歩いて、歩いて、歩いて、歩いて!
歩き続ける彼の後ろを黒い影が追っていた。
暗い砂漠の大地には、勇者の足跡がまっすぐ刻み付けられていく。
真っ赤な絵の具に彩られながら。
魔界を乗り越えて、歩き続ける少年。
青白い月はすでに、沈んでいた。
だが、魔女の呪いはまだ解けていない。
狂犬へと変貌を遂げた、おりこうなワンワンたちは、モンスターだろうがなんだろうが動くもの全てに容赦なく噛み付いていた。
幸い、この地域に旅人はいないが、もっと人の多い地域だったら大惨事になっていた事だろう。
一匹の狂犬が血の匂いを嗅ぎつけた。
勇者の道しるべに気が付いた彼は、猛然と走り出した。
時おり、獰猛な咆哮あげながら。
レイト 「ち、ちくしょう、もうちょっとだってのに、あと、ちょっと、だって・・・の・に・・・・・」
勇者は血を流しすぎていた。
危うく胴体とバイバイしそうなぐらいの左腕。
万能なドーピングでも止血がまにあわず、赤いガソリンのガス欠症状はどうにもならなかった。
目が霞む、足がもつれる、なんだか体に力が入らなくなってきた。
レイト 「た、頼むよ、は・・・かせ・・・・・」
フィエの柔らかな肢体が、砂漠にゆっくりと放り出された。
それから、レイトも前のめりに倒れこむのだった。
受身も取らず倒れる勇者が再び起き上がることは無かった・・・・・
おわり
メタルマックス
ありふれたサイドストーリー 壊れた世界の勇者
・・・・・そして、現在の勇者たちは、ブロント艦橋にてティータイム中♪
ティク 「それから♪ それからどうなったんですか?」
レイト 「・・・・・」
勇者にしては珍しく、難しい表情で言葉を詰まらせる。
姫子 「何、もったいつけてんの! ほらー♪」
レイトは、姫子の無遠慮さにイラッとした。
ラス 「それがですね、それからの記憶が無いんだって、まーったく」
姫子 「ええーーー!!! これで終わりなのー! なにそれ!」
勇者の姫子は、レイトに飛びついた。
首を両手で握り、ユッサユサとゆすっている。
顔色が青く歪む、青鬼のレイト!
レイト 「ぐえぇぇぇぇぇ!!!」
姫子 「そこで終わっちゃ、気になって眠れなくなるでしょうが~!」
アル 「お、おい! ひめこぉぉぉぉぉ!!!」
かなた 「ひめこさぁぁぁぁぁん!!!」
アルとかなたが止めに入り、姫子をレイトから引っぺがした。
レイト 「ぐはぁ! ゲホゲホ、こ、殺す気かーーー!!!」
アル 「す、すまん」
かなた 「ごめんなさーい」
レイト 「こ、今度こそ殺人未遂だぞ、なあ、なあラス!」
ラス 「そ、そうですねー・・・・・」
確かに危うい感じだった。
ラスはレイトを尊敬しているが、姫子は憧れの人であり、さらにレイトの命の恩人でもあった。
ラスは、微妙な表情を浮かべて、はぐらかす。
レイト 「なあ、てっくん!!!」
ティク 「は、はぁ、ですねー・・・・・」
てっくんは・・・・・以下同文。
てっくんは、ハラハラしながらお茶を濁した。
レイト 「たいちー!!!!!」
たいち 「うるさ! あたちは忙しいのです!」
ティク 「・・・・・」
たいちくんは、長ったらしい話は苦手だった。
幼女はとてつもなく無表情。
完全に興味を失っている。
レイト・叫 「なんだー! このアウェー感!」
たいち 「うるさーい!」
レイト 「ごめん」
ティク 「ははは・・・・・」
艦橋要員全員が、微妙な表情をしていた。
彼らは皆、レイト信者だが、最近のフリフリとの交流で心がおおらかになっていた。
冗談ではすまないきわどい、姫子とメギの暴力行為も、寛大な心で許す事ができる。
微妙な苦笑いで♪
姫子 「それで、これからどうなるのさ?」
アル 「だから、これで終わりだって! しょうがねーだろうが!」
姫子 「ええー! いーやーだーーー!!!」
姫子が駄々をこね始めた。
それをなだめるアル。
なんだか、いつもの平和な日常だった。
レイト 「ケッ! 暴力女め、聞きたいってーから話してやってんのによ、ブツブツ・・・・・」
ラス 「まあまあ」
ティク 「あれ、かなた? 浮かない顔してどうした?」
いつもさえない顔のかなたが、いつにもまして冴えない表情を浮かべている。
ティクと同い年、最近仲良くなった少年が、冴えないどころかなんだか困っているような・・・・・
ティク 「かなた?」
かなた 「・・・・・」
かなたは、暴れる姫子姉さんを、意味深な表情でみつめていた。
かなた 「ねえ、姫子さん。 アルって、アルなんだよね?」
姫子 「ん? 何言ってんの? アルはアルだぞ?」
かなた 「いや、そうじゃなくって、アルの名前は「アル」かってこと?」
姫子 「だから、アルはアルでしょ? なに言ってんの?」
かなた 「いやいやいや、そうじゃなくってね・・・・・」
その言葉に、艦橋全体が静まり返った。
アル 「俺は俺だぞ、かなた。 って、もしかして・・・・・、ハハ♪ そうか、俺はエイジとは別人だぜ♪」
レイト 「アルとエイジが・・・・・? 別人だろ?」
姫子 「あたし、フィエじゃないよー♪」
レイト 「姫子がフィエ? フィエはこんな野蛮人じゃねーぞ」
姫子 「なにおーーーーー!!!」
レイト 「ぐえぇぇぇぇぇ・・・・・」
アル 「ひめこぉぉぉぉぉ!」
かなた 「・・・・・」
たいち 「「アル」や「姫子」は、偽名じゃないかって。 そうゆう意味でしょ、かなた兄(あに)ちゃん (マイブーム)」
アル 「おおっ!」
姫子 「あー、なーる! そうゆうことね、さすがテレパス!」
たいち 「姉(あね)ちゃん、やめてください、その誤解を招くあだ名」
かなた 「で、どうなの! 姫子さん!」
真剣な表情で、アルと姫子が顔を見合わせている。
姫子 「・・・・・あはははは」
アル 「・・・・・まあなあ、俺らも似たような経験はして来たからさ・・・・・」
姫子 「そうそう、人生色々だ」
かなた 「・・・・・いぃやぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!」
レイト 「お、おめーら、偽名だったんかーーー!!!!!」
かなたの疑念どおり、二人はふたりではない事がわかった。
いやいや二人はふたりだが、話の中の二人ではなかったが、二人は本名を名乗れない凶状持ちだった。
メギと同じで。
さらに、レイトも加わって、ワイワイガヤガヤの和気藹々♪
姫子 「・・・・・ねえ、レイト?」
レイト 「アル!!! おめぇ! エイジって名前だったんかぁぁぁぁぁ!!!!!」
アル 「それは、違うって言ってんだろうが!」
姫子 「レイトォォォォォ!!!!!」
レイト 「ぐえぇぇぇぇぇ・・・・・」
姫子 「ねえレイトってさ」
レイト 「・・・・・、な、なんだよ?」
姫子が、真剣な表情でレイトに詰め寄った。
そして、真顔でこう言った。
姫子 「・・・なんで生きてんの?」
レイト 「な、なんでって・・・・・、えーーー!!!」
なかなか美人な姫子のストレートにぐっさり心を射抜かれる勇者。
そして、ハートブレイク❤
勇者は、半べそになった。
アル 「そ、それはダメだぞ・・・・・」
姫子 「なにが?」
たいち 「違うよ、アルのあにぃ。 姉(あね)ちゃんが言いたいのはね、「英雄になれなかった勇者の物語の終わり方からすると!」ってことだよ」
アル 「・・・・・あー、・・・おー、ほんとだ! 何で生きてんだよ、レイト?」
かなた 「ちょっと、失礼ですよ! アル、姫子さんも、もっと言い方があるでしょうが! それで、なんで生きてるんですか?」
たいち 「なぜ、生きていられるのです?」
ティク 「・・・・・」
ティクは、たいちのオイタを目で叱る。
無表情のたいちくんは、心なしか反省の表情を浮かべているような。
レイト 「お、鬼かぁ! お前らは!」
姫子 「冗談冗談♪ それで、何があったのさ、もう少し続きがあるんでしょ♪」
レイト 「・・・・・、目が覚めたとき・・・、俺が目を覚ましたのは、たっつぁんのテントの中だったんだ、10日以上生死の境をさまよってたんだと、それだけさ」
姫子 「それだけ? まだ何かあるでしょ?」
アル 「フィエさんはどうなったんだ?」
姫子 「そう、それそれ!」
レイト 「無事にエイジが連れて行ったんだと。 あいつ、また俺を置いて行きやがって・・・・・」
姫子 「あれ、どこからエイジが出てきた?」
アル 「エイジも生きてたのか! それは良かった♪」
レイト 「意識を失った俺とフィエさんは、エイジのサンドバギーに間一髪で救われたんだと」
レイトは、若干ふてくされてそう言った。
色々、気に食わないようだ。
姫子 「エイジのバギー? だいたい、エイジは足を撃ち抜かれて倒れたんじゃなかったっけ?」
レイト 「・・・・・」
姫子 「なんだレイト、ぶーたれた顔して?」
レイト 「だってよ、また勝手に俺を助けた挙句に、たっつぁんに伝言を残して置いて行きやがったんだぜ! アイツ!」
姫子 「別に、そんなに怒る事か? それ」
レイト 「そりゃーおめー・・・・・」
レイトは、その話の何が気に食わないのかは、結局言わなかった。
だが、アルには、何となく伝わるものがあった。
姫子のモヤモヤは解消されないが、姉(あね)さんは口をつぐんだレイトにそれ以上は聞かなかった。
姫子 「・・・・・、うーん、それじゃーさ、あの亡霊戦車大隊は何?」
レイト 「おー、まだ説明してなかったっけか? あれは、エイジの・・・、じゃなくてオフィスのレンタだ」
アル 「・・・・・なるほど、そうか! 張子のトラだったわけか!」
レイト 「なんだと! 何でわかった!!! おめー、やっぱり・・・・・」
アル 「い、いや、俺じゃねー、いやいや、じゃなくて、俺はエイジじゃねーって!!!」
レイトは、じっとりとアルを見つめている。
相当、エイジに恨みがあるようだ。
姫子 「アルはアルじゃないけど、アルがエイジじゃないのは保障するよ! あたしの幼馴染だからさ♪」
レイト 「・・・・・そうか? まあ、アルの読みどおりでアレは張子のリモコン戦車軍団さ。 武装も装甲も偽装、はなっからの使い捨てだ」
かなた 「くるま5両を使い捨てって、すっごいことするねー!って、あれ? ちょっと待ってよ・・・・・」
かなた少年の顔が、青ざめる。
かなた 「ねえ、レイトさん。 さっきその、言った? ・・・・・、もしかして「レンタ」って」
レイト 「ああ、レンタルタンク5両、いやその前にも1両やってるから6両大破だな」
かなた 「も、もしかしてだけど・・・・・」
レイト 「もしかしねーよ。 借り倒したんだろ、レンタ6両の損害賠償なんて払えるわけがねーだろ」
正義の勇者は涼しい顔で、恐ろしい事を言った。
アルと姫子さんも、涼しい顔をしている。
どうやら 「似たような経験」があるようだ・・・・・
かなたの顔が、ムンクに叫でいた。
完全に固まってしまった。
(かなた君の周りは凶状持ちだらけ。みんなの過去を知るたび罪状が積み重なっていく)
たいち 「・・・・・リーダーが魔女に喧嘩を売ったんでしゅか、・・・・・少し見直ちた」
ティク 「・・・・・♪」
ティクの目が良くやったと、たいちに言っている。
幼女のような口調で喋るたいちくんは、なんだかちょっと嬉しそうだった。
レイト 「ははは♪ マジだぜ! まあ、当然の行動だよな! 人として」
ラス 「それから「ガレリア」の旗揚げまで、散々、魔女ともめる事になるんですけどね・・・・・」
姫子 「なにそれ! それ面白そうじゃん❤」
ラス 「いやいや、もうほんっと、笑えないですよ・・・・・、リーダーのせいで」
レイト 「アレは、俺のせいじゃねーだろうが!」」
ティク 「ラスさん? 魔女ともめてたって、それってもしかして、オフィスと直接交渉できなかった件と関係があったりしないでしょうね・・・・・」
ティク艦長の疑問に、ラス副長は天上を見上げて。
ラス 「ほほほほほー♪ さあ、なーんのことでしょうねー?」
レイト 「ああ、あのクソババアのせいだ!」
ラス 「リィィィダアァァァァァ!!!!!」
ティク 「・・・・・」
レイト 「どっちでも同じじゃねーかよ、今となっちゃ」
ラス 「・・・・・ま、まあ、そうなんですけど・・・・・、はあ・・・・・」
ラスは、そう言って激しく落ち込んだ。
落胆し、とってもダークなオーラをまとっている。
(ガレリアは、ブロントの一件で、直接オフィスに喧嘩を売ったばかり)
姫子 「それで結局、エイジとフィエはどうなったんさ?」
レイト 「さあなあ? まあ、どこかで元気にやってんじゃねーかなあ」
レイトは過去を懐かしむように、外を眺めて微笑していた。
ちょっとガラにも無いが、話しかけづらい雰囲気をかもし出して。
姫子 「ふーん、じゃあ、アリスは?」
レイト 「うぐ!」
レイトの顔が暗く沈む。
どこか、遠くを見つめてため息をついて。
レイト 「ははは♪ フィエ以外は結局救えなかったって落ちだ。 まあ、どこにでもある話だろ・・・・・」
姫子 「え・・・・・」
アル 「・・・・・」
レイト 「おっ! そろそろ時間じゃねーか! よし、休憩終わり! さあ、みんな、仕事の時間だぜ!」
かなた 「・・・・・」
ラス 「・・・・・」
レイト 「おい、ラス! ぼさっとすんな!」
ラス 「そうですね・・・・・、はい、了解です! リーダー♪」
救えなかった7人の子供の事を思い出し、勇者がちょっとへこんでいる。
ただ、ひたすらノー天気なだけではないようだった。
その話を聞いて、いつもハッピーな副社長もへこんでいる。
以下同文。
二人は、そんな世界を何とかしようと、大真面目に活動しているのだが、自分達の立つ瀬すらも間々ならないのが実情だった。
レイトに向き直り、ラスはニッコリと微笑む。
そして、明るい声で、その美しい声で、全艦に号令をかけるのだった。
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あとがき
読んでくださった方、ありがとうございました。
あ! でも、もうちょっと続くんですけどもね♪
レイト視点で、5~6話で終わらせるつもりだったんっすけど。
一人称視点で、レイトの目線で、見て考えて、わかる事だけを盛り込んで、謎はそのままで話を進める予定だったけど、いかんせん。
作者にも予想できない、今世紀最大の誤算がありました!
自分、メタルマックスが好きすぎだった・・・・・❤
謎の部分が、自分で書いてて、自分でスルーできなくなって・・・・・
ええーい! 二人称視点で語ってもらおうじゃないか!
ってやってたら、何だか長い話になってきて、何だか誰目線のストーリーかわからなくなってきて・・・・・