コンテナの中。
武装を外されたポチたちが、簡単な檻つきの犬小屋に約20匹、唸りながら声を殺して伏せている。
武装ハンガーには、強力そうな武器が山のように並んでいた。
その後ろで、ズザザザー! と、トレーラーに引きずり回されて遊んでいる子供がいる。
なんつー無茶をするのだろう。
レイト 「ぐわぁぁぁぁぁ! うわぁぁぁぁぁ! ぺっぺっ!!!」
グルグルと回転魚雷ごっこをしたり。
レイト 「ごわぁぁぁぁぁぁ! いってぇぇぇぇぇ!!!」
小山をジャンプ台にして、跳弾爆雷ごっこをしたり。
そんな事をして遊んでいる。
だが、ドーピングのおかげだろうか?
案外平気そうだ。
そして、ウルトラCな失探きりもみごっこをしているとき。
レイト 「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ!!!」
後ろ扉 「ギリギリギリギリ」
トレーラーの後ろ扉がわずかに開き、ワンワンが一斉に飛び出して来た。
レイト 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
だが、ポチたちは、レイトを飛び越えてどこかに消えていった。
レイト 「ふう、あぶなかったー」
そのうえ、走行スピードが気持ち落ちていた。
気合で立ち上がり、ハーネスを手繰りながらの猛ダッシュ!
レイト 「おおおおお! とーりゃぁぁぁぁぁ!!!」
乗り込み際にジャンプ一閃!
レイト 「ふぎゃ!」
と思ったら、足がもつれてこける勇者。
レイト 「うぉぉぉぉぉ!!!」
リトライ!
再び、手繰って手繰って、今度は手繰って乗り込んで行く。
あちこちぶつけながら、ヘンテコナ動きで。
そして勇者は、コンテナの中に消えていった。
レイト 「どっせぇぇぇぇぇいいい!!!」
コンテナに乗り込んだ勇者、前転2回転、勢い良く滑り込んだ。
彼はとうとうやって来た。
いよいよ大詰め、ラストバトルの予感。
獰猛な番犬たち、手に入れば役に立ちそうな装備の山。
そしてついに!!!!!
レイト 「フィエェェェェェ!!!!!」
レイトは叫んだ!
エイジの分まで叫んだ!
多分ここで叫ぶのはまずいが、おもいっきり大声で叫んだ!
ポチたち 「ぐるるるるる・・・・・」
とうとう見つけた!
そこに彼女がいる!
エイジの想い人は、手・足かせに鎖で囚われてるがそこにいる。
苦しそうな表情を浮かべ地べたに座り込み、壁にもたれて眠っている。
こんなに乗り心地の悪い貨車の中でも、目覚める事無く眠っている。
レイト 「・・・・・うがぁぁぁぁ!!!!!」
レイトの感情は爆発した、ドーピングで?
フィエに抱きつく勇者。
レイト 「ふんがぁぁぁぁぁ!」
勇者がフィエの胸に噛み付いた! おいおい・・・・・
とおもったけど、手錠だった。
手錠に噛み付き、足かせにチョップチョップ、鎖を引きちぎり・・・・・、引きち切れはしないのだが。
しばらくの間、暴れていたが、無理だと気づき深呼吸をする。
レイト 「ふぅぅぅぅぅ~~~・・・・・」
おちついてよーく考えると、一般的なシリンダー錠なら開錠する技術をレイトは持っている。
実は盗みのスキルを一通り習得しているレイトなのだ。
父ちゃんは拳を握り、力説していた!
父ちゃん 「盗みはなぁぁぁ! 子供の非力さをカバーできる有効なスキルの一つぅぅぅ!」
だそうである。
・・・・・回想 (あとがき)・・・・・
・・・・・それを思い出して、改めて手錠と足かせを見てみる。
レイト 「この! この! (スキル発動中)」
カチャカチャ♪
レイト 「このこのこのこの!!! (発動中・発動中)」
カチャコチョ♪
レイト 「うがぁぁぁぁぁ!!!」 (発動中?)
ガシガシガシ!
あら? またチョップしてる!
レイト 「うんがぁぁぁぁぁ! ふんがぁぁぁぁぁ!!!」
良く見ると、相当特殊な手錠のようだ、鍵穴が見当たらない。
鍵穴どころか、その手錠は金属ですらないかもしれない。
レイト 「ふぅ~、ふぅぅぅぅぅ・・・・・」
ががぁぁぁぁぁんんん!!!
レイトは、ちょっぴりデンジャラスなデリンジャーで床の止め具を撃ち抜き、鎖を引きちぎった。
幸い、鎖は普通の細い鋼鉄製だった。
その瞬間、コンテナ内の非常灯が点灯、悪趣味な悲鳴のような警報が鳴り響く。
そしてコンテナ内のディスプレーに、青い灯が灯る。
周囲のワンコロが唸っている!
だが、警報以外これと言って何も起こらなかった。
レイトは、フィエを肩越しに担ぎ上げるが、彼女の意識は戻らない。
レイト 「よかった、息してる♪」
コンテナの後ろ扉に向かって歩き始めたとき、後ろ扉のディスプレーが赤く輝き、そしてあの美しき婆さんの顔がドアップで映し出された!!!
警報 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
サーベラ婆さん 「〇☓△☐☆☆☆!!!!!」
勇者は魔女と目が合った!
魔女が、何か必死で訴えてくる。
美しき眉間に深いしわがより、とても怒っているようだ。
警報 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
だが、警報の「ぎゃぁぁぁぁぁ」しか聞こえない。
モニターの魔女が、指笛を吹いた!!!
勇者は、それが何の合図なのか、何となく理解して、とても焦った!
警報 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
レイト 「 !? 」
だが何もおこらない。
レイトは、ワンワンとフィエに注意を払うが、やっぱりなんにもおこらない。
勇者 「・・・・・?」
魔女 「・・・・・?」
モニターの魔女が何かを叫んでいる、画面の外に向かって。
そして画面に向かって指笛、また画面の外の誰かに向かって吼えている、そしてまたまた指笛!
勇者 「・・・・・?」
周囲のポチたちは、勇者を睨みつけ、今にも襲い掛かりそうな勢いだが、なぜだか襲って来はしない。
騒然とするコンテナ内。
魔女が何か身振り手振りで訴える!
レイト 「(あっかん) べーーーーー!」
勇者は、一つの宝にしか手をつけず、後ろ扉から飛び降りた。
その光景を、魔女が呆然と見送った・・・・・
砂漠を疾走するトレーラーがゆっくりと減速し停車した。
停車と同時にコンテナからは、ワンワンが四方に走り出す。
それから、怒りの表情の美しき魔女が、キャビンからゆっくり降りてきた。
サーベラ 「バカな奴だ。 誰だか知らないけど、死んだね、あの子」
走行中のトレーラーから躊躇無く飛び降りた二人。
勇者が少女を抱えなおして走りだした。
レイト 「うおぉぉぉぉぉ!!!!!」
フィエ 「・・・・・、・・・・・、・・・・・!!!」
その時、力なくうなだれたままのフィエの目がパチリと開いた。
弱弱しくもたれかかったまま、眼球だけがギョロギョロと動いている。
フィエ 「ううう・・・・・、ぐるるる!」
フィエの四肢に力が込められていくのがわかる。
低い唸りとともに、彼女の黒髪が逆立っていく。
担ぐレイトの首筋を恐ろしい形相で睨むフィエ。
レイト 「フィエェェェ!!!、エイジィィィィィ!!!・・・・・、ごめぇぇぇぇぇんんん!!!!!」
トレーラーから降りた魔女が、指笛を吹いている。
その笛の音と共に手・足かせははがれ落ち、フェネック(フィエ)が目を覚ました。
婆さんは一転、楽しそうに、嬉しそうに双眼鏡を覗いている。
サーベラ 「さあ、わたしのかわいいフェネック、狩りの時間だよ」
フェネック 「うううあああああああああ!!!!!」
見つめる魔女がニヤリと笑う。
とても嫌な笑い顔だ、フェネックの狂犬のような表情を眺めながら。
勇者は、必死の形相で、夜の砂漠をひた疾走る。
サーベラ 「さあ! やっておしまい!」
フェネック 「ううううう!」
レイト 「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
オートフォーカスのナイトスコープ付き双眼鏡が「シュイーン♪」と軽やかな音を立てる。
サーベラ 「さあ、さあ!」
フェネック 「う、ぐううう・・・・・」
レイト 「おおおぉぉぉ・・・・・」
レイトは振り返りもせず、振り向きもせず、ただひたすら前を見つめている。
力強くフィエを抱きかかえて。
サーベラ 「さあ! やるんだフェネック!」
フェネック 「ぐぐぐ、ぐ・・・・・」
レイト 「・・・・・」
だが、フェネックの逆立った毛は元に戻りつつあるようだ。
サーベラ 「フェネック? どうした?」
フェネック 「ぐ・・・ぐ・・・ぐ・・・・・う」
レイト 「・・・・・・・・・・」
走る勇者の背中に、再び力なくうなだれるフィエ。
魔女はあせって、双眼鏡を外したり覗き返したり。
何か、予測してない事が起こったようだ。
サーベラ 「なんだい! どうしたんだい、フェネック!」
レイト・逃 「・・・・・うおぉぉぉぉぉ!!!!!」
裸眼で見える勇者は、とても、とーっても、すでに小さい。
-
- 回想 -
父ちゃん 「まず力! 次に力! その次もやっぱり力! パワーパワーパワー! 技を使うにしろ頭を使うにしろ、それを支えるのはやっぱり力だ! だからな、そのまずい飯を食ったら、とっとと筋トレだ、いいな!」
レイト・食 「(パクリ) うー、まずっ!」
姉ちゃん 「・・・・・えっ!」
父ちゃん 「おまえ、好き嫌いあったっけ? お百姓さんに申し訳ねーだろ! そんな事言うんじゃねー」
少年はコツンとゲンコツされた。
レイト 「はーい」
父ちゃん・食 「ったく、おめーは、(パクリ、はむはむ) ・・・・・わぁぁぁぁぁ!!!」
強面の父ちゃんが、驚嘆して吼えた。
姉ちゃん・食 「(パクリ)・・・・・う!?」
レイトと子供達は、なんだか臭い飯を我慢して食べている。
父ちゃん 「ハア、ハア、ハア、お、おいガキども!」
レイト 「なんだよ、父ちゃん」
ビックリして、椅子を蹴飛ばし立ち上がった父ちゃんが、とても驚いた表情で子供達を見ている。
くっさい飯をひっくり返して。
父ちゃん 「お、おめーら、わかんねーのかよ・・・・・」
レイト 「こぼすなよ父ちゃん、お百姓さんに申し訳ないじゃん」
父ちゃん 「・・・・・今日の料理番、誰だ?」
姉ちゃん 「うぐぇ! あ、あたしです」
父ちゃん 「おまえか・・・・・、食材は?」
姉ちゃん 「え? えっと・・・、ねえレイト、これ何細胞だったっけ?」
レイト 「これ? え~っと・・・、何て言ってたっけ? バイト先の「洋食屋」の親父がタダでくれたんだ、豊作だったんでおすそ分けって言ってた」
レイトが繁忙期にアルバイトをしている、レストラン「洋食屋」。
繁忙期と言っても、村に旅人など来た記憶は無い。
流行らない洋食屋だが、だがしかし10日に一度、大繁忙期が訪れる。
それは、自家農園での収穫祭り!
水槽(下水道跡)でのアメーバ収穫だ。
その洋食屋の親父はケチで有名だった。
ケチだし善人では無いが、別に積極的な悪人と言うわけでもない。
ある日、洋食屋のくるま(手押しリアカー) には山盛りにアメーバが積み上げられていた。
タバコを雑にふかしながら、養殖屋の親父は言う。
おやじ 「持ってくか?」
レイト 「えぇー! いいの!」
おやじ 「ああ、今週は異常発生でな、取っても取ってもきりがねー」
レイト 「やたー♪」
おやじ 「だけど気をつけろよ、おめーはおっちょこちょいだからよー。 姉さんにちゃんと言っとけ、こいつには、養殖モノだけじゃなくて「天然モノ」が混じってるからってな。 」
レイト 「うん、伝えとく~♪」
レイトは、嬉々としてくるまを牽引して帰って行った・・・・・
・・・・・
レイト 「・・・・・ああっ!!!」
レイト以外の全員は死にかけた。
その後父ちゃんは、サバイバルカリキュラムを理論と技術を基礎としたものに変更したそうだ。
死なない(殺されたくない)ためにはまず知識と技術!
それからしばらくたったある日。
レイト 「買出し、行ってきま~す♪」
父ちゃん 「わ、わぁぁぁぁ!」
姉ちゃん 「い、いい、いいから、今日はあたしが行ってくるから」
父ちゃん 「そ、そうだぞ、今日はおめー、疲れただろ、ほらほら、座って休んどけって♪」
レイト 「なに言ってんのさ、姉ちゃんこそ疲れてるんだから♪」
父ちゃん 「そ、そうか、そうだぞ、よし! おめーらみんな疲れてる! 今日は俺が行ってきてやる!」
その日、父ちゃんはとっても優しかったそうだ。