レイト 「3ヶ月も・・・・・、許せねー! 早く助けに行こうよ! 補給に戻ってる場合じゃないじゃん」
エイジ 「・・・・・、一緒に行ってくれるのかよ! お前、フィエの仲間じゃねーんだろ?」
レイト 「オレはあのババアにさらわれたわけでも、フィエさんの仲間でもないけれど、今はエイジの仲間だ!」
エイジ 「・・・・・、やっぱ変わってるぜお前♪」
レイト 「エイジこそ、見ず知らずの行き倒れを、感動した! で助けてるじゃん♪ そんなバカは3秒で野垂れ死にだって父ちゃんが言ってたもん」
エイジ 「ハハハ♪ 野垂れ死にか、そうだよな、ハハハ・・・・・」
ものすっごいスピードでかっとぶバギー。
レイトの視界に、砂漠のトレーダーキャンプが見えてきた。
そのキャンプを目前にして、バギーはゆっくり停車した。
そして、おもむろなエイジ少年に、勇者は砂漠に引きずりおろされるのだった。
エイジ 「ここに「たっつぁん」って人がいる、ハンターになりたいんなら尋ねてみるといい」
レイト 「何言ってるんだ、俺も行くよ!」
エイジ 「ハハ♪ ありがとな、けどダメだ」
レイト 「何でだよ! 仲間だろ!」
エイジ 「ナマ言うんじゃねーよ、ガキが! まともな装備もねえくせに。 お前を連れて行っても足手まといになるだけだ」
レイト 「なんだよ! エイジだってガキだろ!」
エイジ 「ここでお別れだ、レイトに出会えて良かった。 達者でな」
レイト 「ちょっと待てってー!」
エイジ 「このご恩は一生忘れません」
レイト 「だから、それはこっちの台詞だよー」
キャンプまでは500m、エイジのバギーは猛烈に加速してキャンプの中に消えていった。
レイト 「待てよ! 待てってぇ! エイジイィィィィィ!!!!!」
レイトは、走った!
だが、トレーダーキャンプにたどり着いたとき、すでにサンドバギーは補給を終えて出撃していた。
大型トレーラーを有するこのキャンプには、若い、独立系のトレーダー達がチームを組んでいる。
独立系と言えば聞こえがいいが、家族や親族、義侠で繋がっているトレーダーにとってそれは、ハグレ者、あぶれ者を意味していた。
受け継がれる権益や権利も無く、割の悪い仕入れ、割高のショバ代、同業者からの連絡網は後回し。
当然、そんな商人をひいきにする客は少なく、オフィスからの信用度も低い。
どうしても客質も悪くなるのだった。
レイトはとりあえず、一番近いところのキャンプに駆けこんだ。
レイト 「あの! たっつぁんはいらっしゃいますか!!!」
トレーダー 「らっしゃい、タツならその向こうの黄色いテントに居るんじゃね?」
無愛想なトレーダーだった。
敵意を感じるほどではないが、客商売には向かない系のこわもてお兄さんだった。
レイト 「ありがと!」
再び、レイトは走る!
そして、黄色いテントに駆け込んだ。
レイト 「たっつぁぁぁぁぁん!!!」
トレーダー 「・・・・・」
こっちのトレーダーも無愛想だ。
レイト 「あ、あんた、たっつぁんだろ!」
タツ 「申し訳ありません、お客様。 本日はこれで店じまいなんですが・・・・・」
レイト 「今ね、今! 今、来たでしょ!」
タツ 「どうぞ、お帰りください、またのお越しを・・・・・」
レイト 「今、エイジが来たでしょー!!! どこに行ったんだよぉぉぉぉぉ!!!」
タツ 「お前、エイジの知り合いか!」
タツ 「・・・・・、行っちまったよ、あいつ。 一人で」
たっつぁんは、やりきれない表情を浮かべていた。
顔は怖いが、良い人そうだ。
レイト 「どこに行ったか知ってるのか! 教えてくれ、教えてくださいよ!」
タツ 「教えろだと!」
たっつぁんはレイトをじっと見つめる。
どう見ても、ただの子供だ。
貧弱で、ぼろを着て、ろくな装備も持っていない、どうやってこんなところまでやって来たのだろうか?
タツ 「もしかして、助けに行く気じゃねーだろうな?」
レイト 「そうだよ、決まってるじゃん! エイジの奴、オレを置きざりにして行きやがったんだ!!!」
たっつぁんは20代後半だろうか。
10歳そこそこのクソガキが、自分にできない事を無謀にも実行しようとしていた。
タツ 「・・・・・、その格好でか」
レイト 「仲間がピンチだってんだよ! どんな事をしてでも助けに行くよ」
タツ 「仲間・・・・・、だと? ・・・・・クックック♪ そうか、名前なんてんだ、お前」
レイト 「レイトだよ、よろしく! それで、エイジはどこ行った! ねえ、ねえ!」
タツ 「わかった、わかったよ、わかったから。 とりあえず、いくら持ってんだ」
レイト 「ええー! お金・・・・・」
レイトの全財産、父ちゃんに隠れて必死でこっそり貯めこんでいた15ゴールド。
愛用のがま口を開ける勇者。
情報を得るにしろ、装備を整えるにしろ、とても足りる額ではない。
レイト 「手持ちは、これだけ・・・・・、なんだけど・・・・・」
口を開けたままのがま口ごと、たっつぁんに預ける勇者。
タツ 「・・・・・、レイト、いくら額が少ないからってもな、他人に財布ごと預けるんじゃねーよ。 って、まあまあ入ってるじゃねーかよ!」
レイト 「えっ!」
タツ 「ひい・ふう・みい・ほいほい・と、84ゴールドね」
レイト 「八拾四ゴールドー!?」
タツ 「よーし、これだけあれば十分だ! ついて来いよ」
レイト 「なんで?」
タツ 「なんでって、助けに行くんだろ」
レイト 「助けに行くよ」
レイトの頭はフル回転した。
お金は、かってに減ってる事はあっても、増える事はありえない。
じゃあ、なんで???
レイト 「・・・・・姉ちゃん」
タツ 「何ぼさっとしてんだ、行くぞ!」
タツは、テント裏に停めてあるトレーラーのコンテナを開けた。
タツ 「ちょっと待ってろよ」
そう言って、コンテナの中にたっつぁんが入って行く。
コンテナがガサガサゴソゴソ言いだした。
姉ちゃんの事を思い出してしばらく呆けていたが、姉ちゃんとフィエの面影がだぶる。
エイジの悔しそうな顔が蘇る!
レイト 「ごめん、ねえちゃんのお金、使わせてもらうから」
タツ 「レイト、とりあえずこれに着替えろ」
レイト 「あ、はい」
たっつぁんは倉庫から、ガチャガチャと大荷物を持ち出してきた。
インナースーツ、着心地の良い防刃シャツとズボン、ジャケット、リュック、ハーネス、そして、手甲とリアルバトルスパイク♪
レイト 「おお~~~❤」
デリンジャー、改造信号銃、それとナイフとサバイバル用品一式。
レイト 「これ、全部もらってもいいの!」
タツ 「バカ言っちゃいけねーよ! サイズを揃えれなかった落ち度を引いても84で売ってやれるのは装具一式だ」
レイト 「だけどオレ、もう金無いよ」
タツ 「しょうがねーな・・・・・、 あとはレンタルにしといてやるか♪」
たっつぁんは、目を丸く見開き、親指を立てた。
レイト 「たっつぁん♪」
勇者は、子供には大きめサイズのまともな戦闘服と装備一式を手に入れた
二人は、装備の仕立てをしながら、出発の準備に取り掛かった。
かちゃかちゃ♪ ぎゅぎゅう~♪
タツ 「ここから東に半日、まっすぐ行ったところにガレ山がある、そこに行くと言ってたんだがよ・・・・・」
レイト 「そこに居るんだね! たっつぁん、色々ありがとう、行ってくるよ」
タツ 「送ってやりて-んだが、トラックは所要で出てるんだ、すまねー」
レイト 「いいって、いいって」
タツ 「・・・・・、死ぬなよ、装備は貸しだからな! 必ず返しに来るんだぜ」
レイト 「はい! 行って来ます♪」
しゃがみこむレイトのリュックの紐を締め、 バン! と背中を叩くたっつぁん。
レイトは、ちょっとブカブカのブーツを締め上げると、太陽を背に歩き始めた。
前途に希望を抱いた旅立ちのような、とても上機嫌で。
レイト 「ひょえ~♪ 歩きやす~い♪」
嬉しさのあまり、小走りになる勇者。
見送るたっつぁんは、その子供らしい無邪気さにハラハラするのだった。
タツ 「落ち着いて行けよ、ちびっ子ハンター!」
レイト 「ありがとー♪ オレ、ハンターじゃ無いよ~♪」
タツ 「そっか~~~♪ ・・・・・なぬ!!!」