。魔王を倒し、人間に安寧をもたらさんとする人間の救世主・・・・・『勇者』なのだから。
『勇者』だからこそ、彼女は人間に失望しつつも旅を辞めることができなかった。多くの人間の期待と願い、そして女を捨てさせられてまで勇者として育てられ人生・・・・・それに縛られてしまった彼女は『魔王』打倒を辞めることなどできなかった。
故に彼女は期待していた。旅の途中で挫折してしまうことを。強大な困難が立ちはだかり、それに屈することを期待していた。
だが・・・・・そんな期待とは裏腹に、数多の困難は旅の仲間達と力を合わせることによって乗り越えてしまった。
そうしてとうとう・・・・・・『魔王』の城に乗り込む日を迎えようとしてしまっていたのだ。
「明日、城で魔王と会ってしまえば私は・・・・・・『勇者』として戦わざるを得なくなる。それは決して覆ることのない宿命だ。私はこの手で・・・・・お前を殺してしまうかもしれない」
「・・・・それは俺も同じだ。俺も勇者と戦わなければならない。戦わなければ死んでいった同胞たちに申し訳が立たない。俺もお前を・・・・・・殺さねばならない。俺は『魔王』だから」
二人共戦うことから逃れることはできない。なぜなら彼女は『勇者』に、彼は『魔王』に縛られているから。
決して解くことのできない呪縛・・・・・二人は殺し合う宿命にある。
「なあ、魔王。もしも私が『勇者』でなく、お前が『魔王』でなかったら・・・・・・別の形で出会うことはできただろうか?お前と添い遂げることができただろうか?」
「・・・・・・無理だな。もしも俺が『魔王』でなく、お前が『勇者』としたらそもそも出会うこともなかっただろう」
「・・・・そうか」
「そもそも・・・・・・・そんな仮定に意味がないことはお前もよくわかっているだろう?」
「・・・・・・・そうだな」
意味のない仮定・・・・・・そんなものは彼女だってよくわかっていた。それでも・・・・・その仮定にすがりつきたいほどに、彼女は彼に想いを寄せてしまっていたのだ。
「魔王・・・・・私・・・・私は・・・・・」
「・・・・・・わかってる。全部・・・・・・わかってるから」
震える彼女を、彼は優しく抱きしめる。
彼の胸に顔をうずめ、彼女は涙を流した。
「・・・・・もういい。もう・・・・・大丈夫だ」
「・・・・・わかった」
どれだけ泣き続けていただろうか?彼女はそっと彼に告げると、彼は腕を解く。
「そろそろ帰る。明日に備えて身体を休めなければならないから」
「そうか・・・・・・だったら、最後に聞きたいことがある」
「なんだ?」
「・・・・・・お前の名を俺に教えてくれ」
彼女は彼に名を尋ねた。
いつかは戦わねばならない・・・・・・それ故にこれまで敢えて聞くことのなかった魔王の名を。
明日には戦わなければならないというのに・・・・・・彼女は尋ねた。
「・・・・・テレジア。それが俺の名だ」
彼・・・・・・テレジアは名を名乗った。
「良い名だ。お前らしい・・・・・・優しい名前だ」
「優しい名前ってなんだよ・・・・・・俺もお前の名を知りたい」
今度はテレジアが彼女に名を尋ねた。
「・・・・・アルメアだ」
「アルメア・・・・・・・美しい名だ。お前に相応しい」
「そっちこそ美しい名とはなんだ?」
「「はははっ・・・・」」
互いに微笑みを浮かべ合うテレジアとアルメア。
そして・・・・・
「それじゃあ・・・・・さようならテレジア」
「さよなら・・・・・アルメア」
互いに別れの言葉を交わした後・・・・・二人は転移魔法で自身の居るべき場所へと帰っていった。
魔王の居城にて・・・・・城の主たる『魔王』テレジアは目を閉じながら玉座に座っていた。
どれだけの時間そうしていたであろうか・・・・・・・彼の前に待ち人達が現れる。
「・・・・・来たか」
ゆっくりと目を開くテレジア。その目に映るは『勇者』アルメアとその仲間達であった。
「貴様が魔王か!」
勇者一行の一人・・・・・アルメアの幼馴染の荒っぽい格闘家がテレジアを指さして叫ぶ。
「そうだ。俺こそが貴様らの宿敵にして、魔族の頂点・・・・・『魔王』だ」
「もっと悍ましい方だと思っていましたが・・・・・・予想外の色男です」
「惑わされるな。たとえどんな容姿をしていようが奴は残虐なる魔王。倒さねばならぬ敵の大将だ」
魔王の容姿に治癒術士の少女は驚きを顕にする。そんな治癒術士を、アルメアの師匠である屈強な剣士が注意を促す。
「ふっ・・・・・賑やかな連中だ」
「あ!?舐めてんのか!!」
「そんなつもりはないさ。気に障ったというのなら謝ろうか?」
「テメェ・・・・・!」
「よせ・・・・・ここで突っ込めば奴の思うツボだ」
今にもテレジアに殴りかかろうとする格闘家を、アルメアが静止する。
「アルメア・・・・・悪ぃ」
「気にするな・・・・・魔王、お前に聞きたいことがある」
「なんだ勇者?」
互いに名前では呼びあわないテレジアとアルメア。それは・・・・二人が今『魔王』と『勇者』として互いに向き合っていることを証明していた。
「城に乗り込んでここに来るまでの間誰にも会わなかった。これはどういうこと?」
「ああ・・・・そのことか。会わなくて当然だ。奴等は今魔界にいるからな。魔界で準備しているんだよ・・・・人間との最終決戦のな」
「なんだと?」
「もう間もなくだ。準備が完了次第我らは貴様らに総攻撃を仕掛ける。そうなれば・・・・・貴様らに勝機などありはしないさ」
「てめぇ!!」
「酷い・・・・・」
「さすがは魔王・・・・・非道だな」
魔王の発言に怒りを顕にするアルメアの仲間達。
だが・・・・・・アルメアは違っていた。アルメアは気づいていたのだ・・・・・テレジアが本気で言っているわけではないということに。
(今の言葉は間違いなく嘘。テレジアのことだ・・・・・・私達と戦わせないために魔界に避難させていたといったところだろうな)
(アルメアのあの顔・・・・・これは嘘だって見破られてるな)
アルメアの推察は当たっていた。テレジア以外の魔族が城に居ないのはアルメア達と戦わせないため。
魔王を慕う多くの魔族は反対していたが・・・・・テレジアの『最期』の願いということもあり、聞かざるを得なかったのだ。
「止めたいか?ならば今ここで俺を倒してみろ。魔王である俺が倒れれば、奴らも退かざるを得ないだろうからな」
アルメアに嘘だと見破られてもなお、テレジアは挑発をやめなかった。
それが・・・・・『魔王』としての責務だからだ。
「止めてやるよ!ここでてめぇをぶっ殺して全部終わりにしてやる!」
「覚悟してください!」
「我が剣の錆にしてくれる」
テレジアの挑発を受け、3人は戦闘態勢に入る。
だが・・・・・
「皆・・・・待ってくれ」
今まさに開戦しようかというその時、アルメアが待ったをかけた。
「どうしたアルメア?」
「奴は・・・・・・魔王は私一人で倒す」
「「「・・・・・え?」」」
アルメアの発言に、3人は一瞬我が耳を疑うこととなった。
「な、何言ってんだアルメア!あいつは魔王なんだぞ!?」
「一人で戦うなんて危険ですよ!」
「アルメアよ・・・・・どういうつもりだ?」
「・・・・・『魔王』を倒すのは『勇者』である私の責務。ここまで共に旅をしてきて今更だと感じるだろうが・・・・・・3人にその責を負わせたくない」
戸惑う3人に、アルメアはもっともらしい理由を述べた。
だがそれは偽り。本当は・・・・・・自分以外の誰かがテレジアの息の根を止めてしまうことが耐えられないから。だからアルメアは3人に戦わせたくないのだ。
(アルメア・・・・・お前は・・・・)
「ふっ、俺をたった一人で倒すか。いいだろう、その覚悟と受け取らせてもらう」
アルメアの意思を汲み取ったテレジアは魔法を発動。自身とアルメアを囲うように結界を展開させた。
「なっ!?なんだこれは!?」
「結界・・・・・我らとアルメアを切り離したか」
「待っててくださいアルメア!こんな結界私が解呪を・・・・・」
「無駄だ。魔王たる俺が作った結界・・・・・人間ごときに解くことは不可能。そもそも、勇者は俺との一騎打ちを望んでいるのだ。無粋な真似はよせ」
「・・・・魔王の言うとおりだ。これは私が望んだこと。お前達はそこで見ていてくれ」
アルメアは腰から白銀の剣を抜き、テレジアに向かって突き立てる。対するテレジアも、異空間から自身の武器である漆黒の剣を取り出した。
「今日で全てを終わらせる・・・・・・いくぞ『魔王』!!」
「来るがいい『勇者』!!」
『魔王』と『勇者』・・・・・二人の戦いが始まった。
剣をぶつけ合い、魔法を打ち合い、互いに殺し合うテレジアとアルメア。そこには確かな殺気が込められていた。
だが・・・・・・戦いを目にした3人は思いもしないであろう。
殺気が込められているにも関わらず、そこに敵意も増悪も憤怒も微塵たりとも存在していないことを。
殺気が込められているにも関わらず、同時に悲しみや苦しみ、嘆きまでも混在してしまっていることを。
『魔王』として戦うテレジアと『勇者』として戦うアルメア
望まぬその戦い・・・・・・それ故か、奏でられる剣戟は二人の叫びであり、二人の悲鳴にも聞こえる。
そしてそんな戦いも・・・・・・・いずれは終焉の時を迎えてしまう。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
「ぐっ・・・がはっ!?」
アルメアの剣閃が、テレジアの身体を引き裂く。
即死こそしないものの、それは致命傷に値する一撃・・・・・・・テレジアはその場に仰向けに倒れ伏した。
もはや・・・・・命を落とすのも時間の問題であるだろう。
「やった!アルメアが・・・・・アルメアが勝った!」
「とうとう・・・・・とうとう魔王を・・・・!」
「ふっ・・・・・今ほどお前の師匠として嬉しく思ったことはない」
「はあはあはあ・・・・・・」
『魔王』が倒れたことに、喜びを顕にする3人。だがそれとは裏腹に、『魔王』との戦いに勝利したアルメアは肩で息をしながら・・・・・今にも泣き出してしまいそうな悲しそうな表情を浮かべてテレジアを見つめる。
「よもや・・・・・俺が負けるとはな」
テレジアはアルメアを見つめ返しながら、儚い笑みを浮かべる。
「どうだ魔王!これがアルメアの力だ!まいったか!」
「ああ・・・・正直恐れ入った。だが・・・・・」
「あ?だがなんだよ・・・・?」
「・・・・・悪いことは言わん、さっさとここから離れることだ」
魔王がそう言い放つと同時に、城が大きく揺れ始める。
「きゃっ!?な、なにこれ!?」
「これは・・・・城が崩れ始めている?」
「魔王!テメェ何しやがった!」
「この城は・・・・・・俺の魔力によって造られたものだ。故に俺が倒されたことで崩壊し始めたというだけの話だ」
「マジかよクッソ・・・・・おい、お前ら!とっとと城からでるぞ!」
「いや・・・・今から脱出を図っても間に合わない。もう・・・・逃れることはできない」
「何言ってんだよ!こんなところでみすみす死んでいいっていうのか!?」
「嫌だ・・・・・死にたくないよぉ」
城の崩壊を目の当たりにし、格闘家は慌てふためき、剣士は諦めたように立ち尽くし、治癒術士は絶望から涙を流す。
だが・・・・
「3人とも落ち着け・・・・・大丈夫だ。皆は助かる」
「・・・・え?」
「助かるだと?どういうことだアルメア?」
「私の転移魔法で皆を飛ばす。だから皆が崩壊に巻き込まれることはない」
「転移魔法!?お前いつの間にそんなの使えるようになったんだよ!?」
アルメアが転移魔法を使えることを知らなかったらしい格闘家は、表情を驚愕に染めた。他の二人も知らなかったらしく驚いている。
「ま、まあそんなことは今どうでもいいか。それじゃあとっととこんな城からおさらばしようぜ!アルメア、転移魔法頼む!」
「・・・・・」
転移魔法を発動するように格闘家が言うが、アルメアは俯いて黙り込んでいた。
「どうしたアルメア?」
「・・・・・3人に話したいことがある。よく聞いてくれ」
「話!?そんなもん後にしろよ!それよりも今は脱出を・・・・・」
「私は・・・・・お前達と旅を出来て良かったと思っている」
格闘家の言葉を遮るようにして、アルメアは話し始める。
「お前達との旅はとても充実していた。勇者になるために修行に明け暮れていた私にとって、とても楽しいものであった。これは私の偽ざる気持ちだ」
「アル・・・・メア?」
「お前・・・・急になにを?」
なぜこのタイミングでそれを言うのか・・・・・それがわからずに治癒術士と剣士は呆然としていた。
だが・・・・・その理由は、この後のアルメアの発言によって察せられることとなる。
「だが・・・・・私にはお前達との旅の日々よりも大切な時間があった。何よりも大切で、何よりも心地よい時間が・・・・・・私にはあったんだ。私は・・・・『最期』にその時間を謳歌したい」
「最期・・・・?ま、待てよアルメア?お前何を言って・・・・」
アルメアの発言を聞き、嫌な予感がする格闘家。
その予感は・・・・・すぐに現実のものとなる。
「皆・・・・・ごめん。さようなら」
儚い笑顔を浮かべながら・・・・・アルメアは3人に転移魔法をかけて飛ばした。
「・・・・・これで二人きりだなテレジア」
アルメアは倒れているテレジアの頭を自らの膝の上に乗せる。
「アルメア・・・・・・何をしてるんだお前は」
涙を流しながら、テレジアはアルメアの頬にそっと手を添える。
「お前を倒したことで私は『勇者』としての役目を終えた。だから・・・・・私は『アルメア』として自由に生きる。『アルメア』として・・・・・お前と共にいる」
「・・・・ここに俺と共にいれば、崩落に巻き込まれて死ぬことになるんだぞ?」
「お前と共に死ねるのならば本望だ」
テレジアと共にいられるのならば、死さえも受け入れる。あおれはひとえにアルメアの・・・・・テレジアに対する想い故にだ。
「・・・・・馬鹿だな。アルメアは本当に・・・・・・」
「それはお互い様だ。逆の立場なら・・・・・テレジアもそうしていただろう?」
「・・・・・ああ。そうだろうな」
「「はははっ!」」
互いに穏やかな笑みを浮かべ合う二人。まるで、あの花畑で語り合っていたときのように・・・・・
「アルメア」
「テレジア」
「「・・・・・愛してる」」
愛の言葉と共に、二人はそっと口づけを交わす。
それと同時に・・・・・・二人は崩落した城に埋もれた。
誰よりも優しかった『魔王』テレジア
誰よりも美しかった『勇者』アルメア
誰も知らない・・・・・・・『魔王』と『勇者』の愛哀の物語に終止符が打たれた
差支えなければ感想をお聞かせくださるとうれしいです