今日から神父!!   作:神仁

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朗報:主人公がフラグを立てます。


3Days:神父の受難、始まりました

フラグなんかに、絶対負けたりしないっ!!

 

――そう、思っていた時期が……俺にもありました――。

 

*****************

 

「――天に座します我らが父よ……神器の研究と言う、罪深く冒涜的な行いの為に……穢れた魂とは言え、無差別に刈り取らねばならない我が罪を御許しください――」

 

「……お前ね、そりゃあ嫌味のつもりかね?」

 

「いえいえ?ワタクシは悪魔払いですから?無辜の人々の為にはぐれを打ち倒すのは使命ですし?教会に居たときからやって来たことですから、罪深かろうと、やらなきゃならないことですしおすし?」

 

堕天使の総督サマと衝撃的なファーストインプレッションを果たしてしまった俺が、堕天使のお膝元に馴染むまでに暫く――。

 

神器について学ぶ為にやって来た俺は、この総督サマや他の堕天使さんから色々とご教授戴いている訳ですが――悪魔払いとしての活動も平行して行っている訳ですよコレが。

 

それだけなら、何てことはない。

 

はぐれ悪魔くらいなら、何十と居ようが負けるつもりはない。

だが、このオッサンは――。

 

「何処ぞの総督サマは、そんなはぐれを生け捕りにしろと仰る――しかも神器持ちのはぐれを――だ。難易度も鰻登りですのことよ?」

 

「仕方ねぇだろう?神器の研究の為には、神器その物を調べるのは必須だ。神器持ちの奴に協力して貰っちゃいるが――もっと突っ込んだ研究をするためには神器自体を確保するのが手っ取り早いが――まさか、何も知らん奴をディープな実験に使えねぇだろう?」

 

要するに、実験動物――モルモット的な扱いではぐれを欲しやがったのだ。

――神器ってのは、神より人に与えられた贈物……ギフトって奴だ。

 

本来なら神器はその持ち主のみが使えるモノであり、他者には扱えない。

しかし、特殊な手順を用いることで持ち主から神器を抜き出し、持ち主以外も使用することが出来るようになる。

 

――神器は持ち主の魂と密接に繋がっている為に、神器を抜き出されるということはその持ち主の死を意味する。

 

……一応、此処に来て学んだことであり、原作の知識として知っていたことである。

レイスティンガーさんが、アーシアちゃんにやらかしたことが正にコレだな。

 

「……本当に、罪のない人を実験台にはしてねーんだろうな?」

 

「何だよ、疑ってんのか?前にも言ったろうが……本当に何も知らねぇ奴は巻き込んじゃいねぇよ」

 

疑っちゃいない。

最初は警戒もしていたが、このオッサンを始め、堕天使の幹部連中は何と言うか――人間臭い。

アザゼルのオッサン含めた数人の幹部は穏健派と言うか……ある意味じゃあ天使よりも人間に近しいかもしれない程度には、態度が柔らかい。

 

悪意の様なものを感じないんだな……まぁ、コカ何とかみたいな例外も居るが。

 

だがまぁ、それはそれとして。

 

「危うく死にかける目に合わされて、その元凶を信じろってのは……ねぇ?」

 

「ま~だ根に持ってるのか、お前さんは?」

 

「当たり前でしょうが……つーか、少しは反省しやがれっ!!」

 

そう、アレは此処に来てから数日が過ぎた時だった……。

 

*****************

 

「――俺が出来ること、ですか?」

 

「あぁ、ニコルの奴からある程度は聞いちゃいるが、改めて本人から聞いておきたいと思ってな。出来ること次第で、どれだけの案件を任せられるのか、どの程度のことを熟せるのか――まぁ、そういう判断さ」

 

そんな風にいきなり、ニヒルなケリィボイスで尋ねてきたアザゼルさん。

 

一瞬だけ考え込む――が、直ぐに開き直る。

もしも敵になった時、手の内を知られていたら不味くないか……とか。

 

そもそも主人公側になるであろうこの人と敵対するような事態は、個人的に絶対避けたい事案な訳で。

 

――何より悲しいかな、隠しだてする程のスキルは持ち合わせていないのが現状である訳で。

 

「出来ることと言っても、大したことはないですよ?精々が光力を利用した光剣の使用と、光弾の使用と出力調整――」

 

こう、ライトセーバー状態からガンダムエピオンのビームソード位に出来たり。

 

「ふんふん」

 

「相手のオーラを読んで気配や強さを察したりとか、自分のオーラで身体強化したりとか――」

 

明確に比べられる相手が居るわけではないが、昔に比べたらオーラの総量もコントロールも格段に上がったのではないだろうか?

 

「ほうほう」

 

「大地の竜脈との合わせ技の仙術とか、それ等の応用で空を駆けたりとか――」

 

とは言え、出来るのは精々が波紋の再現とそれっぽい技の再現位だが。

 

「うん……うん?」

 

「魔力は少ないので、視力の強化に使ってますね――お陰でリボルバーでも狙撃で困ることはないです」

 

紅茶さんじゃないが、遠く離れた場所のタイルの数を数える位は出来る。

言い換えれば、真っ当な魔法――雷とか炎とか氷とかは使えない……事もないんだろうが、仙術モドキでやった方が効率良いし俺の場合。

 

「ちょ、ちょいと待て?」

 

「それから――はい?」

 

他にもマジカルと言うか、波紋的サムシングの混じった八極拳とか、ブラッキー先生に倣ってアインクラッド流と呼ぶことにした剣技とか、色々ツラツラ挙げようとしたら――アザゼルさんに止められた。

何だか疲れたような顔をして頭を抑えているが……。

 

「結構聞き捨てならない言葉が幾つかあった気がするが……マジか?」

 

「?マジですが何か?」

 

「……それは、かなり大したことあると思うんだが……」

 

そんなことは無いだろう。

俺のスキルは所詮我流――なんちゃって、モドキ、それっぽいと言う形容詞が付く。

 

「――何で首を傾げてるのか、こっちが不思議になってくるが……先ず普通の悪魔払いは光剣や光弾の出力を自由に調整出来たりしねぇ」

 

「そうなんです?」

 

言われてみれば、俺は配布された通常の光剣や銃をよく壊していたから特注品を作って貰ったんだっけな。

まぁ、目指せシティーハンターだったからリボルバータイプが欲しかったのもあるし、光剣でエイィィメェェンッッ!!(巻き舌)したかったから出力の幅が効く光剣が欲しかった訳で。

 

「それとオーラで身体能力を強化するのは……まぁ、良いとして。相手の気配や強さを察知するとか、器用すぎるだろ」

 

「そうですかね?」

 

最初の頃は俺も特異かと思ったが、原作でも強敵が相手だと何となく強さを察する奴が居たりもしたし、珍しくない技能なんだと思っていたんですが。

 

「それに、魔力で視力を強化だぁ?そりゃあ人間にも多かれ少なかれ魔力はあるけどな……」

 

「大規模な魔法とかは使えないですよ?当たり前ですけど」

 

俺は魔法使いじゃないし、本職に学んだわけでもないですしおすし。

視力以外にも身体能力の強化も魔力で出来ると思う――オーラでやった方が効率良いからやらないけど。

 

「………そして何より!仙術ってなんだよ仙術って……それが本当ならお前、仙人ってことになるじゃねーか……」

 

「あくまでモドキ、なので。本式の仙人様のような術は使えませんよ?」

 

変化とか瞬間移動とかネ……某おき太さんや、某十本刀の彼とかみたいな縮地的なことは出来るようになったけど――。

……そういやぁ、おき太や大事じゃない方のノッブって結局FGOに採用されたんかね?

実装されたら、ぐだ子並みのガチャキチになっていた自信があるのだが……結局☆5はオリオンしか引けなかったしなぁ……我が生涯に一片以上の悔いしかない!!いや、アルテミス&オリオンのキャラは好きでしたけどね!!!

ラムちゃんと諸星君を端から見ているみたいで!!

 

「………」

 

「あれ?アザゼルさん?」

 

お前は何を言っているんだ……そんな顔で固まっているアザゼルさんだが……そんなに可笑しいかね?

これでも、原作の強キャラには遠く及ばないと思うんですが……。

 

「――よし、試してみるか!!」

 

「……はい?」

 

****************

 

――で。

 

「……えっと」

 

「……………」

 

『よっしゃ、準備は良いか?』

 

連れてこられたのはドーム状のだだっ広い空間……アザゼルさん曰く、戦闘訓練や神器の実験に使う場所らしい。

……それは良い。

アザゼルさん曰く、俺の発言が真実か試してみたいそうだから、此処に連れてきたそうだし――それは良い。それは良いんだ……大事なことだから繰り返し言ってみた――けどね?

 

「アザゼルさん……一つ質問が……」

 

『ん?なんだ?』

 

サウンドオンリーで聞こえてくる総督閣下の声に、イラァ……感を募らせる俺様。

だが、心を落ち着けて、尋ねてみる。

 

「此処に連れてこられた理由は分かりました……分かりましたが……」

 

俺は改めて眼前を注視する……目の錯覚じゃなければ、某ナイトメアフレームめいた鎧に身を包んだ御仁が――凄く……白いです……。

 

「この、目の前の御方は、何なんですかねぇ……?」

 

『いやホラ、いま手が空いててお前の相手が出来そうな奴って、俺とかコカビエルとか、バラキエル位しか居なかったんだけどさ――【殺す気かぁ!?】とか言ってお前さんが嫌がるからさぁ――』

 

あれ?何でやれやれ感出して言われてるわけ?

つーか、何で堕天使幹部限定なの?他の一般堕天使とか居るの知ってるんだよ俺?

そっちの相手でも手に余るかもなのに、馬鹿なの死ぬの?

 

……い、いや……百歩譲ってそれは良いとしよう。良くないけど良しとしよう。

 

でも――。

 

『なんで、ソイツに出張って貰った訳だな――ウチの秘密兵器だ』

 

「……敢えて言わせてもらおう」

 

『おう、言ってみな』

 

「――どう見ても白龍皇じゃねぇかコレェェェェエェェェェェッッッ!!!??」

 

どう見てもアルビオン的アトモスフィアを宿した、ルシファーさん家のヴァーリ君です本当にありがとうございました。

 

………アイエェェェェッ!?白龍皇!?白龍皇ナンデッ!!?

 

 

『なんだ?知ってんのか?』

 

「勉強したわ!!めがっさ勉強したわ此処でぇッ!!神滅具持ちが居るなんて聞いてねぇぞファッ○!!しかもコレ禁手化してんじゃねぇかあぁぁぁっ!!?」

 

……本当は原作の知識で知っていたのだが、此処で勉強したのも嘘じゃない。

俺って本来、興味あることから覚えようとする質なんで――あっ聞いてないですかそうですか。

――いや、いやいやいや、御免、本当にちょっと待って?

理解が追い付かないというか、理解したくないと申しましょうか……。

 

何、このオッサン真剣と書いてマジと読む勢いで殺る気満々マンな訳ですか?ホワァイ??

 

下手しなくても現・堕天使勢力最強をぶつけてくるとか――馬鹿なの死ぬの?

……俺が。

 

―――ジーザス。

 

『知ってるなら話は早いな。お察しの通りソイツは白龍皇――神滅具【白龍皇の光翼】――そのコピーだ』

 

「…………は?」

 

****************

 

――アザゼルさん曰く、堕天使陣営にはリアル白龍皇が食客的な扱いで在籍している――此処までは俺も知識として知っている。

 

――んで、その白龍皇ことヴァーリ君の協力を得て、彼の神器――神滅具【白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)】の研究、再現を行っているのだそうな。

 

『で、ソイツが着けているのがその研究の成果ってわけよ。ちなみに禁手化デザインなのは、その方がイカすってのと実際に装備としての性能を追求した結果だ。しかし悲しいかな、神滅具としての能力は再現出来なくてな……これは内包されるドラゴンの魂に寄るモノだからやむ無し的な部分はあるんだが……肝心の性能も本物には及ばないって有り様の――見た目良く出来たパワードスーツみたいなもんだ』

 

「このデザインがイカしてるのは全面的に認めますけどね?」

 

D×Dにおいて、二天龍の鎧は屈指の格好良さだと思う――が、何気に一番好きなのは件のアザゼルさんの【堕天龍の鎧】だったりする。

あのワルっぽいケレン味めいたデザインは最高にイカす――俺の右脇腹辺りのロマン袋がキュンキュンする。

 

……まぁ、それはそれとして。

 

「……つまり、この方は白龍皇本人じゃなくて只のソックリさんってことですか……?」

 

『まぁ、そうなるな』

 

何処ぞの瑞雲推し航空戦艦みたいな台詞を吐く総督閣下に、懐疑的な思考を向ける俺。

 

――原作でそんな話、聞いたことねぇぞ……いや、待てよ?

件の堕天龍の鎧――正確には人工神器【堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)】を造る際に白龍皇の光翼――というか、禁手化状態の【白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル)】を参考にしたとか何とか……。

 

い、いや……白龍皇の鎧と言うより、過去の二天龍の鎧を参考にしたんだっけ?

……つーか、参考云々は何かの二次設定だっけ……?

 

……駄目だ、大根が走り回ってやがる……こう言う時、原作知識をスパッと思い返せるオリ主勢が羨ましすぎるぜ……。

 

――まぁ、アザゼルさんが俺に何を望んでるのかは分かったし、目の前の相手が白龍皇本人じゃないってのは分かった――けどな?

 

「御高説はありがたいんですがねぇ……神滅具とか白龍皇とか抜きにしても――強い人でしょ、この人」

 

オーラから察するに、はぐれ悪魔とか眼じゃないレベルの強者だと思われる――やっぱり殺る気満々マンだろ、あのオッサン……。

 

『心配しなくても、ウチの幹部が中に居まーす……なんてオチはないから安心しな。それに本当に無理そうだったらギブアップしても良いしな』

 

「――本当ですね?」

 

『堕天使総督、嘘つかない――少なくとも、人様から預かっているガキんちょに無理難題押し付けたりしねーよ』

 

嘘だッッッッッッ!!!!!……って、声高らかに叫びたかったが――。

 

『……あー、時間も圧してるし、説明はもう良いな?じゃあ模擬戦始めるぞー』

 

「ちょ、まっ―――ッ!?」

 

アザゼルさんの開始の合図に抗議をしようとして――寒気を感じ――。

 

視線の先には、此方の懐に飛び込んでくる白い閃光が――。

 

刹那――轟音が響き渡った……。

 

****************

 

「おいおい、マジかよアイツ……」

 

モニタリング室で一部始終を見ていたアザゼルは、思わず唖然とした表情を浮かべた。

 

それもその筈――知り合いから預かった悪魔払い、フリード・セルゼンの力試しという御題目で行われた模擬戦……相手役が【開始の合図を待ちきれず】に飛び出したのもそうだが――。

 

接敵したと思った次の瞬間、轟音が響き――拳を突き出すフリードと……壁面に吹き飛び衝突する白龍皇の姿があった――。

 

その結果に唖然としたのはアザゼルだけではなく、その結果を弾き出したフリードも、恐らく白龍皇の鎧を纏った人物も――。

 

「ヒュー♪ありゃあ崩拳だな――かなりの功夫と見たね」

 

「美猴じゃねーか……何処から湧いてきやがったんだ?」

 

「酷い言い種だねぇ……俺っちは面白そうなことしてるって聞いたから、ちょいと顔を出しただけさ」

 

モニタリングルームの入り口から様子を伺っていた中華風の出で立ちに身を包んだ偉丈夫。

名を美猴と言い、当代の斉天大聖――つまり孫悟空である。

 

「見世物じゃないんだが……まぁ、良いか」

 

「アイツが、いま噂の新入り君かぁ……中々どうしてやるじゃないの」

 

「あぁ、想定以上だなこりゃあ……【アイツ】に一撃入れるなんざ普通の人間には出来やしねぇ――だが」

 

『―――――ッ!!』

 

モニター越しにも伝わる、喜悦に塗れた闘気――。

 

「……あ~、こりゃあ少しマジになったみたいだねぇ……」

 

「……ったく、仕方ねぇな……まぁ、能力は使うなって言っておいたし――フリードの奴が少し強いくらいじゃあアイツもムキになりゃあしないだろ……多分」

 

「ん?能力使うなって……何でよ?」

 

「ハンディキャップだよハンディキャップ。あくまで今回はフリードの奴がどれだけ【出来るか】を試す為のモノだからな……単純な実力やらを測る為に地力だけで相手してやるように伝えた」

 

「……俺っち思うんだけど、そういう手心的なモノを考えるなら他の奴に頼んだ方が良かったと思うんだけどねぇ」

 

美猴は知っている――あの白い鎧の主は、加減が出来るだけの技量の持ち主ではあるが……闘争本能に火が着き、相手が強者だった時には行き着く処まで行こうとする気性の持ち主だと。

 

「仕方ねぇだろ……俺や他の奴が相手してやるって言ったらフリードの奴が嫌だって言いやがるし」

 

「それだったら俺っちに言ってくれりゃあ、幾らでも相手してやったのに……」

 

「俺もお前辺りが良いんじゃないかと思ったがな……何処から聞き付けやがったのか、アイツから相手役を志願してきたんだよ――」

 

等と語っている内に、白龍皇(仮)は壁面を蹴り飛び出した――その速度は先程のそれを凌駕していた。

 

『ちょ、まっ、ぎょわあぁぁぁぁぁっ!!?』

 

しかし、フリードはそれに対応――絶叫しながらも襲い来る拳や蹴りを受け流していた。

 

「ありゃあ卦徑だねぇ……見事なもんだ……」

 

「また中国拳法って奴か?」

 

腕をいなし、払い、受け流す――その様は流麗と言っても差し支えない。

……本人が涙目で絶叫していなければ――だが。

 

『む、無理無理無理無理!!!ギ、ギブアッ、ぬぇっ!!?』

 

降参の意を示そうとするフリードに、無慈悲な蹴りが放たれる――普通の人間が当たれば首ごと吹っ飛びそうな一撃は、辛うじて上体を後方にスウェーすることで回避。

 

その勢いのまま、バック天の要領でオーバーキックを狙う。

 

お返しとばかりに放たれたそれは、バックステップで難なく躱される。

 

――が、フリードもまたそのままバック天で距離を取り――。

 

『だか、だから俺はギブっちょっ!!?』

 

体勢を建て直して降参宣言をしようとした処を、再び急襲された。

 

「……ありゃあ、ギブアップさせる気ねーな」

 

「まぁ、そうなるだろうねぇ……」

 

文字通り他人事な二人は、あっけらかんと語る。

少しとは言え、火が着いたのだ――つまらない終わらせ方をしたくないのだろうと悟る。

 

「……いざとなったら止めに入るぞ」

 

「大丈夫じゃなかったのかい?」

 

「――不安になってきた」

 

アザゼルとしても、信じて預けられた若人を潰されるのは本意では無く――先程宣言した言葉は嘘偽りない事実なのである。

 

「りょーかい――けどまぁ、まだまだどうなるか分からなそうだけどねぇ?」

 

「何……?」

 

***************

 

「クソッタレェェェェェッ!!!」

 

悪かったよ!!最初に綺麗に一発入った時、(あれ?俺ってもしかして強い……?意外にイケてる――?俺TUEEEEEE展開キタコレ!)とか一瞬でも思ったのは謝る!!

だからもう勘弁してくれえぇぇぇっ!!!

 

怒濤の連撃――その一発一発が鋭く速い上にクッソ重い。

 

オーラで肉体を強化しているから、一発二発喰らっても致命傷にはならないかもしれないが――絶対に痛い。絶対に怯む。

 

そんなんなったら……!!

 

「フッ!!」

 

「イィッ!?」

 

時々繰り出されるこの殺人キックで、一瞬で意識を跳ばされる――だけじゃ済まないだろうなぁ……。

 

辛うじてしゃがみ込んで、髪の毛数本を犠牲に直撃を避ける。

 

――って。

 

「ワッショイッ!!!」

 

恥も何もかもをかなぐり捨てて横に転がって回避!!

次の瞬間には無慈悲な踵が元いた場所に落とされる!!理不尽ッ!!

 

何が理不尽って……。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

「………」

 

これまでの攻防で、息が乱れる俺に対して向こうは息なんて乱れていやしねぇ……それどころか余裕すら感じやがる。

 

言っとくけど、俺だってこのくらいの運動量で疲れる様な柔な鍛え方はしてないぞ?

なのにこれだけ疲れるのは――相手が殺る気満々で攻めてくるからだ。

正確に言うと、死んでも構わないって感じか……模擬戦じゃねーのかよクソッタレめ――。

 

こんなの、最初にはぐれと戦った時以来の……いや、それ以上のプレッシャーだぞ……。

 

「――やれやれ、もう息切れか?つまらないな」

 

「――あ?」

 

距離を取り呼吸を整えようとしていたら、今まで口を開かなかった白龍皇モドキさんが語り出した。

 

「少しは出来るかと思ったんだがな……やはりこの程度か。もう少し楽しませて欲しいものだな」

 

「……勝手なこと、仰りますねぇ……こちとら、一杯一杯だっつーのに……」

 

何だか知らないが、チャンス到来!今の内に呼吸を整える――しかし、気のせいか、この声何処かで聞いたような……?

 

何かの引っ掛かりを覚えたが、酸素不足と、楽しませろという目の前の奴に微かな苛立ちを覚えたので、頭が上手く回らない――落ち着け、落ち着けよ俺……。

 

「フッ……前言撤回しよう。さっきは直ぐに降参しようとしていたのに、今はその気が無いな?」

 

「ハッ、降参しようとしたらアンタが邪魔してくるんでしょうが……」

 

俺は何処ぞの戦闘民族野菜人じゃねぇ……これまでそれなりの修羅場を潜ってきたつもりだが、戦いが楽しいなんて思えなかった――。

いつだって恐怖が付きまとったし、最初は自分が傷付くことが嫌だったから、ただ死にたくないから鍛えた。

 

「――面白い、まだまだ楽しめそうだな……」

 

平穏が欲しかったし、この世界において力があって困ることは無いし――何より、だ。

 

「ほざけよ――吠え面かかせてやる」

 

――仲間が、人が、同じ様に傷つけられるのが嫌になった。

はぐれ悪魔の犠牲になった人を見て、その気持ちが益々強くなった。

信仰し、誰かを助けていく内に、かつて尊いと思いながら、諦めていた理想を追っ掛ける様になった。

 

――誰もが、見て見ぬふりをするような悪に立ち向かう正義の味方(ヒーロー)……。

 

理不尽に抗う、無辜の人々を救う英雄――。

 

物語の英雄たちに並べるなんて思っちゃいない……それでも、今の俺ならその背中に手を伸ばすくらいなら――出来るはずだって……だから。

 

 

「なら、試してみるといい――」

 

堕天使だろうが悪魔だろうが、理不尽に屈する訳にはいかない――それをしたら、憧憬に手を伸ばすことすら許されなくなっちまう――!!

 

「コオォォォォォ――ッ」

 

オーラを練り上げる――オーラを高める――そして、呼吸を……変えるッ!!

 

「ほう……」

 

「――行くぜ、白カブト野郎ッ!!」

 

出し惜しみは――しねぇっ!!!

 

俺は一歩を踏み込み、【音を越えた】――。

 

***************

 

「ぐっ!?」

 

彼がそれを防げたのは偶然か……否。

彼の類い稀なる戦闘センス、本能がそうさせたのだろう。

 

目の前の相手が消えたと思った瞬間、咄嗟にガードした腕に衝撃が走った。

その威力に弾き飛ばされるも、踏み止まる。

 

(くっ……この威力は、何だ……?)

 

速度、重さ、破壊力、それらが向上しているのは間違いない。

しかし、それ以外にも何かの要因が威力の向上に直結している――。

 

「シィッ!!」

 

「ッ!!」

 

斜め後ろから襲い来る蹴撃、それは先程の彼が放った蹴りと遜色の無い鋭さを伴っていた。

 

「ハハッ、良いぞ!!」

 

首筋辺りを狙って放たれたソレは紙一重で避け、懐に掻い潜りアッパー気味の拳打を見舞う。

 

「――ぐぎっ!!」

 

ボディーに放たれたソレは、蹴りを放った直後と言うこともあり直撃する。

しかし、フリードは弾き飛ばされるも踏み止まり、再び一歩を踏み出す。

 

(――堅いな、まるで鉱物を殴っている様だ……面白いな……!)

 

その姿は再び消え失せ、疾風を超え、音を越える――が。

 

「――だが」

 

「ぬあっ!?」

 

音速を超えた筈のフリードに、拳が叩き込まれるが――済んでの処で身を捻り、直撃を避けた。

 

「今のは惜しかったな――」

 

「おいおい、マジですかこの野郎……」

 

その勢いのまま距離を取ったフリードを悠然と見遣る彼。

 

(驚異的な速さだが……微かに慣れてきた。次は返せるか――?)

 

(冗談だろ……我流とはいえ、縮地をもう見切ったっつーのかよ……チート過ぎんだろコイツッ!?なんちゃって白龍皇でコレなら、本物は――って、考えたくもねぇが……)

 

互いに冷や汗を浮かべる――白カブトはフリードの想像以上の力量に、フリードは縮地を破られたことに。

 

(……けど、アザゼルさんの言ったことは本当みたいだな)

 

確信と共にフリードは息を整え、再び踏み込み――その姿を消す。

 

「ワンパターンだな――フッ!!」

 

動きを見切り、カウンター気味に拳を叩き込む。

 

(捉えた――なっ!?)

 

見切って一撃を見舞った彼が捉えたソレは、手応え無く貫通し――掻き消えた。

 

「色即是空――」

 

「ッ!!」

 

咄嗟に声のしたほうへ蹴りを放つ――が、人影は揺らぎ掻き消えた。

 

フリードの姿は現れては消え、現れては消え――やがて、無数の残像を生み出す。

 

(全く……何が一杯一杯だ。つくづく楽しませてくれるッ!!)

 

仮面の奥で獰猛な笑みを浮かべながら、コレだけの強者と巡り会えたことを感謝した。

フリードを連れてきたアザゼルに、此処まで力を磨きあげたフリード自身に――何だったら彼を産み出した世界に、神にすら感謝しても良い気さえもした。

 

そして――。

 

「ソコだっ!!」

 

残像が飛び交う中、己が本能に任せて振り抜いた拳は――その姿を確実に捉えた……かに見えた。

 

「っ!?」

 

(コート――だと……!?)

 

それはフリードの着ていたロングコート――破壊力を伴った拳はコートを打ち抜き、爆散させた。

 

――しかし、そこにフリードの姿は無かった。

 

(奴は――っ、上かっ!!)

 

咄嗟に上を見上げる――そこには天井スレスレまで跳躍するフリードの姿がそこにあった。

 

(大した跳躍力だ――しかし、空中では身動きがとれないだろう――失策だな)

 

彼の総評として、フリードの力は人間離れしていると判断した。

だが、人である以上はどうしても逆らえないルールがある。

 

――人は独力では空を飛べない。

 

それこそ機械や、神器の力でも無いことには――。

悪魔や堕天使ならば、自分の翼がある――そうでなくとも、彼の纏う鎧の元来の名は【白龍皇の光翼】――空中戦で負ける道理は無い。

 

そう思い、迎え撃とうと飛翔しようとした時――。

 

「何……!?」

 

ドンッ!!!という激音と共にフリードが掻き消える――。

 

(天井を蹴ったのか――だが、その動きは見切っ――なっ……!?)

 

 

「ドゥエッ!!」

 

「ぐぅっ!!?」

 

一瞬眼を見張ったが、直ぐ様思考を切り替え回避……したら、フリードはあろうことか空中を【蹴って】軌道修正し更に加速。

 

痛烈な蹴りを見舞う。

 

咄嗟にガードすることには成功したが、その威力は響き渡る轟音からも察することが出来ようモノ。

腕の芯にまで響く傷みに、彼は一瞬顔を顰めたが直ぐ様反撃に転じようとするが――この僅かな逡巡を若き悪魔払いは見逃さなかった。

 

「ドゥエドゥエドゥエドゥドゥドゥドゥドゥドゥ――ッ」

 

「ぬぐっ、ぐぅっ!!?」

 

けりの反動で跳躍、空中を蹴って蹴りを入れる――まるで空中で跳ね回る様な変態的軌道――。

ソレは蹴るごとに速さを増していき、一撃一撃が重い。

 

僅かな隙も無いソレは捕まえようとしても、迎撃しようとしても容赦なくクリーンヒットを貰うだろうと、そうなれば一気に流れを持っていかれると悟ったのだ。

 

実力者である彼をして防ぐのがやっとという状況に追いやってしまった。

 

そしてやがて――。

 

ピシリッ――微かな異音が響き――。

 

「ドゥエッ!!」

 

「グッ!?」

 

ガードを崩すと共に甲冑の手甲部を破壊――更に高く跳躍――その足に山吹色の輝きを灯し。

 

「ドゥエッ!!!」

 

「チィッ――!!」

 

間一髪、白龍皇の翼を広げて斜め上方へ飛翔――そして見た。

手足だけではなく、フリードの全身に山吹色の輝きを宿しているのを。

 

(あれは……光力?いや、違う――)

 

光力の様に、苛烈な光では無い。

温かく、遍くを照らす――太陽の様な輝き。

――悪魔にとっては、どちらも唾棄したくなるようなモノであろうが。

 

「……ッ」

 

(――まぁ、そうなるだろうなっ)

 

フリードは躊躇い無く、縮地による跳躍――空中を蹴って加速。

一瞬で間を詰めて来た。

 

破損した手甲を復元した彼は、それを嬉々として迎え撃つ。

 

(……確かにこの白カブトは強い。けど、本物には劣る――アザゼルさんの言う通りだ……悔しいけど)

 

「……三歩ォッ!!!」

 

「な、ぐあぁっ!!?」

 

3回目、空中を蹴り――遂には白カブトの彼の認識を超える。

 

山吹色に輝く、破城鎚の様な一撃が腹部に炸裂していた。

パワー+速度+謎パワー=破壊力と言う、冗談の様で冗談にならない一撃は無視できないダメージを白カブトに与えた。

 

(動きが読める……見切れる。多分、俺でもギリギリ対処出来る奴を見繕って連れてきたんだな――意地が悪過ぎるぞオッサン!!)

 

悶絶しているであろう白カブトを余所に、そう考えるフリード。

 

――相手が強者であり、降参を許さない姿勢や、恐らく戦闘狂染みている点と合わさり変なテンションになっているフリード。

 

……そもそも、その実力を計る為の模擬戦であるのだから、実力に合わせた相手など――それこそ気でも読めなければ用意できないのだが――ソレすらも思考の外らしい。

 

「――こ、のッ」

 

「ッ、させるかよっ!!」

 

反撃を試みようとする眼前の存在に、そうはさせじと先手を取るフリード。

 

密着状態のまま更に空中を蹴り、体当たりの要領で押し込む。

 

「肘打ち!!裏拳正拳ッ!!トオリャァァァァァッ!!!」

 

言葉通り、肘打ち、裏拳、正拳、更には蹴りや膝打ち――乱拳乱蹴乱撃を見舞う。

 

「がっ、くっ、ち、調子に、乗るなっ!!!」

 

「キャオラァッ!!」

 

白カブトの拳とフリードの拳、互いに激突し――弾かれる。

 

「チィッ……!!」

 

白カブトは空中で制動、天井ギリギリで止まり。

 

「キャット、空中、3回転っと……!」

 

弾かれたフリードはくるくる縦に回りながら床に着地――ちなみに3回転以上している。

 

「ハァ……ハァ……フゥ……」

 

白カブトは息を整える――先程とは真逆、看過出来ない程度にはダメージを受けている。

 

(………)

 

(……あぁ、そうだな。もう、良いだろう――)

 

鎧は所々ひび割れや傷だらけ――これはまだまだ修復が効く。

しかし、中身はそうはいかない。

故に、彼は決意する――。

 

「ッ、来やがったなっ!」

 

 

型紙破り、強者への礼儀として――力を見せると。

 

フリードは飛来する白カブトの動きを読み、迎撃しようと構え――崩拳一発。

 

強烈な震脚と共に放たれたソレは、直撃すれば確かなダメージとなるだろう。

しかし、ソレは――。

 

(その距離は間合いの外だ――何を考えている?)

 

伸びきった所で届かない、間合いを読み違えたテレフォンパンチ――白カブトの怪訝な思いを余所にソレは鋭く振り抜かれ――。

 

(――もっと驚いて貰うぜ)

 

不敵に笑みを浮かべてフリードは高らかに告げた――。

 

「ズーム・ポン・パァンチッ!!」

 

「なん……ッ、チィッ!?」

 

――腕が伸びた。

 

目の錯覚で無ければ、間合いの外へと伸びてきたのだ。

避けるのが間に合わず、ガードする白カブト。

 

そして、そのカラクリを見極める。

 

(腕の関節を外して、リーチを伸ばした……だと!?無茶苦茶やってくれる……!!)

 

(防がれた――!!だが、そりゃあ必要経費!想定内だぜっ!!)

 

装甲をガリガリ削られる――案の定山吹色のオーラを纏った拳は鎧を通してダメージを通していた。

 

しかし、この白カブトは止まらないだろうと――短い時間の内にフリードは悟っていた。

故に、突っ込んで来たところを渾身の一撃でシメる。

 

伸ばした腕を引き戻す動作と共に、ソレを叩き込もうと構え――。

 

『Divide!』

 

その声は聞こえてきた――。

 

「……は?」

 

ガクンッと、身体の力が抜ける――漲っていたモノがスルリと抜け落ちる感覚――。

 

まるでキッカリ半減した様な……。

 

(半減……Divide――ディバイド?ソレって神滅――えっ、つまり本も――あぁ……通りで聞き覚えがある声なわけだ――)

 

目紛るしく流れるように高速で思考が流れていく中、フリードが目にしたのは――眼前に迫り来る、渾身の力やら魔力やらが込められているであろう【白龍皇】の拳であった。

 

「……マジですか」

 

真顔でそう呟いた瞬間、彼と白い閃光は接触――耳を劈く様な撃音が響き渡り……拳を振り抜いた姿で静止する白龍皇――そして、壁面に吹き飛び……衝突し、めり込む様に静止していた――奇しくも両者のファーストコンタクトの逆回しの如く。

 

ふと、フリードが壁面からゆっくり離れる――。

 

「……ッ」

 

ソレを見て白龍皇も一歩を踏み込もうとして――。

 

「そこまでだ、ちぃとばかりやり過ぎだぜ?」

 

「まぁ、こうなる気はしてたけどねぇ……」

 

観戦者だったアザゼルと美猴が止めに入った。

それと同時に、ゆっくりと……フリードは倒れ込んだ。

 

ドシャリと――糸が切れた人形の様に。

 

「――ッ、もっと早くに止めてりゃ良かったぜ……すまねぇが美猴、フリードの奴を医務室に――」

 

「――ガハッ……!」

 

「ヴァーリ……!?」

 

アザゼルが後悔を滲ませながらも、美猴にフリードを任せようとした時――【ヴァーリ】と呼ばれた白龍皇の鎧を纏った者は膝をついた。

脇腹の部分を抑えており、その部分の装甲と衣服が物の見事に弾け飛んでいた。

 

すると、纏っていた白龍皇の鎧が霧散していき――中からは顔立ちの非常に整った青年が現れた。

――口から文字通り血反吐を吐き、満身創痍を体で表す状態であったが。

 

「……流石のヴァーリも、あんだけ貰えば効いてたのかい?結構イイのも貰ってたもんなぁ」

 

「そうじゃ、ないさ……確かに、ダメージは……蓄積していたが……ゴフッ……決定打は最後の瞬間――」

 

美猴は驚きを隠さないで尋ねた。

 

ヴァーリは息も絶え絶えにソレに答える……苦痛と、愉しさで歪んだ顔を浮かべながら。

 

「奴は、攻撃を避けられないと見るや……反撃に転じたのさ……内臓を、やられた――フフッ、あんな攻撃、初めて喰らったな……」

 

「ったく……説教の一つでもしてやろうかと思ったんだがねぇ……後回しだなこりゃあ――美猴、コイツら治療室に連れてくぞ」

 

「あいよ、俺っちはこの――フリードだっけ?コイツを運べば良いわけね」

 

よっ、と声を出してフリードを担いでその場を後にする美猴。

 

「そら、肩を貸してやんよ」

 

「いらない世話……と言いたいが、その言葉に甘えておくと、しよう――」

 

(……それだけダメージ負ってるってことね)

 

普段はこんな申し出は突っぱねるヴァーリだが、素直にアザゼルに肩を預けた。

ソレはダメージが理由でもあったが――言っておきたかったからだ。

 

「感謝するぞ、アザゼル……」

 

「あ?なんだよ急に?」

 

「アイツは、まだ力を隠していた……余力を残していた……あれだけの強者と、巡り合わせて、くれて……これで、俺は…………」

 

「……っとと、気ぃ失っちまいやんの」

 

全ての言葉を告げる前に意識を落としたヴァーリは――何処か満足そうな顔をしていた。

 

「――勝手に首を突っ込んできたんでしょうがお前は……ったく、こんな筈じゃなかったのにねぇ」

 

そうボヤきながら、アザゼルも歩を進めた。

 

(力を隠していた、か。神器も持ってない筈の人間が……あれだけの力を持つなんてな。天賦の才――って、だけじゃあ説明出来ないよな……でなけりゃ英傑の器ってか?にしたって、どれだけ苦行を詰めば……ニコルよ、お前さんが心配する気持ちも――分からなくはないぜ)

 

アザゼルの脳裏には、知己であり、フリードのことを案ずるが故に自身に相談を持ち掛けた、年老いたお人好しの司祭の姿が過ったのであった――。

 

**************

 

と、まぁ――そんな顛末があった訳だが。

 

「……俺はソックリさんだって聞いていたんですがねぇ?ソレがご本人でしたとか、笑えないですよねぇ?馬鹿なの死ぬの?」

 

「だから、悪かったって……何度も謝ってるだろぉ?それに、ああでも言わなきゃやる気にならなかったろ、お前」

 

「当たり前でしょうが!!知ってたら速攻ケツ捲くりますよ俺ァ!!」

 

謝って済むなら警察も憲兵もいらんわいっ!!

ご本人と分かった時の絶望感!!分かる?分かって戴ける?

 

ドッキリとか、物真似歌合戦とか、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ!もっと恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ……。

 

「あの後、意識を取り戻してから何があったか分かります……?」

 

「あぁ、お前さんとヴァーリが同じ治療室で目ぇ覚ました時な――あの後、ヴァーリより早く回復したんだよなぁ……お前、やっぱり人間辞めてない?」

 

「――そんなことはどうでも良いんだ、重要なことじゃない」

 

そんなもん、波紋とか気功術とか掌仙術とかで何とでもなるんじゃからな!

 

「……あの後、ヴァーリさんはなぁ――目を覚ました俺に挨拶もそこそこにこう言ったんだ……『次ヤる時は、全霊を持って相手になろう』って――つまり、『次は手加減抜きで全力で潰す、調子に乗るなよ人間』ってことでしょ?確かに本物だって分かった時、あのクサレ総督殴ッ血KILLわとか、あの総督マジぶっころっしょ?とか思ったのと一緒に、白龍皇相手にも俺の力はソレなりに通じるんだとか、勘違いも甚だしい甘ちゃんのーたりんでミルクセーキにマシュマロ入れて食ってそうないじけ虫思考でしたけどもよ?勘弁してくださいって話ですよっ!!」

 

「――アレはそう言う意味じゃねーと思うが……つーか、何気に物騒なこと言ってるよね?」

 

言うならば、阿部さんにや ら な い か ?される程の恐怖――このD×D界の高田 淳○には分かるまいっ!

因みに阿部さんはホモォ……ではなく、バイであるのはあまり知られていない事実――って、どうでも良いんだよそんなことはっ!!

 

「しかも、回復してからも暇があると模擬戦とは名ばかりの死闘に拐われるんですよ!?イジメか!?イジメなんかっ!?」

 

「それは……御愁傷様としか言えねぇが……」

 

「御愁……っ、他人事だと思いやがっ――って!?」

 

この気配はッ!!?

 

「……何で入口の横に張り付いてんだ?」

 

「しぃっ!!静かに……!!」

 

俺は芋虫……ハエ……いや、蚊――ダニ、ダニ以下の存在だ……ダニ以下の存在感まで気を抑えるんだ――オーラ・シャット・ダウンッ!!!

 

「――アザゼル、居るか?」

 

「――おう、ヴァーリか。どうした?」

 

「フリードが戻ってきたと聞いたが、こっちには来ていないか?」

 

――チャンスは今しかない!!これは戦略的撤退!!後ろに前進するだけだ!!――要するに逃走するわけですが常考。

とにもかくにも、スタコラサッサだぜー……!

 

**************

 

「フリードなら「待て……そこかっ」――はっ?」

 

「ゲェッ!?」

 

俺がフリードの居場所を教えてやろうとしたら、ヴァーリの奴が何もない場所に視線を向けた。

 

そこには部屋の入口から出て、今まさに駆け出そうとしていたフリードの姿があった。

――いつの間に移動しやがった?ちっとも気付かなかったぜ……。

 

「相手の気配を感じ分け、読むか――コツを掴めば簡単だな」

 

「―――加速装置ッ!!!」

 

あっ、消えた。

 

「――邪魔したなアザゼル」

 

ヴァーリも消えやがった……。

……そういやぁ、カメラが設置してあったよな……えーと、モニターのスイッチは……と。

 

『ふっざけんな!!何で縮地使ってんだアンタ!?教えた覚えはねぇぞコラァ!!!』

 

『見て盗んだ――まだ完璧ではないが』

 

『○ァックッ!!!何処の一子相伝の伝承者だ!?クソチーターがっ!!』

 

幾つかのモニターには画像と音声とが映り、その中でフリードとヴァーリが現れては消え、現れては消えしてやがった――スゲェな、パッと見ワープじゃねぇか。

ヴァーリは自分の言うように完璧じゃないのか、消える度にドンッという音がなったりフリードから徐々に距離を離されている様だ。

 

『よしっ、このまま逃げ切り――『そうはいかないんだなぁ』ゲェッ!?関羽ッ!!?』

 

前方に現れたのは美猴の奴だ。

 

『関羽じゃなくて孫悟空なんだよなぁ。悪いねぇ、ヴァーリに頼まれたもんでね――俺っちも付き合うから楽しい修行と洒落込もうぜ』

 

『だが断る!!』

 

再びフリードは消えるが――。

 

『そこだねぇっ!!』

 

『シュワッチ!!?』

 

美猴は如意棒を斜め上に突いた――するとフリードが姿を現し、後方に避けた。

 

『俺っちはヴァーリ以上に気の扱いが上手いみたいでねぇ?お前さん程じゃないが、気配を読むことはもう完璧ってわけよ』

 

『――だったら、【二歩】以上で捉えられない領域ですり抜け『捕まえたぞ』ッ!!?し、しま――』

 

『Divide!』

 

後ろから追い付いたであろうヴァーリに肩を捕まれ、色々と半減されたであろうフリードは一瞬ぐらつく――その一瞬の隙にヴァーリと美猴に両脇を固められてしまった。

 

『は、離せーッ!!ジョッカー!!ブッ飛ばすぞぉぅ!?』

 

『ほう、それは楽しみだ』

 

『――あっゴメンナサイやっぱ今のなしで』

 

『ったく、何で逃げるかねぇ――キツい修行が嫌ってわけじゃないんだろ?』

 

『お前はお前の技術を、俺は魔力の使い方、美猴は仙術や拳法を教え合う――ギブ・アンド・テイクで納得していただろう?』

 

『毎回毎回修行から死合にシフトチェンジするからだろうがっ!!俺は戦い大好きッ子じゃねぇんだよぉ!!』

 

『まぁまぁ、ヴァーリがやり過ぎそうになったら俺っちが止めてやるから――いつもそうしてるだろ?』

 

涙目で訴えかけるフリードをヤンワリと美猴が諌めてやがるが――。

 

『その一歩手前位までは追い込まれるんだっつーの!!その前に止めろっつーのッ!!』

 

『悪いねぇそれ無理だわ。だってそこまでやらなきゃ修行にならないでしょ?』

 

『ぐぬぬ……ああ言えばこう言いやがって……こちとらか弱い人間様なんだぞチクショウ……』

 

……ということらしい。

フリードの奴が嫌がってんのは確かだが、何だかんだで力を付けているのも確からしいから、ああやって説得されたら折れるらしい。

 

まぁ、ヴァーリと美猴も含めて、目に見えて力が付くのが楽しいんだろうな――いやぁ、若さだねぇ……。

 

『そう言えば、お前は光力をある程度自在に扱えるんだったな――喜べフリード、コカビエルの奴が暇そうだったから呼んでおいてやったぞ』

 

『!?ヤメロォー!!ヤメロォー!!シニタクナーイッ!!シニタクナァーイッ!!!』

 

今度はフリードも全力で抵抗するが、悲しいかな力やらオーラやら半減されているだろう状態ではあの二人を振り払えない様で、そのまま引き摺られていった。

 

しかし、コカビエルの奴がねぇ――ヴァーリ以上にこう言うことはやりたがらねぇタイプの筈なんだが……茶番だ何だとか言って。

 

それとも、溜まったフラストレーションを発散する為かねぇ――上手いこと組み合わさってるんだと、思いたいが……。

 

「……やり過ぎねぇ様に、様子見に行きますかねぇ」

 

――決して面白そうだとか、面白そうだとか思っている訳じゃねぇ――楽しそうだから俺も仲間に入れて貰おうとか、事務仕事めんどくせぇとか微塵も思ってなんかいないぜ!!

 

「アイツらだけでも不安なのに、コカビエルまで絡んだら此処が滅茶苦茶になっちまうかもしれないし、これも堕天使総督の務めって奴だな。おお、辛い辛い……」

 

――ちなみにその後、アイツらの所に行こうとしたらシェムハザの奴に見付かって事務仕事に逆戻りとなった俺様であった――しかも仕事量増やされた……アイツ、実は堕天使じゃなくて悪魔じゃねぇのか?

 





可愛い女の子とのフラグだと思った?野郎だよっ!!

悲報:ヴァーリ君を筆頭に魔改造フラグが立ちました。

それはそうと、遂にFGOの課金の封印が溶けられました(誤字にあらず)――お正月の星5確定有償ガチャに踊らされて。

その時は文明破壊ガールとチンブレガールがやってきました――山村氏がくま吉っぽく大喜びしてました。
アルテラちゃん、僕らのアイドル叔父上を叔父|上にしたので苦手でしたが……何あの可愛い生き物?
めっちゃ撫でくりまわしたくなりましたぞ。

残り?フランちゃん来た位で、後は海藻や格好いい剣やルービックキューブが一杯でしたが何か?(´;ω;`)

コラボは賛否両論――というか否が多い感じでありますが、ヒロインXが許されるなら個人的に何でもありな気がしますマン(´ω`)

そも、二次創作SSなんて嗜む身としてはむしろワクワクしているわけですが……(0゚・∀・)wktk
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