ぽつんと小さなガレ山が夕日に浮かび上がっていた。
そして、その夕日の影には。
レイト 「うううぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」
いつか、父ちゃんが言っていた。
9-1なら、力押しの正攻法でもいい。
7-3でも、奇襲で不意を付け。
5-5だったら、作戦がいる、わなを張り巡らせろ、頭を使え。
自分に不利な戦場には絶対に近づくな、無駄死にするだけだ、そんな時は迷わず逃げろよ。
勇者は走りがら、色々な事を考えていた。
このまま突撃して、はたして勝算はどのくらいあるだろうか?
彼のハッピーな頭でも、分が悪い事は想像できるが、先行したエイジの事を考えると仲間のピンチに黙ってはいられない。
またあるとき、父ちゃんが言っていた。
どんなに有利な状況でも、生き残るための算段を考えろ、頭を使え。
お前らみたいなガキは、力に力で対抗しようなんて考えるんじゃねー!
レイト 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
そういえば、こんな事も言っていた。
バカヤロー! 正面突破は最悪の用兵だっていつも言ってんだろがぁぁぁぁぁぁ!!!!!
レイト 「うううぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉりいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
勇者は、勢い良くガレ山の緩斜面を駆け下って行った!
砂漠に潜む影。
誰かが息を殺し、じっと身を潜めている。
「うううぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉりいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その誰かに、激しく立ち込める砂煙が近づいて行く。
誰か 「・・・・・・・・・・・?」
何か 「うううぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉりいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
誰か 「・・・・・な、なぁにぃーーー!!!」
レイト 「うううぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉりいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
エイジ 「あぁぁぁんのバカヤロォーーー!!!!!」
レイトが、砂漠にまぎれるエイジの横を追い抜いていった!
エイジ 「何考えてんだ、あいつ! 真正面からやろうってんじゃねーだろうな・・・・・、まさかな?」
レイトとは今日、出会ったばかりのエイジ、彼の考え方が理解できるわけではないのだが。
エイジ 「いや、やりかねねー・・・・・」
そこは、とても理解できた。
レイト 「うううぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉりいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
二人の眼前には、有刺鉄線に四方を囲まれた簡易倉庫の野営地がある。
陣地の外には、短機関銃を背負ったワンワンがうろついているが。
レイト 「そこを、どおおぉぉぉきいいぃぃぃやああぁぁぁがああぁぁぁれええぇぇぇぇぇ!!!!!」
・・・・・案の定、特攻をかけた。
いったい、何を考えているのだろう?
レイトは、ハーネスに吊っていた信号銃改グレネードをぶち込んだ!
ド派手に吹き上がる爆煙、大音響の爆音、勇者に注がれるみんなの視線!
エイジ 「バッカヤロォォォォォォ!!!!!」
お尋ね者に喧嘩を売るイカレた婆さんに喧嘩を売るエイジもイカレているが、それでも勇者よりは冷静だった。
彼の作戦は用兵の常套手段、闇に乗じての人質救出を目的とした限定的奇襲作戦。
昼間のようなババアと大立ち回りをする気も、陣地全体を敵に回すつもりも無い。
当然この作戦は、エイジなりに周到に計画されたものだし、昼間のアレも作戦の一環だった。
サーベラは、エイジが死んだと思っているはずである。
レイト 「無事かぁぁぁぁぁ! 無事なら返事をしろぉぉぉぉぉ! エイジィィィィィ!!!!!」
勇者が陣地に突入していった。
まだ、日は沈みきっていない。
外周を警備するポチは、レイトに対する面の犬達以外、反応を示していなかった。
自分の守備範囲を理解して警戒しているようだ。
レイトにとっては好都合。
5匹の中型犬がレイトに迫る!
5丁の接近戦用短機関銃が火を噴く!
レイト 「いいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
飛び交う銃弾!
高速で迫るバイオニック強化ワンワン。
焼けたカートリッジを排莢して榴弾をリロードしながら、勇者は瞬時に戦術を組み立てていく!
レイト 「うぅぅりゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
レイトの武装は、改造グレネード、デリンジャー、小型手榴弾、それとナイフ。
はたして、どんな戦術でこのピンチを切り抜けるのだろうか?
レイト 「おぉあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!! たっつぁぁぁぁぁぁんんん!!! 牽制用の武器が無ぁぁぁぁぁい!!!!!」
レイトは、またまた激しく砂煙を巻き上げながら、Uターン。
撃ちまくられながら、敗走して行く。
どんなバカでも、この戦力比で真っ向勝負を挑むとは思っていないたっつぁんは、子供でも使いこなせそうな支援装備を見繕ったのだった。
状況から考えれば、見事な慧眼だろう。
レイト 「どうする??? どうしよう??? どうすりゃいいんだよぉぉぉぉぉ!!!!!」
ワン! ワン! ワン!
レイト 「何か手は? 何か無いか???」
ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン!
レイト 「ひぃぃぃぃぃぃ!!! エイジイィィィィィ!!!!!!!!!」
ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン!
短機関銃 「パラララララ!!! パパパパパパパパパパパパ!!!!!」
陣地の周りをグルグル回る少年。
追ってくるポチが、だんだん増えていく!
まだ序盤戦なのに、勇者大ピンチ!!!
ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン! ワン!
レイト 「あああああああああああああ!!!!! あああっ!? 」
死にもの狂いで逃げ出す勇者。
だが図らずも、後ろに集まるポチの集団!
レイトは閃いた。
対人手榴弾の吊ってある弾帯は2本。
ギュ~! ブチッ! ピン☆ ピン☆ ピ~ン☆
信号銃をしまい、黄色いタグの付いた紐を引き抜くと、弾帯にくくられた手榴弾6発の安全ピンが一斉に飛び散った!
そして、その6連手榴弾ベルトをブンブン振り回し、殺気立つポチの軍団に向かって投げ込んだ!
ちゅどぉ~~~~~んんん!!!!! (超大音量)
レイト 「・・・・・にやり♪」
こっそりエイジ 「・・・・・」
ゴルゴが、ニヒルに笑う。
ちゅいんんん!!!
レイト 「・・・・・あれ?」
頬に走る、やけどのような激痛。
シュン!!! バラバラババババババ!!!!!
レイト 「ううわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドス! バスバス! ドドド! ガガァァァァン!!!!!
リュックを盾にして伏せる勇者。
対人地雷を投げて防御姿勢もとらないもんだから、殺傷用ベアリングの雨が!
戦場には、爆発の反響音がしばらくこだましていた。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁ
・・・・・
しーーーーーーん
うつ伏せレイト 「・・・・・やったのか?」
ひっそりエイジ 「さ、作戦が・・・・・」