二度目の人生を龍になるはずだった男と歌姫たちと過ごす。   作:流離う旅人

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転生します! そして、家族出来ました

見渡す限りを白で埋め尽くされた部屋ーーー空間に二つの影があった。

一人は男。何やら息を荒げ、叫んでいた。

もう一人は女。男が詰め寄ってきて、その気迫に押されていた。

 

「だ〜か〜ら! とっとと今俺が言った特典をつけろよ!」

 

「で、でも、そんなことしたら世界のバランスが崩れてしまってーーー」

 

「んなこたぁどうでも良いんだよ! そこはテメェが何とかすりゃあ良いだけだろうが!」

 

「わ、わかりました……」

 

彼女はもう今にも泣き出してしまいそうなほど目に涙をためていた。

彼女の弱々しい返事を聞いた男は満足そうに、そしていやらしく笑う。

 

「はっはっは! これで俺はハーレムを作れる! 俺がオリ主だ!」

 

それを最後に男は光の粒子となって消えた。

彼女はとうとう耐えられなくなり、目元に手を掛けて泣き出してしまった。

僕はーーー俺は、そんな彼女を見るに見かねて近づくと頭を優しく撫でる。

え? と、声を上げて彼女は俺を見る。

その目元は赤く腫れ上がっていた。それだけさっきの男が怖かったのだろう。

彼女はキョトンとしていたが次第に困った顔に変わりオドオドしだした。

 

「ごめん。何か見てて辛そうだったから、つい」

 

「ありがとうございます。それだけで、私は嬉しいです」

 

「それでここってどこなの? 何となく想像はつくんだけどさ」

「はい。率直に言うと、貴方は死にました」

 

「そっか」

 

実際、いつか死んでしまうと思っていたからか死んだと言われてもさして驚くことはなかった。

むしろ死んで清々しているくらいだ。

彼女は少し表情を暗くして俺を見つめる。

 

「貴方には転生して貰います」

 

「転生って二度目の人生ってこと?」

 

「そうなります。それによって特典をつけることが出来ますーーーさきほどの男性のように」

 

特典、か。

こんな話があったらみんな喜ぶところなのだろうが生憎喜んだりはしない。

黙考してしばらくすると俺は口を開いた。

 

「要らない、かな」

 

「え、本当に要らないんですか?」

 

「うん。あ、最低限のお金と住む場所を用意してもらえるかな?」

 

「それぐらいなら大丈夫です」

 

「そっか」

 

「その、特典を要らない理由、教えてもらっても良いですか?」

 

恐る恐る彼女が聞いてきた。

 

「う〜ん、なんかさ特典もらってチートでやりたい放題っていうのが普通なのかもしれないけどさ。それって結局はもらったもので自分の力じゃない。頑張って、努力して、地面を這いつくばるような思いをして手に入れた人たちに失礼だな、って思った」

 

特に隠すようなことでもないので思ったことを包み隠さず話した。

彼女を見ると優しく微笑んでいた。

 

「優しいんですね」

 

「俺は、優しくなんかないよ」

 

「優しいですよ、貴方は。そういえばお名前は?」

 

「望ーーー春日 望」

 

「望さん、ですか。いい名前ですね」

 

「ありがとう。俺はどんな世界に転生するのかな?」

 

「私は見習いの神なので担当する世界は一つしかありません。だから、望さんにはハイスクールD×Dの世界に転生してもらいます。しかし、問題があるんです」

 

「問題?」 と、頭の上に疑問符を浮かべる。

 

「さきほど転生した男性が私の担当するハイスクールD×Dの世界に戦姫絶唱シンフォギアという世界を混ぜ合わせろ、という無茶な特典を突きつけてきたため通常の物語とは異なる道筋を辿っていくことになります」

 

「そうなのか……ま、大丈夫! きっと何とかなる」

 

「きっと、なんとかなるーーーそう、ですね。何だか望さんが言うとそんな気がしてきました」

 

彼女が笑う。それにつられて望も笑った。

 

「では、そろそろ転生させますね」

 

「うん、頼むよ。そういえば君の名前は?」

 

「えっと、私には名前がありませんので適当に神様とでも呼んでください」

 

それを聞いた望は手に顎をつけ、う〜ん、と唸り始めた。

どうしたんだろう、と首を傾げる彼女。

望が口を開き、紡がれた言葉に彼女は目を見開いた。

 

「しずくーーー雫っていうのはどうかな?」

 

「え、し、雫ですか?」

 

「うん。一番印象的だったのがさ、失礼だけど泣いてる君だったんだ。だから、雫。気に入らなかったら違うの考えるんだけど」

 

「いえ! すごく気に入りました! 有難うございます望さん」

 

「そっか。良かった」

 

「それじゃあ今度こそ転生させますね」

 

「うん」

 

「貴方の新たな人生に祝福をーーー」

 

体がさっき見たみたいに光の粒子に包まれていく。

その光は温かくて、安心できた。

最後に見たのは雫の優しい微笑みだった。

 

 

 

 

□■□

 

 

 

 

眼が覚める。

さきほどの温かい光が若干名残惜しくもあったがそれはすでに消えていた。

眼が覚めた俺はソファーに腰掛けていた。

転生したんだ、と納得し周りを見渡す。

ここは居間? だろうか。一通りの家具は揃えられているようで特に取り揃えるようなものはなさそうだ。

ふとテーブルに目をやると一枚の紙切れに目が止まった。

手に取り、読んでみるとそれは雫からの手紙だった。

 

 

 

望さんがこれを読んでいるということは無事に転生したということですね。まずは何事もなくて良かったです。

今、望さんがいる居間ーーーというか家がその世界の望さんの家です。

お金の方はタンスの二段目の右に通帳が入っているので確認してください。

一応、当分は生活出来るだけの額は入れておきましたので。

望さんの年齢は八歳ですから小学校三年生です。

一応、明日辺りに編入という形で学校に通ってもらいますね。

あと望さんが念じれば私と話すことも出来るようにして置きました。

ーーーその、望さんが暇な時でいいのでお話出来たらなぁ〜なんて。

最後に、その世界は歪です。

二つの世界が融合し、しかも望さんたちのような転生者(イレギュラー)の介入により通常の道筋とは異なる道を辿っていくことになります。

けれど、望さんは特典を持っていないので普通に生活していれば物語に巻き込まれることはないでしょう。

どうか、その世界では幸せになってください。

貴方の人生に祝福があらんことーーー

 

 

雫より

 

 

ふむ。これからは雫と話が出来るのか。

それはこちらとしても都合がいい。

まあ、話せるからといって何かが変わるわけでもないのだが。

タンスの前まで行き、二段目の右引き出しを引く。

雫の言う通り通帳があった。通帳を開き、いくら振り込まれているのか確認する。

中身を見て望は固まる。そこから復帰するのに数秒を要し、順番に一の位から確認していく。

うん、見間違いじゃない。

雫さん……これはちょっと入れすぎじゃないだしょうか? と、天を仰ぎ見た。

通帳にはなんと億を軽く超える額が表示されていた。

どれくらい入っていたかは読者の皆さんの想像にお任せしよう。

ソッと通帳をしまい、引き出しを閉じた。

うん。見なかったことにしよう。

よっぽどのことがなければあまり使うこともないだろうし、ね。

取り敢えずこの家の内装を把握しておこうと望は家の探検を始めた。

 

 

家を回って思ったことは、広いだった。

当然、家には俺一人なわけで静まり返っていた。

それがちょっと寂しいと感じる。まあ、前の人生の延長戦みたいなものと考えよう。

冷蔵庫を確認すると調味料はあったのだが食材があまりなかったので買い物に行くことにした。

勿論、エコバッグは忘れない。そう、エコバックは忘れない。

大事なことだから二回言った。

 

 

ーーーと、買い物に出た帰りに俺は一人の少年を拾うことになった。

拾うというのは少し失礼だな。家に連れて帰ったのだ。

だって、人がボロボロになってゴミ捨て場に捨てられてたら助かるでしょう? え、普通助けない? じゃあ、俺は異常でいいや。

目の前に座る少年に目を移す。

目からは光が失われ、虚空を見ているよう。

体も服もボロボロで傷つき、所々破けていた。

 

「えっと、君名前は?」

 

「……兵藤、一誠」

 

「イッセーか、俺は春日望。よろしくな。じゃあ、いきなり聞くようで悪いけど何でイッセーはあんなところにいたんだ?」

 

「……ッ」

 

一瞬。本当に一瞬だがイッセーの顔が曇った。

どうやら酷い目にあったのは確からしいな。

果たして、俺といい勝負出来るかもな。

 

「ま、話したくなかったら話さなくていい。ちょっと待ってろ。今、飯作ってくっから」

 

そう言うと俺はエプロンを着て、買ってきた食材でチャーハンを作り始める。

イッセーはそれを黙って見ていた。

その視線に気付いていたけど俺は何も言わなかった。

何となくだけど、分かる。今のイッセーは、俺を、人を信用してなどいないことが。

それと前世の俺と少し被ったように見えたから。

チャーハンを皿に盛り、イッセーの前に置いた。

 

「ほら、食べてくれ」

 

「…………」

 

イッセーは黙ったまま食べようとしない。

 

「……なんでここまでしてくれるんだよ」

 

「ん?」

 

「なんで! 訳も分からない赤の他人にここまでしてくれるんだよ!?」

 

イッセーは涙を流しながら俺に詰め寄ってきた。

その勢いに若干気圧されるが俺は一歩も引かない。

 

「俺は、一つ下の弟がいて普通の家庭だったんだ。なのに、ある日を境に弟、家族、友達って俺を避け始めた。俺は何もしてないのに「化け物!」「近付くなよ! 変な病気が移るだろ!」って。父さんと母さんまで「お前なんか内の子じゃない!」って、みんなに虐められてとうとう家まで追い出された……なのに、なんでお前は!」

 

「分かるよ」

 

「え?」

 

「お前の気持ち、分かるよ。痛いほどよく分かる。友達に家族に見捨てられるのは辛いよ。でもーーー一人になることはもっと辛い」

 

イッセーの顔が歪む。

一人になることの辛さを今まさに味わっているのだから。

だから、俺は手を差し伸べようと、思う。

 

「だから、さ。俺と友達になってくれ。てか、もっと言うと家族になろう」

 

「え、あ? それはお前の親に迷惑が……」

 

「安心しな。ここ俺しか住んでないから。一人増えたってなんの問題もないさ」

 

「……ごめん」

 

「謝るな。謝罪の言葉よりも俺は聞きたい言葉があるんだけどな?」

 

「……その、あの、俺が家族に、なっても良いのかな?」

 

「例え、周りが、世界が、神がそれを許さなくても俺が許す!」

 

「う、う、うあぁぁあああああ!」

 

イッセーは泣いた。

今までの辛いことを全部垂れ流していくように。

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん。ありがとな。そう言えばお前の名前は?」

 

「望。春日望」

 

「よろしくな、望! それと俺はもう『兵藤一誠』じゃない! たった今から『春日一誠』だ!」

 

「! ーーーよろしく兄弟(イッセー)

 

「おう!」

 

「さ、そうと決まったら飯喰っちまおうぜ。折角作ったのに冷めちまうよ」

 

「ああ、食べよう! いや〜俺三日も何も食ってなかったんだよな」

 

「マジ?」

 

「マジ」

 

「ーーーちょっと、待っててくれ」

 

「待て待て!? 包丁持ってどこ行くんだよ!」

 

「ちょっとそこまで料理しに」

 

「何を!?」

 

「ふっ」

 

「やめて!? それスゲー怖いから!?」

 

「ぷっ」

 

「「ははははは!」」

 

さっきまで静かだった家には二人分の楽しそうな声が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、望はまだ気付いていない。

雫ですらまだ気付いていない。

この世界は二つの世界ではなく三つの世界が混ざっていることに。

気付かれるのを待つかのように一つの果実が実をつけた。

 

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