Double Xross~言葉の刃~   作:クレナイ

8 / 9
エンディングフェイズ

 戦いは終わった。

 悠二が三つ目の頭を潰すと、すべて頭部を失った“ジャーム”は完全に生命活動を停止させ、巨大なその身体を床に横たえさせた。

 完全に火が回り、いつ旧校舎が倒壊するか分からないということで悠二とカオルは気を失っているあゆみを連れて脱出した。外に出ると同時に、炎に包まれた旧校舎が音を立てて倒壊を始めた。一度崩れてしまえば、後はあっという間であった。一分も経たずに三階建ての旧校舎は跡形もなく崩れてしまい、盛大な焚き火が行われているという状態になっていた。

 “ワーディング”が解除されると、気を失っていた生徒や教師たちが次々と目を覚ました。旧校舎が燃えているとなれば学校全体はパニックに陥る。野次馬として向う生徒たちと危険を勧告する教師たちの姿がすぐに現れた。

しばらくすると、火事であることを通報したのかサイレンの音がけたたましく鳴り響き、消防車や救急車、さらにはパトカーが校内に入ってきた。

 火の勢いは凄まじかったが、消火活動によって徐々にその勢いは弱くなっていった。

 被害者であるあゆみはすぐさま救急車に乗せられ、近くの病院に搬送された。危険な状態であったが、搬送先がUGNと関わりのある病院であるので、大事には至らないだろう。

 火が完全に鎮火されてから消防員や警察による現場検証が行なわれるだろうが、ほとんどがUGN関係者であるから、瓦礫の下から識別名“アスモデウス”が発見されたところでなんら問題ではなかった。

 弓塚あゆみとともに“アスモデウス”、高山智樹の被害者となった藤堂雄一郎であるが、近くの廃棄工場から瀕死の重傷の状態で発見された。被害を受ける前と後の写真を見たが、端正な顔が見るも無残なものに変わり果てていた。全身に殴打された跡があり、四肢の骨は完全に折れており、筋肉にまで損傷が及んでいれば二度と動かせない可能性もあるようだ。

 戦いから一夜が開け、カオルはいつものように幼馴染である文乃とともに通学路を歩いていた。

 旧校舎が全焼してしまったが、校舎への被害は皆無であった。そのため旧校舎跡に立ち入り禁止になっただけで、普通どおり学校は開校される。

 昨日一日で人生において一度だってあるかないかも分からない、死ぬかもしれないという経験をした。あの時悠二が庇ってくれなかったら自分は今ここにはおらず、今日を迎え、日常を過すことはできなかっただろう。

 彼がUGNという組織のエージェントで、今回の件で潜入していたことを教えられた。やはり昨日の昼休みに電話をしていたのは、連絡をするためであったのかと自分の勘は正しかったのだと思う。

 それにしてもその件が解決してしまった以上、彼がN高等学校に留まる必要性はなくなってしまう。昨日転校してきたばかりではあるが、もう来ないという可能性も捨てきれない。UGNという組織が具体的にどのようなものなのかは知らない。だが、暗く、どこまでも深い闇を抱えているというのは、悠二の姿を見ていて何となく感じていた。

 “オーヴァード”であるが日常を生きている者――カオル。

 “オーヴァード”であるが非日常を生きている者――悠二。

 二人は似ているようで、まったく異なる存在だ。

 彼女は非日常を、昨日初めて知った。

 彼は日常をあきらめ、非日常を生きていながら、その脅威から日常を守ろうとしている。

 それがどれだけ辛いことなのか、彼が一体どのような闇を抱えているのか、カオルはまだ知らない。

 ならば、今日会ったら色んなことを話そう。

ウジウジ考えるというのは自分の生に合わない。

知らないなら教えてもらえばいいのだ。

話したくないのなら、少しずつ仲良くなればいい。そうすればいつかきっと教えてくれる。

 そう決意したら、モヤモヤとしていた気持ちが見上げた青空のように晴れ渡ったような気がした。

 そうと決まれば早く学校に向かおう。

 運がよければ、昨日のように列車の中で会えるかもしれない。

 そう思い、カオルは軽快に走り出した。

 

 ダブルクロス――二人の出会いは、さらなる戦いの始まりでもあった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。