中間テストが終わり、E組は修学旅行ムードへと変わっていく途中、恭介は――
「修学旅行?」
「…まるで初めて聞いたかのような反応ね」
――速水と公園にいた。
「…聞いたことくらいはある。たしか…学年で何処かに泊まりに行く、というやつだろう?」
「…まぁそうだけれども」
今回恭介と速水が一緒にいるのは偶然ではなく、班の暗殺で使う道具の買い出しでもあるが、恭介は初めから何も聞かされていなかった。
「あんたは私と班が一緒なのよ…」
「俺は全く聞いてないんだが…」
「じゃあまともに学校きなさいよ」
恭介がE組に来た理由は、単純に出席数が足りないという点だけ。
しかし、それにも理由があるが……
「…まあ偶には行ってるだろう」
「毎日来なさいよ」
「……考えておこう」
翌日
準備運動が終わり、今日も恒例のナイフ術の訓練をする中、烏間は皆に言う。
「よし、最後だ。今から俺と個人戦。キミらの1人でも俺に当てれればいいが、誰も当てられなければペナルティで校庭5周だ……誰でもいいぞ」
「俺からいきます」
磯貝が先陣を切って、烏間先生の前に立つ。そして、ナイフを素早く振り払うと、烏間はそれを捌くが、磯貝はすぐに二撃、三撃と振るうが、烏間にそれを止められて宙を舞った。
「次!」
1人2人と男子も女子も負けていく。
そして、渚もナイフを奪われる……最後に控えていた存在に烏間は少しだけ笑みを浮かべつつ言う。
「そういえば、キミはまだ模擬戦闘はしてなかったな」
「まああんま学校来ないんで」
対せんせー用ナイフを右手に持って自然体に構える。
(彼は初日から
二人の間に静寂が訪れる。
……ザッ、
烏丸の靴の音が響いた瞬間、恭介が飛び出る。その
「フッ!」
薙ぎ払われるように振られたナイフを、烏丸はスウェーで間一髪避ける。
だが、恭介は着地と同時に蹴りを放ち、烏丸をさらにのけぞらせる。
倒れかけた烏丸目掛けてナイフを投げる。狙いは空中では動かしようのない腰だ。
「……甘いっ!」
だが、超人的な身体能力を持つのは烏丸も同じ、空中で一回転してそのナイフを躱す。
しかし――
「終わりだ」
――すぐに立ち上がった烏丸の後ろに、既に首元にナイフを構えている恭介がいた。
軽くぺちんとナイフを当てることにより、この訓練は恭介が制したのだった。
六時間目
「それじゃ、私達一斑の行動決めていきましょ・・例の計画もかねてね」
片岡が言う例の計画とは、京都での旅行にかこつけて国が腕利きのスナイパーを用意し、それを上手く使ってせんせーを殺すことである。
つまり、暗殺向けのコース決めをすることがこの時間の目的である。
「やっぱり、だだっ広い方がいいよな」
「けど、適度に高くないときついんじゃないかしら・・・」
「私は人が多い方がいいと思うな~」
磯貝、片岡、倉橋と意見を言う中で恭介は何かを言おうとしている千葉を見た。
結局、決めきれずに明日にまた班で話し合うことになった。
「ちょっといいか?」
恭介は裏の射撃訓練場で、黙々と空き缶を撃ち抜く二人に話しかける。
「…?」
「なに?」
「いや…クラスで一、二の射撃の腕を持つお前らは、どう思ってるんだ? この旅行の暗殺計画を…」
「…別に。班としての行動に私は文句ないわ」
「ホントか? それにしちゃ・・・何か言いたそうに見えたぞ?」
「うるさいわね…何もいう事なんて無いって言ってるでしょ…」
苛立ち混じりに言い捨て、速水は帰っていくと千葉は、逆に恭介へと問いかける。
「どうしてお前は、そう思ったんだ?」
「なんとなくだ。速水は分かりやすかった方だが…お前に関しては、言いたいことがあるけど、言いづらかったって雰囲気がした」
「…そうだな。ホントはちょっと言いたいことがあった……けど、元々俺はあまり意見を言ったり、周りに助けを求めるのが苦手でさ……」
「それは…」
「ああ、E組に落ちたのもそれが関係してる……勉強についていけなくなっても、先生や友人には聞こうとしないで自分でなんとかしようとしてたが……駄目だったよ」
それを聞いて、恭介は千葉に新たに出た疑問を投げつけた。
「千葉はそれを変えたいのか? それとも、今のまま言いたい事も言わずにいくのか?」
その問いかけに千葉は直ぐには答えられなかった……
翌日
「映画村?」
「なんでそこにしたいんだ千葉?」
「映画村なら人が多くてせんせーの鼻をまず誤魔化せると思う…それに」
「あそこって、調べたらけっこう高台のような造りしてる建造物が多いの……だから、スナイパーもきっと狙いを定めるには困らないと思う…」
千葉と速水がそれぞれ意見を言うと、片岡と磯貝はなるほど…と頷く。
「やっぱりE組のスナイパーコンビは、すっごく頼りになるね~。私達も負けてられないね」
「そうね。せっかくのアイデアを棒に振るのは最悪ね……もういっそ…」
「プロに任せつつ…俺達も殺るか…」
「え…ちょっと待って。こんなアテのない意見で、大事な修学旅行を無駄にするつもり?」
「無駄?無駄じゃないよな磯貝」
「ああ、念密に調べるだけでも楽しそうだし……何より、千葉や速水のアイデアに俺はすげえ考えてるなと思ったよ。だから、俺達もそれに応えなきゃな」
「そうだな…俺も今回は気の済むまで付き合おう」
さっすが~と倉橋が盛り上げ、磯貝と片岡が笑う。
そんな中千葉は、速水に呟くようにいった…
「誰かに相談するのって悪くないんだな……」
「どうだろうね…けど、せっかく頼られてるんだから……少しは頑張ろうかな」
そんな2人のスナイパーが、ほんの少しだが笑みをこぼしたのをただ一人、恭介だけが見ていた。